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台本置き場

GREEN ~秋空のスクリーン~ scene.4「君の瞳に恋してる」

2017-02-15 05:01:30 | 台本

GREEN ~秋空のスクリーン~ scene.4「君の瞳に恋してる」


【キャスト一覧】

小野 真治 ♂:
水野 真琴 ♀:
桜井 茜  ♀:
藤原 由紀恵♀:
本山 浩一 ♂:
中田 英明 ♂:


詳細なキャラ説明は一話を参照してください。
GREEN ~秋空のスクリーン~ scene.1「さよならゲーム」


【GREEN ~秋空のスクリーン~ 全4話】

GREEN ~秋空のスクリーン~ scene.2「シーズ・ソー・ラブリー」
GREEN ~秋空のスクリーン~ scene.3「好きと言えなくて」
GREEN ~秋空のスクリーン~ scene.4「君の瞳に恋してる」


【本編】


  《真琴の家の前》


SE:チャイム音 何度も鳴らす

真治 「おかしいな・・・真琴が居留守を使うとしても雅志君が出てくるはずなんだけど」

SE:ドアのノック音

真治 「まだそんなに遅い時間じゃないから、真琴のお母さんは帰ってきてないよな

SE:ドアのノック音 何度も叩く   

真治 「こんばんは! こんばんは~! こんばんは~!!
    はぁ・・・ダメ、かなぁ・・・」

SE:ドアが開く音

真治 「あっ、真琴」

真琴 「ちょっと、近所迷惑よ」

真治 「真琴、ごめん。ちょっと話を聞いてほしいんだ」

真琴 「こんな時間に押しかけて来て、どういうつもり?」

真治 「頼む! ちょっとだけでいいから」


  《真琴が真治を家に招き入れる》


真治 「ありがとう」

真琴 「静かにね」

真治 「あっ、ごめん」

SE:ドアを閉める音 鍵をかける音

  《階段を上がり、真琴の部屋に向かう》


真治 「あれ?雅志君は?」

真琴 「お母さんと一緒に田舎に行ってる。取材旅行のついでなんだって」

真治 「真琴は行かなかったんだ? 一緒に行けば良かったのに」

真琴 「もう、撮影があるでしょう」

真治 「あ、そうか・・・」


  《真琴の部屋のドアを開ける》


真琴 「はい、どうぞ」

真治 「あ、うん。お邪魔します」


  《部屋に入り、ドアを閉める》


真治 「ねぇ、真琴」

真琴 「・・・」

真治 「真琴、ごめん。本当に悪かったと思ってる」

真琴 「・・・」

真治 「真琴、ちょっと聞いてほしいんだ」

真琴 「呼び捨てにしないで。その辺に座ったら?」

真治 「う、うん」

真琴 「で、何? 用が終わったら、さっさと帰ってね」

真治 「いや、とにかく、謝りたくて」

真琴 「今更何を謝るの? 茜ちゃんにキスしたこと? それを平気な顔で私に話したこと?」

真治 「それもあるけど」

真琴 「それとも、私と別れて茜ちゃんと付き合うことにした? だったら謝る必要なんかないわよ。
    ほんと、それがいいかもね。あの子なら私なんかよりずっと素直だよ。
    先輩、先輩って、きっと何でも許してくれるわよ」

真治 「やめてよ、水野さん。僕は、そんな話をしに来たんじゃない」

真琴 「何よ、おとなしそうな顔して。君のことを陰でコソコソ狙ってるんだわ!
    それで、都合が悪くなるとすぐ泣いて、ズルイ女!!」

真治 「茜ちゃんを悪く言うのは止せったら!」

真琴 「やっぱり、庇うんだ」

真治 「そうじゃないって」

真琴 「ねぇ、君、何しに来たの? 私に謝りに来たんじゃなかったの?」

真治 「もちろん、謝りに来たんだよ」

真琴 「どこが謝ってるのよ! もう帰って!」

真治 「どうして茜ちゃんのことを持ち出すんだ。
    彼女の気持ちがどうであれ、僕の君を想う気持ちに変わりはないのに!」

真琴 「出てって! ねぇ! 出てってよ!!」

真治 「水野さん、落ち着いて! 話を聞いて!」

真琴 「話なんかしたくないの! 理屈ばっかり言って! バカッ! バカバカッ!」

真治 「どうして分かってくれないんだ! 僕は!」

真琴 「私の気持ちは? 分かってるの?」

真治 「だから、分かろうと思って。でも、そのためには話し合わなきゃ」

真琴 「話し合って、何が分かるのよ!?」

真治 「水野さん・・・」

真琴 「・・・・・・」

真治 「水野さん、どうしてそんなに怒ってるの?」

真琴 「・・・」

真治 「僕のこと、嫌いになったの?」

真琴 「君が、私のこと嫌いになったんじゃないの?」

真治 「いや、好きだ」

真琴 「ウソ」

真治 「嘘なもんか。何度も言ったじゃないか。水野さんは、僕の理想の」

真琴 「そんなの、君が勝手に思い込んでるだけじゃない。私、名無しのヒロインなんかじゃないよ?
    普通の女の子だよ? そんな、君が思っているような理想の女の子じゃないよ」

