「明日では遅すぎる」1955年(昭和 30年)ごろのピア・アンジェリ主演の、米青春映画が懐かしく思い出される。
今、欧米企業で「BRICS(ブリックス)ではもう遅い。」が合言葉になりつつある。注目されているのは、「BOP」(ボトム・オブ・ピラミッド)ビジネスだ。「経済のピラミッドの最下位に位置づけられる貧困層は、もはや援助の対象だけではなく新消費者であり、先進国はビジネスを通じてその所得や生活環境を向上させるべきだ」ミシガン大学 C・Kプラハード教授が2007年に提唱。明確な基準はないが「世界資源研究所」と「国際金融公社」は、一人当たりの年間所得が購買力平価ベースで、3,000ドル以下の世帯と定義。対象は40億人(アジア、アフリカ、中東、中南米など)で市場規模は5兆ドルと試算している。
収益性と社会的貢献が両立できるビジネスモデルとして「CSR」(企業の社会的責任)の意識が高い欧米、日本企業を中心に取り組みが広がりつつある。例えば「マンダム」(男性用化粧品メーカー)はインドネシアで整髪料「ギャッピー」の小袋を1袋300ルピアで販売、日本円にしてわずか3円だ。それでも中身は日本と同じ。ただし容量はわずか8gだ。これが年間3億袋も売れてしまう。「おばちゃん、これ一つちょうだい。」「あら、お洒落しちゃって。今日はデートかし?」インドネシアの地方都市の街角でこんな光景がよく見られるそうだ。若い男性が手を伸ばすのは「ギャッピー」の小袋。一見魅力的でないこの市場でマンダムは連結売上高の2割を稼ぐ。マンダム・インドネシアの2008年の売上高は約124億円と10年前の3倍以上。営業利益率も14%。頭打ちの国内販売を横目に成長を牽引する柱に育った。
ほかにも、資生堂、キリンHDG、タカラトミー、王将、スズキなど、低価格戦略を展開し、この膨大な「BOP」マーケットをターゲットにする企業が急速に増加している。
まさに「明日では遅すぎる」だ。