い・ち・に・ち

明日が今日になって昨日になるような毎日

百段

2020-10-07 | 階段
善人を気取って鏡を欺く
そこまでやって映した姿で
守ったものは何だろう

空っぽの宝石が
ガラスよりもろくて
反射する光さえ濁らせて
目の前を遮る

冷たい仮面で
溶け出す思いを隠しても
誤魔化しきれない熱さが
頬を伝う

九十九段

2020-10-06 | 階段
ひとつのモノが形を変えて
名前を変えて温度を変えて

選んだワケではなく
選ばれたワケでもなく

時のままに流れのままに
逆らわずに今を託して

悔やむことなく
恥じることなく

身構える柔らかさで
受け入れるたくましさで



九十八段

2020-10-05 | 階段
当たり前は無いのだと気付いた
目覚ましが鳴る前に目が覚めて
薄暗い部屋を見つめる
眼鏡をかけずに歩く廊下も眠ってる

少しひんやりした空気が夜明けを連れてくる
カーテンを開けて滲んだ空につぶやく
おはよう
今日も元気で

運んでくれる風は遥かに
心に開いた穴さえも通り抜けず
留まる寂しさを抱えたまま
今日も始まりはあなたを想う




九十七段

2020-10-04 | 階段
手のひらから零れ落ちた月の光も
遠い遠い空の向こうで輝くはず

星屑の道案内が進む先を教えてくれる
泣きじゃくる呼吸に合わせ一歩ずつ

慌てなくていいんだよ
闇夜を照らす声がする
見つめる満月の明りが
影を包んで透き通る

また明日
生まれたばかりのまた明日

九十六段

2020-10-03 | 階段
昼を閉じ込める曇り空が
音を消す灰色の時間

早起きの休日を眠らせて
厚いカーテンを閉める

秋の色どりに着替えて
空の高さを見ようとした

思い出を辿るだけでは
寂しさは消えず

繰り返す君の言葉で
ほっこり温かな夜を待つ

九十五段

2020-10-02 | 階段
相手の言いたい事を知ろうとする時
その時だけのその場限りの
発する側の言い方も選んだ言葉も
受け止めた未熟者の感情が濁し
お互いの表情が裏側を読み取ろうとして
すれ違いの苦みが生じる

読書感想文の課題のように
模範解答の例文はなく
作者の言いたい事を
ひとつの正解でまとめるには
今までの知識と知恵と教えを
総動員しても無理な話で

ならばと開き直って
直感とインスピレーションを信じ
やんわりと相手の気持ちを探る
多少なりとも己を隠し
表面をなだらかにし続ける
そこに本当の現実がある限り

九十四段

2020-10-01 | 階段
本音を隠したタテマエが笑う
見せたくない本音と
見せてもいいタテマエが手を組む
生きるための手段だとしても
自分を守る臆病な手だとしても
多かれ少なかれの基準の中
世の中を相手にしなくてはならない

二十年の大人の境界線を踏む前に
少人数の生き物に囲まれ
愛され慈しみ揉まれ傷つき
喜怒哀楽を制限されつつも
独り立ちを背負って前に進む
後戻りの道は掟に閉ざされ
続く明日は自分で見つける

九十三段

2020-09-30 | 階段
晴れやかな空からもらう元気
リセットされた活力が
清々しさを運んでくる

しかめっ面の悩みを捨てて
変わらない後悔を忘れて
涙はぎゅっと絞り出す

風を包んで乾いた心の
熱い吐息がしわを伸ばす
はためく白さに感謝して

もう一度顔を上げたなら
満面の笑みの雲たちが
あの面影を映し出す






九十二段

2020-09-29 | 階段
本当はただの臆病者で
挨拶の端っこのような言葉を
ぐるっと見回してあれこれ考える

次々と変わる会話に相づちを打っても
破れそうな心が鈍い音を鳴らす

違うセリフが押し寄せて
聖徳太子を崇めるように
真っ直ぐな姿勢のまま
頭の中に封じ込めた

かみ砕いた言葉の中から出た答え
先入観と疑惑を取り除け

九十一段

2020-09-28 | 階段
これからの事
たった十分でさえ分からないけど
気にも留めず考えもせず
一日の終わりに思い返すこともなく
消し去ってしまう時間が多すぎて

今を生きる感覚をどうやって知ろうか
押しつぶされ踏みつけられても
塗り固められた土台の隙間を見つけ
根を張り葉を出す雑草の呼吸が揺れる
しなやかにしたたかに大地を彩る