特待生と野球留学

「特待生」、「野球留学」、「アマチュアリズム」に焦点を絞って展開します。

明桜(←秋田経法大付)

2007年05月03日 | 高校別

「裏金」事件に際して、同校の校長先生は次のように謝罪しています。

徹底的に再発防止に取り組む/明桜高校
(朝日新聞秋田版 2007年04月21日)
会見で嶋田校長は「高校野球全体に迷惑をかけた。心からおわびしたい」と謝罪。その上で「金銭のやりとりに関し、指導者に徹底した態度を取るよう求め、再発防止に取り組んでいきたい」と話した。

さて、この校長先生、さすがに今回は謝罪の言葉はなかったようです。誰もが恭順の意を示すわけではありません。

特待生制度明桜高「奨学生」が抵触校長「見直し」も高野連に不満げ
(2007年5月3日  読売新聞秋田版)
 嶋田校長によると、同校の奨学生制度は1990年4月に始まった。学業のほか、「特別活動」のスポーツ、文化などで「人物優秀、品行方正」な生徒を対象とし、認められると、入学金(約15万円)、施設費と授業料(年間計約39万円)の全額と、実験実習費の半額(同約2万円)が免除される。奨学生入試は一般入試とは別に行い、筆記や面接などで選考してきた。
 奨学生は現在の1~3年生で60人おり、うち野球部員は25人。制度導入以降の対象者は「集計しておらず分からない」としている。
 同校は当初、同制度が同憲章で禁じている特待生制度に当たらないとして、県高野連に「制度はない」と回答する予定だった。しかし、日本高野連が1日に同校から制度の資料を取り寄せ、「抵触する」と判断。同校に2日朝、県高野連を通じて正式に連絡した。嶋田校長は、日本高野連から「特別活動で野球が必須となっており、学業優秀の基準が明確ではない」と指摘されたことを明かした。
 嶋田校長は記者会見で、「生徒には何も罪はない」と奨学生をかばいながら、野球部員への奨学金は打ち切り、同制度の認定基準を見直す考えを表明した。
  一方で、「ほかの部活ならいいのかという問題になってくる。すべての高校スポーツ(のあり方)に一石を投じた」「学校は野球部に限った制度とはみていなかったが、連盟に反した行動をとれば除名される」などとも述べ、憲章自体の妥当性を問題視。「抵触」との判断に終始不満げな表情だった。

それはそうでしょう。就任したばかりで、前の「事件」の事後処理に追われ、またしても身に覚えのない「事件」に巻き込まれたのですから、それだけでも気の毒に思えてきます。まあ、相手は“宗教団体”なのですから、大学のようにはいきません。

全校60人の奨学生のうち25人が野球部員とのことです。野球部員に限って「人物優秀」で「品行方正」な生徒が多いとはとても思えませんが、2000人近い全校生徒数のうち60人なら、妥当な範囲でしょう。

いずれにせよ、誰を奨学生にするかは、一競技団体の指図を受けるようなことではありません。指図できると思うほうがおかしいのですが、高野連様は指図できると思ってらっしゃるのです。大学からやってきたばかりの校長先生には、とても彼らの思考回路は理解できないはずです。

「連盟に反した行動をとれば除名される」とは、よくぞそこまで言い切ったものだと思います。まず、奨学生なり特待生なりがどうあるべきかの議論があって、その積み重ねの上に、こういうルールに決まりましたから守ってくださいね、と言うならノーマルな団体です。

高野連様は違います。半世紀以上前にできて半ば死文化していた“経典”をいきなり振りかざして、これに違反する選手は出場停止だ、部長は解任だと騒いでいるわけです。こんな団体はさっさと消えてなくなればいいのです。

次のような記事も見つかりました。これでは、校長先生に謝罪の言葉がなかったのも無理のないことでしょう。

生徒に申し訳ない」東北の各校戸惑う 特待制度違反
(河北新報 2007年05月02日)
明桜高(秋田市)の嶋田耕也校長は「野球部員の中には学業優秀な生徒もいて、『学校を辞めなくてはいけない』と訴える生徒もいた」と涙声で話し、生徒に同情した。

「同情するなら、金をくれ」の世界になってきたと茶化してはいけないのですが、さて悪代官様はどうする?


