海鳴りの島から

沖縄・ヤンバルより…目取真俊

翁長那覇市長をめぐる2件の裁判

2014-06-17 14:20:41 | 米軍・自衛隊・基地問題

 5月20日に板屋清隆氏、同21日に金城テル氏という二人の市民が、翁長雄志那覇市長を訴えたということで、チャンネル桜が二人の記者会見の様子を放映し、それがユーチューブに投稿されている。金城テル氏の発言を見ていると、そもそもは若狭緑地に那覇市が龍柱を建設しようとしていることへの反発があるようだ。

 記者会見の映像で、金城氏の横に座っている弁護士を見て、ああまたか、よくやるよ、と思った。徳永信一弁護士は「靖国応援団」の一員として「大江・岩波沖縄戦裁判」を起こした原告側の中心人物である。ドキュメンタリー作家の上原正稔氏が琉球新報社を訴えた「パンドラの箱」裁判でも原告側代理人となっていた。

 両裁判ともに沖縄戦の際、慶良間諸島で起こった強制集団死への認識が大きな焦点となっていた。徳永弁護士は日本軍による命令・強制を否定する立場から、積極的に裁判に関わっていた。

 徳永弁護士は大阪弁護士会に所属し、事務所も大阪市北区にある。大阪地裁・高裁で行われた「大江・岩波沖縄戦裁判」はともかく、那覇地裁で行われる裁判では出廷、原告との打ち合わせなど、旅費を含めた経費はかなりのものだと思うが、よほど熱意があるようだ。

 いま沖縄では、11月に行われる県知事選挙に向けて、翁長那覇市長の動向に注目が集まっている。そういう時期に、翁長市長を告発して起こされた2件の裁判は、チャンネル桜やネット右翼の熱心な宣伝ぶり、徳永弁護士の参加、金城氏の主張などからして、その狙いは推して知るべしというところか。

 チャンネル桜の番組で金城氏は、「一般社団法人 久米嵩聖会」と那覇市の関係を告発しつつ、「久米三十六姓」「久米村」についても勉強したということで、「漢民族」で「あそこでも嫌われ者だったらしい」と罵倒し、中国嫌いをむき出しにしている。

 以前は仲井真弘多知事が「久米三十六姓」の蔡氏出身だということで、「日本国籍中国人」「シナ帰化人」呼ばわりされ、ネット右翼に口汚く罵られていた。それが仲井真知事が辺野古埋め立てを承認し、翁長市長を県知事選挙に擁立する動きが強まるにつれ、今度は逆に仲井真知事を持ち上げて、続投を待望するネット右翼が増え始めている。

 現金な人たちというか、そのいい加減さは呆れるばかりだが、中国の脅威を煽って沖縄の米軍・自衛隊基地を強化したい者たちには、琉球国と中国の交流の歴史も、気に入らない相手をおとしめるための材料に過ぎないらしい。徳永弁護士は沖縄に中華街ができるのを憂えているようだが、大阪の近くにある神戸の南京町にはどういう対応をしているのであろうか。

 

 


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