僕らはみんな河合荘 第一話 声劇用
キャスト
宇佐和成(うさ かずなり)♂:
河合 律(かわい りつ)♀:
城崎(しろさき)♂:
錦野麻弓(にしきの まゆみ)♀:
住子(すみこ)&宇佐の母親♀:
田神&警察官♂:
河合律と田神&警察官はセリフ少なめです。
【本編】
本を運びながら、図書室に向かう宇佐
宇佐M「中学の俺は、災難続きだった。あの3年間は忘れて、高校生活は心地よく、穏やかに過ごしたい。そして、知的で清楚な彼女と」
図書室の窓際には、本を読んでいるショートカットの女の子が座っている
宇佐M「そう。あんな彼女と、青春の日々を」
オープニングテーマ「いつかの、いくつかのきみとのせかい」
田神 「宇佐?」
宇佐 「はぁ・・・」
田神 「宇佐?」
宇佐 「田神」
田神 「図書委員仕事なんかさっさと終わらせて帰ろうぜ。そういや、今日からだっけ? 一人暮らし」
宇佐 「うん」
田神 「いいよな~。俺んちの親も転勤になんねぇかな~。アパートどんなの?」
宇佐 「それが、今日初めて行くんだよね。管理人さんには会ったけど」
田神 「はぁ? 何それ?」
宇佐 「前の人の荷物がどうたらで・・・あっ、帰っちゃった」
場面変わって、帰路。河合荘を目指す 宇佐。
宇佐M「贅沢は言わない。自由な新生活のためならば」
宇佐 「あそこを右」
宇佐M「古い家が多いな~。のどかで落ち着いてて。お、小学校。変な奴もいなさそうだ」
小学校を金網に頭を突っ込んで、校庭を見つめる城崎を姿を発見する
宇佐M「!? 変な人なう!・・・警察に電話」
金網から離れる城崎
宇佐M「!?」
城崎 「ふぅ・・・」
宇佐M「やべぇ! 気づかれた!」
城崎 「あれ~? 宇佐くん。小学校好きなの?」
宇佐 「誰が!? っていうかなんで俺の名前!?」
警察官「ちょっと君達。小学校を覗いてる変な男がいるって通報があったんだけど?」
城崎 「え?」(宇佐の方を見る)
宇佐 「あんただ! あんた!」
城崎 「え? 覗いたりしてないよ?」
宇佐 「金網の中に頭突っ込んでたじゃないっスか!?」
城崎 「こんな穴を見つけちゃったら、突っ込まざるをえないでしょう」
警察官「確かに。少年心も男心もくすぐられる状況ではあるな~」
宇佐 「何言ってるの、お巡りさん」
警察官「スーパーのカートでシャーっとやりたいとか。椅子の上で両手両足を伸ばしてクルクルしたいとか。そういった幾多の誘惑にみんな耐え忍んで、生きてるんじゃ~ないかな~」
宇佐 「いえ・・・僕は別に」
警察官「しかし、子供の安全に敏感な世の中だ。そういうことは・・・」
城崎 「いやいや! 頭はエロでい~っぱいですが、18歳になる女子校生以上の女子がみ~っちりで! 小学生が入る隙なんて無いですよ!」
警察官「人並みの倫理観はあるようだが」
宇佐M「ないよ!」
城崎 「どうせなら、駅前の階段に行きます。そんで全っ然見てないのに『何見てんだよおっさん』っと蔑んだ目で理不尽に睨まれたい!」
警察官「やっぱりあなた変ですね。ちょっと派出所まで来てください」
城崎 「え?」
警察官「さっさと来なさい」
宇佐M「今の内に・・・」(ダッシュで逃げる)
城崎 「あ! 宇佐くん! 待って~~~~!!!」
場面変わって、河合荘の前。住子が玄関前を掃除している。そこに宇佐が走ってくる。
住子 「どうしたの? 顔色悪いわよ?」
宇佐 「いえ、ちょっと、変な人がいて・・・はぁ、はぁ・・・」(息を切らしながら)
住子 「まぁ、物騒ね。早く家にお上がりなさいな」
宇佐M「しかし、なんであの人、俺の名前を・・・ああ、いかんいかん。ケチがつくから、もう忘れよう」
河合荘の廊下を歩きながら、宇佐が尋ねる。
宇佐 「管理人さん」
住子 「住子さんって呼んでね」
宇佐 「住子さん。今日から、よろしくお願いします」
住子 「こちらこそ。想像していたより、古くて驚いたでしょ」
宇佐 「いや、なんか良い感じです」
住子 「うふふっ、ありがと。まずはお茶でも飲む? お部屋見る?」
宇佐 「あ、部屋見たいっス!」
部屋に到着
宇佐 「広っ! あれ? 四畳半じゃ?」
住子 「ああ、それはね。こうして、こうで、四畳半♪ うふふふっ」(パーテーションで仕切る)
宇佐 「あのそれって・・・」
城崎 「ひどいな~」(宇佐の肩に手を置く)
宇佐 「!?」
城崎 「宇佐くん」
宇佐 「ギャーーーーーーーーーーーー!!!!!!!!! なんでここに!!??」
城崎 「住人だもの」」
宇佐 「なんで俺の名前!?」
城崎 「住子さんから聞いたし。写真も」
宇佐 「ルームメイトってまさかこの人と!? 仕切っただけの部屋に!」
住子 「確かに壁は薄いわね~。うふふふふふっ」
宇佐 「いや、そいつカーテンの仲間ですから! やですよ! こんな人と!」
住子 「そんな、よく知らないでしょう?」
宇佐 「そりゃ~」
住子 「大丈夫よ。城くんは変態だけど、基本無害で、むしろ害を与えられたいタイプだから。ヘタレでMでチキンカツが好きなチキンカス。うふふっ」
宇佐 「よく知った方が酷いじゃないっスか」
