海鳴りの島から

沖縄・ヤンバルより…目取真俊

政局の流動化と沖縄の状況

2009-07-17 14:33:27 | 米軍・自衛隊・基地問題
 写真は嘉手納基地で開かれたアメリカンフェスト2009で一般公開された自衛隊のF15戦闘機。アメリカンフェストで自衛隊機を見せるのは、日米の軍事的一体化を印象づけようとするものだろう。航空自衛隊那覇基地は今年3月12日にF4戦闘機からF15戦闘機への配備替えが完了し、任務交代式が行われた。対中国の基地機能強化が進められている。

 自民党の混乱と自壊ぶりを見ていると、まさに末期症状としか言いようがないが、沖縄では県建設業協会の政治団体が次期衆院選挙の対応を自主投票としたことが話題になっている。保守系候補者の分裂や政権交代への対応、不況や談合問題による組織力の低下など、いくつかの理由が挙げられているが、自民党の「集票マシン」としてこれまで沖縄で果たしてきた役割を思えば、沖縄でも政治の流動化が進んでいることを実感させる。
 しかし、県建設業界のこのような動きは、辺野古新基地建設を巨額の利権が動く公共工事として是が非でも進めようという動きにつながるだろう。また、与那国島で動きが活発化しているように、自衛隊を誘致して経済活性化を、という動きも前面に出てくるはずだ。宮古島への陸上自衛隊の配備や下地島空港の軍事利用、石垣島の港湾や空港施設の米軍・自衛隊の利用などが、島嶼防衛と経済振興をからめる形で、すでに陰に陽に進められている。
 辺野古新基地建設のために日本政府が進めた「島田懇談会事業」や「北部振興策」は、基地・軍隊と経済振興を結びつける悪しき前例となってしまった。だが、基地や米軍・自衛隊を受け入れれば政府が「格段の配慮」として振興策をばらまき、経済振興がはたせるかのように考えるなら、それは幻想に過ぎない。
 名護市では今、新基地問題がらみで進めたハコモノ事業のツケが、市の財政を圧迫して問題になっている。来年1月の市長選挙に向けて、現職の島袋市長ともう一人保守系の候補者が名乗りを上げているが、このように名護市で保守が分裂している背景には、市の財政問題に対する不満と危機感が要因の一つとしてある。市長選における保守系候補者の分裂は、衆院選挙三区の保守系候補者の分裂とも結びついていて、双方を支持する企業の話などいろいろ聞こえてくるのだが、そこから実感するのは新基地建設問題によって名護市にもたらされた分断と歪み、軋みだ。
 これから先、与那国や宮古、八重山で自衛隊の誘致問題が起これば、賛成、反対の意見の対立が生じて、それは双方の運動の展開とともに住民を分断し、人々の心を傷つけていくだろう。それはすでに名護市民が体験したことだ。表には出さなくても、その傷を抱えて悶々としている人は今も大勢いるし、新基地建設に向けた動きは新しい傷を生み出してもいる。このような名護市の状況を、先島地域でくり返してはならない。
 今回の衆院選挙は政権交代が大きな焦点となるのだが、沖縄では辺野古新基地建設や高江のヘリパット建設、先島地域への自衛隊誘致、米軍再編などの問題も大きな焦点である。個々の候補者が、米軍や自衛隊に対してどのような主張をし、取り組みを行ってきたかが問われる。おそらくは、先島への自衛隊配備を声高に主張してきた(している)候補者は、政権交代を前面に出すことで、その事実をなるべく隠そうとするだろう。しかし、有権者はしっかりと実態を見て判断する必要がある。
 仮に民主党政権が生まれたとしても、沖縄の自衛隊強化や先島への配備、憲法改悪の動きは進められる。辺野古新基地建設に関しても、「県外移転」が選挙向けのリップサービスではないと言いきれるか。これから衆院選挙に向けての報道や運動が大々的に繰り広げられていくだろうが、そういう中でも辺野古新基地建設や高江ヘリパット建設、自衛隊誘致の動きは進んでいく。政局や政党の動きに振りまわされずに、地域での住民運動をしっかりと行っていきたいものだ。

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