日本文理

2007年05月03日 | 高校別

06年、新潟県勢初のセンバツ勝利(2勝)を果たした日本文理は、4月30日に日本高野連に申告、該当部員8人(3年3人、2年2人、1年3人)を除いて28日に始まった春季県大会に出場するようです。

高校野球:日本文理、特待生制度で校長謝罪 これまで野球部員30人前後 /新潟 (毎日新聞新潟版 2007年5月2日)
 違反と判断されたのは、野球部のほか柔道部、陸上部など県レベルで上位の部活に所属する生徒を対象にできた「特別奨学制度」。部活動活性化のため、96年から1学年10人程度に毎年、授業料相当分にあたる22万8000円を支給してきた。野球部員ではこれまでに30人前後が該当してきたという。
 調査結果が遅れたことについて長谷川校長は「(同校の)優遇措置は、規定の中に『野球部員対象』とは書いておらず、判断に苦しむところがあった。調査開始後、県高野連を通じるなどしてメモや口頭で判断を仰いできた」と話した。
 その結果、先月27日に違反と判断し、野球部長を解任。同29日の野球部父母会総会で保護者に説明した。「全員了解したと受け止めている」という。

高野連様とのやりとりの結果、「アウト」になったようですが、この内容ではいくらなんでも「セーフ」にはならないでしょう。まあ、それは高野連様の基準によるものであって、世間一般の基準とは別次元の話です。

やはり、一番怖いのは「全員了解したと受け止めている」です(ここから先は一般論です。日本文理のことではありませんので、念のため)。学校側と保護者側の関係では、学校側がそう受け止めただけでは意味はありません。保護者側がゴネた結果、それこそ「裏金」で処理されてしまうと、今よりもっと状況は悪くなります。


東洋大姫路

2007年05月02日 | 高校別

タイミングが悪かった?だけのことですが、春の兵庫県大会は準決勝進出4チームのうち、なんと3チームが出場を辞退する異常事態となりました。30日におこなわれた準々決勝の結果は次のとおりです。

市尼崎5-2明石
★神戸国際大付4-2報徳学園
★市川8-3市神港
★東洋大姫路1-0★神港学園

この8校のうち4校(★印)が5月1日に特待生を申告したようです。3日におこなわれる予定の準決勝は、市尼崎対神戸国際大付と市川対東洋大姫路のカードでした。規定どおりなら、市川に代わって市神港、神戸国際大付に代わって報徳が出場することになります。

東洋大姫路の代わりに出る権利を持つ神港学園が辞退すると、準々決勝で市川に負けた市神港はいきなり決勝戦で「復活」するわけです。

もし、報徳が続くようなら、もう1試合の準決勝も宙に浮くことになります。そうすると、3日はいきなり市尼崎対市神港による決勝戦になるのでしょうか? まさしく前代未聞にして空前絶後です。

スポーツ特待制度 私立4校が違反申告(神戸新聞 2007/05/01)
東洋大姫路は「学業優秀で部活動の実績がある」などの条件を満たす生徒を「給費奨学生」として選考。野球部員六十九人のうち十数人が授業料、入学金の免除を受けていた。

69人のうち10数人ですから出ようと思えば試合には出られますが、個人が特定されないように辞退を決めたようです。こんな混乱は予想できたことですが…。

【05/04追記】
神港学園も辞退して、ベスト8敗退の市神港は準決勝不戦勝で決勝進出しました。申告していない報徳学園は準決勝で市尼崎を降して、市神港との決勝に臨みます。→決勝は報徳VS市神港 春季県高校野球(神戸新聞 2007/05/04)


