海鳴りの島から

沖縄・ヤンバルより…目取真俊

自浄能力の欠落と野合、免罪、居直り

2012-02-15 22:17:08 | 米軍・自衛隊・基地問題

 真部朗沖縄防衛局長の宜野湾市長選挙への介入問題について、防衛省が〈自衛隊法や公職選挙法に抵触する違法性はないとする調査結果〉(2月15日付琉球新報)を公表しようとしていることが報じられている。

http://ryukyushimpo.jp/news/storyid-187461-storytopic-250.html

http://www.okinawatimes.co.jp/article/2012-02-15_29879/

 ところで、この問題を調査している防衛省の業務適正化委員会とはどのようなものか。防衛省・自衛隊のホームページには以下のように委員の構成が示されている。

http://www.mod.go.jp/j/press/news/2012/02/03c.html

  防衛大臣以下、防衛大臣政務官や防衛省の事務次官、各幕僚長など防衛省・自衛隊の幹部が並んでいる。何のことはない、泥棒の親分衆が泥棒を調べているようなもので、〈違法性はないとする調査結果〉は、身内に甘い防衛省の体質を示しているにすぎない。

 2月3日に行われた真部局長の国会参考人招致では、中谷元という自民党の国防族議員(※1)が、真部局長を擁護する質問を行っていた。この問題を過去にさかのぼって洗い出せば、自民党政権、自公政権下での防衛省の組織ぐるみの選挙介入まで明らかになってしまう。田中防衛大臣に対して執拗な攻撃を行う一方で、真部局長の問題については、何が問題か、と自己保身から防衛省・自衛隊の擁護に回っているのが自民党である。
 当初は、参考人招致が行われた2月3日中にも真部局長は更迭されると報じられていた。昨年11月29日に更迭された田中聡前局長に続き、2カ月少しの間に沖縄防衛局長が2人も更迭されるとなれば、その衝撃は2月5日に告示され、12日に投開票された宜野湾市長選挙に大きな影響を及ぼしたはずだ。しかし、自民党・公明党が推す候補者は野田政権にとっても当選してほしい候補者であり、双方の思惑がかみ合って更迭は先送りされた。
 同時に、これまでも書いてきたように同じ3日に「グアム移転協議見直し」が「日米関係筋」から明らかにされ、その報道の影に真部局長問題は隠されていった。そして、選挙が終わって民主党、防衛省、自民党の野合のもと、真部局長の選挙介入問題は〈違法性なし〉として、〈厳重注意〉程度の処分ですまされようとしている。
 これはこの間、時の政権と防衛省が組織ぐるみで行ってきた沖縄の選挙への介入を、自らに都合よく免罪し、居直り、さらに継続する意思を示すものであり、断じて許すことはできない。

 この問題を考えるとき、真部局長が講話のなかで、特定の候補者への投票を呼びかけたのか、単なる投票への呼びかけだったのか、という講話の中味だけに問題を矮小化させてはならない。メールの出し方や講話の持ち方、名簿の対象者、集め方、使用法の問題、さらにメールが発進された1月4日や年末・年始に何があったのかを時系列的に整理し、真部局長の講話が行われた背景を含めて総合的に判断する必要がある。
 そうすることにより、真部局長による名簿作成や講話が、たんに一般的な投票への呼びかけではなく、普天間基地の辺野古「移設」に向けた一連の行動の一つであったことが浮き彫りになる。真部局長は自らが先頭になって、12月28日の午前4時過ぎに環境影響評価書が入った段ボール箱を県庁の守衛室に持ち込んだ。講話に呼び出された沖縄防衛局の局員たちは、当然そのことを知っている。今、なぜ講話が持たれているか、真部局長の意図は何か、自分たちに何が求められているかを、前年末からの一連の真部局長の行動を通して、局員たちは十分に理解できたはずだ。
 講話のなかで真部局長が公選法に引っかかるようなことを露骨に言うはずがない。どのような流れで講話が持たれ、二人の候補者のうち誰に投票すべきかを、局員が暗黙のうちに了解できる背景、状況があったことをきちんと押さえる必要がある。午前4時過ぎに局長が直々に県庁に出向き、評価書を置きに行くなど尋常ではない。その強い姿勢を目にした局員が、局長の講話を聞いて何を感じ、何を読みとるか。それはたんなる選挙への啓発ではあり得ない。業務時間内に呼び出され、講話という場が設定されること自体が、局員に心理的圧力を生じさせる。

 新基地建設問題を考える会とティダの会は、この問題についてビラを作り、12日の午後から辺野古区を中心に配布してきた。2010年の名護市長選挙や名護市議員選挙でも、同様の介入が行われていたことが明らかになっている。真部局長に対する処分のあり方しだいでは、過去の選挙介入まで正当化されるだけでなく、6月の県議会選挙をはじめ、これから行われる選挙への介入にもお墨付きを与えることになりかねない。
 防衛省の業務適正化委員会などという内輪の組織による身内に甘い調査・処分で、真部局長の選挙介入問題を片付けさせてはならない。また、勇気を持って内部告発した局員の調査を防衛省、沖縄防衛局はやめるべきだ。宜野湾市在住の局員だけでなく、同市に居住する家族・親族まで調べたのは、局員のプライバシーを侵害するものだ。真部局長の一連の行動こそが問題なのであり、それは告発されるに値するものだった。そのことをふまえて、防衛省・沖縄防衛局は告発者の調査ではなく、告発されるようなことをしたことへの反省をすべきだ。

(※)1http://www.jcp.or.jp/akahata/aik07/2007-11-19/2007111902_03_0.html

 


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