真治 「そんなことは分かってるよ」

真琴 「分かってないよ!」

真治 「違うんだ、水野さん。きっかけは、そうだったかもしれないけど。
    思い出してほしい。いつか保健室で僕が君に告白した時のことを。
    あの時、君は僕に訊いたよね? 僕が水野さんのことを好きになったこと。
    映画に出演してほしいと思ったこと。どっちが先なのかって」

真琴 「・・・・・・」    

真治 「僕は、水野さんに出演してほしいと思ったのが先だと答えた。
    好きになったのは、その後なんだ。名無しのヒロインはきっかけに過ぎない」

真琴 「私、嫌な子よね」

真治 「そんなことないよ」

真琴 「ウソ」

真治 「一体、何が君をそんなに苦しめているの?
    そして、それは僕のせいなんだろうか」

真琴 「・・・・・・」

真治 「それを分かりたいんだ、真剣に。鈍感なことは謝るよ。
    でも、だからこそ教えてほしい。二度と君を苦しめないためにも」

真琴 「綺麗事言って」

真治 「ねぇ、僕には君が必要なんだよ」

真琴 「女優として必要なだけでしょ? いつだってそう、映画映画で、
    カメラを通して見る私にしか興味ないんでしょ!?」

真治 「違う! 僕は、一人の女性としての君が好きなんだ!」

真琴 「ごめんね、現実の私はこんなんで。
    幻滅させちゃったよね、茜ちゃんには酷いこと言うし。真治にも」

真治 「だから違うんだ! あれは、誰が悪いわけでもないよ・・・」

真琴 「ふ~ん、君は全然悪くないんだ?」

真治 「いや、それは、悪かったけど」

真琴 「それに、真治は私が悪いって言ったじゃない!」

真治 「そんなことは言ってないよ!」

真琴 「言ったじゃない!!」

真治 「・・・真琴、ごめん」

真琴 「・・・・・・」

真治 「ほんとにごめん。確かに、理屈じゃないよね」

真琴 「知らない」

真治 「ねぇ、水野さん。僕を見て」

真琴 「見てるよ」

真治 「僕は君が好きなんだ」

真琴 「そう、ありがとう」

真治 「目をそらさないで」

真琴 「・・・」

真治 「僕は君が好きなんだ」

真琴 「分かったわよ」

真治 「僕は君が好きだ」

真琴 「はいはい」

真治 「僕は君が好きだ」

真琴 「わっ、分かったったら」

真治 「君が好きだ」

真琴 「もう、いいよ・・・」

真治 「君が好きだ」

真琴 「・・・」

真治 「君が好きなんだ」

真琴 「・・・」

真治 「君が好きなんだ」

真琴 「やめて、そんな嘘つかないで! そんなこと言う柄じゃないでしょ!?」

真治 「・・・好きだ」

真琴 「ぐすっ ぐすっ」(泣き始める)