福知山成美

2007年05月02日 | 高校別

早くから取り沙汰されていましたが、27日になって正式に京都府高野連に特待生を申告したようです。

福知山成美も「特待生」、高野連に申告へ
(2007年4月24日  読売新聞)
 同高によると、スポーツ奨学生制度は野球部を含む運動部員、同好会会員を対象に、中学時の試合実績や入試成績、面接などに基づいて入学の際に奨学生を決定。授業料の全額か半額を免除する。入学の勧誘にも活用していたという。
 2005年に日本高野連が学費免除などの特待生待遇を禁じる通達を出したため、同高は通達違反の疑いがあるとして、野球部員については、今春の入学生から奨学生制度を理由にした勧誘や適用を取りやめた。
 今回、全国調査の実施に合わせて申告する方針を決め、過去にさかのぼって、奨学生制度を適用した野球部員数など実態を調べる。
 玉木正弘校長は「憲章の規定に対する疑問がないわけではないが、ルールはルール。誠実に受け止めて反省する」と話している。

通達は05年11月に出ています。この通達によって、自分のところの奨学生制度が憲章違反になることに気づいたのであれば、06年の入学生から対処すべきでしょう。なぜ1年のブランクが生じたのかという疑問が残ります。05年11月の段階では、すでに決まっていたから、なんてことでなければいいのですが…。

注目したいのは校長先生のコメントです。「憲章に対する疑問がないわけではない」はもっとおおらかに議論されるべきです。みんな本当はそう思っているはずなのです。「疑問がないわけではない」どころか本音は「疑問だらけ」でしょう。まあ、立場上これが限界でしょうが、どこかでこの議論がおこなわれないと、ご乱心の“殿”のなすがままになってしまいます。

さて、「ルールはルール」です。校長先生のおっしゃるとおりです。悪法も法です。それは真理です。

なだいなだ『権威と権力』岩波新書
法が新しい状況と向いあう時、立法の精神は常にためされていることになる。<略>悪法は法であってはならないのだ

半世紀以上前に定められた「学生野球憲章」は、もはや法であってはならない悪法です。この“経典”は、これまでもしばしば現実との軋轢を生じさせてきました。今回の特待生問題を奇貨にして、「生きた化石」を「本物の化石」に変質させなければなりません。

「毎朝5時に出勤(登校)せよ。遅刻は厳禁」という社内規定(校則)があったとします。電車も動いていない朝5時にどうやって通勤(通学)できるでしょうか? 「特待生はダメ」は私学にとって「朝5時に出社せよ」と同じことです。

ところで、福知山成美高校のWebサイトには「本校生徒専用HP」があります。もちろん私は本校生徒ではありませんが、ためしにクリックしてみたら、ちゃんと開きました。いいのでしょうか? まあ、その先に何かあるのかもしれませんが…。


常葉菊川

2007年05月01日 | 高校別

言わずと知れた今春のセンバツ優勝校です。4月28日から始まる県大会開幕前日に登録9選手を差し替えて、16校参加の静岡県大会に臨みました。

常葉菊川高:登録9選手を除外 特待生問題で春季県大会
(毎日新聞 2007年4月28日 3時00分)
同校は学業など総合的に優れた選手に対して授業料減免などの奨学金制度を設けており、同大会でベンチ入り登録した2、3年生20人のうち9人が奨学金を受けていた。

大会初日の1回戦では5対6で富士宮西に敗れたことが大きく報道されましたが、ここで問題になるのは、選手の入れ替えが憲章違反になるのかどうか判断しかねた末の苦肉の策だったということです。この時点では憲章違反であることが「確定」したのではなく、その疑いもあるからとりあえず辞退したということになります。

選抜優勝校の常葉菊川、県大会1回戦で敗れる 高校野球
(朝日新聞 2007年04月28日19時57分)
常葉菊川は大会前日の27日、野球部員を理由とした特待生制度に該当する可能性があるとして、登録メンバー20人のうち約半数を今大会の選手登録から外し、佐野心部長が退任。静岡県高野連によると、大会が迫る中で学校側の判断が固まらず、大会中の混乱を事前に防ぐために取られた措置で、県高野連への特待生制度の正式な申告はまだないという。

要は、(東海地区でも静岡県でも)高野連様が、違反なら違反である、そうでないならそうでない、とジャッジすればいいことです。もし、最終的に「セーフ」だったとしたら、何も悪くない選手個人が「あいつは特待生だ」というレッテルを貼られた事実だけが残ります。

今回の特待生問題は「教育の一環だから、金品を受け取るのはまかりならぬ」という高野連様の“教義”が発端です。こんなことを平然とやってのけるところに「教育」を語る資格などありません。


