ギリシャ神話あれこれ:ヘスティア

 
 私は目立つのも注目されるのも嫌だし苦手でもあるタイプ。できるだけ人目につかずにマトモであるのが、一番性に合っている。だから、自分の生きた痕跡も残したくはない。自分が死んだあとに、他人に無責任にあれこれ言われたくないから。
 ときどき、人目につく位置にあってマトモな言動を取る人を見かけるけれど、そういう人は大抵、周囲から思いっきり叩かれている。これが日本社会ってもん。

 ヘスティア(ウェスタ、ヴェスタ)は、ゼウスら6姉弟の長女で、火と竈の女神。祭儀と聖火の守護神で、孤児など、救いを求める者の守護神でもある。
 地味でマイナーな、ほとんどエピソードのない神だけれど、その権威は絶大。平和を愛し、慈悲深い。ギリシャの神々のうちで、唯一マトモな神だと思う。

 長姉と言っても、父クロノスに最初に飲み込まれたヘスティアは(ゼウスを除く姉弟は、産まれると次々にクロノスに飲み込まれた)、最後に吐き出されたため、6姉弟のなかでは最も若い。
 そのため案の定、ポセイドンとアポロンに求愛されているが、すげなく断っている。彼女はゼウスに請うて、夫を持たない資格を取りつけた、アテナやアルテミスと並ぶ権威ある3処女神の一神。
 あるとき、生殖の神プリアポスが、眠っているヘスティアに近づいたところ、ロバが派手にいなないて、危うきを救ったという話があるほかは、恋愛沙汰にも悶着にも、とんと無縁。天界の炉から離れることもない、穏やかな女神だったらしい。

 ヘスティアはオリュンポス12神の一神に数えられていたが、のちにその地位を、新参のディオニュソス神に譲ってやったとか。

 自分の生きた痕跡を残すまいと思っていたけれど、子供ができてしまったので、それが崩れた。イデオロギー批判論を発表すれば、もっと崩れるし、絵や小説まで残ると、もっともっと崩れる。
 自分が望んだわけでなく、結果として自然にそうなってしまうなら、痕跡も仕方ないかなー、と思う今日この頃。

 画像は、ゴヤ「ウェスタへの供犠」。
  フランシスコ・デ・ゴヤ(Francisco de Goya, 1746-1828, Spanish)

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