城崎 「住子さんの言葉は控えめなようで辛辣なのがいいな~」
宇佐M「ダメだ! ここで流されちゃ、中学の二の舞だ!」
宇佐 「とにかく親に確認して、今日は友達ん家に泊まります」(部屋から出て行く)
住子 「あ! 待って!」
廊下を歩いて、玄関に向かう宇佐
宇佐M「俺は、穏やかな暮らしがしたいんだ。そして、知的で、清楚な」
玄関の戸を開けると、そこに律が立っている。
宇佐 「!?」
宇佐M「例えば、こんな彼女と、青春の日々を・・・」
城崎 「ああ、律っちゃん」
住子 「おかえりなさい」
宇佐M「これはフラグか? それとも罠か?」
住子 「律っちゃん。前にも話したけど、今日から住人になる宇佐くん」
宇佐 「よ、よろしくお願いします!」
城崎 「こちらこそ! 俺は城崎。城って呼んで! 出来るだけ、犬っぽく」
宇佐 「あなたは別によろしくしたくないです」
律 「河合 律です」
住子 「北高の2年生なの。宇佐くんも北高よね?」
宇佐 「あ、はい!」
宇佐M「信じらんねぇ! 超好みの女子と同じアパートなんて!」
宇佐 「あの、さっき図書室で会いましたよね?」
律 「・・・?」
宇佐 「あ、いや、一方的に見ただけっす」
宇佐M「目が合ったと思ったのに・・・」
廊下を歩いて部屋に向かう律の後ろを宇佐が追いかけながら
宇佐 「あの、同じ高校って偶然ですね? 俺、1年なんですけど、まだ慣れてなくて。この辺のことよく知らないんで、色々教えてくださ」
宇佐の目の前に竹刀が飛び込んでくる
宇佐 「!?」
律 「・・・女子エリア」
宇佐 「はい!?」
住子 「まだ話してなかったわね。ウチは男女で行動範囲を制限してるの」
宇佐 「あの、これって制限されてるの男だけですよね?」(間取りを見ながら)
住子 「トイレとお風呂。男女別々だから気をつけてね?」
宇佐 「同じ住居でとんだ格差社会ですね」
住子 「若者が格差を学ぶのは大事よ~。下から底辺まで」
城崎 「下ばっかり~♪ 喜んで! 下から学ぶってワードからして卑猥~♪ どっきどっきどっきどっき♪」
宇佐 「あんたちょっと黙っててくださいよ! 女の子いるのにこんな人危ないんじゃ」
住子 「大丈夫よ。要所要所にグッズが置いてあるから」
女子エリアの廊下には竹刀をはじめ、金属バット・木刀・スタンガン・催涙スプレー・釘バット・薙刀が置いてある。
宇佐 「女子エリア超おっかね~」
城崎 「でも良かった。現実受け入れてくれたみたいで」
宇佐 「え?」
城崎 「よろしく、ルームメイト! お互い干渉せず、時々物理的に縛ってくれ」
宇佐 「あぁ、すいません無理です。この現実」
城崎 「さっきまでノリノリだったのに~」
住子 「ね~」
宇佐 「そ、それはとにかく保留です!」
場面変わって、河合荘の縁側で母と会話している宇佐。
宇佐の母親「今更何言ってんのよ~。一人暮らし出来るなら、どんな部屋でも文句言わないって約束したでしょ? 同室の人も個性的で面白いって聞いたわ~」
宇佐 「あれを個性で流さないでくれる~。っつうか他人が同室な時点で一人暮らしじゃねぇじゃん!」
宇佐の母親「あんたほんと細かいこと気にするわね~」
宇佐 「母さんが荒いんだよ! そのいい加減な性格のせいで俺がどんなに苦労したか!?」
宇佐の母親「あ~、もう五月蝿いわね~。特別に安くしてもらってるんだから贅沢言わないの。しかも平日は管理人さんがご飯まで作ってくれるのよ。あんた料理とか出来るの!? これ以上言うと仕送りしないからね! だいたいあんたは子供の頃から」
宇佐 「ん!」(電話を切る)
宇佐M「まぁ、確かに。一人暮らししたくて無理通したのは俺だし。建物古いけど雰囲気は好きだし、それに・・・どの部屋なんだろ? 窓から顔出さないかな?」(女子エリアに近づきながら)
住子 「宇佐くん?」
宇佐 「!? の、の、覗こうなんて思ってないっスよ!? 顔出してくれないかなとか、あわよくば生着替えとかなんて全然思ってません! 全然全く!」
住子 「思ってるだけならいいわよ。お茶淹れたの、付き合ってくれない?」
居間でお茶を飲む二人
宇佐 「ふぅ・・・」
住子 「ご飯ここで食べるのよ。律っちゃんも一緒にね」
宇佐 「!?・・・そうっスか」
住子 「うふっ・・・・律っちゃんは手強いわよ?」
宇佐 「ぶはっ! ごほっ! ごほっ!」
住子 「あらあら!? 大丈夫!? ごめんなさい一度やってみたかったの! 恋愛ドラマで助言でもなんでもない意味深なだけのセリフをしたり顔で吐く女脇役~!」
宇佐 「へぇ、名演技っすね・・・」
住子 「律っちゃんは私の兄の孫なの。ちょっとマイペースだけど良い子だから仲良くしてあげてね」
宇佐 「もちろん」
住子 「あ、違うわ。こうじゃなくて」
宇佐 「?」
住子 「仲良くしようとせずに仲良くなって」(あさっての方向を見ながら)
宇佐 「それも女脇役的セリフですか」
場面変わって、男子専用トイレから出てくる宇佐。本を読みながら廊下を歩いてくる律を見つける。
宇佐M「仲良くなんて、めっちゃなりてぇよ。本、好きなんだな。もう少しで共同エリア・・・あれ?」