新川(富山)

2007年05月01日 | 高校別

知らない名前の高校のほうが興味をそそられます。「ウラ優勝校」のようなものです。愛知県立新川(しんかわ)高校ではなく、札幌新川(しんかわ)高校でもなく、富山県魚津市の荒井学園新川(にいかわ)高校でした。かつては日大の系列校だったようですので、まったく「知らない」わけではありませんが…。

春季大会の出場を辞退しています。06年夏は3回戦で高岡第一に6対7、05年夏は2回戦で水橋に4対10で敗れています。

特待生問題 7校が憲章違反(朝日新聞富山版 2007年05月02日)
 新川高校は、野球部を含むすべての部活動が対象の特待生制度を設けており、「入学金・授業料などの免除と奨学金の付与」から「入学金のみ免除」まで4段階あるという。
 中田幹雄教頭によると、29人の野球部員のうち多数が該当しており、これらの部員を除くと9人に満たないため、春の県大会辞退を決めた。中田教頭は「生徒のことを考えると本当に残念でしかたない」とした上で、「高野連の通達についてコメントは差し控えたい。ただ、私立高校の野球部関係者が思いを話せる機会を設けていただければ、と思う」と話した。

高野連様は単に一競技団体であるにすぎません。処分をふりかざして自らの“教義”を押しつける前に、私学関係者からのヒアリングをおこなうべきだったはずです。教頭先生のコメントは、この時点では精一杯のものでしょう。

今後も「私立高校の野球部関係者が思いを話せる機会」がないのだとすれば、きわめて深刻な事態に陥るはずです。これほどの“絶対専制君主”は、いまどきかなり珍しいのですが、このような形でその専横ぶりが白日のもとにさらされることは、“自爆”にしかつながらないことにまだお気づきではないようです。

高野連様が強硬姿勢をとればとるほど、結果的には自らの孤立を深めていくことになります。


日大明誠

2007年05月01日 | 高校別

97年春に甲子園出場を果たしている日大明誠は木田優夫の母校として有名ですが、この問題では素早く対応しています。

山梨・日大明誠高が報告へ、奨学金が憲章抵触の可能性
(2007年4月24日3時4分  読売新聞)
日大明誠高(山梨県上野原市)は、同高後援会の奨学金制度について、「野球部員を理由とした特待生制度ではないが、日本学生野球憲章に抵触する可能性がある」として山梨県高野連に報告する方針を固めた。野球部員1人が受給している。

結局、これは「憲章違反」との結論になりました。

奨学金は憲章抵触 日大明誠 高野連が見解
(産経新聞山梨版 2007/04/26 03:29)
県高野連によると、いかなる名義でも選手や野球部員であることを理由に奨学金など金品を受けることを禁じている憲章13条に抵触するという。5月1日までに文書で報告するよう同高に連絡した。同高の西島泰明野球部長は「憲章についてよく知らず、認識が甘かった。高野連の指示通りに報告したい」と述べた。

野球部の活動と学業との両立を理由に支給していた奨学金ですが、高野連様としてはNGであるとの見解を示したわけです。たしかにこれも「野球部員である」ことを理由とした金品の収受には違いありません。

ただ、「特待生制度はよろしくない」と考えている人の中にも、これぐらいは許容できると思う人のほうが多いのではないでしょうか。あまりにも杓子定規すぎるのではないかと思われます。結局、ここでも野球と学業の両立はNG、他の競技と学業の両立はOKということになってしまいます。

まあ、「認識が甘かった」のは事実でしょう。高野連様の教義に照らすと「アウト」だろうと私も判断していましたから…。所詮は理解不能な理屈をこね回す“宗教”団体なのですから、一般常識では判断できません。

ところで、先の読売の記事では、奨学金を受けていたのは現役部員のように読めますが、地元紙では次のように報道されています。

日大明誠も違反申告 特待制度で高野連発表 県勢は航空に続いて2校目
(山梨日日新聞 2007年04月28日)
日大明誠は昨年度、野球部員1人が同校後援会による奨学金制度の適用を受けていた。

