海鳴りの島から

沖縄・ヤンバルより…目取真俊

仲井真知事立候補表明

2010-09-17 18:57:06 | 米軍・自衛隊・基地問題
 仲井真弘多知事が15日に開かれた後援会主催の激励会で、2期目を目ざして県知事選挙に立候補することを表明した。
 沖縄県知事選挙ではこれまで稲嶺恵一前知事、仲井真現知事と二代続けて経済界から立候補者が出て当選している。自公連立政権のもとで辺野古新基地建設を実現するため、政府と沖縄の自民党・公明党、経済界が一体となり、政府との「太いパイプ」を強調して振興策を前面に出し、当選させていくという構図があった。そこには、新基地建設と振興策をリンクさせた「アメとムチ」の手法を実行するために、経済界から知事候補を出した方が有利にはたらく、という思惑が見えた。
 しかし、昨年の政権交替によって自公政権は終わりをつげた。民主党政権が誕生して初めて迎える今回の県知事選挙は、仲井真知事にとって前回とは全く違う状況での立候補となる。仲井真知事を推している自民党・公明党は国政では野党であり、もはや政府との「太いパイプ」を売り物にすることはできない。
 基地問題に関しても、仲井真知事は自公政権下での主張(ホンネ)と県民世論とのはざまで揺れ続けている。普天間基地の「県外・国外移設」を主張していた鳩山首相が公約を投げ捨てて辞任し、現在の菅政権は「日米共同声明」に基づき辺野古への新基地建設を進めようとしている。本来なら、自公政権下で進められていた計画に回帰したことで、仲井真知事のホンネと菅政権のホンネは一致しているはずであり、「微修正」して手を打ちたいところだろう。しかし、県民世論がそれを許さない。
 仲井真知事の周辺では、「県外・国外移設」を明確にしなければ選挙に勝てない、という声もあるようだが、そこまで踏み込むのか、あるいは「日米共同声明」の見直し要求にとどめるのか、別の方針を立てるのか、仲井真知事はまだまだ揺れ続けるだろう。しかし、それはしょせん選挙に向けてタテマエとホンネを使い分けようとするがゆえに生まれる”揺れ”でしかない。仮に仲井真知事が知事選の方針として「県外・国外移設」にまで踏み込んだところで、選挙向けのタテマエでしかないのは見え透いている。
 政権交替が行われてからすでに1年余が経っているのだ。仲井真知事が「県外・国外移設」に方針転換するのなら、少なくとも4.25県民大会か5月4日に鳩山首相が来沖し公約を投げ捨てる前に転換して、政府と交渉すべきだった。しかし、仲井真知事は自らの意思を曖昧にし続け、「移設」は難しくなった、不可能に近い、などと客観的に状況認識を語るだけだった。県議会やメディアの質問に対し、いかにも官僚出身らしく言質を取らせないようのらりくらりとかわし、県民世論と乖離した自らのホンネを隠して、その場しのぎを重ねてきた。そこには県民世論を真摯に受け止めて政府に積極的にはたらきかけ、自ら状況を打破しようという県知事としてのリーダーシップは微塵もなかった。
 9月12日に行われた名護市議会議員選挙で、仲井真知事は島袋前市長の陣営を応援した。これまで仲井真知事と島袋前市長は、辺野古新基地建設計画の「微修正」=沖合移動という主張で一致した行動をとってきた。それが埋め立て面積を拡大させることで一部地元企業への便宜を図る、という思惑のもとになされてきたことは、すでに広く知られている。名護市議選で見られた仲井真知事の行動は、島袋前市長らとともに基地利権、埋め立て利権を追求してきた知事のホンネが、今も変わらないことを示すものだ。
 これまでの1年間のらりくらりと自らの意思を曖昧にしてきて、県知事選挙が間近に迫ってから仮に「県外・国外移設」を掲げたところで、選挙に勝つためのタテマエでしかないのは明らかだ。仲井真知事のホンネがどこにあるかを見抜いているからこそ、菅政権は仲井真知事の再選に一縷の望みを託しているのである。
 今日行われた内閣改造によって菅首相のもと岡田幹事長、前原外相、北沢防衛相という体制となった。沖縄から見れば、まさに「日米共同声明」を強行するための布陣である。これから県知事選挙に向けて日本政府は様々な工作を仕掛けてくるだろう。それをはねのけて本気で辺野古新基地建設を阻止しようという人を知事に選びたい。

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