あまねのにっきずぶろぐ

1981年生42歳引き篭り独身女物書き
愛と悪 第九十九章からWes(Westley Allan Dodd)の物語へ

沼底

2017-06-01 02:13:19 | 随筆(小説)
『生まれた意味を知れば、人は一瞬で変われる - 胎内記憶・前世記憶研究でわかった幸せへの近道』
こないだ他の本のレビューでおもくそにけちょんけちょんに非難してしまった憎めない池川明さんの本を今日読んでたぁ。
そこにこんなことが、書いてあったぁ。



超智啓子氏に面白い話を聞きました。
引きこもりになると、肉体と魂の間がズレてしまって、魂の光が外へ漏れ出してしまうのだそうです。
するとその光には、死後、この世で道に迷い、困っている霊魂が寄ってくるのだとか。
その霊魂は、光のエネルギーをもらうことで、空へ無事に帰ってゆけるのですね。
仏教の言葉でいえば、「功徳(くどく)」を施していることになります。
引きこもりというインターバルも、その子の人生にとっては意義ある時間。



ぼくはわたしは引き篭り9年目。
わたしはこれを読んで、「わ~い、嬉しい嬉しい嬉しいなぁ~」と何遍も想っては天にも昇る想いでした。
それくらい幸福な気持ちにして頂けたということです。
そして「引きこもり 霊魂」でググルと、「引きこもりと霊障」とか、「魂的家畜」とか出てきて落ち込んでしまったが、落ち込んでいる場合ではない。
わたしは死者たちを、苦しみの底でひとりぽっちで泣いている死者の霊たちをこのわたしの光の漏れによって救いだし、お空へと帰してやらねばならぬのだ。
ですからわたしは今夜は素面で、死者たちを呼ぼう。
さあ、おいでおいでおいで、死者たちよ。ぼくちゃんのところへおいでなさい。
あなたたちをわたしは救う者である。
わたしのこの、光の漏れが見える者よ。さあ来るのです。
あなたたちを帰(き)してあげる。高い高いお空へと。
なにも心配しなくても良い、わたしは確かに素面で頭がほぼ廻っておらないが、酒を飲めば飲んだで、すぐ眠くなる。
どっちにコロンだって同じなのでよ。コロン。
コロンコロンコロン。そう言って、早くも!来た来た来た来たぁ~。
魂が。ひとりの魂がワレのところへと降りてきた。
来たか。さあそこに、お座んなさい。
ささ、そこの、布団の上でええさかいィ、お座りなさい。
いや、他のところに座るゆうたかて、他見なさい、見よ、座るところありゃしまへんやん。
せっまいせっまい我が家だす。だからぁ、おとなしくそこの臭い敷布団の上に我慢して座ってくださいよ。
いやいや、何を照れてるんですか、死者の分際で。いや軽蔑してるわけではなくって、死者はそんなこと構う必要もないほど尊い存在だと言ってるのです。
とにかく、今脳内であなたのエネルギーをわたしの言葉に変換しておりますから、それが面倒なので、直裁に喋っていただけますか。
一人の死者は、ちょっとのまァ、黙っておった。
しかしつと、声を発して話し始めた。
「わたくしの声が聴こえますでしょうか」
「はいはいはい。いい御声をしていらっしゃりますね。誰ですか?」
「はい。わたくしの声を聴いていただきまして、真にありがとうございます。わたくしが誰か、わたくしは、どうも・・・死者のようです」
「それはわかっています。あなたは尋常じゃない。あなたは透き通っているみたいに見える。またあなたの御声も、エコーがかかってるみたいに聴こえる。あなたは紛れもなく、死者でしょう。霊魂です。アストラル体です。たぶん。わたしの光の漏れを感知して、あなたがわたしに気づき、わたしに救いを求めてやってきた、そうですね?」
「はい。仰られるとおりでございます。わたしは死者であり、霊魂であり、アストラル体であるような気がします」
「よろしい。あなたが求めていること、それはなんですか?わたしはあなたを救いだすためになら、どこまで疲弊してもあなたを決して恨みませんから御安心なされなね。あなたはわたしの愛に、今、包まれております」
「ありがたいお言葉」
「言葉だけやありません。あなたを愛してるちゅうてますねん。これは、あなたにわたしから贈る愛念というものです。あなたがその愛念によって?わたしのところにきはったんとちゃいますんか」
「はい。きっとそうでしょう。わたくしはこれまで、どのような光をも見たことがありませんでした。もうここ、700年ほど彷徨っています。ここはとても暗く、さびしくてたまらない場所です。あなたの光は、ほんとうにあたたかい光で、わたくしを照らしてくださいました」
