・・・・・映画『TOKYO!』―――3・・・・・
このAOLメルマガ、(もしくは、グーブログ)の読者の中には、『あれ、(雨宮舜=川崎千恵子)って、ライターとしては、やっぱり素人だなあ。映画評論を書く場合、筋を明かすのはタブーですよ』と仰る方は多いでしょう。
私は自覚をして、敢えて、その手法をとりました。と言うのも、最初に宣言をしたとおり、この文章の読者の皆様には、その映画をご覧にならないで欲しいからです。
でも、それでは、第一話と、第三話のスタッフ・キャストが気の毒すぎるので、そちらだけは、全うな形でご紹介をしておきました。第一話と第三話の監督は、一種の『だまされた』と言う感覚をお持ちなのではないかしら。『これは、全体像としては、後味の悪い作品に成ってしまっているなあ』と、お感じになったはずです。出演者たちも完成作品を見れば、『あれ、』と思ったはずです。
先日、大変褒めた、プログラムには、どうしてか、製作者(つまり、お金を出した人物、又は、組織)の名前が出ておりませんでした。そこにも大きな謎が秘められております。ミッシェル・ゴンドリー監督と、ボン・ジュノ監督の名声は、第二話に秘められている、深い悪意を、カモフラージュするために、利用をされたと感じるほどです。
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レオス・カラックス監督は、知能指数が抜群に高い方でしょう。でね、私がこれから、展開するような批判を避けるために、用意周到な準備がなされております。
まず、タイトルが『メルド(フランス語、日本語訳は、くそ、=うんち)』となっております。ケイオス(混乱のきわみ)を提供されるので、それが、くそなのかと、最初の段階では思いました。しかし、そうではなくて、日本人の野蛮さと、残酷さと、そして何よりも好戦性を、暗喩としてスムーズに表現するために、主人公をくそまみれになった、無国籍なホームレスとして、設定をしているからです。
主人公(メルドと呼ばれる、他者との通常な意味でのコミュニケーションが取れないホームレス)は、ポンヌフの恋人に主演した、ドゥニ・ラヴァンが16年ぶりに監督と競演するという形で演じています。しかし、この立派なつくりのプログラムにどうしてか、彼だけ肉声を寄せておりません。そこにも、私の、推定を強める、証左を見つけえしまいます。
私の推察・・・・・この映画の目的の最たるものは、日本人観客の心を打ちのめすこと。それから、世界の若者に、潜在意識の中での反日感情を植えつけることである。・・・・・と、言うポイントを、フランスから監督が連れてきた、スタッフ・キャストは飲み込んで、監督をサポートしていたと、私は考えるからです。
しかし、日本側のスタッフとキャストは、その監督の本当の意図を推察していたかどうかを、私は危ぶみます。3週間で撮影が敢行されているから、あっという間の出来事で、結果として、後味の悪い作品に出てしまったということになるのではないでしょうか? 石橋蓮司さんなど、名優なのに、残念です。この映画は、それなりの大金をかけていると思いますし、新聞をはじめとするメディアのサポートは大きかったのに、ヒットしなかったのは、観客の感想が悪かったこともあるでしょうが、内側からの、喜びの声も上がらなかったせいでしょう。
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私のこの推察を、論証するために、また、丁寧にこの映画をたどって行きたいと思います。主人公メルドは、徐々にその暴力性を高めていきます。銀座四丁目から一丁目までの、西側の歩道を疾走するシーンで、随伴音楽として、有名なゴジラのテーマを使っています。で、なんとなくですが、メルドの破壊への衝動を、観客は納得をさせられてしまいます。それが不思議でないという設定を、知能指数が高い監督は用意しているのです。
メルドの暴力は、渋谷の歩道橋で、手榴弾を、次々と炸裂をさせ、日本人を多数殺傷することで頂点に達し、警察に捕らえられることとなります。ここも用意周到なる伏線として生きています。この映画は暗喩として、日本人の残酷さを、世界に知らしめるところがあるのですが、まず、主人公が度肝を抜く暴力を振るうので、それが眼くらましになっていて、大切なメッセージが、一見すると見えてこないのです。『サブリミナル効果を狙っている』と、でも、言うのかなあ?
しかし、徐々にその暗喩が見えてきます。主人公は、一文字菊(皇室の紋章として使われている)と、お札しか食べないという設定です。これは、お金を尊重し、かつ、皇室を尊重する、日本人をからかっている場面です。
しかも彼が用いた手榴弾は、戦時中、日本軍が、地下の下水道に隠した、武器であると言う暗示もなされております。大きな、暗渠内に、どうしてか、戦車が保管をされており、その車体には真新しいペンキで、旭日旗(日本軍の象徴)が描かれています。もし、60年以上、そこに武器が保管をされていたとしても、旭日旗は、これほど、鮮明に残っているはずが無いのですが・・・・・そこを荒唐無稽なお話として突っ走っていくのです。
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しかし、悪意はもっと、深いところへ向かっていきます。メルドは結局捉えられ、裁判にかけられるのですが、その法廷の場面が東京裁判にそっくりなのです。プログラムの32頁には、監督自身が、その連想を、肯定した事が記されています。(無署名の記事ながら)
そして一番ショックを受けるのは、監獄内の描写とか、死刑執行の場面です。これも人を食ったような設定で、メルドが、メルド語と言う世界で三人しか、理解を出来ない言葉を発するし、死刑執行後、その死体が、消え去るという・・・・・敢えて好意的に表現すれば、奇想天外な結末が訪れ、この映画を、全うな論議の場へのせるのを、避けさせているのです。
しかし、プログラムにさえ、ぽろ、ぽろ、ぽろっと監督の真意が見えるところがあります。12頁に、日本側の人材に対して「皆さん、とても、寛大だった」と言う言葉が見えます。また、31頁にはこの企画のために来日、初日の打ち合わせで「脚本を読んで、おかしいと思ったところはありませんか」と日本側スタッフ・キャストに質問をしています。と、なると、彼は、俳優を騙して乗せた・・・・・わけではなくなります。何から何まで用意周到です。
この映画(メルドの部分)については、もっと、もっと、語るべき事がありますが、今回は、ここまでで、ストップを致しましょう。次回へ論議を持ち越します。
2009年3月4日 雨宮舜(川崎 千恵子)
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