海鳴りの島から

沖縄・ヤンバルより…目取真俊

菅首相の所信表明演説ー沖縄について

2010-06-11 16:46:06 | 米軍・自衛隊・基地問題
 11日午後から菅直人総理大臣の所信表明演説が行われた。普天間基地問題と沖縄に関する所信は最後に語られた。内容は以下の通り。

 沖縄には米軍基地が集中し、沖縄の方々に大きな負担を引き受けていただいております。普天間基地の移設・返還と、一部海兵隊のグアム移転は、なんとしても実現しなければなりません。普天間基地移設問題では、先月末の日米合意を踏まえつつ、同時に、閣議決定でも強調されたように、沖縄の負担軽減に尽力する覚悟です。
 沖縄は独自の文化をはぐくんできた、我が国が誇るべき地域です。その沖縄が、先の大戦で最大規模の地上戦を経験し、多くの犠牲を強いられることとなりました。今月23日、沖縄全戦没者追悼式が行われます。私はこの式典に参加し、沖縄を襲った悲惨な過去に思いをいたすとともに、長年の過重な負担に対する感謝の念を深めることから、この沖縄問題についての仕事を始めたいと、このように考えております。

 前半では、〈沖縄の負担軽減に尽力する覚悟〉を述べている。しかし、〈沖縄の負担軽減〉の内実は〈先月末の日米合意を踏まえつつ〉という言葉が示すように、普天間基地の〈代替施設〉を〈キャンプ・シュワブ辺野古崎地区及びこれに隣接する水域に設置〉するというものだ。〈負担軽減〉とは名ばかりで、沖縄の中で負担をたらい回しするだけのことであり、〈国外、最低でも県外〉といった民主党の公約を完全に投げ捨てて、沖縄への負担押し付けに〈尽力する覚悟〉を述べているにすぎない。
 後半では、沖縄の〈独自の文化〉を持ち上げつつ、それが日本国の下にあることを強調し、6月23日の沖縄全戦没者追悼式への参加を表明している。そして、沖縄戦の犠牲=負担と米軍基地の負担を重ね合わせながら、〈長年の過重な負担に対する感謝の念を深めることから、沖縄問題についての仕事を始めたい〉としている。〈感謝の念を深める〉といえば聞こえはいいが、そこには沖縄に犠牲=負担を強いたことへの政府としての歴史的責任を自覚し、反省する姿勢はない。
 本土決戦に向けた時間稼ぎのために沖縄で持久戦を行い、住民と兵士の犠牲を大きくしたこと。戦後は米軍支配下に沖縄を切り捨て、米軍基地の集中、自由使用を進め、施政権返還後もそのような状況を変えてこなかったこと。時の政府がとった沖縄への犠牲=負担強要という方針・政策に対して、日本政府として歴史的責任を自ら問い、反省することなくして、何が〈感謝〉だろうか。
 菅首相がそのような歴史的責任の自問や、反省をしないのは、〈先月末の日米合意を踏まえつつ〉という言葉が示すように、自らも歴代の政府の姿勢を受け継ぎ、沖縄への米軍基地集中という差別政策を継続し、新たな犠牲=負担を強いようとしているからだ。そのような菅首相が口にする沖縄への〈感謝〉とは、過去の沖縄の犠牲=負担への〈感謝〉であると同時に、これからも継続させようと目論む犠牲=負担への〈感謝〉でもあるだろう。
 菅首相が6月23日にどれだけ沖縄戦の死者を悼み、殊勝な態度を見せたとしても、沖縄県民がそれによって懐柔され、普天間基地の辺野古「移設」=新基地建設反対の意志が揺らぐことはあり得ない。むしろ、本当に沖縄戦の死者を悼み、県民の〈負担軽減〉を言うのなら、「県内移設」というたらい回しを止めて、普天間基地の即時閉鎖・無条件返還を実現しろ、上辺だけの〈感謝〉などいらない、という声が6月23日には上がるだろう。

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