「高校生の読書に関する意識等調査」報告書(平成27年4月16日)。
このウェブサイトの一番上にあります。
株式会社浜銀総合研究所が実施した調査の報告書です。
今まで印象論ばかりが目立っていた読書意識の具体的な調査データと分析なので、本に関わっているすべての人にとって意味あるものだと思います。
個人的に気になった「分析」の部分だけ抜粋します。
・読書量は小学校高学年までは増加するが、その後中学校・高校では減少傾向にある。高校生になってから、本を読む時間・冊数ともに「減った」との回答は半数以上となっており、高校生のなかには、「以前は本を読んでいたが高校生になって本を読まなくなった」という生徒が多いのではないかと考えられる。
・生徒・保護者・学校(教員)のそれぞれの回答結果から、保護者や教員は高校生の読書について、多様な人の考えに触れ、視野を広げるといった効果を期待している人の割合が高いことがわかる。他方で、生徒自身は「楽しむ」こと、「気分転換すること」を読書の効果として認識している人の割合が高く、認識にギャップがあるのではないかと考えられる。
・全体の約6 割の生徒は、年間を通じて、学校図書館(図書室)や地域の図書館をほとんど利用していない。だが、「書店・古書店」については6 割以上の生徒が月に1 回以上利用しており、現状として、高校生が本に触れる場所としては書店・古書店が最も多くなっていることがうかがえる。
読書をする高校生の6 割以上は、書店で見て気になった本を手にしており、高校生が本を選ぶ場所としては書店が最も一般的であることがうかがえる。家の近くや通学路の途中に地域の図書館や書店・古書店がない生徒では、不読率が高いほか、読書が好きと回答する割合が低く、これらから、地域の環境が生徒の読書に関する行動面・心理面に及ぼす影響も小さくはないのではないかと推察される。
・学校図書館の蔵書数が多い学校の生徒や年間の図書購入費の額が多い学校の生徒では不読率が低くなっており、学校図書館の整備状況と読書冊数との間には一定の関連性があることがうかがえる。学校図書館の環境整備と生徒の読書量・読書習慣との関係性について、生徒自身の主観による「使いやすさ」と、読書量との関係について見ると、学校図書館を使いやすいと思うかについて「とてもそう思う」と認識している生徒では不読率が低く、「そう思わない」と認識している生徒では不読率が高くなっている。生徒の読書冊数を増やしていくためには、学校図書館について、蔵書数等の充実だけでなく、生徒によってより「使いやすい」と思われるように整備をしていくことが重要であると考えられる。司書教諭や学校司書の配置等も含めた学校図書館環境の充実度合いは、生徒が学校図書館を活用する度合いと関連性があると考えられる。
・読書推進に関する各種の取組について、実施している学校(学級)の生徒では「特段実施していない」学校に比べて生徒の不読率は低くなっている項目が多く、これらの取組を推進している学校では、本を読まない生徒に対する働きかけ等がうまくなされているのではないかと推察される。
・保護者が1 か月間に本を読んだ冊数別に、その家庭の生徒の読書冊数を見ると、保護者が読んだ本の冊数が「0 冊」の場合、生徒が1 か月に読んだ本が「0 冊」の割合(不読率)は53.2%
であった。同様に、保護者が読んだ本の冊数が「1 冊」の場合には生徒の不読率は48.5%、「2冊」の場合には不読率は41.7%、「3 冊以上」の場合には不読率は38.0%と、保護者が本を多く読む家庭の生徒のほうが不読率は低くなっている
まとめの部分では以下のようにあります。
・学校図書館を充実させたり、地域の図書館等の利便性を高めたりすることは、現在読書をあまりしない生徒に対する効果は限定的である可能性がある。
・ただ、そのようななかでも、勉強や部活動等で忙しい生徒に対しては学校内・教室内で本を読むような取組・環境整備をすすめていくことがより重要であると考えられる。また、読書以外の活動時間が長い生徒に対しては、高校生が好む本を身近な場所に置くことや、低価格で手に入る本もあることを紹介していくような取組が求められるのではないかと考えられる。
・ 「文字を読むのが苦手だ」「読みたいと思う本がない」「読む必要を感じなかった」「普段から本を読まない」の理由を回答した生徒は本を読まない生徒の約7 割、また、これらの理由のみを挙げた生徒は、本を読まない生徒の約4 分の1 となっている。これらの生徒に対しては、まずは興味を持たせるために、高校以前の段階も含めた取組・方策が必要になるのではないかと想定される。また、これらの生徒に対しては、導入として、文字が少ない、「堅苦しくない」本を紹介していくことも有効になるのではないかと考えられる。