律 「ん~・・・はっ!・・・ん~・・・」(本を読みながら、早く歩いたり、ゆっくり歩いたり、驚いたりする様子が小動物っぽい)
宇佐M「なに、あれ♪ 本近い近い。髪さらさら。あぁ、なんて、癒される一時」
城崎 「宇っ佐く~ん! 荷物に布団無いけど、夜どうすんの?」
律 「?」
宇佐 「ちょ、声デカ! うちの親いい加減だから無しでいいっス」
城崎 「まだ夜寒いよ?」
宇佐 「いーですからあっち行って!」
城崎 「そーだ、川の字で寝る?」
宇佐 「やですよ! 間になに入るんスか!」
城崎 「じゃBの字で寝ようか?」
宇佐 「くそっ、寝方想像した」
城崎 「じゃ四十八の字」
宇佐 「なにその極めそうな数字! 無理なく寝るなら69とか!」
律 「・・・」
宇佐M「あ、俺のバカ・・・」
律 「!?」(急に近づく宇佐に驚いて)
宇佐 「ち、違うんです! 今のはその、言葉のアヤで~」
城崎 「宇佐くん! そこ、女子エリア・・・」
宇佐 「え? あ、あ、あ、あの、の、の~~~~~~~~~!!!!!!」(律にお尻を竹刀で叩かれる)
場面変わって、男子部屋。宇佐が横になっている。
宇佐M「俺の理想。穏やかで心地よい生活」
城崎 「ねぇ、宇佐くん。寒くない? ねぇ、宇佐くん。律っちゃんのケツ竹刀って絶妙な痛さじゃない?」
宇佐 「あんたホント黙っててくださいよ!!」
宇佐M「もう、諦めました」
数日後。男子部屋。
城崎 「ふっ、どうやって潜り込んだんだか。まぁいいや、出てこいよ。そこにいるのはわかってんだ。遊ぼうぜ?」
宇佐 「お断りします」
城崎 「はっ!? いるんだった! ささやかな妄想遊びが! ルームメイトにこんな弊害が」
宇佐 「いたたまれない俺の方が害を受けてますよ」
城崎 「宇佐くんも妄想劇くらいするだろう!?」
宇佐 「しません」
城崎 「ここは俺に任せて先に行け! とか」
宇佐 「しません」
城崎 「綺麗なお姉さんが『経験ないの? うっふ~ん♪ 教えてあげようか?』とか」
宇佐 「それは、ズルい・・・」
一段落して
城崎 「しっかし宇佐くん、順応早いね~」
宇佐 「三日も経てば慣れますよ」
城崎 「そう? 住人みんなとすぐ仲良くなれそうだね」
宇佐 「住子さんはともかく、河合先輩は無理だと思います」
城崎 「なんで?」
宇佐 「ケツ竹刀されてから目も合わせないし。学校でも無視だし。ニコリともしないし。無表情無関心過ぎませんか? あの人」
城崎 「え~? そうかな~? そんな印象なかったけど~? ケツ竹刀の時の顔とか最高じゃない!? 麻弓さんや彩花(さやか)ちゃんと話してる時もさ~」
宇佐 「誰っスか?」
城崎 「二人共旅行中だから会ってないっけ? OLの麻弓さんと女子大生の彩花(さやか)ちゃん。麻弓さんは写真があるよ」
宇佐 「おお!」(麻弓の写真を見る)
城崎 「イイ感じのお姉さんだよ~。妄想叶ったりして?」
宇佐 「うっ」(ちょっと恥ずかしがって)
住子さんがノックして入ってくる
住子 「城くん、お魚買ってきてくれない?」
城崎 「もっと傲慢にお願いします!」
住子 「あら、ごめんなさい。魚買ってこいよ、この豚野郎」
城崎 「御意!! ハァ、ハァ、ハァ、ハァ」
宇佐M「でも、この人の言うことだしなぁ・・・妄想なら一つ叶ってる。一人暮らし先に好みの女の子。でも現実は・・・しょっぱい」
夕方の川辺をぶらぶら歩いていると、一人の女性を発見する
宇佐M「もう暗くなるのに、女一人でこんなとこ・・・乳スゲェ! 酒の量もスゲ~。俺には手に負えなさそうなタイプだな・・・まだ飲むんかい!?」
麻弓 「うぅ、うぅ・・・んっ!(手から指輪を外す) っ!(指輪を川に投げようとするが投げられない) ううぅ、ううぅ、ううぅ・・・」
宇佐M「わっかりやすく失恋してるな~」
麻弓 「健二のバカヤローーー!! サイテー男ーーー!!」
宇佐M「こういうのほんとにやる人いるんだ」
麻弓 「お前が結婚する時は友人装って、二人でラブドール作ってる会社の株を買いましたね! そんな健二さんが選んだ人は空気読める嫁でしょうね(笑い) 男は結婚で一皮むけると言いますが、数年前に手術でむいたばかりなので気をつけてって電報打ってやる~~~~!!!!」
宇佐M「健二に同情。ほっとこう・・・あっ!」(麻弓が海に落ちそうになるのを見て)
麻弓 「うわっ!?」
宇佐 「あの! そんなとこいると危ないですよ! 足ふらふらだし」
宇佐M「あれ? この人どっかで?」
麻弓 「ふぅ・・・ガキにナンパされるほど、困ってないから」
宇佐 「!? 違いますよ! 俺は単に注意しただけで。そんな気、全く」
麻弓 「こんな童貞臭い奴にさえ見向きもされない私って・・・・」
宇佐M「うわっこの人、めんどくせえ&超無礼」
麻弓 「川で適度に溺れて罪の意識植え付けてやる~~~!!!」
宇佐 「うわあぁぁ! そんな気あった! ありました! 僕ってばうっかり~!」(麻弓の手を引っ張って止めながら)
川に飛び込むのはやめてくれたが
宇佐 「お姉さんは非っ常に魅力的ですが、僕には荷が重いというか」
