妄想ジャンキー。202x

あたし好きなもんは好きだし、強引に諦める術も知らない

『ちかえもん』5話、業深き人形浄瑠璃書き・近松門左衛門。

2016-02-14 10:55:57 | テレビ
木曜時代劇『ちかえもん』5話のネタバレ感想まとめ。



時代劇です。時代劇、時代劇。






関連リンク

『ちかえもん』4話、たぎる妄想、深まる謎、赤うなる朝の沢庵の残り。

『ちかえもん』3話、なかなか討ち入らない赤穂義士に生きた人間を垣間見る。

『ちかえもん』2話、万吉の優しさと切なさ、でも「書けてな~い!」。

『あさが来た』『あまちゃん』他、朝ドラ関係の記事はこちら。
朝ドラ感想記事のまとめ。

他大河ドラマ、民放ドラマ、NHKスペシャルはこちら。
少々真面目で結構ゲスいテレビっ子の備忘録まとめ。





■赤穂浪士の場合


 
「赤穂浪士の場合は あまりのおばかさん」
「おばかさん」


今回の替え歌は新谷のり子「フランシーヌの場合」(1969年)でした。
フランシーヌ・ルコントがパリで焼身自殺をした事件に対して作られた反戦歌のフォークソングです。

これを亡き主のために討ち入りする『赤穂浪士の場合』に当てはめて、「おばかさん」と二度言いするっていうなんとも業の深い替え歌です。



ちかえもんがなぜ、討ち入りする赤穂浪士をおばかさんと言うのか。
ストーリーラインに関わってくるのかな(´-`)

替え歌だけでも十二分に楽しめるのですが。
ストーリーの筋として、これがどう関わってくるのかわからない。
もしかしたらこれまでの替え歌にももっともっと深い意味があるのかもしれません。
(腹抱えて笑ってたけど)


TVドラマとしての趣向や演出が、今まで見知ったものを超えている。
新感覚時代劇、というよりもはや新感覚ドラマ。



■Don't miss it!


 


「波乱万丈の傑作仇討ち劇、それが…!『出世景清』」
「Don't miss it !」

毎度おなじみ、シュールなアニメーション。
今回は近松の出世作『出世景清』の紹介でした。


景清のモミアゲがやたらでかいことや、ルビがアルファベットやらの部分は気にしないこと。

 

見逃すなって言われてもwww



■触れられたくない過去


お初が『出世景清』のファンなんじゃないかと小躍りしながら、お初を訪ねるたちかえもん。
置物をなでなでしたり、ぴょんびょん動いたり、はしゃぐちかえもんを尻目にお初は……


「おっちゃん怒らへんさかい…」
「そないなもん知りまへん」




「(´・ω・`)」

ちかえもん、顔芸ぃ。
テンションの落差ぁ。



■心中はできるのか


  


心中フラグきた、とは思ったものの。

ここからどうやって曽根崎心中に持ってくのか、初回のシーンに持ってくのか

本っ気でわからん!!!


というのもお初が徳兵衛に近づいたのは、父の無念を晴らすためでした。
徳兵衛への愛情は偽物。
徳兵衛はそれに気づいていない。

しかしこのお初と徳兵衛。
初回冒頭で何やら天神の森の心中に至りそうなシーン。
もっと言うなら、ちかえもんはこのお初と徳兵衛をみて人情物の浄瑠璃『曽根崎心中』を想起する、はずなのですが。

お初徳兵衛がまた複雑になってきて、これは一筋縄ではいきそうにない(知ってた



徳兵衛え……(T ^ T)

何週間か前は「ストーブのくせにムカつくぞ」って言ってたのに、今とっても「徳兵衛がんばれ」って思ってるぞ。

いやがんばっちゃったら心中エンドなんだけど。
えっもしかして心中エンドではないとか。




■お袖さんとちかえもん


 

BK御用達の金魚鉢でたっ!


