肌寒くなってきたマンハッタンの街角。最近目立つのは「ユニクロ」と大きく書かれた買い物袋を抱えた人々だ。同社のニューヨーク五番街店が開店して約2週間。カタカナのロゴはすっかり街になじんできた。さて、気になるのはユニクロ製品の値段だ。円相場は連日最高値を更新し、1ドル75円台に。日本からみると海外製品は割安になるはずだが、日本企業が米国で売る製品価格はどうだろうか。五番街店でも人気のヒートテックやダウンジャケットの値段を日本での値段と比べてみた。結果にはうならされる。まずヒートテック。男性ものの長袖は定価が19ドル90セント、1ドル75.60円で計算すると1,505円で日本での値段、1,500円とほぼぴったり。軽量のダウンタウン・ジャケットは定価が79ドル50セント(6,010円)で日本の同じ製品は5,990円でほとんどかわらない。
円高是正を声高に叫ぶ企業も多いが、ユニクロの製品価格を基準にする「ユニクロ指数」でみる限り、今のドル円相場は釣り合っているともいえる。各国で売られる同じ製品の価格をもとに、ある国の為替相場が割安か割高かをみる手法には、英エコノミスト誌が算出する「ビックマック指数」がある。こちらでも円相場はほぼ適正水準である。
このようにみると、異常な円高にみえる現在の円相場も世界の物価水準からみる限り適正水準なのかもしれない。最も日本の多くの企業はユニクロほど海外生産が進んでいるわけではないし、産業界の円高懸念を無視できないのも実情だろう。しかし世界の通貨の中で最も安全資産といわれる「円」は今後も買われる可能性が高いのではないか。日本の産業界も恒常的な円高に対応する企業戦略を打ち出すべき時代ではないだろうか。この対応の是非が企業の将来を左右するといっても過言ではあるまい。成長株投資が株式投資の本来の姿とすれば「円高を味方につける」企業を選別投資すべき時代なのかもしれない。