麻弓 「重いって言うな~~!! うああああああああ!!!!!」(大泣きしながら)
宇佐M「ええっ!? ああ、もう・・・」
麻弓 「くそ~、ちょっと下半身新品だからって調子に乗んなよ~」
宇佐 「乗れねえよ! っつうか勝手に認定しないでください! ち、違いますから~!」(ウソ)
麻弓 「あのさ~、こんにゃくは食物だぞ~? 片栗粉も」
宇佐M「この人、最低」
麻弓 「腹減ったな~」
宇佐M「自由すぎる」
麻弓 「親子丼・・・親子丼食べたい・・・」
宇佐 「ちょっと、トランク忘れてますよ」
麻弓 「親子丼。住子さんの・・・」
宇佐M「? 今、住子さんって言った?」
宇佐 「はい、これ。ちゃんと持って。ゴミは捨てときますから、気をつけて」
麻弓 「お前・・・イイ奴だな」
宇佐 「え!?」(首に手を回されて、胸を押し付けられる)
麻弓 「なんか、初めて会った気がしないし」
宇佐M「うわっ!」
麻弓 「ねぇ、お姉さんが色々教えてやろうか?」
宇佐M「うっ、ううっ」
律が麻弓の後頭部を丸めたノートで叩く
律 「何してんですかこんなとこで」
宇佐M「河合先輩!?」
麻弓 「いてて・・・なんだよ、律っちゃん! 『なんちゃってー、妄想通り!? ドッキリ大成功!』なはずだったのに」
律 「お酒臭っ。また酔ってますね?」
麻弓 「これじゃまるで私が襲ってるみたいじゃん」
律 「みたいじゃなくて襲ってたでしょ。あの人、酔っ払うと色々ひどいから近づかない方がいいよ」(後半のセリフは宇佐に向かって)
宇佐 「手遅れな情報ありがとうございます。ところであの人ってまさか」
階段の中央の手すりに跨りながら
麻弓 「おーい! これめっちゃ楽しそうじゃね~~!?
宇佐 「何してんのあの人!?」
麻弓 「一番! 錦野麻弓! お股が擦れてアッってなっても頑張りまーっす! うっはっはっはっ!」
宇佐M「どこまで最低なんだ、あの人。っつかあんなべろべろで、着地で吹っ飛ばされるんじゃ!?
麻弓 「よーし! 行くぜ~!」
律 「っ!」(律が下で麻弓を受け止めようと仁王立ちする)
宇佐 「せんぱっ」
麻弓 「あ、何か怖いからやめる。あれ? ただでさえ辛いのに、なんでこんな怖いことやる羽目に? 意味わかんねー」
律 「・・・」(怒って麻弓に歩み寄る)
宇佐 「あっ、ああっ・・・」
麻弓 「うわっ、ちょっとなんで・・・うっ!」(律にべちべち殴られて、最後に足を踏み外す)
宇佐 「あっ! あぶなっ!」
麻弓 「うわあっ!」(麻弓の蹴りが宇佐の顔面にクリーンヒット)
場面変わって、河合荘
住子 「麻弓ちゃん! 酔うと色々見境ないから、外で飲まないって約束したわよね~!? 律っちゃんも気をつけないと。宇佐くんが庇ってくれたから良かったものの」
宇佐 「ああ、いえ。単に下敷きになっただけで」
城崎 「湿布貼っとこか」
宇佐M「写真、詐欺」
麻弓 「だって律っちゃんが突然殴ってきて」
律 「すいません、次から辞書投げつけます」
麻弓 「死ぬわ!」
住子 「やめなさ~~~い!!!」
律・麻弓「うっ!」
住子 「彼が出来てから落ち着いてたのに。こんなに荒れて。ケンカでもした? 旅行も明日までだったわよね~?」
麻弓 「ぐすっ・・・メール見ちゃった・・・あいつ、二股かけてた・・・あんな奴だと思わなかった・・・信じてたのに・・・」
住子 「麻弓ちゃん・・・ほんと男運悪いわね。はぁ」
律 「見る目が無いだけだと思う」
城崎 「でも~、前が三股、その前が四股だから進化はしてるんじゃ」
麻弓 「みんなひで~! 慰めろ~~~!!!」
宇佐M「この人の言うことはアテにならない」
住子 「はいはい、ご飯にしましょうね。ちょっと待っててね」
麻弓 「うああああ!! うああああああああああ!!!!」(大泣き)
夕食の準備が出来て
宇佐・律・城崎・麻弓「いただきま~す」
宇佐M「親子丼! あれ? 魚・・・」(麻弓の方を見る)
麻弓 「ぐすっ・・・おいしぃ・・・」
住子 「そう? うふっ」
律 「良かった」
宇佐 「もぐもぐ・・・うっ!」
住子 「傷しみる? 大丈夫?」
宇佐 「あ、いや、平気です、うっ・・・」
律 「ごめん・・・」
宇佐M「ほんとだ全然、無表情じゃないや」
麻弓 「お詫びに、後でおっぱいパフパフしてやんよ~」
宇佐 「ぶふぅぅぅぅぅ!!!!」
住子 「麻弓ちゃん!」
エンディングテーマ「My Sweet Shelter」
次回予告
宇佐 「もうすぐ連休っスね」
麻弓 「嫌なこと思い出させんな、宇佐」
宇佐 「え?」
城崎 「各地のデートスポットにあえて一人で出かけて切なくなる。なーんて、最高の過ごし方だよね」
麻弓 「うっさい!」(城崎を殴る)
城崎 「まじでっしゅ!」(麻弓に殴られる)
麻弓 「こうなったら怪しい骨董屋で手に入れた指輪で全世界の幸せなカップルを呪ってやる! ぬははははっ!」
宇佐 「麻弓さん! それ説明書に身につけた人が呪われるって!」
麻弓 「え? つけちゃったよ~?」
城崎 「なになに? 指輪をつけた者は思う人には思われず、思わぬ人にも思われず」
宇佐 「それってつまり」
