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新約 桃姫伝説 第一話 ~旅立ち~

2016-10-07 21:33:50 | 台本
新約 桃姫伝説


第一話 ~旅立ち~


【登場人物 一覧】

吉備津モモ♀:言わずと知れた主人公。漫画とゲームが大好き。
おじいさん♂:子供の頃から週刊誌を買うのが趣味。
おばあさん♀:至って普通のおばあちゃん。
イヌ(犬飼 健 イヌカイタケル)♂:最初はイヌだけど、実は・・・。
カルラ♂♀:鬼の幹部の一人。烏天狗のような奴。しゃべり方がオカマっぽい。
百鬼(ひゃっき)♂:ぐおお! しか言いません。
鬼神王(きしんおう)♂:鬼たちの王。一番強いらしい。漫画が大好き。
さくらやまあきら♂:漫画家。「スーパー桃太郎伝説」を週刊少年ステップに連載中。
ナレーション♂♀:ナレーションです。そのままです。


【配役 ♂3♀2】


吉備津モモ♀:
おじいさん&さくらやま♂:
おばあさん&カルラ♀:
イヌ(犬飼 健)♂:
鬼神王&百鬼&ナレ♂:


【配役 ♂5♀3 or ♂4♀4】

吉備津モモ♀:
おじいさん♂:
おばあさん♀:
イヌ(犬飼 健)♂:
カルラ♂♀:
百鬼&鬼神王♂:
さくらやまあきら♂:
ナレーション♂♀:





【本編】


ナレ 「むかしむかしあるところに、おじいさんとおばあさんが住んでおりました。
    おじいさんは山へ芝刈りに、おばあさんは川へ洗濯にいきました。
    おばあさんが川で洗濯をしていると
    川の上流から大きな桃が、どんぶらこ、どんぶらこと流れてきました」

おばあ「あんれま~! おおきな桃だっぺ~! この桃どうすっぺか~?」

ナレ 「おばあさんはとりあえず、その桃を持ち帰って、おじいさんに見せることにしました」

おじい「ただいま~」

おばあ「おじいさん! おじいさん!」

おじい「なんじゃ~? ばあさんや。そんな大声を出して」

おばあ「これを見てください!」

おじい「な、なんじゃ~!? その大きな桃は!?」

おばあ「川で洗濯をしていたら、流れてきたんだわさ!」

おじい「とにかく、こんな大きな桃は二人だけじゃ食べきれないの~。
    明日、村のみんなを呼んで一緒に食べるとしようかの」

おばあ「それが、いいね。明日になったら村のみんなに知らせてくるよ」

ナレ 「そんな話をしていると、桃が急に動き出しました」

おじい「ば、ばあさんや! 桃が!」

おばあ「あんれま~!」

ナレ 「すると、桃が自然と真っ二つに割れて、中から可愛らしい女の子の赤ちゃんが出てきました」

おじい「こりゃあ~、おったまげた~」

おばあ「中から赤ん坊が出てきよった~」

おじい「ばあさん、こりゃあ、女の子だ」

おばあ「可愛い女の子だ~」

おじい「ちょっと待て、ばあさんや。桃から赤ん坊が出てくるなんておかしな話だと思わんかね?」

おばあ「そうですね、おじいさん」

おじい「念のため、構成物質の確認とDNA検査もしておこうかの」

おばあ「そうですね、おじいさん」

ナレ 「二人はその赤ん坊から粘膜を摂取し、
    あらゆる科学と漫画の力を駆使して調べました。その結果」

おじい「間違いない。水・炭素・アンモニア・石灰・リン・塩分・硝石・硫黄・フッ素・鉄・ケイ素・
    その他少量の15の元素でなりたっておる。間違いなく人じゃ」

おばあ「DNA検査の結果も特に異常なしでしたよ」

おじい「よしよし。そうだ、せっかくだから可愛い名前をつけてやろう」

おばあ「どんな名前がいいですかね~」

ナレ 「おじいさんとおばあさんは、ネットで名前辞典を検索し、流墨愛(るぴあ)や、
    精飛愛(せぴあ)や、愛海(まいみー)などのキラキラネームをいろいろと考えましたが、
    将来のことを考えて、結局『モモ』と名づけて、二人で育てることにしました」