昨年度のことまで報告対象になるのなら、今年度から(絶妙のタイミングで)やめたらしいPL学園にも報告義務はあるでしょう。はたして、どこまでさかのぼるのでしょうか? なにしろ、田名部氏は「学生野球憲章に時効はない」とおっしゃっているのです。→プロ野球:現金供与 処分対象は「覚書以後」--高野連参事が見解(毎日新聞 2007年4月12日 東京朝刊)

50年さかのぼれば、立大時代のミスターが南海ホークスからもらっていた「栄養費」もアウトのはずです。


山梨学院大付

2007年04月30日 | 高校別

4月28日の春季山梨県大会3回戦で甲府城西を破ってベスト8に進出したばかりですが、翌29日になって出場を辞退しました。実は、高野連様は25日に次のような内容の通知を各都道府県高野連に出しています。

特待制度問題:学生野球 高野連が「補足説明」 初日申告2校、試合処遇でも指針
(毎日新聞 2007年4月26日 東京朝刊)
日本高野連は同日、出場辞退があった場合の取り扱い方針についても各都道府県高野連に通知した。24日の日本学生野球協会緊急常務理事会で(1)抽選会後は相手チームが不戦勝(2)試合後は辞退校の勝利を取り消し、相手校に勝利を与える--との方針が決まっていた。新たに、24日以前に終了した試合については敗退校を復活させず、以後の時点で出場辞退の申し出があれば、棄権扱いとし、前の試合にさかのぼることなく、当該試合の相手校を不戦勝とする。

この結果、28日に山梨学院大付に敗れた甲府城西が“敗者復活”を果たしたわけですが、山梨ではすでに8強に残っていた東海大甲府と日本航空も出場を辞退しています。この2校が8強を決めたのは24日以前なので、こちらの2校に負けた相手チームは“復活”できません。

そして、東海大甲府と日本航空は準々決勝で「特待生」対決をするはずだったのですが、両校とも出場を辞退した(させられた)ために、30日におこなわれた準々決勝第1試合で日大明誠に勝った市川は準決勝不戦勝で自動的に決勝に進み、2校枠の関東大会出場を決めました。

さて、山梨学院大付の場合、他校とはちょっと様相が異なります。

高校野球特待生、山梨学院も憲章違反 県高野連に申告、春季大会を辞退
(山梨日日新聞 2007年04月30日)
山梨学院高によると、野球部を除く全運動部員を対象に同校の定める基準に応じて入学金などを免除する体育特待生制度があり、野球部員には同制度を準用して入学金、授業料、寮費などを減免していた。野球部員五十人のうち三十七人が減免を受けていて、中には経済的理由を抱える生徒を援助する目的も含まれるという。

「制度を準用して」が曲者です。野球部員を含めると憲章違反になることがわかっていたものと思われます。このように闇に潜るケースはほかにもあるかもしれません(あると考えるのが自然です)。特待生はダメというのが無理な話であって、その横車を通そうとすれば、どこかでこういうことがおこなわれてしまうのです。それならいっそ、「ここまでは許す」と認めてしまうことのほうが建設的であり現実的です。


東海大三(長野)

2007年04月30日 | 高校別

武蔵工大二と同じ28日に、同日から始まった長野県大会南信地区予選の出場を辞退しています。

高校野球:特待制度問題 東海大三が申告 県大会地区予選、武蔵工大二も辞退 /長野
(毎日新聞長野版 2007年4月29日)
高校野球の特待制度問題で、東海大三(茅野市、高山勝裕校長)が28日、県高野連に同制度を実施していたことを申告。同日開幕した第116回春季北信越高校野球県大会南信地区予選出場を辞退した。

野球部は春2回、夏1回の甲子園出場があり、男女バスケ、女子バレー、サッカー、スピードスケートも全国レベルです。同校のWebサイトを見ながら、そういえば「部活体験入学」についてのお達しがあったはずだと思って、探してみたら見つかりました。
■山形県高野連>中学生体験入部について

