海鳴りの島から

沖縄・ヤンバルより…目取真俊

勝連沖案と宮古へのカジノ設置

2010-03-15 17:01:06 | 米軍・自衛隊・基地問題
 3月14日付琉球新報1面トップの記事は、政府が普天間基地の「移設」先として検討している勝連沖(米軍ホワイトビーチ沖)埋め立て案で、航空自衛隊那覇基地や米軍那覇軍港を移転、併設する方向で検討しているというものだ。民主党県連の喜納昌吉代表と10日に面会した際に平野博文官房長官は、〈自衛隊那覇基地を併せて返還することで県民の理解を求める考えを示した〉という。
 平野官房長官の沖縄に対する認識の浅はかさには呆れ果てる。米海兵隊の滑走路に加えて航空自衛隊の滑走路も建設し、那覇軍港も併設するというのだから、普天間基地の「移設」どころの話ではなく、埋め立て面積は拡大し、演習量も倍増する。辺野古現行計画が頓挫した後にそういう案を出されて、沖縄県民が〈理解〉し、受け入れると考えているのだろうか。
 自衛隊機で文字通り上から目線で「移設」先を眺め、東京に戻って机上の議論を重ねていると、沖縄からすればとんでもない案が、さも実現可能であるかのような幻想を持ってひねり出されるらしい。沖縄の中にも平野官房長官が中心になって進めているという同案を推す経済人はいるだろうし、ロバート・エルドリッジ在沖海兵隊外交政策部次長がかつて勝連沖案を主張したこともある。それで平野官房長官は沖縄や米軍を説得できると考えているのかもしれない。
 しかし、それはまったく甘い考えでしかない。平野官房長官にはそもそも、沖縄でなぜいまこれだけ「県内移設」反対の声が大きくなっているかが分かっていないし、分かろうという姿勢がない。この13年余、普天間基地の「移設」がなぜ進まなかったのか。それは在日米軍専用施設の75パーセントが集中する沖縄は、すでに基地が過密状態であり、新たな基地負担を担う余地などないからだ。
 沖縄県内で「移設」=たらい回しをやっている限り、それが本当の意味で「沖縄の負担軽減」になることはない。普天間基地のある宜野湾市にとっては「負担軽減」になっても、「移設」先では負担が増加するのであり、沖縄の中で負担をたらい回ししているにすぎない。しかも、「移設」先となった地域では対立と分断が起こり、住民が苦しむことになる。この13年余、名護・辺野古で何が起こったかを沖縄県民は目にしてきたのだ。同じことをこの沖縄でもう繰り返したくない、という心情、認識になるのは当たり前のことだ。
 戦後65年、なぜ沖縄がこれだけ過重な米軍基地の負担を強いられ続けねばならないのか。その問いに対し、軍事戦略上の沖縄の地理的優位性という地政学を持ち出しても、もはや沖縄県民を説得することはできない。日本全体の安全保障のためには沖縄の犠牲はやむを得ない、とする65年続いてきた差別政策に沖縄県民は怒っているのであり、これからどのような「県内移設」案が示されても、沖縄県民がそれを受け入れることはないだろう。

 琉球新報の記事にはまた、次の一節もある。

〈さらに平野氏は、沖縄の振興策として宮古にカジノ施設を設置する案も示したという〉

 宮古は国民新党の下地幹郎議員の出身地であり、これが沖縄選出の国会議員として「県内移設」を主張している下地議員への鳩山政権からのご褒美というわけか。おそらくは宮古のカジノ構想の裏には下地島空港の軍事利用がセットになっているだろう。基地とカジノで一儲けを企む政治家が、政権与党に入って沖縄を食い物にしようとしている。
 平野氏の勝連沖案は、海を埋め立てて米軍と自衛隊の2本の滑走路を建設し、さらに港湾施設も併設するというもので、辺野古の現行計画を勝連沖にずらしたようなものだ。当然そこには辺野古現行計画で問題にされてきた埋め立て事業の利権が絡んでいるだろう。何のことはない。自公政権から民主党中心の連立政権に変わっても、沖縄に基地を固定化し、その利権に群がる政治家・官僚・企業の構造は変わっていないということだ。その構造を叩きつぶさなければならない。

コメント (2)    この記事についてブログを書く
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2 コメント

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牡丹 (トリニティー)
2010-03-15 18:26:42
本記事を受けて、拙歌を一首詠ませてください。

色褪せた
 二重のたくらみ
  安保(阿呆)の移設
 下地の岸辺に
      落首の音    
返信する
大阪から (さいとう)
2010-03-17 14:46:09
いつもこっそりと読ませてもらっています。
平野官房長官だけではなく、自身も含めてヤマトンチュウの大多数が甘い考えです。
拙ブログに一部、転載させていただきました。
拙ブログ3/17の記事です。
事後報告になりましたが、ご了承いただけるとうれしいです。よろしくお願いします。
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