律 「現状維持?」
終わり
キャスト
宇佐和成(うさ かずなり)♂:
河合 律(かわい りつ)♀:
城崎(しろさき)♂:
錦野麻弓(にしきの まゆみ)♀:
住子(すみこ)&宇佐の母親♀:
田神&警察官♂:
河合律と田神&警察官はセリフ少なめです。
【本編】
本を運びながら、図書室に向かう宇佐
宇佐M「中学の俺は、災難続きだった。あの3年間は忘れて、高校生活は心地よく、穏やかに過ごしたい。そして、知的で清楚な彼女と」
図書室の窓際には、本を読んでいるショートカットの女の子が座っている
宇佐M「そう。あんな彼女と、青春の日々を」
オープニングテーマ「いつかの、いくつかのきみとのせかい」
田神 「宇佐?」
宇佐 「はぁ・・・」
田神 「宇佐?」
宇佐 「田神」
田神 「図書委員仕事なんかさっさと終わらせて帰ろうぜ。そういや、今日からだっけ? 一人暮らし」
宇佐 「うん」
田神 「いいよな~。俺んちの親も転勤になんねぇかな~。アパートどんなの?」
宇佐 「それが、今日初めて行くんだよね。管理人さんには会ったけど」
田神 「はぁ? 何それ?」
宇佐 「前の人の荷物がどうたらで・・・あっ、帰っちゃった」
場面変わって、帰路。河合荘を目指す 宇佐。
宇佐M「贅沢は言わない。自由な新生活のためならば」
宇佐 「あそこを右」
宇佐M「古い家が多いな~。のどかで落ち着いてて。お、小学校。変な奴もいなさそうだ」
小学校を金網に頭を突っ込んで、校庭を見つめる城崎を姿を発見する
宇佐M「!? 変な人なう!・・・警察に電話」
金網から離れる城崎
宇佐M「!?」
城崎 「ふぅ・・・」
宇佐M「やべぇ! 気づかれた!」
城崎 「あれ~? 宇佐くん。小学校好きなの?」
宇佐 「誰が!? っていうかなんで俺の名前!?」
警察官「ちょっと君達。小学校を覗いてる変な男がいるって通報があったんだけど?」
城崎 「え?」(宇佐の方を見る)
宇佐 「あんただ! あんた!」
城崎 「え? 覗いたりしてないよ?」
宇佐 「金網の中に頭突っ込んでたじゃないっスか!?」
城崎 「こんな穴を見つけちゃったら、突っ込まざるをえないでしょう」
警察官「確かに。少年心も男心もくすぐられる状況ではあるな~」
宇佐 「何言ってるの、お巡りさん」
警察官「スーパーのカートでシャーっとやりたいとか。椅子の上で両手両足を伸ばしてクルクルしたいとか。そういった幾多の誘惑にみんな耐え忍んで、生きてるんじゃ~ないかな~」
宇佐 「いえ・・・僕は別に」
警察官「しかし、子供の安全に敏感な世の中だ。そういうことは・・・」
城崎 「いやいや! 頭はエロでい~っぱいですが、18歳になる女子校生以上の女子がみ~っちりで! 小学生が入る隙なんて無いですよ!」
警察官「人並みの倫理観はあるようだが」
宇佐M「ないよ!」
城崎 「どうせなら、駅前の階段に行きます。そんで全っ然見てないのに『何見てんだよおっさん』っと蔑んだ目で理不尽に睨まれたい!」
警察官「やっぱりあなた変ですね。ちょっと派出所まで来てください」
城崎 「え?」
警察官「さっさと来なさい」
宇佐M「今の内に・・・」(ダッシュで逃げる)
城崎 「あ! 宇佐くん! 待って~~~~!!!」
場面変わって、河合荘の前。住子が玄関前を掃除している。そこに宇佐が走ってくる。
住子 「どうしたの? 顔色悪いわよ?」
宇佐 「いえ、ちょっと、変な人がいて・・・はぁ、はぁ・・・」(息を切らしながら)
住子 「まぁ、物騒ね。早く家にお上がりなさいな」
宇佐M「しかし、なんであの人、俺の名前を・・・ああ、いかんいかん。ケチがつくから、もう忘れよう」
河合荘の廊下を歩きながら、宇佐が尋ねる。
宇佐 「管理人さん」
住子 「住子さんって呼んでね」
宇佐 「住子さん。今日から、よろしくお願いします」
住子 「こちらこそ。想像していたより、古くて驚いたでしょ」
宇佐 「いや、なんか良い感じです」
住子 「うふふっ、ありがと。まずはお茶でも飲む? お部屋見る?」
宇佐 「あ、部屋見たいっス!」
部屋に到着
宇佐 「広っ! あれ? 四畳半じゃ?」
住子 「ああ、それはね。こうして、こうで、四畳半♪ うふふふっ」(パーテーションで仕切る)
宇佐 「あのそれって・・・」
城崎 「ひどいな~」(宇佐の肩に手を置く)
宇佐 「!?」
城崎 「宇佐くん」
宇佐 「ギャーーーーーーーーーーーー!!!!!!!!! なんでここに!!??」
城崎 「住人だもの」」
宇佐 「なんで俺の名前!?」
城崎 「住子さんから聞いたし。写真も」
宇佐 「ルームメイトってまさかこの人と!? 仕切っただけの部屋に!」
住子 「確かに壁は薄いわね~。うふふふふふっ」
宇佐 「いや、そいつカーテンの仲間ですから! やですよ! こんな人と!」
住子 「そんな、よく知らないでしょう?」
宇佐 「そりゃ~」
住子 「大丈夫よ。城くんは変態だけど、基本無害で、むしろ害を与えられたいタイプだから。ヘタレでMでチキンカツが好きなチキンカス。うふふっ」
宇佐 「よく知った方が酷いじゃないっスか」
城崎 「住子さんの言葉は控えめなようで辛辣なのがいいな~」