特待生制度の内容については次のように報道されています。

高校野球:特待制度、武蔵工大二高も申告 校長「勉強不足」を謝罪 /長野
(毎日新聞長野版 2007年5月2日)
  同じく、特待制度によって地区予選出場を辞退した東海大三高(茅野市、高山勝裕校長)では、野球部などに入学金や授業料を一部免除する奨学金制度があり、同部では6人が対象となっていた。黒坂道生教頭は「『学業優秀』などの明確な基準がなく、県高野連に抵触していると判断された」と明かす。同校では部員たちは動揺を隠せない様子で、泣いた部員もいたという。「生徒を傷つけてしまった。申し訳ない」と黒坂教頭は話した。

東海大三の場合も武蔵工大二と同様に長野県高野連でNGが出ているようです。県高野連の判断と高野連様の本部の判断が本当に一致するのか、一抹の不安はありますが、この報道内容ではどのみち「アウト」でしょう。

さて、この記事ではより重要な問題が指摘されています。

(同)
 しかし、両校は日本高野連の通達に従い、学費の給付などを条件に入学した生徒の保護者から、給付停止の同意書を取り付けなければならない。両校は「真摯(しんし)に説明して保護者に理解していただけるようにしたい」としている。しかし、県内の高校野球関係者は「同意をとりつけるのは厄介だ。給付などを条件に入学させたのに『高野連がダメと言ったので』として解約するのには納得しないだろう。下手をすれば裁判を起こされるのでは」と指摘する。

私も真っ先にこの危惧を抱きました。もちろん内容にもよりますが、年度途中で解約するのは一般的には契約不履行です。契約の履行を求めて(あるいは損害賠償を求めて)訴訟を起こせば、まず生徒側が勝つでしょう。

判決に従って、学校側が契約を履行したり、損害賠償を支払う事態になったとき、高野連様は憲章違反で「アウト」を宣告するのでしょうか? まあ、訴訟を起こしても裁判所からは和解を勧められるでしょうが、和解は通常、金銭で解決するわけです。金銭で解決するのは高野連様的には「アウト」でしょうから、学校側は実に苦しい対応を迫られることになります。


武蔵工大二

2007年04月30日 | 高校別

4月28日に春季長野県大会中信地区予選の辞退を申し出て、受理されています。

春季高校野球 武蔵工大二が特待制度で出場辞退
(信濃毎日新聞 4月28日)
同校の河西靖男校長によると、同校は野球、サッカー、空手の各部に限り、「スポーツ推薦」制度を設けている。中学時代に「県大会以上出場選手あるいは、それと同等の技能」の要件を満たした入部希望者が対象で、入学試験は面接のみ。学校案内には「スポーツと学業を両立できる生徒に適用する」との基準も明記しており、中学校長の推薦も必要となる。

出場辞退が先になっていますが、県高野連への正式な申告は5月1日です。

高校野球:特待制度、武蔵工大二高も申告 校長「勉強不足」を謝罪 /長野
(毎日新聞長野版 2007年5月2日)
 「学校の勉強不足で生徒、保護者に迷惑をかけました。申し訳ございません」。河西校長はこう述べると、深々と頭を下げた。河西校長によると、野球部では入学金や授業料が免除される特待生が毎年3、4人入学しており、部員46人中15人が特待生で「これまで憲章に触れるという意識では行っていなかった」(河西校長)という。
 しかし、県高野連は「抵触する」と判断した。桜井政男部長は「部員には動揺はなかった。練習に励んでいる姿を見て、生徒を傷つけてはいけないと思った」と涙声で語った。

制度の詳細について、これ以上はわかりません。学校側は「両立が条件」だから憲章違反ではないと考えていたようですが、(長野県)高野連様は「両立が条件」であるなら「野球部に所属することを理由にする特待生」でありNGとなるとの判断を下したようです。46人中15人ですから、辞退しなくても参加できたわけですが…。

武蔵工大二は、武蔵工大付属信州工だった2000年秋、県大会で準優勝して「21世紀枠」最初の県推薦校になっています。当時から特待生はあったはずです。もし、これほどまでに特待生がよろしくないのであれば、選んだ側の責任も問われてしかるべきです。選んだ側とは、NGであると判断した県高野連様です。はい。

90年ドラフトで8球団から指名を受けた小池秀郎がOBです。小池も愛知県からの野球留学組です(もっとも愛知と長野は隣接していますので、高野連様の定義による野球留学にはなりません)が、当時を含めて甲子園出場はありません。