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ゆうなパパのブログ

思ったことの羅列から…
基本的に毎日書くことを自分に課しています
つまらないエントリもありますが流してくださいませ

終わっちゃった…

2013-04-17 12:36:00 | 読んだ本
終わっちゃいましたねぇ、『黒書院の六兵衛』
毎朝、日経読むのを楽しみにしてたんですけど。

幕末と戦国時代は歴史上の名ドラマが多いので
いろんな作家が面白いお話を沢山書いていて
浅田せんせも『壬生義士伝』や『輪違屋糸里』で
幕末の世を渾身の筆で書き下ろされていますが
今回の『黒書院の六兵衛』も面白かった~!

時は幕末、無血開城寸前の江戸城を舞台にして
ひとりの武士がモノも言わず、ただ座ったままで
勝海舟や木戸孝允など錚々たる重鎮の説得にも
少しも動ぜず、ひたすら座り続けるというお話。
主役の的矢六兵衛が一言も発しないままに
周囲が右往左往、あらぬ妄想で大騒ぎするという
前代未聞の浅田せんせの語り部テクニックには
脱帽、感服、痛快、いやいや恐れ入りました!
1年近く続いたお話の結末を読み終えると、
ストップモーションで終わる映画を見た後のような
『憑神』のラストシーンの別所彦四郎にも通じる
すがすがしさというか、晴れやかさというか
何とも言えない爽快な気持ちになりましたね。
次作も期待してますよん、ねっ浅田せんせ。


『海王伝』 白石 一郎

2010-12-03 12:32:00 | 読んだ本
直木賞受賞作品の『海狼伝』の続編。
船大将の能島小金吾を失った黄金丸は、
笛太郎を新たな船大将として新たな航海へ。
小金吾の遺志を継いで明へ行こうとするも、
途中で海賊の襲撃に合い、シャムへと向かう。
シャムには海賊の頭目になっている笛太郎の父、
マゴーチとその息子である馬剣英の本拠地があり、
宿命の兄弟対決、父子対決へというストーリー展開。

前作でもそうでしたが、海に生きる男たちの
生き生きとした躍動感あふれる船の上での動きが、
帆を上げ、舵を切る間合いから
櫓を漕ぐ音頭を取る太鼓の叩き方、
そして、大鉄砲の準備から撃つまでの
指揮官と射撃手たちの細かい動きに至るまで、
真に迫る迫力で見事に描かれています。
日本だけにとどまらないスケールの大きさも相まって、
ワクワク楽しめる壮大な海洋冒険小説でありました。


『海狼伝』 白石一郎

2010-11-10 12:31:00 | 読んだ本
第97回の直木賞受賞作品であります。
戦国時代も末期、織田信長が日の出の勢いだった頃、
対馬で生まれ育ち、海と船をこよなく愛する青年笛太郎が、
対馬海賊の一味となり、海戦で村上水軍に捕らえられ、
瀬戸内で村上水軍ととともに成長していく姿を描いた
まさに“海の男たちのロマン”という感じの海洋冒険小説。

若き笛太郎は、義理の大叔父にあたる老海賊大将の目の前で、
罪を犯した水夫と真剣勝負をさせられ、死に物狂いで斬り殺しますが、
そのときに言われた言葉が、その後の笛太郎を突き動かしていきます。

「悪事をなすときに慈悲の真似をするな。
 悪行を重ねるために生まれた者は、
 天の命ずるままに悪をなすがよい。それが宿業じゃ」
 人間の多くは悪事を重ねる宿業を背負うておる。
 そのことから眼をそらすでない。なまじ慈悲の心をおこし、
 小さな知恵に逃れて、天意に背いてはならん」

秀逸だったのは、対馬海峡や玄界灘を拠点にする松浦党と、
瀬戸内を拠点とする村上水軍の海賊たちの暮らしぶりや、
船の構造、操り方、海戦の戦い方の違いなどが
場面場面で克明にしかも微細に描かれていること。
海戦の描写に至っては、舵の取り方や方向、
風向きと数種類ある帆の上げ方、下ろすタイミング、
そして接舷して敵の船に斬り込んで行く様などは、
躍動感たっぷりの迫力ある展開が手に取るようでした。