宇佐M「ダメだ! ここで流されちゃ、中学の二の舞だ!」
宇佐 「とにかく親に確認して、今日は友達ん家に泊まります」(部屋から出て行く)
住子 「あ! 待って!」
廊下を歩いて、玄関に向かう宇佐
宇佐M「俺は、穏やかな暮らしがしたいんだ。そして、知的で、清楚な」
玄関の戸を開けると、そこに律が立っている。
宇佐 「!?」
宇佐M「例えば、こんな彼女と、青春の日々を・・・」
城崎 「ああ、律っちゃん」
住子 「おかえりなさい」
宇佐M「これはフラグか? それとも罠か?」
住子 「律っちゃん。前にも話したけど、今日から住人になる宇佐くん」
宇佐 「よ、よろしくお願いします!」
城崎 「こちらこそ! 俺は城崎。城って呼んで! 出来るだけ、犬っぽく」
宇佐 「あなたは別によろしくしたくないです」
律 「河合 律です」
住子 「北高の2年生なの。宇佐くんも北高よね?」
宇佐 「あ、はい!」
宇佐M「信じらんねぇ! 超好みの女子と同じアパートなんて!」
宇佐 「あの、さっき図書室で会いましたよね?」
律 「・・・?」
宇佐 「あ、いや、一方的に見ただけっす」
宇佐M「目が合ったと思ったのに・・・」
廊下を歩いて部屋に向かう律の後ろを宇佐が追いかけながら
宇佐 「あの、同じ高校って偶然ですね? 俺、1年なんですけど、まだ慣れてなくて。この辺のことよく知らないんで、色々教えてくださ」
宇佐の目の前に竹刀が飛び込んでくる
宇佐 「!?」
律 「・・・女子エリア」
宇佐 「はい!?」
住子 「まだ話してなかったわね。ウチは男女で行動範囲を制限してるの」
宇佐 「あの、これって制限されてるの男だけですよね?」(間取りを見ながら)
住子 「トイレとお風呂。男女別々だから気をつけてね?」
宇佐 「同じ住居でとんだ格差社会ですね」
住子 「若者が格差を学ぶのは大事よ~。下から底辺まで」
城崎 「下ばっかり~♪ 喜んで! 下から学ぶってワードからして卑猥~♪ どっきどっきどっきどっき♪」
宇佐 「あんたちょっと黙っててくださいよ! 女の子いるのにこんな人危ないんじゃ」
住子 「大丈夫よ。要所要所にグッズが置いてあるから」
女子エリアの廊下には竹刀をはじめ、金属バット・木刀・スタンガン・催涙スプレー・釘バット・薙刀が置いてある。
宇佐 「女子エリア超おっかね~」
城崎 「でも良かった。現実受け入れてくれたみたいで」
宇佐 「え?」
城崎 「よろしく、ルームメイト! お互い干渉せず、時々物理的に縛ってくれ」
宇佐 「あぁ、すいません無理です。この現実」
城崎 「さっきまでノリノリだったのに~」
住子 「ね~」
宇佐 「そ、それはとにかく保留です!」
場面変わって、河合荘の縁側で母と会話している宇佐。
宇佐の母親「今更何言ってんのよ~。一人暮らし出来るなら、どんな部屋でも文句言わないって約束したでしょ? 同室の人も個性的で面白いって聞いたわ~」
宇佐 「あれを個性で流さないでくれる~。っつうか他人が同室な時点で一人暮らしじゃねぇじゃん!」
宇佐の母親「あんたほんと細かいこと気にするわね~」
宇佐 「母さんが荒いんだよ! そのいい加減な性格のせいで俺がどんなに苦労したか!?」
宇佐の母親「あ~、もう五月蝿いわね~。特別に安くしてもらってるんだから贅沢言わないの。しかも平日は管理人さんがご飯まで作ってくれるのよ。あんた料理とか出来るの!? これ以上言うと仕送りしないからね! だいたいあんたは子供の頃から」
宇佐 「ん!」(電話を切る)
宇佐M「まぁ、確かに。一人暮らししたくて無理通したのは俺だし。建物古いけど雰囲気は好きだし、それに・・・どの部屋なんだろ? 窓から顔出さないかな?」(女子エリアに近づきながら)
住子 「宇佐くん?」
宇佐 「!? の、の、覗こうなんて思ってないっスよ!? 顔出してくれないかなとか、あわよくば生着替えとかなんて全然思ってません! 全然全く!」
住子 「思ってるだけならいいわよ。お茶淹れたの、付き合ってくれない?」
居間でお茶を飲む二人
宇佐 「ふぅ・・・」
住子 「ご飯ここで食べるのよ。律っちゃんも一緒にね」
宇佐 「!?・・・そうっスか」
住子 「うふっ・・・・律っちゃんは手強いわよ?」
宇佐 「ぶはっ! ごほっ! ごほっ!」
住子 「あらあら!? 大丈夫!? ごめんなさい一度やってみたかったの! 恋愛ドラマで助言でもなんでもない意味深なだけのセリフをしたり顔で吐く女脇役~!」
宇佐 「へぇ、名演技っすね・・・」
住子 「律っちゃんは私の兄の孫なの。ちょっとマイペースだけど良い子だから仲良くしてあげてね」
宇佐 「もちろん」
住子 「あ、違うわ。こうじゃなくて」
宇佐 「?」
住子 「仲良くしようとせずに仲良くなって」(あさっての方向を見ながら)
宇佐 「それも女脇役的セリフですか」
場面変わって、男子専用トイレから出てくる宇佐。本を読みながら廊下を歩いてくる律を見つける。
宇佐M「仲良くなんて、めっちゃなりてぇよ。本、好きなんだな。もう少しで共同エリア・・・あれ?」
