海鳴りの島から

沖縄・ヤンバルより…目取真俊

菅首相来沖抗議行動

2010-12-18 18:56:50 | 米軍・自衛隊・基地問題
 12月17日に菅首相が来沖した。県庁周辺には普天間基地の辺野古「移設」を推し進めようとする菅首相の来沖に抗議して〈朝から夕方までに延べ千人が集まった〉(12月17日付琉球新報)。





 県庁の駐車場入り口周辺の歩道に集まり、抗議行動を行う。
 5・28日米合意を「撤回せよ!」と記した紙をシュプレヒコールに合わせて突き上げ、抗議の意思を示した。





 寒風の中、辺野古有志の会の皆さんも参加しました。











 県庁駐車場入り口付近の様子。入り口両側や向かいの歩道から「菅首相帰れ!」という怒声が飛ぶ中、警備車両、警備の警官らに守られて午後3時10分頃に菅首相は沖縄県庁に入った。仲井真知事と対談したあと午後4時過ぎに県庁を立ち去った。





 菅首相が去ったあと、県庁横で総括集会が開かれ、安次富浩さん、高里鈴代さんらのあいさつがあり、最後に山内徳信参院議員のガンバロー三唱で「撤回せよ!」の紙が掲げられ、抗議行動を閉じた。

 仲井真知事との対談で菅首相は、〈沖縄の皆さんにとっては辺野古はベストな選択ではないかもしれないが、実現可能性も含めるとベターの選択ではないか〉〈ベストは確かに県外・国外かもしれないが、過去からの経緯、あるいは国際情勢を考えた中で、ベターな選択として辺野古移転をもう一度皆さんにも考えていただけないか〉(12月18日付琉球新報)と発言している。
 ベストではなくベターな選択を、というのは、これまで沖縄の自民党・公明党、そしてその支持を受けた稲嶺恵一元知事、仲井真知事らが自公政権下で展開していた論理である。菅首相からすれば、去年の政権交代前まで仲井真知事らが展開していた論理を反復することで、これから普天間基地問題で議論を進める上で共通の出発点を作りたかったのかもしれない。
 それに対して仲井真知事は、「県内移設はバッド(駄目)の系列でしかない」と発言している。この発言を評価する声もあるようだが、私からすれば「4年前に言えよ、バカやろー」という気持ちにしかなれない。
 「県内移設」が「ベスト」でもなければ「ベター」でもなく、「バッド」「ワースト」の選択であることは、普天間基地の「移設」問題が起こった14年前から分かっていたことだ。だからこそ名護市民は、市民投票で反対の意思を明確に示したはずだ。その意思を踏みにじって、昨年まで「県内移設」を進めてきたのはどこの誰なのだ。
 仲井真知事や自民党・公明党がそのことを謝罪し、「バッド(駄目)な系列」を実行してきた自らの非を認めたことがあるか。ありはしない。ただ、県民世論が「県内移設」を唱えては選挙で勝てないまでに先鋭化しているから、なし崩し的に「県外移設」に転換し、様子見をしているだけのことではないか。
 来年前半にも、衆議院の解散総選挙が行われるのではないか、と取り沙汰されている。仮にそれが現実となったとき、県内の自公は県知事選挙と同じように、「県外移設」を主張して普天間基地問題の争点ぼかしを行うだろう。党本部とのねじれが問題になるのは民主党も自民党も一緒だが、「県内移設」を掲げては当選できないのが自明となれば、候補者は「県外移設」を掲げざるを得ない。
 そうなれば、1、4区で自民党が議席を奪い返し、3区でも前回のように分裂しなければ奪還の可能性が高い。民主党は前回のような風が吹かないどころか逆風にさらされ、国民新党も「県内移設」を主張したツケが回ってくる。県知事選挙で勝利した勢いと民主党政権への反発を考えれば、沖縄の政治状況は自公が圧倒的に有利だ。
 そういう中で、次の衆議院選挙まで仲井真知事が「県外移設」を主張し続けるのは、選挙に勝つうえから自明のことだ。仲井真知事の「バッド」発言に妙な幻想を抱いて、知事の尻押し運動をやろうなどとはゆめゆめ考えないことだ。「県民の心をひとつに」と選挙で打ち出しながら、安里宜野湾市長や稲嶺名護市長の共闘申し入れを「同床異夢」と一蹴する。そういう仲井真知事を尻押しするのは、沖縄の自公復活を尻押しすることでしかない。

 17日にはまた、新たな「防衛計画の大綱」と中期防衛力整備計画が政府の安全保障会議と閣議で決定されている。陸・海・空で沖縄の自衛隊が大幅に強化されようとしている。すでに2005年の「防衛計画の大綱」と中期防で、対中国を想定した島嶼防衛や戦力配置の南西重視が打ち出されていた。世界的な米軍変革(再編)と連動して米軍と自衛隊の一体化が進められ、第一混成団の旅団化や空自那覇基地のF4戦闘機のF15戦闘機への切り替えなどはすでに行われている。宮古島への陸自配備は遅れたが、これから与那国島への沿岸監視部隊の配備と合わせて進められていくのだろう。
 仲井真知事は表向きは「県民への配慮」を口にしながら、それに積極的に呼応していくはずだ。沖縄では米軍基地問題と同時に、自衛隊強化に反対していく取り組みが重要な課題となっている。17日の抗議行動では、「空き缶を叩け」だの「ナービぬ蓋を打ち鳴らせ」だの、シュプレヒコールのリーダーがそれこそ中身のない空叫びをやる一方で、自衛隊強化に反対する声は発せられなかった。米軍と自衛隊が一体化して沖縄を対中国の軍事拠点にしようとしている今、それに反対すると同時に、中国の軍事強化に対しても反対する声を、沖縄からもっと上げていきたい。

 

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