『終わらざる夏』 浅田 次郎

2010-10-13 12:24:00 | 読んだ本
太平洋戦争も末期の昭和20年8月、年齢的にもう召集令状は届かないと
信じていた45歳の出版社の編集者に赤紙が届くところから物語は始まります。
戦争という大きな大きな波に飲み込まれていく日本国民の様々な姿が、
その編集者片岡と、応召4度という伝説の英雄“鬼熊軍曹”富永熊男と、
軍医として召集された若き帝大の医学生菊池の3人を中心に、
その家族や周りの人々を通して、悲しみや苦しみ、絶望感、悲壮感を
上下巻900余ページに亘ってとても丁寧に描かれています。
浅田さんが語る戦争の悲惨さがひしひしと感じられる一冊であります。

3人息子の末の息子の戦死を知らされた片岡の先輩部長の語り。
「僕には学問はない。いや、学問はあるつもりだが学歴がない。
 だから無理を押して子どもらは大学まで行かせたんだがね。
 志願したんだかさせられたんだか海軍予備学生とやらになって、
 帝大の角帽を軍帽に替えやがった。
 それで志願したんだかさせられたんだか敵艦に体当たりしたんだそうだ。
 人の命に軽い重いがあるとは言わんよ。
 よその子どもが死ぬのなら、うちの子どもが死んだって仕方がないとは思うがね。
 だが、戦争は兵隊がするもので、学生がするものじゃあるまい。
 命の重みが同じだから、学生も兵隊になって死ねというのは違うんじゃないかね。
 お国のためというのなら、あいつはあいつなりの尽くし方があったはずだ。
 何も戦死だけが名誉な命の使い途じゃあるまい。
 一生懸命に学問をしてたあいつに、ペンを捨てて操縦桿を握らせて、
 脇目もふらずに体当たりせえなんて、よく言えたもんだ。
 勝ち負けじゃなくて、もうこの戦争は終わりだよ」

玉音放送を聞いた後、疎開先の長野の軽井沢から
上野駅にたどり着いた子どもに話す応召兵。
「戦争に勝ったも負けたもねえ。
 そんなものはお国の理屈で、人間には生き死にがあるだけだ。
 アメ公だってそれは同じさ。
 勝ったところで親兄弟がくたばったんじゃ、嬉しくも何ともあるめえ。
 二度と戦争はするな。戦争に勝ちも負けもあるものか。
 戦争をするやつはみんなが負けだ。
 大人たちは勝手に戦争をしちまったが、このざまをよく覚えておいて、
 おめえらは二度と戦争をするんじゃねえぞ。
 一生戦争をしねえで畳の上で死ねるんなら、そのときが勝ちだ。
 じじいんなってくたばるときに本物の万歳をしろ」

3人の応召兵たちは皆、岩手の南部地方の出身者であり、
「壬生義士伝」同様、南部弁丸出しで語る鬼熊軍曹は
読んでいる者の心をぐっとつかむ味がありましたね。
物語の結末は、兵士たちが理不尽にも抑留されることになった
酷寒のシベリアの強制収容所での過酷な重労働の場面ですが、
山崎豊子の「不毛地帯」のプロローグと重なったのは私だけでしょうか。


『勝負の極意』 浅田 次郎

2010-09-29 12:27:00 | 読んだ本
年末の有馬記念までGIレースが目白押しのこれからの季節。
JRAに2割5分ものテラ銭を払っているわけだから、
『馬券を買うことは理論上、カネをドブに捨てるのと同じことである』
という浅田次郎先生の競馬の指南書であります。

「競馬におけるあらゆる数値は、それぞれひとつの要素にしかすぎない。
 しかも予想を立てる上での決定的な要素など、ひとつもないのである。
 そういう意味で、競馬は最も科学の及ばぬゲームだと言えよう。
 すなわち、すべてのレースは偶然の累積で構成されているのであり、
 予想を立て、馬券を買うという行為は、すべからく神と闘うことにほかならない」

「競馬の予想とは、
 1 馬の能力
 2 勝負気配
 3 レース展開
 4 仕上がり状態
 の4項目の読みに尽きる。
 巷間ささやかれるところの、出目だとか
 勝ち馬サインとかいうものは、絶対にない」

「現在の競馬では、距離、コース、芝・ダート、ハンデ、条件、
 すべてにかかわらず『逃げ馬』が圧倒的に有利である。
 そして、追い込み脚質は圧倒的に不利である」

今でこそ、年末の有馬記念しか馬券を買わないものの、
一時期は毎週WINSに通っていたこともある私。
随所に浅田さんなりの秘策が記されていました。
競馬新聞の予想を当てにしてちゃダメだってことですね。