真治 「君が好きだ」

真琴 「ぐすっ ぐすっ・・・」

真治 「愛してる」

真琴 「ぐすっ ぐすっ・・・うわあああん!」

真治 「?」

真琴 「分かんない・・・自分でも何で怒ってるのか、分かんないの・・・
    ごめん、ごめんなさい! 真治! ぐすっ ぐすっ・・・」

真治 「僕にもよく分からないよ、真琴」

真琴 「ぐすっ、ぐすっ、ぐすっ・・・・・・」


  《ベッドの中》


真琴 「うふっ、変なの。さっきまで私たちケンカしてたのに。
    今は真治がそばにいることが、すごく嬉しいの」

真治 「僕もだ」

真琴 「ふふっ。なんだか、おかしいね。でも、幸せ」

真治 「真琴」


  《しばらく経って》


真琴 「ほっぺた、まだ痛む?」

真治 「いや、別に」

真琴 「ごめんね。昼間、おもいっきり殴っちゃって」

真治 「気にしないでいいよ」

真琴 「茜ちゃんの言うとおりかも。私、ちょっと浮かれてたの。
    っていうか、甘えてみたかったのかも」

真治 「甘えて?」

真琴 「真治が」

真治 「僕が?」

真琴 「誰にでも優しいから。何か不安になっちゃって。
    わざとああいう態度とっちゃったのかもしれない」

真治 「だとしたら、本当に僕のせいだね。ごめん」

真琴 「ううん、謝らないで。後から考えてみて、そうだったのかな~ってだけだから」

真治 「僕は、もっともっと、真琴の気持ちを分かりたい」

真琴 「ごめんね。理屈にならないことばっかり言って」

真治 「いや」

真琴 「え?」

真治 「分かりたいんだ。その、理屈じゃないこと」

真琴 「ふふっ。すごく分かってくれる気がするよ、今は」

真治 「そうかな?」

真琴 「うん!」




真琴 「明日、茜ちゃんに謝っておく」

真治 「うん」

真琴 「真治・・・ありがとう」


  《映画部 部室 全員集まっている》


本山M「ふぅ・・・ってなわけで。ああ、俺だよ、天才の本山。
    なんだかんだ言って、やっぱり元鞘(モトサヤ)っていうか
    落ち着くべきところに落ち着いたっていうか
    雨降って地固まるというか」

茜  「本山先輩? 何ブツブツ言ってるんですか?」

本山 「ん~? っと、おお! 茜ちゃ~ん! はっはっはっ!
    天才はなかなか理解されないものなんだよ」

茜  「そう、何ですか?」

由紀恵「うふふふっ。本山君は相変わらずね」

本山 「な、なんスか~それ~」

真治 「本山君! もう何曲かあがってる? そろそろ前半の仮編集に入れるから
    曲があったらあててみたいんだけど」

中田 「ん? どうだろうな。本山は土壇場でまとめあげてくるタイプだからな」

本山 「チッチッチッチッ、部長さん。日々成長するこの天才本山をなめちゃ~いけませんぜ~」

真琴 「ええ~! じゃあ、もう曲出来てるの?」

本山 「な~によ、真琴ちゃ~ん。そんなに驚くことねぇじゃんよ」

真琴 「だって、ねぇ?」

茜  「ねぇ」

本山 「ガッ! 茜ちゃんまでひっで~な~」

由紀恵「うふふっ。じゃあ、聞かせてくれないかしら? その天才さんの華麗なる作品ってやつを」

本山 「え? 今? ここで? みんなで聞くの?」

由紀恵「天才、なんでしょ?」

本山 「そりゃ~そうっスけど・・・何か照れるな~」

中田 「ほう、お前でも照れることがあるのか」

真治 「部長。それはいくらなんでも言いすぎですよ」


  《本山以外 みんな笑う》


本山M「チッ、全く。凡人どもが天才を甘く見やがって。待ってろよ。
    今、溢れんばかりの才能を結実させた珠玉の名曲たちを聞かせてやるからな。
    腰抜かすなよ? さて、ディスク1をセットしてっと。
    さぁ、これを聞けば、みんな黙っちまうぞ~。
    それでは、イッツア ミュージック! スタート!」





scene.4   終




GREEN ~秋空のスクリーン~ scene.3「好きと言えなくて」

2017-02-15 04:54:39 | 台本
GREEN ~秋空のスクリーン~ scene.3「好きと言えなくて」


【キャスト一覧】


小野 真治 ♂:
桜井 茜  ♀:
藤原 由紀恵♀:
本山 浩一 ♂:
中田 英明 ♂:


詳細なキャラ説明は一話を参照してください。
GREEN ~秋空のスクリーン~ scene.1「さよならゲーム」


【GREEN ~秋空のスクリーン~ 全4話】

GREEN ~秋空のスクリーン~ scene.2「シーズ・ソー・ラブリー」
GREEN ~秋空のスクリーン~ scene.3「好きと言えなくて」
GREEN ~秋空のスクリーン~ scene.4「君の瞳に恋してる」


【本編】


本山M「自主制作映画の撮影中に勃発した美少女同士の一騎討ち~。
    な~んてな、ウッス! 俺、本山。忘れないでくれよ! 天才の本山。
    なぜか二人の美少女に好かれてる映画バカの真治がね~、
    女優の真琴ちゃんと付き合ってるくせに部員の茜ちゃん相手にまぁ~、
    早く言やぁどっちつかずの態度をとっちゃったわけだよ。
    本人真面目な奴だから全然そんなつもりはないんだろうけどさ、
    女心が分からないっていうか、困ったもんだよな。
    ともあれ、真治のことを諦めきれない茜ちゃんを
    うまいこと慰めてやったまではいいんだけど、
    茜ちゃんにキスしたことまで真琴ちゃんに話しちゃったってんだからもう大変・・・。
    さて、放課後。もちろん俺は部室に向かったね。
    ここまで来たら最後まで見届けなきゃしょうがんねえ!」



