ランチに入ったとある店で
私はなんとも落ち着かないひと時を
過ごすことになってしまった。
一階にはテーブル席もたくさんある店
なのだけどお座敷も多くて
私が案内された場所は横長の一部屋を
スダレ(みす)のようなもので区切って
2スペースとしてある席だった。
すぐ隣のスペースには5人くらい人がいる
ことが入った瞬間にわかった。
そしてえらく盛り上がっているようでも
あった。
「あそこの店のいいところはねぇ、
10代の女の子を触れるところなんですよねぇ」
あたしは飲みかけたお茶が大変なことになるのを
必死にこらえた。
非常にねっとりとした話し方で
もったいつけて聞き手の反応を楽しむかの
この男性は、まだたぶん20か22才そこそこ。
かなり若め。
同席している他の男性達はどちらも30代後半くらい。
「10代の人はそんなに違いますか?」
そんな質問が投げかけられている。
年上が年下に丁寧語を使っているぞ、
それに、同席の女性達(たぶん20代)も
接待に呼ばれて同席している感じで
ここに来るまで、この若ゾウとの面識は
なかった風だ。
質問されて、さも嬉しそうに若ゾウは答えた。
「そりゃぁ〜もう、絹ごし豆腐と厚揚げ
くらいの差があります」
女性達は声を立て笑いはしたものの
そんなに面白くもない感じ。
この席、どうやら本当の意味では盛り上がってない(笑)
横を見ずに座っていて、ただ、声が大きすぎるので
無理矢理でも話が耳に入ってくる。
第一、私の耳は聴力検査機の検査が
できてしまうほどの良さなのに
はっきり言ってそんな大声でなくても
充分聞こえる。
若ゾウの声が大きいことと
女性が愛想笑いをしてあげているために
盛り上がっているように見えはしている。
なんだ、この変な集まり。
若ゾウの体験談がひと段落したところで
年上の男性が「さぁ、そろそろ行きましょか」
と声をかけた。
「はい、もう帰ってください。
静かに食事したいです」
心の中で私は答えた。
顔は見てないが、あの元気で明るくて健康そうな若者は、
どうして「お店で」「お金を払って」
女の子を触っているのだろう。
どう考えても自力で彼女くらい見つけられそうだった。
10代の女の子の触り心地について
絹ごし豆腐と厚揚げを引き合いに出していた。
絹ごし豆腐みたいて、、若い女、そんなに弾力ないか?
さすったら崩れるぞ。
誠に不可解なのは、厚揚げのほうである。
奴のストライクゾーンはいったい何才までなんだ。
厚揚げになるには生まれてから80年はかかる。
人を触るためにお金を払うこの妙な若ゾウに
焼肉を接待する不思議な大人達。
楽しそうにしていたのは若ゾウだけで
他は全員、聞き役,盛り上げ役に徹していた。
不思議な人達だった。