律 「ん~・・・はっ!・・・ん~・・・」(本を読みながら、早く歩いたり、ゆっくり歩いたり、驚いたりする様子が小動物っぽい)
宇佐M「なに、あれ♪ 本近い近い。髪さらさら。あぁ、なんて、癒される一時」
城崎 「宇っ佐く~ん! 荷物に布団無いけど、夜どうすんの?」
律 「?」
宇佐 「ちょ、声デカ! うちの親いい加減だから無しでいいっス」
城崎 「まだ夜寒いよ?」
宇佐 「いーですからあっち行って!」
城崎 「そーだ、川の字で寝る?」
宇佐 「やですよ! 間になに入るんスか!」
城崎 「じゃBの字で寝ようか?」
宇佐 「くそっ、寝方想像した」
城崎 「じゃ四十八の字」
宇佐 「なにその極めそうな数字! 無理なく寝るなら69とか!」
律 「・・・」
宇佐M「あ、俺のバカ・・・」
律 「!?」(急に近づく宇佐に驚いて)
宇佐 「ち、違うんです! 今のはその、言葉のアヤで~」
城崎 「宇佐くん! そこ、女子エリア・・・」
宇佐 「え? あ、あ、あ、あの、の、の~~~~~~~~~!!!!!!」(律にお尻を竹刀で叩かれる)
場面変わって、男子部屋。宇佐が横になっている。
宇佐M「俺の理想。穏やかで心地よい生活」
城崎 「ねぇ、宇佐くん。寒くない? ねぇ、宇佐くん。律っちゃんのケツ竹刀って絶妙な痛さじゃない?」
宇佐 「あんたホント黙っててくださいよ!!」
宇佐M「もう、諦めました」
数日後。男子部屋。
城崎 「ふっ、どうやって潜り込んだんだか。まぁいいや、出てこいよ。そこにいるのはわかってんだ。遊ぼうぜ?」
宇佐 「お断りします」
城崎 「はっ!? いるんだった! ささやかな妄想遊びが! ルームメイトにこんな弊害が」
宇佐 「いたたまれない俺の方が害を受けてますよ」
城崎 「宇佐くんも妄想劇くらいするだろう!?」
宇佐 「しません」
城崎 「ここは俺に任せて先に行け! とか」
宇佐 「しません」
城崎 「綺麗なお姉さんが『経験ないの? うっふ~ん♪ 教えてあげようか?』とか」
宇佐 「それは、ズルい・・・」
一段落して
城崎 「しっかし宇佐くん、順応早いね~」
宇佐 「三日も経てば慣れますよ」
城崎 「そう? 住人みんなとすぐ仲良くなれそうだね」
宇佐 「住子さんはともかく、河合先輩は無理だと思います」
城崎 「なんで?」
宇佐 「ケツ竹刀されてから目も合わせないし。学校でも無視だし。ニコリともしないし。無表情無関心過ぎませんか? あの人」
城崎 「え~? そうかな~? そんな印象なかったけど~? ケツ竹刀の時の顔とか最高じゃない!? 麻弓さんや彩花(さやか)ちゃんと話してる時もさ~」
宇佐 「誰っスか?」
城崎 「二人共旅行中だから会ってないっけ? OLの麻弓さんと女子大生の彩花(さやか)ちゃん。麻弓さんは写真があるよ」
宇佐 「おお!」(麻弓の写真を見る)
城崎 「イイ感じのお姉さんだよ~。妄想叶ったりして?」
宇佐 「うっ」(ちょっと恥ずかしがって)
住子さんがノックして入ってくる
住子 「城くん、お魚買ってきてくれない?」
城崎 「もっと傲慢にお願いします!」
住子 「あら、ごめんなさい。魚買ってこいよ、この豚野郎」
城崎 「御意!! ハァ、ハァ、ハァ、ハァ」
宇佐M「でも、この人の言うことだしなぁ・・・妄想なら一つ叶ってる。一人暮らし先に好みの女の子。でも現実は・・・しょっぱい」
夕方の川辺をぶらぶら歩いていると、一人の女性を発見する
宇佐M「もう暗くなるのに、女一人でこんなとこ・・・乳スゲェ! 酒の量もスゲ~。俺には手に負えなさそうなタイプだな・・・まだ飲むんかい!?」
麻弓 「うぅ、うぅ・・・んっ!(手から指輪を外す) っ!(指輪を川に投げようとするが投げられない) ううぅ、ううぅ、ううぅ・・・」
宇佐M「わっかりやすく失恋してるな~」
麻弓 「健二のバカヤローーー!! サイテー男ーーー!!」
宇佐M「こういうのほんとにやる人いるんだ」
麻弓 「お前が結婚する時は友人装って、二人でラブドール作ってる会社の株を買いましたね! そんな健二さんが選んだ人は空気読める嫁でしょうね(笑い) 男は結婚で一皮むけると言いますが、数年前に手術でむいたばかりなので気をつけてって電報打ってやる~~~~!!!!」
宇佐M「健二に同情。ほっとこう・・・あっ!」(麻弓が海に落ちそうになるのを見て)
麻弓 「うわっ!?」
宇佐 「あの! そんなとこいると危ないですよ! 足ふらふらだし」
宇佐M「あれ? この人どっかで?」
麻弓 「ふぅ・・・ガキにナンパされるほど、困ってないから」
宇佐 「!? 違いますよ! 俺は単に注意しただけで。そんな気、全く」
麻弓 「こんな童貞臭い奴にさえ見向きもされない私って・・・・」
宇佐M「うわっこの人、めんどくせえ&超無礼」
麻弓 「川で適度に溺れて罪の意識植え付けてやる~~~!!!」
宇佐 「うわあぁぁ! そんな気あった! ありました! 僕ってばうっかり~!」(麻弓の手を引っ張って止めながら)
川に飛び込むのはやめてくれたが
宇佐 「お姉さんは非っ常に魅力的ですが、僕には荷が重いというか」