「そんなに長く・・・あなたは死ぬ前、どのような御人だったのですか。そこに、あなたの求めるすべてが隠されていましょうな。教えてください。おつらいかわかりまへんが、想いだしてください」
「はい。わたくしはいつでも、忘れた日がございません。今から七百年も昔、わたくしは一人の農夫でございました」
「日本のですか?」
「はい。わたくしはあなたと同じ日本人でした。そして一人の男やもめでありました。わたくしの嫁は娘を産み落としてすぐに死んでしまったのです。わたくしは一人で娘を育てて参りましたが、娘が七つのときに、床に臥し、そのままあっけなく娘を置いて死んでしまいました。娘のことが気懸りで、何も見えない闇のなかに、わたくしは娘をさがしだそうと試みました。するとわたくしと娘が住んでいた家が見えてまいりました。わたくしは家のなかに入りました。何一つ変わっていない家のなかに、娘の姿はありませんでした。今度は外を探そうとしました。しかし外が、ありませんでした。外は真っ暗で、わたくしには家と、そのなかしか見えなかったのです。それから七百年あまり、わたくしは娘を探しつづけてきました。そしてあなたの透き間から漏れ入るような光を見つけたのです。わたくしがあなたの光に近づくと、わたくしはあなたの光に取り囲まれ、あなたの姿が見えました。あなたはわたくしを呼んでいるようなそんな気がいたしました。あなたに近づき、声をかけました。あなたはわたくしの声に、返事をしてくださいました」
「なるほど、愛する娘さんにもう一度会いたいと、その未練からずっとそこにいるのですね」
「はい。娘にもう一度、わたくしの呼び名を、呼んでもらいたいのです」
「わかりました。わたしが、あなたの娘さんを探しに行きます。場所を教えてください。あなたのおうちのあった場所です。わたしがこれから、そこへ肉体も引き連れて向かいますから」
「わたくしの家は、あなたとわたくしの下に、ありました」
「下?下とは、どこですか?」
「はい。下とは、地下のことです。昔より土壌がだいぶ上がっているため、わたくしの家が、ここの地下の部分にあったのです」
「ということは、あなたの住んでいたおうちはわたしの住んでいるこの家の下に埋もれているわけですか?」
「いや、たぶん家そのものは壊されてもうないでしょう。位置的にちょうどここの下だったということです」
「なんたる御縁でありましょう。あなたとの深い御縁があって、わたしはあなたを招いたのでありましょうな。わたしはそれでは今から、早速あなたのおうちへと入ってみたいと想います」
「御願い致します」
「ええっとぉ、ここはどこや、土間ですかな、けっこう暗いな、しかし700年前に土間のある家はあったんですか」
「土間は確かにありました。700年前というのはわたしの感覚での期間なので、正確ではないでしょう」
「なるほど、多分もう少し最近かもしれませんね」
「そうかもしれません」
「竈(かまど)みたいなものもありますね。だんだん見えてきました。これは何かな、あ、米びつですね、米がなかに入っています。赤っぽい漆塗りのお櫃(ひつ)がありますね。なかにご飯が入っています。あったかいな・・・。誰か奥にいるのかな。餅臼もあります。洗濯板の入った盥(たらい)もあります。戸の近くには草履と草鞋(わらじ)が小さいのと大きいの二つずつ並んでいます。ではこれから部屋のなかへ上がってみますね。卓の傍に角火鉢があります。火箸が一本だけ折れていて短いです。角行灯に明かりが灯っているのですが・・・部屋のなかには誰もいはりませんね。青い桔梗の絵が描いてある湯呑み・・・。あっ、日本人形・・・赤い着物着て、半月型の赤い櫛が側にあります。そうそう、この櫛でこうやって、よくこの人形の髪の毛を梳(と)いてあげていたのです。懐かしいな・・・」

どれくらい梳いていたのだろう・・・?あれ?おとーたん、おとーたんがおらん、どこ行ったんやろ・・・?もう日が暮れて、おそとは暗い。
わたしはおとーたんをさがしにおそとへでる。
あのいつもの池で釣りでもしてるんやろか?
わたしはひとりで行ってはいけないとおとーたんに言われていた池に向かって走る。
でも池の周りにも、おとーたんはいない。
なんでおらんのやろ・・・わたしは泣きそうになりながら池のなかに足をつけてみる。
水のなかから、おとーたんが呼んでいるような気がする。
水は着物のなかに入ってきて重たくなってくる。
おとーたんが、わたしを呼ぶ声が聴こえる。
「子末(こずえ)」と何遍も呼んでいる。
濁った沼池の水底(みなそこ)から・・・・・・
わたしはおとーたんと再会するため、暗い沼底へと泳いでゆく。