おじい「よ~し、モモや。大きく元気に育つんじゃぞ~」

ナレ 「モモはおじいさんとおばあさんの愛情を一身に受けて、
    よく食べ、よく寝て、よく遊び、よくネットをし、
    よくアニメを見て、よく漫画を読み、よくゲームをし、
    立派な腐女子に成長しました。そんなある日のこと・・・」

おばあ「モモや。そろそろゲームはやめて、夕飯にせんか~?」

モモ 「うん。今、セーブするから待ってて~」

おじい「ただいま~」

おばあ「あ、おかえりなさい」

モモ 「おかえり~」

おばあ「今、夕飯を準備しますから待っててくださいね~」

おじい「はぁ~、どうしたもんかの~」

モモ 「何かあったの、じいちゃん」

おじい「最近、ワシが楽しみにしてる『週刊少年ステップ』がなかなかこの村まで届かんでの~。
    なんでも、大江戸で鬼の奴らが買い占めてるとかで」

モモ 「ええ~!? じゃあ、サタデーやカンピオーネも最近発売日になっても
    なかなか届かないのは、そのせいなの~!?」

おじい「らしいのじゃ」

モモ 「私の唯一の楽しみをとるなんて・・・鬼の奴ら、絶対許せない!
    私、大江戸に行ってくる!」

ナレ 「そして翌日。出発の朝」

モモ 「じいちゃん、ばあちゃん。それじゃ、行ってくるね」

おじい「モモや、気をつけるんじゃぞ。ああ、道中は危ないから、
    ワシの愛刀の木刀を持って行きなさい。何かと役に立つじゃろう」

モモ 「ありがとう、じいちゃん」

おばあ「それから、これはきび団子だよ。
    仲間になりたそうにこちらを見ている妖怪にだけあげるんだよ」

モモ 「うん、ありがとう。ばあちゃん」

おじい「ああ、それからスマホの通信制限には気をつけるんじゃぞ~」

モモ 「わかってるって。Wi-Fiが近くに飛んでたら、それを使うから~。いってきま~す!」

おじい&おばあ「いってらっしゃ~い!」

ナレ 「こうして、モモは週刊誌を買い占める鬼をこらしめるために、
    出版社がある大江戸へと向かうのでした。一方、大江戸では」


《大江戸 鬼の住処》


カルラ「鬼神王様。ただいま、参りました」

鬼神王「カルラよ! 週刊誌の買い占めは上手くいっているのか?」

カルラ「はい、鬼神王様。現在、週刊少年ステップ・サタデー・カンピオーネは
    ほぼ買い占めております。
    今後はヤングステップやヤングリヴィスタも買い占める予定です」

