悪魔と踊ろう

犯人は警察幹部の親類だった。身内をかばう獣道で、犯人を割り出した警察官は、ミミズのように蒸し込まれた。ここは日本か?  

夜叉

2014年09月14日 13時24分22秒 | 荒雑録
                   夜  叉


 畑のド真ん中。
360度どちらを見てもフラットで、よく見える。

あと1キロメートル位で、モーテルがある地点。
ゆるい左カーブにさしかかる手前に、電柱が一本。昨日までは立っていた。 

その電柱が、根本から見事に折れ~車の上に~のしかかる様に倒れていた。
車は運転席を中心に「くの字」に折れ曲がり、中に人が三人。・・~酒臭がする。

運転手は、ハンドルと車のボデーに挟まれ頭から大量の出血。・・意識がない。
助手席の女は、男の体に乗っかる様になり、意味不明の言葉をわめいている。

これだけ元気なら軽傷だ。

もう一人、後部座席の男は、ものの見事にガラスを突き破り、
上半身が車から飛び出していた。

・・・・・・たぶん即死だ。

 見覚えのある顔。
前科はないが以前、盗人で調査した事がある。

 午前3時、飲酒運転・スピードの出し過ぎでカーブを回り切れず側面から電柱に衝突。
2人死亡(男)・女は軽傷。 

すでに警察組織にイヤケがさしている私には、交通事故処理は、どうでもよかった。 
~どうせ警察の事故処理は“飲酒運転・死亡事故”で終わりだ。


ただ、いくら飲酒運転でも現場にスリップ痕が無いのと、盗人の「死に顔」が気になった。

 習性的に、知り合いのホステスにアタリを付けて聞き込んだところ、
軽傷の女は、酒に酔うとエッチをしたがるらしい。

いい話になるまでは、色気のある可愛い女だが、
ある時点で突然に豹変し、男が運転する車の助手席で、ヒステリックにワメキながら        
     「死にたい~・・・」と、大声をあげ、

男が握るハンドルを両手で押し上げる魔性の女らしい。


 これまでに、あやうく命拾いしたエッチな野郎が、
後日~眼をむき出して、焼酎に酔いながら話したらしい。

女は九州から流れてきた独り者。・・・・ワケありの女らしい。

      女の氏素性なんかどうでもイイ。
       面白おかしく飲んだ後、一発できたら最高の女さ・・・

       漁場の出会いは、陸(おか)の上~カツオ船に乗れば~それまでじゃぁ~
       船に乗り込んだら半年ぐらいは海の上じゃ~どうでもエエぞ!


無免許でも、平気で新車を買う漁場気質で酒を飲み始めた。
      ~車はガソリンさえありゃぁ~走る。法律で走るワケじゃない。
         ~女は酒と銭がありゃぁ~いい。

いつものように腹一杯飲んで、女を仕込んだ。
        ~あとは、どこかに~しけ込むだけ~

女を車に乗せ、ヤル気ムンムンで飛び出したが
今まで、酒に酔いつぶれ、助手席でウトウトしていた女が~突然わめきだし
        

         ~「死にたい」~と叫び~運転している男の左腕に抱きついた。


車は横滑りしながら、山の排水溝に衝突し止まった~危うく転落するところだった。

・・・・・・いくらなんでも~こんな女とヤレるか!~その場で、女を蹴り出して帰った。



         ・・・・・・・・・・コイツがエサになるところだった? 
この小話から~・・3ヶ月ぐらい後の飲酒運転死亡事故だ。

~女は、“死にたい” と叫きながら運転手が握るハンドルを押し込んだ。
           ・・・・・・・・・・・・・・・・つまり、車は右側に急回転したはずだ。

              女が殺したようなものだが
                        いまさら~警察に話して何になる
                            何もしないだろう



      
 事故から半年後の12月頃、海から吹きつける独特の荒い風の中で、
派手なスカートを風の吹くまま、気ままに羽ばたかせながら、

若い女が九州行きの巡航船に乗り込んでいた。 

女の前には、年老いた男が
        ~後ろには、深いシワの老婆が女を挟み

取り込むように。
 3人が同じ歩幅、同じ表情で、下を向き無言で乗船する。 

女の両親が~なにがどうでも~女を連れ戻しに来た。無言の帰郷。


2人の老人は、おそらく死んだ後も~夜叉に付きまとわれるだろう。


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