麻弓 「重いって言うな~~!! うああああああああ!!!!!」(大泣きしながら)
宇佐M「ええっ!? ああ、もう・・・」
麻弓 「くそ~、ちょっと下半身新品だからって調子に乗んなよ~」
宇佐 「乗れねえよ! っつうか勝手に認定しないでください! ち、違いますから~!」(ウソ)
麻弓 「あのさ~、こんにゃくは食物だぞ~? 片栗粉も」
宇佐M「この人、最低」
麻弓 「腹減ったな~」
宇佐M「自由すぎる」
麻弓 「親子丼・・・親子丼食べたい・・・」
宇佐 「ちょっと、トランク忘れてますよ」
麻弓 「親子丼。住子さんの・・・」
宇佐M「? 今、住子さんって言った?」
宇佐 「はい、これ。ちゃんと持って。ゴミは捨てときますから、気をつけて」
麻弓 「お前・・・イイ奴だな」
宇佐 「え!?」(首に手を回されて、胸を押し付けられる)
麻弓 「なんか、初めて会った気がしないし」
宇佐M「うわっ!」
麻弓 「ねぇ、お姉さんが色々教えてやろうか?」
宇佐M「うっ、ううっ」
律が麻弓の後頭部を丸めたノートで叩く
律 「何してんですかこんなとこで」
宇佐M「河合先輩!?」
麻弓 「いてて・・・なんだよ、律っちゃん! 『なんちゃってー、妄想通り!? ドッキリ大成功!』なはずだったのに」
律 「お酒臭っ。また酔ってますね?」
麻弓 「これじゃまるで私が襲ってるみたいじゃん」
律 「みたいじゃなくて襲ってたでしょ。あの人、酔っ払うと色々ひどいから近づかない方がいいよ」(後半のセリフは宇佐に向かって)
宇佐 「手遅れな情報ありがとうございます。ところであの人ってまさか」
階段の中央の手すりに跨りながら
麻弓 「おーい! これめっちゃ楽しそうじゃね~~!?
宇佐 「何してんのあの人!?」
麻弓 「一番! 錦野麻弓! お股が擦れてアッってなっても頑張りまーっす! うっはっはっはっ!」
宇佐M「どこまで最低なんだ、あの人。っつかあんなべろべろで、着地で吹っ飛ばされるんじゃ!?
麻弓 「よーし! 行くぜ~!」
律 「っ!」(律が下で麻弓を受け止めようと仁王立ちする)
宇佐 「せんぱっ」
麻弓 「あ、何か怖いからやめる。あれ? ただでさえ辛いのに、なんでこんな怖いことやる羽目に? 意味わかんねー」
律 「・・・」(怒って麻弓に歩み寄る)
宇佐 「あっ、ああっ・・・」
麻弓 「うわっ、ちょっとなんで・・・うっ!」(律にべちべち殴られて、最後に足を踏み外す)
宇佐 「あっ! あぶなっ!」
麻弓 「うわあっ!」(麻弓の蹴りが宇佐の顔面にクリーンヒット)
場面変わって、河合荘
住子 「麻弓ちゃん! 酔うと色々見境ないから、外で飲まないって約束したわよね~!? 律っちゃんも気をつけないと。宇佐くんが庇ってくれたから良かったものの」
宇佐 「ああ、いえ。単に下敷きになっただけで」
城崎 「湿布貼っとこか」
宇佐M「写真、詐欺」
麻弓 「だって律っちゃんが突然殴ってきて」
律 「すいません、次から辞書投げつけます」
麻弓 「死ぬわ!」
住子 「やめなさ~~~い!!!」
律・麻弓「うっ!」
住子 「彼が出来てから落ち着いてたのに。こんなに荒れて。ケンカでもした? 旅行も明日までだったわよね~?」
麻弓 「ぐすっ・・・メール見ちゃった・・・あいつ、二股かけてた・・・あんな奴だと思わなかった・・・信じてたのに・・・」
住子 「麻弓ちゃん・・・ほんと男運悪いわね。はぁ」
律 「見る目が無いだけだと思う」
城崎 「でも~、前が三股、その前が四股だから進化はしてるんじゃ」
麻弓 「みんなひで~! 慰めろ~~~!!!」
宇佐M「この人の言うことはアテにならない」
住子 「はいはい、ご飯にしましょうね。ちょっと待っててね」
麻弓 「うああああ!! うああああああああああ!!!!」(大泣き)
夕食の準備が出来て
宇佐・律・城崎・麻弓「いただきま~す」
宇佐M「親子丼! あれ? 魚・・・」(麻弓の方を見る)
麻弓 「ぐすっ・・・おいしぃ・・・」
住子 「そう? うふっ」
律 「良かった」
宇佐 「もぐもぐ・・・うっ!」
住子 「傷しみる? 大丈夫?」
宇佐 「あ、いや、平気です、うっ・・・」
律 「ごめん・・・」
宇佐M「ほんとだ全然、無表情じゃないや」
麻弓 「お詫びに、後でおっぱいパフパフしてやんよ~」
宇佐 「ぶふぅぅぅぅぅ!!!!」
住子 「麻弓ちゃん!」
エンディングテーマ「My Sweet Shelter」
次回予告
宇佐 「もうすぐ連休っスね」
麻弓 「嫌なこと思い出させんな、宇佐」
宇佐 「え?」
城崎 「各地のデートスポットにあえて一人で出かけて切なくなる。なーんて、最高の過ごし方だよね」
麻弓 「うっさい!」(城崎を殴る)
城崎 「まじでっしゅ!」(麻弓に殴られる)
麻弓 「こうなったら怪しい骨董屋で手に入れた指輪で全世界の幸せなカップルを呪ってやる! ぬははははっ!」
宇佐 「麻弓さん! それ説明書に身につけた人が呪われるって!」
麻弓 「え? つけちゃったよ~?」
城崎 「なになに? 指輪をつけた者は思う人には思われず、思わぬ人にも思われず」
宇佐 「それってつまり」
律 「現状維持?」
終わり