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ゆうなパパのブログ

思ったことの羅列から…
基本的に毎日書くことを自分に課しています
つまらないエントリもありますが流してくださいませ

『ダイヤモンドの四季』 赤瀬川 隼

2009-10-27 12:21:00 | 読んだ本
本書の作者である赤瀬川隼さんは、直木賞作家でもあり、
かの『老人力』を記された芥川賞作家の赤瀬川原平先生のお兄さま。
野球(ダイヤモンド)を巡るいろいろな出来事に始まる
様々なドラマやストーリーが8編収録されています。

その中のひとつ『一塁手の生還』は、中学校の教科書でも
教材として取り上げられたりもしていて、
文章を読めば「ああ、この文章読んだことあるかも」と、
記憶が甦る人も意外と多いかもしれません。

本の帯には次のように書かれています。
「野球を愛する人々に捧げる爽やかで洒落ていて、
 ちょっぴりほろ苦い野球小説集。
 一個のボールが人生を支え、一球の暴投が人生を変える。
 一塁、二塁、三塁、本塁……
 一辺わずか90フィートの正方形にくりひろげられる人間ドラマ。
 選手、コーチ、監督、審判、そして恋人、家族、観客。
 野球に喜び、野球に泣き、野球に魂を震わせる人々を描く」

山際淳司さんの文章にも通じるところがありますかね。
自分がスポーツ全般に好きなので(自分が走ることを除いては)、
スポーツを題材にしたお話というのは、基本的に好きですね。


『ゴルファーは眠れない』 山際淳司

2009-10-15 12:26:00 | 読んだ本
「江夏の21球」などで有名で
NHKの「サンデースポーツ」のキャスターも務め、
95年に46歳の若さで早世したスポーツノンフィクション作家
山際さんのゴルファーを題材とした短編集です。

どの話も、ゴルファーたちのちょっとした失敗談や、
ミスやチョンボをユーモラスなお話に仕立てていますが、
どれもこれも自分でも思い当たるフシがあり、
思わず苦笑いしてしまう場面が多く、
「明日は我が身」と思いつつも、
「みんなそうなんだな」という安堵も感じさせてくれます。
そこが山際さんの文章の優しさなんでしょうね。

文章の内容から察するに山際さん自身は相当の腕前なんでしょうが、
アベレージゴルファーの心理や行動がよ~くわかってらっしゃる。
明日はゴルフという前の日の晩にうっかり読もうものなら、
題名の通り「眠れなく」なりそうな、そんな一冊でありました。

そういえば、今度の日曜日は久々のゴルフでありました。
今回の山際さんの本を思い出しながら
プレーできると楽しいかもしれません。

『月下の恋人』 浅田次郎

2009-09-29 12:23:00 | 読んだ本
11編の短編が収められていますが、
その後どうなったの?っていうお話がほとんどで、
読者なりに想像したり、納得したりするしかありませんが、
中でも秀逸だったのは「忘れじの宿」

忘れようとしても忘れられない辛いことを
揉み解して忘れさせてくれる「忘れじの宿」
「忘庵」という旅の宿でマッサージをしてもらうと、
左の腋に大きなしこりを見つけられ、
それを揉み解すと辛いことが忘れられると。
でもその辛いこととは13年前に癌で死んだ妻のこと。
「妻を忘れたら申し訳ない」と躊躇していると…

『それはしがらみというもんや。人は生きなあかん。
 極楽往生して、仏さんのおみあしにかしずくまでな、一生懸命に生きなならん。
 恨みつらみは水に流し、恩や情けだけを岩に刻んで生きゆくなぞと言うのんは、
 人生をなめくさってる人間の言うこっちゃ。
 生きるいうことは、そないに甘いもんやない。
 恨みつらみも、恩も情けも、この先の長い人生の道を
 踏み惑わせる種になることに変わりはないんやで。
 人はみな、やや子のようにまっさらな気持ちで、確かな一歩を踏まなあかん。
 その一歩一歩が人生や。恨みつらみも愛すればゆえ、
 恩も情けも愛すればゆえ、片っ方をうまくせき止めるような
 都合のええしがらみなんぞあるもんかいな』

『しがらみいうのんは“柵”いう漢字を書く。
 水の流れをせき止める棒杭のこと。
 なるほど、そないに都合のええしがらみはあらしまへん』

う~ん、しがらみねぇ。
「忘庵」に一度行ってみたい気もしますね。
いやいや嫁がしがらみっていうわけぢゃなくてね。


『口笛吹いて』 重松 清

2009-09-09 12:44:00 | 読んだ本
表題作を含む短編が5編の1冊ですが、
家庭や職場に問題を抱えた中年の日々を必死に生きる人々への応援歌…かな。
どのお話も結末は「その後どうなったんだろう?」っていう、
結論を語らない重松さん的な優しさというか、
「あなたはどう思う?」っていう読者に対するメッセージなのかなぁ。

印象に残ったのは表題作の『口笛吹いて』でした。
この本を読んだ大多数の読者評は、“中年男性の悲哀”的な部分と、
誰もが持っているであろう少年時代のノスタルジアを重ねたところの
表現や展開のうまさだったりするんでしょうけど、
私の感想はちょっと違っていて…

物語の大筋は、自分の息子が少年野球のチームに入っていて、
息子の野球のレベルというかうまさは
試合に出してもらえるかもらえないかという瀬戸際のレベル。
同じポジションを争うライバルは同じ団地に住んでいる同級生で、
どちらも父親まで相当に入れ込んでて、毎日近くの公園とかで親子で
ライバル心むき出しの練習をしているという設定。
その入れ込み具合の会話の表現や言葉遣いなどが絶妙で、
我が長男も野球とサッカーの違いはあれど、
クラブチームに所属していて、普段の練習、練習試合、そして試合と、
スタメンで誰が出るとか、誰がどこのポジションだとかなんて、
長男のサッカーを見ている私たち親にとっても通じるものがあって、
時に身につまされるような切ない言葉や気持ちも
重松さんの手にかかるとそういう場面の心の動きが
なんともうまく醸し出されていて、
読んでいるとつい引き込まれてしまう世界でしたね。


『ナイフ』 重松清

2009-08-24 12:36:00 | 読んだ本
『悪いんだけど、死んでくれない?』
ある日突然、クラスメイト全員が敵になる…

学校でのイジメをテーマにした5つのお話。
学校に通う子を持つ親の立場としては、
読み進めるのがとても辛いお話ばかりでしたが、
ところどころに重松さんなりのやさしさが垣間見えます。

『反省と後悔の違いが初めてわかった。
 なにかを反省するときには、本音でも建前でもいい、
 人はそのことについてたくさんしゃべることができる。
 でも、なにかを後悔しているとき、
 自分のやったことが嫌で嫌でたまらなくなったときって、
 言葉が出てこない』

『息子の生まれた父親って、
 キャッチボールするのが夢だってよく言うだろ。
 絶対にキャッチボールなんだよ。
 それって何でだと思う?』
『……』
『キャッチボールは向き合えるからだよ。
 そういう時でもないと、父親が息子の顔を
 正面から見ることができないからなんだよ』
『そういうのって、親の自己満足じゃない?』
『そうだな、自己満足だよな。
 でもなあ、親から自己満足を取っ払ったら、
 子育てなんてむなしいもんなんだぞ』

重松さんの文章は、わかりやすく平易な言葉で綴られているので、
ストレートでリアルにイジメが伝わってきます。
我が家の子どもたちの周りでもしイジメが起きているとしたら、
“う~~~~~ん”って考えさせられる一冊でした。