あれは、2009年の12月の半ばでした。銀座のあるビルの廊下で、すれ違った外人(男性)から「あ、僕、あなたを知っている。お宅へ行きたい」といわれました。その途端に、私はその男性をCIA(国際的軍産共同体から、派遣された諜報員)だと直感しました。
その論拠は、・・・・・ひとまず簡単に列挙すると・・・・・
1、私の未発表の文章の中に、さらに緻密な分析をしたものがある。それの中には文学界、美術界、芸能界、学門の世界、テレビ有名人、政治評論家などを、個人的な名前を挙げて、・・・エージェントが誰であり、どういう活動をしているから、・・・日本文化界(またはメディア)が・・・こういう風に支配をされている・・・などと分析しているものがある。それを発表するのはCIA側は嫌がるであろう。
2、この外人には、つい4日ほど前に、ある画廊Yで出会ったが、そのときに私は別に歌を歌ったわけでもないし、ともかく、特別なアッピールを何もしていない。つまり我が家に来たいと思わせるほどの、個性をさらしていない。それなのに、「我が家まで来たい」とは変だ。彼の方も、その画廊内では、日本人の影からそっと私を見ていただけで、さしたる興味もありそうでもなかった。
3、この人は男性だが、私より三十歳は下であろう。しかも私は美形でもなく、ボインちゃんでもない。女の魅力という意味でひきつけるものは無い。それなのに、「我が家まで来る」? おかしい。
4、私が去った後に、画廊Yのスタッフが、私のことを説明ををしてくれたとしても、好意ある発言である可能性は少なく、したがって、ニューヨークの誰かが推薦してくれた可能性のほうが強い。
が、それなら、ニューヨークの知人の誰かから、事前にメールが着ているはずである。それが無いし、彼は、紹介者としては、誰の名前も出さない。それなのに、うちにまで来るというのが突飛過ぎて、変だ。
5、今二人が出会ったこの場所が、問題だ。この近所に、オーナーご本人が自覚をしているかどうかは別として、客観的には、もっとも、CIAと緊密であり、したがって私に被害を与え続ける大画廊Xがある。だから最近では、銀座のこの通りは出没を避けているほどなのだ。普段は、ここはほとんど来ない場所であり、私にとっては、一種の魔界である。ただ、半年振りぐらいのこととして、4日前に、ここに来た。そこで今日、待ち伏せに近い形で彼が待っている。それも変だ。微妙に何かがにおう。変だ。
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ここで、美術関係者はぎょっとなさるかもしれません。『大画廊が、CIAに篭絡をされている』とか、『川崎さん(雨宮の本名)は、大画廊に嫌われているのだ』とか、言えば、・・・・・だけど、『それも、おいおい、丁寧に因果関係をお話できるでしょう』し、・・・・・『私自身、損得を捨てて、生きているので』・・・・・と、今、ここでは、申し上げるだけに、させていただきたいと感じます。
人が離れていくことは覚悟のうえで生きています。『夜と霧』を書いたフランクルみたいなもので、『この日本を安全な国にしたい』という使命感のみで生きている状態ですから・・・・・
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で、その男性をCIAだと考えたから、すぐそれ相応に対応して警戒をしたかというとそうでもないのです。私は、一見馬鹿みたいに見えるでしょう。口が滑らかには、回らないので。よくいじめられるのは馬鹿にされているからだと思います。
でも肝心なときには頭が高速回転します。そして、『この際は、自分が既に真相に気が付いていることは伏せよう』と決意しました。だからこそ、相手を気遣った発言を最初にしました。「あなたね、私と付き合うの、大変よ。パソコンが壊れたりするから。多分ね。組織から観察されている」というと、相手は、「それって、気にしすぎじゃあない。気にしないほうがいいよ」というのです。これを英語を十年以上使っていなくて、会話がたどたどしい私と、同じく原籍がアメリカ人ではなさそうな、相手と、ちゃんと、交わせるのですから、二人とも狐と狸(察しがよくて、虚々実々)の駆け引きではありますね。あ、は、は。
ただ、この時点でもさらに変だと私は思いました。普通の人なら、「え、そんな状態なの、それじゃあ、せっかくだけど、僕、訪問をあきらめようかなあ」と成るはずです。が、彼は望みを捨てません。それで、私は、「あなたってフランス系?」などという方向転換した質問をしました。それへの答えから、パリにいる知人の紹介で、来日している可能性を探れるからです。そちらであるかどうかを確認できるからです。彼はあいまいに、「うううーん」とうなるだけでした。
これは後で、実際に、我が家宅に来たときに、主人があって「東欧系か、ロシア系だろう。フランス人ではないよ」といいましたが、背格好がアメリカ人にしては低いので、フランス人だと思ったのです。
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で、そんな軽いやり取りをしながら、私の頭はさらに高速回転をして、「この人は何を口実として、我が家を訪問するのだろう」と推理しました。CIAさんが「私はCIAです」と名乗りながら訪問をしてくるはずが無いのです。何か別の職業の偽装をするはずです。
作家(クリエーター)ではないと感じました。ロングコート(ウール)を着ていますから。作家は、作業で汚れるので、ラフなアノラック風のものを着ている人が多いのです。ロングコートはヨーロッパではビジネスマンです。だから、画商としてやってくると考えました。
そこまで想像が達したときに、私の胸は期待と困惑に満たされました。今現在67歳で絵を描いていません。版画も刷っていません。両方の遂行が体力的に無理に成ったので、文章しか書いていないのです。本作りはします。これも一種の創作だから、それが、できるだけでも恵まれた環境にあると、天と、家族に感謝している次第です。で、絵をあきらめているわけですが、もし、欧米の画商が我が家に来て、パリかニューヨーク、はたまたローマかロンドンで、「個展を開いて上げますよ」といってくれればそりゃあ、うれしいですよ。
それが、うそであって、単なる、引っ掛けであって、文章を書かせなくさせるための方策であっても、騙されてみたいという、一瞬の夢を見ました。何事もひょうたんから駒です。外国での個展がぬか喜びにしかすぎず、おちゃらになっても、一年か半年、集中した結果の、作品は残ります。それで、日本で個展をしてもいいではないですか? もう見栄にはこだわらないつもりですから、場所は銀座でなくてもよいのです。どこでもよいと成ったら、個展はすぐできます。
しかし、方向変換は大きな賭けです。不器用な私にとって、ギアは早々は変えられないものです。だから、この個展如何とCIAの件は、主人には伏せて置きました。ただ、簡単にその晩「銀座で出会った、外人が、うちへ来る、ですって」と告げておきました。だって来ないかもしれないし、来なければ、主人に心配と負担をかけないからです。
絵を描くほうが、文章(エッセイのこと)を書くよりも、家族へ強い負担をかけるのです。それはまたまた、修羅場の始まりでもあります。老境に差し掛かって夫婦仲が悪くなるのは大変な損失でもあります。この項続く。2010年1月19日 雨宮舜
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