テアトル十瑠

1920年代のサイレント映画から21世紀の最新映像まで、僕の映画備忘録。そして日々の雑感も。

グレゴリー・ペックに「ありがとう」

2003-06-14 | [コラム]
 グレゴリー・ペックが亡くなった。87歳。

 テレビ「日曜洋画劇場」等で、洋画を見るようになって、最初に好きになった俳優がペックだった。理想の父親像的な憧れがあった(ちなみに、最初のご贔屓<ひいき>女優はデボラ・カーだ)。

 「世界を彼の腕に(1952)」や「白鯨(1956)」を最初に見たので、海の男の印象が強かったが、「大いなる西部(1958)」で東部からテキサスにやって来た、大牧場の娘の婚約者も船乗りだった。娘に横恋慕する牧童頭のチャールトン・ヘストンが、一人で馬で出かけようとするペックに向かって、『テキサスは広いから、迷子になるなよ』と馬鹿にした態度をとる。しかし、大海原は桁違いに広い。『これがあるから』と上着のポケットからコンパスを見せるのが痛快だった。

 父親役の印象が強いのは、「子鹿物語(1947)」「アラバマ物語(1962)」のせいだろう。「友情ある説得(1956)」のゲイリー・クーパーも素晴らしかったが、クーパーは父親より夫としての存在感が強い。ペックは「恐怖の岬(1962)」の弁護士でも、自分を逆恨みする犯罪者ロバート・ミッチャムから妻と娘を守る、強い家長の役であった。91年にリメイクされた「ケープ・フィアー」にも警部役で出ていたのがうれしかった。

 大学では医学部に進んでいたという。初期の作品、ヒッチコックの「白い恐怖(1945)」では医者の役であった。3年の時に役者の道に入る。大根といわれていた。朴訥(ぼくとつ)な人物を演じるのが様になっているのは、そのせいか。

 「ローマの休日(1953)」では、その朴訥さが誠実な人間性をも感じさせ、ラストのヘプバーンとの別れを切なくさせている。ニューシネマ以降、SEX描写はあたりまえであるが、ペックのような人が数十年遅く生まれていたら、そんなシーンをどう演じただろう。誰かが言ってた。『見ず知らずの女性を一晩自宅に泊めて、何もなかったと信じさせる男優は、ペックぐらいしか思いつかない。

 「白昼の決闘(1946)」「頭上の敵機(1949)」「キリマンジャロの雪(1952)」「渚にて(1959)」「ナバロンの要塞(1961)」「レッド・ムーン(1968)」……思い出の作品は多い。

 ご冥福を祈るばかりである。そして、ありがとう。
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5 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
西部開拓史 (東京画質じじい)
2008-02-14 12:43:24
ペックの作品で「ローマの休日」と「西部開拓史」が気に入っています。後者ではレイノルズの金鉱の遺産を狙おうと接近したところ残念ながら掘り尽くされたことが分かり去って行くものの、船上でレイノルズ唄う「牧場の我が家」をカードを中断してでも、の懐かしい再会にこちらもときめきます。あの映画では一番の役得ではないでしょうか。この人には男の華があるのでしょう。ア ウェイ ア ウェイ カム アウェイ・・・。





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西部開拓史 (十瑠)
2008-02-14 23:15:57
観たかどうかも覚えていない作品です。

レイノルズって、デビーちゃんの事かなぁと映画サイトを見に行ったら、当たってましたが、そんなことよりも、そのサイトの情報では、出演者のトップがカール・マルデンだったこと。(笑)

IMdbでは、キャロル・ベイカーがトップでした。^^
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なぞ (東京画質じじい)
2008-02-14 23:40:18
「西部開拓史」(S39年?公開)はスーパー・シネラマの湾曲大スクリーンの映画ですからもはや国内では上映は不可能です。キャストの順番はアルファベット順でもなく出番順でもなくギャラ順でもなく謎です。
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すっかり・・・ (viva jiji)
2008-02-27 13:06:46
遅くなってしまいまして、ごめんなさ~い!

何年前?5年前の十瑠さんの記事なのね~♪
年輪ですわね~。(尊敬のまなざし~)

ハード大根=チャールトン・ヘストン

ソフト大根=グレゴリー・ペック^^

無口な代表、クーパー

口から生まれた、スチュワート^^

その辺、ほどよくしゃべる、ペック、

かな?(笑)

脊髄の損傷で兵役免除になり、あの頃の
ハリウッドでは男優不足で
彼は、次から次へ有名女優共演依頼で
引く手あまた・・・だったんですって。
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なるほど (十瑠)
2008-02-27 14:23:29
羨ましいほど、あまたの美人女優と共演しているペックさん。兵役免除という裏事情があったんですね。

5年前に書いたこの記事は、備忘録ではなく、ある投稿サイトにて取り上げられた文章を、残しておいたものでした。
独り言にしちゃあ、ちょっと気取ってますもんね。^^

旧い男優さん達には、TVで見た子供の時の思い出も絡むので、懐かし~くなります。
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