テアトル十瑠

1920年代のサイレント映画から21世紀の最新映像まで、僕の映画備忘録。そして日々の雑感も。

あこがれ

2006-11-02 | 青春もの
(1958/フランソワ・トリュフォー監督・脚本/ベルナデット・ラフォン、ジェラール・ブラン/18分)


 トリュフォー26歳の時の短編映画。「allcinema-ONLINE」では26分と紹介されているが、今回放送のNHKデータでは上映時間は18分。削られた(?)8分間は何処へいったのでしょうか?
 冒頭にはちゃんとクレジットが付いているし、こういう作品って商業的にはどういう風に公開されたんでしょうかね。3本立てとかの併映ですかな?

 原題は【LES MISTONS】。フランス語は分かりませんが、少年達に対して大人が「悪童め!」とののしる場面があり、その時『ミストン』と発音していたので、“悪童=わるそう坊主”というような意味なんでしょう。

 5人の腕白盛りの少年達のあこがれは年上のお姉さんベルナデット。女体にも、男女のキスにも興味津々な彼らは、大人の魅力たっぷりの彼女が自転車を駆って、スカートを翻しながら太ももも露わに走るのをあこがれの眼差しで追いかけた。夏の陽射しを避けるように、木立の中を颯爽と走り抜けるベルナデット。自転車を木陰に立てかけ川に降りる。少年達はそっと自転車に近づく。サドルには彼女の温もりがあり、顔を近づけると疼くような匂いがした。

 ベルナデットには余所の町からやって来る体育教師の彼氏がおり、大人の男に嫉妬した少年達は街中に悪戯書きをしたり、二人を追って映画館や森へ出かけては、からかったりした。テニスに興じる彼女の肢体も眩しいくらいだった。

 登山に出発する彼氏は、帰ってくる三ヶ月後には結婚しようと言う。これはチャンスだと、少年達は淫らな写真の付いた絵ハガキを彼女の家に送りつける。子供の些細な悪戯のつもりだったが、それは彼ら自身の思い出に傷を付ける結果となるのだった・・・。

▼(ネタバレ注意)
 絵はがきを投函した後、新聞に山の遭難事故のニュースが載る。それはベルナデットの彼氏が巻き込まれた事故であり、新聞は彼の死亡を伝えていた。

 悪童達は新聞報道の事はすぐに忘れたが、数ヶ月後に街でベルナデットを見た時に心にチクリとするものを感じた。哀しげな彼女は黒い喪服に身を包んでいた。
▲(解除)

 全体的にはスケッチ風の描写だが、冒頭のクレジットのバックから流れるベルナデットが自転車を走らせるシーンは、映画ならではの美しいモノで、ショットの繋がりも画面構成も既に完成の域に達しているようでした。
 オカピーさんの記事によると、トリュフォーの茶目っ気がアチコチで発揮されているようで、少年達がテニスコートに水やりをする老人をからかうシーンはサイレント映画のような編集だし、ギャングごっこのようなシーンでは逆回しも使っているようでした。

 ベルナデット・ラフォンのテニスウェアは色っぽかったなあ。半世紀前の映画なのにシャラポア並の露出度で、凸凹がシャラポアより激しいので、悪童ならずともウットリしそうでしたな。
 翌年の「二重の鍵」でも健康的なお色気を発揮して、72年のトリュフォー作「私のように美しい娘」では毒気とおエロ気ムンムンの演技派に成長しておりました。

 恋人役のジェラール・ブラン。何処かで見た顔だなと思ったら、「ハタリ!(1961)」でした。





・お薦め度【★★★=一度は見ましょう】 テアトル十瑠

コメント (2)    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« 黒衣の花嫁 | トップ | 潮風とベーコンサンドとヘミ... »
最新の画像もっと見る

2 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
トリュフォー自身がカット (オカピー)
2006-11-02 14:26:28
拙い記事を紹介して戴き、面映いばかりです。そんなことならもう少し力作にするんだった(笑)。

私も詳しいことは知らないのですが、どうもトリュフォーはジェラール・ブランとそりが合わず、彼の出演場面をごっそり削ってしまったという話です。
その話が正しいとすると、17~18分版が正規版ということになるようです。

逆廻しなのに最後はきちんと銃を返すように見えます。凝っていますね。
返信する
情報ありがとうございます (十瑠)
2006-11-02 16:31:41
>逆廻しなのに最後はきちんと銃を返すように見えます。

そうですねぇ。ちょっと不思議な感じがしました。
お遊び感覚も面白かったです。
返信する

コメントを投稿

青春もの」カテゴリの最新記事