「わては(人形浄瑠璃)見たことあれへん。あんたがここで書けへん書けへん言うてうなってるとこを見てるばっかりでな。きっとおもろいもんなんやろな」

お袖は、ちかえもんが浄瑠璃の筋を書いている姿は嫌ってほど見せられてるけれど。
肝心の浄瑠璃を見たことはない。

きっと天満屋から外に出る機会も多くないのでしょう。
遊女の世界ですから。

そんなお袖の話を聞いてちかえもんもまた切なさを覚えます。
籠の中の鳥、遊女。
そんな彼女たちが何を願って何を想っているのか。

最終話にはちかえもんがお袖さんに浄瑠璃見せたげるんだって信じてる。



籠の中の鳥……

籠の中の鳥……

あれ、黒田屋さんのとこの籠の中の鳥……




■セクシーショット




落ち着いて考えよう。

ど う し て こ う な っ た 。





■お初の過去


天満屋に義太夫がやってきて。
もちろん「書けてなーい」のちかえもんは義太夫から逃げて。
待たされていたお袖は、お初が廊下で倒れそうになっているところを助けていて。
逃げ回るちかえもんがお初が休む小部屋に逃げ込んで。

義太夫はちかえもんとすれちがってしまい、お袖の部屋に行くも。
そこにいたのがさっきのセクシー万吉。

万吉は、義太夫に『出世景清』を聞かせてくれとせがみ披露しています。
お初は、話し相手はお袖だと勘違いしたまま、自分の身の上、自分と平野屋の因縁を話し始めてしまいます。


「父の無念を晴らすためや」

義太夫節を聞きながら静かに涙を流すお初が切な美しくてなあ……
思わず見入ってしまう美しさです。


お初も切ない。
がんばれお初……負けるなぁ……


お初と平野屋の因縁を知ったちかえもんは、さっそくこの話を仕立てようと筆を握るのですが…。

「どない展開させる……?」

これはまさに物書きの声でしょう。
脚本の藤本さん、同じく脚本を書く松尾さん。
それから人形浄瑠璃書きの近松門左衛門。
3人の心の声が露わになった瞬間なのかなあって。

よくよく考えたら、ちかえもん、
まさに『人の話、特にここではお初の不幸話をネタにして筋を書いていく』という物書きの業の深さが丸出しなんですね。
同情でもなく、感情移入でもなく、「どう展開させる」と。
まさに浄瑠璃作者・近松門左衛門だなあと。



