テアトル十瑠

1920年代のサイレント映画から21世紀の最新映像まで、僕の映画備忘録。そして日々の雑感も。

キッド

2006-08-10 | コメディ
(1921/チャールズ・チャップリン監督・製作・脚本・音楽/チャールズ・チャップリン、ジャッキー・クーガン、エドナ・パーヴィアンス、ヘンリー・バーグマン/50分)


 ちょっと前に観ていたんだけど、すぐに続けて「黄金狂時代」を観たためにそちらを先に記事にした。上映時間50分ですから、また観ちゃいました。
 「モダン・タイムス」から書き始めたチャップリン映画は、段々と旧い方に遡っていて、今回の「キッド」は最初に手がけた長編映画とのことであります。

*

 男と別れた女優の卵。赤ん坊が生まれたものの育てることが出来ないと、お金持ちの車のリアシートに赤ん坊を置き去りにする。つまり、捨て子ですな。
 ところが、この車を泥棒が盗んだものだから大変。
 ココまで来れば安心と車を止めた泥棒は赤ん坊に気がつき、路地端に置き去りにする。たまたま通りかかったチャーリーは何事かと赤ん坊を拾うが、そこにお巡りさんがやって来て、元に戻そうにもソレはチャーリーが捨て子をしているようにしか見えない為に、やむなくチャーリーはボロ家に連れ帰ることになる。ここまでがプロローグです。

 そして、5年後。
 可愛らしい男の子になっている赤ん坊。チャーリーはその子をジョンと呼んでいて、貧しいながらも大事に扱っている。仕事は、というとガラスの職人です。
 ジョンが小石を投げて民家の窓ガラスを割る。そこへ偶然通りかかったようにして、ガラスを抱えたガラス修理屋のチャーリーがやって来て、修理を請け負うという具合。 
 犯罪ですね。

 次の家を狙って石を投げようとジョンが拳を振り上げると、後ろにはお巡りさんが立っていたというシーンのジョンのリアクションが5歳の子供に思えないほど上手い! (そしてこのジャッキー君、女の子のように可愛い!)

 5年前、赤ん坊を置いて走り去ったお母さんは、今は売れっ子のスターになっている。慈善事業にも力を入れていて、チャーリー達が住む街にもやって来ては、子供にお菓子をあげたり施しを行っている。
 チャーリーのアパートの前で、通りがかりの主婦の赤ん坊を抱えて我が子を思い出しているところに、ジョンがドアを開けて出てくる。実の親子が、お互いにソレと知らずに対面するシーンであります。しかもお母さんは我が子を想いながらという設定ですから、人情劇としては最高のシーンですな。

 その後、ジョンが病気になり、やって来た医師のお節介で養護施設に連れていかれそうになり・・・、という展開になります。
 勿論、最後は実の親子が巡り会うわけですが、「街の灯」ほどの感動の再会シーンには出来なかったようです。意外とあっさり。

 終盤でジョンを見失ったチャーリーが探し疲れてアパートの前に座り込み、自分やジョンが天使になる夢を見ているシーンが意味不明との記事を色々なブログで見ました。ストーリー的な解釈は私にも出来ていませんが、その前のシーンとラストの再会シーンの間にもう一つシーンが必要だろうとは解釈できます。そうしないと、今の出来上がりよりもっとあっさりした終盤になっただろう事は容易に理解できます。
 それと、この天使のシーンではワイヤーアクションが見られます。85年前です。

・お薦め度【★★★★★=大いに見るべし!】 テアトル十瑠

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6 コメント

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足ばらいのシーン (anupam)
2006-08-10 17:32:26
チャップリンが警官にばれないように、無邪気に寄って来るジョンを何気に足で押しやるシーンがめちゃ笑えました。体はまっすぐ前進しているんだけど、足だけが、違う方向ににょきっとのびて・・



あとふたりでパンケーキを食べるシーン。淀長さんが「このシーンではお腹の減った子供が一生懸命食べる様子を撮りたくて何度も何度も撮影したらしい」と書いていらしたのを見ました。



好きなチャップリン映画は「モダンタイムス」の次がこの「キッド」もしくは「街の灯」・・になるかも



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食事のシーン (十瑠)
2006-08-10 21:22:09
チャップリンは食べること、働くこと、愛することを必ず表現していたと淀川さんが仰られていたと記憶しています。

パンケーキのシーンでは、ナイフを使ってシロップを食べ続けるジョンに、ナイフの刃の方は危ないからねと注意しているシーンもありましたね。



私は「街の灯」と「黄金狂時代」が双璧です、今のところ。この後、「ライムライト」が何処まで食い込むかですね。これ未見のままなんです。

あと、「巴里の女性」というチャップリンが出ないメロドラマがあるそうで、これも見たい映画です。
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ハッピーエンド (まいじょ)
2007-10-19 09:22:33
チャップリンが、母親と実の子が暮らす瀟洒な家に招じ入れられるところで映画は終わります。幸せになってね、と思います。

キッド役のジャッキー・クーガンは、この映画のヒットで超人気スターとなりますが、天才子役によくある話のとおり、堕落した母親やマネジャーに稼いだ金をとられたり、決して幸せな子供ではなかったようです。
http://d.hatena.ne.jp/sugiee/20060106
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クーガン法 (十瑠)
2007-10-19 20:13:54
子供が親を訴える。
クーガン法って聞いたことがありましたが、ジャッキー君が発端だったんですネェ。

50分の53倍だと44時間になります。凄いフィルム量ですね。
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本当に女の子みたい (宵乃)
2012-12-26 13:09:13
でしたよね~。映画を観ている間、本気で「この子、女の子?」と思ってました。後で男の子だと知り、しかもオジサンになってからの画像も見てビックリしちゃいましたよ(笑)

ラストの父子の再会より、途中の父子の再会や気付かない母子の再会の方がグッとくるのは、どういう狙いがあったんでしょう。あの後もいろいろ問題がありそうだから、あんまりハッピーエンドらしく盛り上げると嘘くさくなるから?
これはいつか再見したい作品です。
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幸せな時間 (十瑠)
2012-12-27 13:51:16
>ラストの父子の再会より、途中の父子の再会や気付かない母子の再会の方がグッとくるのは、どういう狙いがあったんでしょう。

狙いというよりは、映画を観る人って、こういうシーンが好きなんじゃないですか?
“狙い”という感覚じゃないんでしょう、作る方も。自然とこういうシーンが面白いって分かるんじゃないでしょうか。これが分からない人の作る映画って・・・つまらないですよ。

今、リメイクするとしたら、ラストの母子の再会は直接見せずに、そうなるだろう事を予感させながら終えるのではないかと思います。
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