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アサルト

2009年01月21日 | 我々をさらけ出せ
「なっ、なんだてめぇーーー!!」

男がそう叫んだのは、ドアを開け身を乗り出した部下が、
一瞬の硬直の後にそのまま引きずられるようにドアの外に消え、
制服に身を包んだ人間が入り込んできたからだ。

それは僅か2秒間の出来事だった。


俺の顔は若干変形しているかもしれない。
視界の左上部が変にぼやけているように見えた。
ただ、その制服の「クラウンピザ」のロゴだけは、はっきりと見えた。
身を少しだけ捩ったからだろう、鈍い痛みが肩から滲み出す。


闖入者はドアにロックを掛けると、男の怒声が聞こえていないかのように、
手近にあった事務机をたった一つの出入り口にぴったりと押し当てた。
それに満足できなかったのか、
闖入者は二つ目の事務机を動かそうと身体を動かした。

「なんなんだ! テメェはッ!!」
一瞬呆気に取られていた男が、再び声を張り上げる。

二つ目の事務机に手をかけていた闖入者は、男に向き直り、
『スペシャルデリバリーで~す♥』
場違いなほどの明るく響く声。

だが、男からは見えたのだろうか?
キャップを目深にかぶった闖入者のその目。

(あの目だ・・・)
条件反射のように記憶が呼び覚まされ、
俺の身体はほんの少しだけ強張ったのだと思う。
体中に軋む様な痛みが走ったからだ。
あの目が俺の位置からは本当によく見えた。


そして、慣れた手つきでバッグの中から、
正方形の薄いピザトレイを取り出し、上蓋を開けて中を見せた。


本当にピザが入っているのか、俺には分からない。
何故なら俺は、両手首を後ろで縛られ、
床に這い蹲っていたからだ。
つい数十秒前まで、俺はここで面白半分にサンドバッグになっていた。
ただ、それだけの話。


トマトとチーズの焼けた匂いが鼻につく。
どうやら、本当にピザが入っていたようだ。
こんな状況なのに、いい匂いダナと俺は思った。
(まったく・・・この人は・・・)


『寺山修次様のご注文でゴザイマス~♥』
そう言うと、そのままふぅわりと男に向かってピザをトレイごと放った。


男からは何が見えていたのだろうか?

ゆるく弧を描きながら己に向かって飛んでくるピザトレイ。
無条件で腕を前に差し出している。
いや、寺山と言うサル山のボスの名前に反応したからかもしれない。
コレは何か大切なものだぞ。と・・・。
そして男は理解できないまま床に這い蹲る事になる。


俺に見えていたものは、
ピザトレイを放り投げた闖入者が、手近にあった事務椅子を掴み。
男に向かって投げつけた姿だった。
加減という言葉は、多分無いのだと思う。

ピザトレイを受け止めた男の顔に、事務椅子の足がめり込む。
そのまま後ろに倒れる男。
そして、その顎を蹴り上げる闖入者。
加減という言葉は、・・・多分知らないのだと思う。


散乱、とまではいかないが、床にぶちまけられたピザを一切れ摘む。
『うわ~、もったいね(´○w○)』
躊躇うことなく齧り付くと、俺に向かってこう言い放った。


『てっへ~w 来ちゃったw』

いつもと変わらぬ人を安心させるような笑顔。

この頭痛は、殴られ続けたせいか、
それとも全く違う要因か・・・。
俺は殴られ続けたせいだと、強引に自分を納得させた。

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