■ひんまがった根性


で、まだ義太夫は万吉に出世景清を語っているのですが。

 
「えげつない。裸に剥いて火責め水責め古木責めや」
「ちかえもんも大概屈折してまんな」


じわじわきたwww



「近松っつぁんの筋とわしの語りが出会うて、人形浄瑠璃は見事に花開いたてな。近松っつぁんとわしは浄瑠璃で繋がった同志や」

この後に、万吉の奇妙な間が気になった。
万吉の正体なんなんだろう。



「(ちかえもんが)傑作書いてくれそうな気がしてきた」
「あんた一体誰でんねん」


義太夫の言葉、おそらく核心に迫る一言でしょう。

不孝糖売り、万吉、ちかえもんの友達……
それ以外がわからない。

万吉が寺坂吉右衛門なのか。
それとも天使か。

あるいはただの不孝糖売りか。




「ちかえもんの友達や!」

後半に入って、万吉の意味深な笑顔や発言がすげえ謎。




■お初がかわいそうだから


ちかえもんがあーだのこーだの悩んでいるのを、案の定知ってしまう万吉。
するとお初のところに乗り込んで……



まともに登場せんかwww



ちかえもんはお初の告白を聴いてしまったこと、それを万吉に知られてしまったことを詫びますが。
お初、おこ。


そんなお初に、万吉は「あだ討ちしよう!」と匕首を渡します(というより畳にぶっ刺す)。
ちかえもんに驚き怒られるのですが……


「お初…かわいそうやねんもん」

徳兵衛に出会って笑顔を取り戻したはずだった初。
でもそれは偽物のもので、平野屋に復讐しない限り初は笑えない、救われない。
そんなお初がかわいそう。

出世景清のお姫様はひどい目にあったけれど救われた。
景清が助けてくれた。
物語の世界はそう。
だって、物語だから。

でも現実は?
ひどい目に遭って、誰か助けてくれるひとがいるの?
お初にはいなかった。
それが現実だから。

物語だから楽しめる切腹や仇討ち。
赤穂浪士の討ち入りもまさにそうなのかもしれません。

物語だから、映画だから、ドラマだから楽しめること。
それは現実に起きたらとても胸を締め付けること。
筆をとる者だけでなく、観る者に何かを突きつけてくる万吉に涙腺が緩みました。

万吉の優しさ、というより素直さや純粋さがしみるなあ。

 
「ちかえもんが言うたんやろ!主の仇、親の仇は討とうちゅうんが当たり前やて」


「それは…それはもう昔のこっちゃ。こないなことせんでも、救われる道はなんぼでもあるのや」

主の仇、親の仇をとるのが忠義。
でもそれは『昔の話』だって、救われる道はいくらでもあると話すちかえもんが苦しかった。

本当は討ち入りなんかしたくない、仇討ちなんかしたくない。
そう思ってもいいんだって。

うまく言えないんだけど、ちかえもんはこのとき何か掴みかけてるんだと思う。
忠義って?孝行って?復讐って?
…と、『曽根崎心中』に繋がる何かを。




言い争うちかえもんと万吉。
お初は静かに匕首をしまいました。
あだ討ちは、平野屋の出方次第だと。
そして万吉に不孝糖をもらいました。


 

(予告のあれ、逆回転だったのか……!!!)





■不孝、とは



「親の仇討ちて、親孝行か?親不孝なんか?どっちや?」
「そら親不孝や」
「赤穂義士もお初も親から見たら不孝者や。地獄に落ちる覚悟しとんのやさかい」


親の仇討ちは親不孝だと即答するちかえもん。
赤穂義士もお初も親からみたら親不孝。
地獄に落ちようとしてるんだから、とシリアスに語る姿にちかえもん。

物書きとしての近松門左衛門が描かれた後、親不孝を語るちかえもんにとても人間味を感じました。
近松がどんな思いで『曽根崎心中』を書いたのかは定かではありませんが、こんなやりとりがあったのかもしれません。
教科書に載ってる近松門左衛門が生きてるように感じる。




■痛快娯楽時代劇


と、見ている方も思わずシリアスモードに入っていたら。


「安心してください、これは痛快娯楽時代劇です」

とにかく明るいなんとかのネタを盛り込んできやがったwww

涙では終わらせないBK、こんにゃろうwww



■物語の入れ子構造


『出世景清』の小野姫と大宮司は景清に救われます。
それを描いた近松門左衛門は、現実世界で救われない遊女を目にします。
その苦しむ遊女はやがて「好いた男とともに命を絶つおなご」のモデルになる。
それは『曽根崎心中』。

その『曽根崎心中』ができるまで、を描いたのが『ちかえもん』。

この入れ子構造が、整理して考えていかなければ混乱するくらいややこしいのですが。
とにかく面白い。


入れ子とはいっても、機械的な入れ子ではなく、そこに『物書きの業』や『その時代に生きている人の思い』なんかが重なって、より立体的になる。
それらを演出しているのが替え歌やアニメーション、近松のメタ的なモノローグ。

初回冒頭で描かれた『曽根崎心中』の講演場面。
近松がどんな思いでこれを完成させたのか、とても気になります。




■ラテ欄




次週『義太夫わりと活躍』てwww

と、素直に次週予告を信じたいところではありますが、当日ラテ欄もドンミスイッ!


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