鬼神王「ふむ。だが、報告によると、辺境の村の漫画家がなかなか納期に間に合わず
    出版も遅れているとか」

カルラ「はい、さくらやまあきら先生がなかなか納期までに提出をしてくれないのです」

鬼神王「納期を遅らせることは決して許してはならん。
    少しでも早めるために、さくらやまあきら先生を大江戸へ移住させるのだ」

カルラ「かしこまりました」

鬼神王「お前には百鬼を遣わそう。どんな手を使っても構わん。行け!」

カルラ「ははっ!」


《村外れ》


モモ 「大江戸まで遠いな~。そろそろ日も暮れて来たし、
    近くにネットカフェがあればいいんだけど~。ん?」

イヌ 「わんわん! わんわん!」

モモ 「わっ! どうしたんだろう? あっ! イヌの近くで誰か倒れてる! 大丈夫ですか!」

さくら「ううっ・・・君は?」

モモ 「ああっ、良かった。気がついたんですね。あ、私はモモと言います」

さくら「ありがとう、モモちゃん。助けてくれて。このまま道なりに真っ直ぐ行くと私の家がある。
    申し訳ないが、そこまで肩を貸してくれないかい?」

モモ 「ええ、もちろんいいですよ」

さくら「すまないね」

イヌ 「わおーん!」


ナレ 「モモはその男性に肩を貸し、イヌと共に家まで送ってあげました。そして、その夜」


モモ 「ええーーー!!?? あなたがあの有名な『スーパー桃太郎伝説』の作者の
    さくらやまあきら先生なんですか!?」

さくら「うん、まあね」

モモ 「私! さくらやま先生のファンなんです~! あ、あとでサインいただけますか!?」

さくら「もちろん構わないよ」

モモ 「やったー! あ、それにしても、どうしてあんな道端で倒れていたんですか?」

さくら「うん、いつもインスピレーションを沸かすために、この辺りを散歩しているんだけど。
    今日は急に気分が悪くなってね、倒れてしまったようだ」

モモ 「漫画家さんもいろいろと大変ですもんね~」

さくら「そうだね。でも、最近やたらと締め切りが厳しくなってね。
    今までの担当者はギリギリまで待っててくれてたんだけど。
    担当者が代わってから、締め切り日は早められるし、
    あげくの果てには大江戸まで移住しろとまで言ってきたんだ」

モモ 「そんな! 酷い!」

さくら「僕もここの土地が好きだから離れたくないんだけど。それももう限界かな」

モモ 「それも絶対鬼達のせいだ! 許せない!」

カルラ「だ~れが許せないって~?」

さくら「お前はカルラ!」

カルラ「さくらやま先生。締め切りはもうとっくに過ぎてるんですけどね~?」

さくら「それはお前達が勝ってに早めた納期だろう! 本来ならまだ一週間あるはずだ!」

カルラ「変わってしまったものは仕方ありません。それが出来ないなら、
    無理やりにでも大江戸へ移住してもらうしかありませんな~。それ!」(妖術をかける)

さくら「くっ、しまった」(見えない糸で縛られる)

モモ 「ちょっと先生に何すんのよ!
    さっきから聞いてれば、むちゃくちゃなこと言って先生を困らせて、何様のつもり!」

カルラ「なんだこの小娘は?」

さくら「モモちゃん!?」

モモ 「出て行きなさい! 先生の仕事の邪魔をしないで!」(木刀を構える)

カルラ「うるさい小娘だね。百鬼!」

百鬼 「ぐおおおおお!!」

モモ 「何!? この鬼!?」

百鬼 「ぐおおっ!!」(大きな棍棒でモモを吹っ飛ばす)

モモ 「きゃあああ!!」

さくら「モモちゃん!!」

モモ 「いたたた、よくもやったな~」

イヌ 「わんわん!」

モモ 「あ、わんちゃん。うわ~、すっごく仲間になりたそうにこっちを見つめてる~。
    本当は仲間にする妖怪にあげるものなんだけど。
    ま、いっか。はい、きび団子。これあげるから離れてるんだよ」

カルラ「おや~? まだ生きていましたか~。しぶとい小娘ですね~。
    百鬼! 止めを刺しておしまい!」

百鬼 「うおおっ!!」

モモ 「やばっ! やられる!」

イヌ 「わおーん!」(百鬼の腕に噛み付く)

モモ 「わんちゃん!?」

カルラ「邪魔をするな! イヌっころ! 百鬼! 早くこのイヌっころも殺してしまえ!」

百鬼 「ぐおっ! ぐおっ! ぐおおっ!」(腕を振り回して無理やりイヌを引き剥がす)

イヌ 「く~ん」(地面に叩きつけられる)

モモ 「わんちゃん!」

カルラ「止めだ! やれ、百鬼!」

モモ 「わんちゃんをいじめるなーーー!!!」

カルラ「うわっ! 眩しい!」

モモ 「え? 木刀が光ってる・・・!? わんちゃんも光ってる!?」

イヌ 「ようやく本来の力を発揮出来るようですね」

モモ 「イ、イヌがしゃべったーーー!?」

カルラ「き、貴様! 何者だ!?」

イヌ 「私の名前は犬飼健。昔、鬼を退治した吉備津彦命(きびつひこのみこと)に仕えていた者です。
    とある理由により、イヌの中に魂と能力を封じこまれてしまっていたのですが。
    モモ様のきび団子と魂の叫びがその封印を解いてくれたようです」

モモ 「わんちゃん・・・」

イヌ 「では、本来の姿に戻るとしましょう」

モモ 「え? ええーーー!? わんちゃんが人の姿に!」

イヌ 「これが本来の私の姿なのです」

モモ 「しかも超イケメーーーン!!」

カルラ「ええい! 封印がどうとか、なんだからわからぬが。
    人の姿になったからといって、百鬼に敵う者などいない! やってしまえ!」

百鬼 「ぐおおおおおお!!!!」

イヌ 「ふっ。残念ですが、あなたでは私に勝てない。くらいなさい! 
    犬爪十字斬(けんそうじゅうじざん)!」

百鬼 「ぐぐぐっ・・・ぐおおぉぉぉ・・・」(倒れる)

カルラ「ひ、百鬼が、い、一撃で・・・くそ! おぼえてろ~!」(飛び去る)

モモ 「二度と来るな~!」

さくら「モモちゃん!」(家から飛び出てくる)

モモ 「あ! 先生! 大丈夫でしたか!?」

さくら「カルラがいなくなったことで妖術が解けたようです。
    それよりも、モモちゃんこそ、私のために酷いケガを」

モモ 「大丈夫ですよ、先生。こんなのかすり傷ですから。すぐに治りますって」

さくら「しかし・・・」

イヌ 「私が治しましょう。彼の者を癒したまえ」
 
モモ 「す、すごい! 傷口がどんどん塞がっていく!」

イヌ 「本来の姿に戻れば、ある程度の妖術も使えるのです」

モモ 「ありがとう! わんちゃん!」

イヌ 「・・・モモ様、その、わんちゃんというのはなんとかなりませんか?」

モモ 「あ、そうだよね~。なんて呼べばいい?」

イヌ 「犬飼健ですので、せめてタケルと呼んでいただけますか?」

モモ 「わかった! タケル、ありがとね!」

イヌ 「とんでもございません」

モモ 「あ、そうだ。そもそもタケルは先生が飼ってたんだよね? どうしよう?」

さくら「いえ、イヌの姿だったタケルさんは一週間くらい前から私の家に住み着いただけですので。
    私が昔から飼っていたわけではありません」

モモ 「そうなんだ」

さくら「おそらく、モモちゃんとの出会いを待っていたんでしょう」

モモ 「うん」

イヌ 「モモ様、私もそろそろこの姿を保てなくなってしまったようです」

モモ 「え!? イヌの姿に戻っちゃうの?」

イヌ 「ええ。この姿だと大きく妖力を使ってしまうので。今後の戦いに備えてイヌの姿に戻ります」

モモ 「ええーー、ざんねーーん。イケメンと一緒に旅が出来ると思ったのに~」

イヌ 「ご安心ください。イヌの姿に戻っても会話は出来ますので」

モモ 「イヌと会話してたら変な人と思われちゃうじゃん!
    あ~ん、もう! イケメンの彼氏が欲しいよ~~~!!!」



ナレ 「こうして、タケルと共にカルラと百鬼を撃退したモモは、さくらやま先生に別れを告げ、
    大江戸へと向かうのであった。モモ達の旅はまだ始まったばかり。
    この後、幾多の試練が待ち受けていることをこの時のモモ達には知る由もなかったって
    言ってみたかったのよね~!!」


第一話 完