《タイトルコール》

由紀恵「GREEN ~秋空のスクリーン~ 第3話『好きと言えなくて』」


《映画部 部室》


本山 「ウィ~~~ッス!」

由紀恵「あら本山君、おはよう」

中田 「お、本山かぁ」

本山 「どうっスか? 連中は来てます?」

中田 「う~ん、いやまだ来ていない」

由紀恵「まぁ、まだ早いから。これから来るんじゃない?」

本山 「はぁ・・・そうっスかねぇ~」

真治 「おはようございます」

本山 「おおう! 真治! 真琴ちゃんはどうしたよ?」

真治 「いや、それが・・・」

由紀恵「まだ仲直り出来ないの?」

真治 「はい、すみません。なんかますます怒らせちゃったみたいで。
    さっきの様子では、今日の撮影には来てもらえないんじゃないかと・・・」

中田 「ん? では、捜してくればいいだろう」

真治 「はいっ、すみませんけどちょっと行ってきます」

由紀恵「頑張ってね」


  《真司が部室を出て行く》


中田 「今日の撮影は中止のようだな」

由紀恵「こればっかりは、仕方ないわよね」

中田 「うん。今のところスケジュールにも余裕があるし中途半端なままにしておくよりも、
    みんながしっかり納得いくまで話し合った方がいいだろう」

由紀恵「へぇ、中田君、意外とそういうことに理解あるんだ」

中田 「意外か? うん・・・まあいい、俺は暗室でスチールでも現像することにしよう。後は頼む」

由紀恵「はいはい」

本山 「へぇ~、あんなところに暗室があったんだ」

由紀恵「暗幕で囲っただけの簡単なやつだけどね」

本山 「部長さんって、写真までやってたんっスねぇ」

由紀恵「確か、最初は普通のカメラから始めたって言ってたわ」

本山 「ふ~ん・・・じゃ、由紀恵さん。俺もお先に失礼するっス」

由紀恵「そう? 私はもう少し待ってみるわね」

本山 「連中が戻って来てあれこれ言ってたら、後で教えてくださいよ?」

由紀恵「なぁに? 野次馬根性? 趣味悪いわねぇ」

本山 「うわっ!? 心外だなぁ、これでも心配してるんっスよ~?」

由紀恵「うふふっ、そうなの?」

本山 「だって、ねぇ。どうせ、あれでしょ? 仲が良いほどなんとやらって」

由紀恵「本当にね。そうだといいんだけど」

本山 「じゃ、失礼しや~~っス!」

由紀恵「また明日ね」


  《本山が部室を出て行く》


本山M「本当は俺も待っていたかったんだけどさ。まぁ、天才は何かと忙しいんだよ。
    ってなわけで、後は由紀恵さんから聞いた話なんだけどな。
    いや、さすがは姉御! 人生相談状態になっちまったみたいだぜ」
 
  
  《茜が部室に入ってくる》


茜  「遅れてすみません」

由紀恵「あら、茜ちゃん。今日の撮影は中止よ」

茜  「え!? そうなんですか!?・・・やっぱり、水野さん」

由紀恵「そうね。ちょっとこじれてるみたい」

茜  「私も水野さんに謝ろうと思って、それで捜したんですけど。
    でも、全然見つからなくって」

由紀恵「今、小野君が捜しに行ってるわ。任せておいてあげましょ」

茜  「でも、だったら私も」

由紀恵「また話をこじらせたいの?」

茜  「そんなこと・・・でも、でも私」

由紀恵「あなたはここで待っていればいいの」

茜  「はい」


  《しばし沈黙が続く》


由紀恵「ねぇ、茜ちゃん?」

茜  「はい?」

由紀恵「小野君のこと、好きだったんでしょ?」

茜  「いいえ」

由紀恵「あら? 違った?」

茜  「今でも好きなんです」

由紀恵「そっか・・・辛いわね」

茜  「でも、もう吹っ切れました」

由紀恵「好きなのに?」

茜  「好きだからです」

由紀恵「ふ~ん、強い子ね」

茜  「全然そんなことありません」

由紀恵「水野さんのこと、どう思ってる? 憎い?」

茜  「いいえ! そんなことないです。でも・・・」

由紀恵「でも?」

茜  「すごく羨ましいです。やっぱり」

由紀恵「水野さんに負けたくない?」

茜  「それは・・・でも、水野さんは素敵な人だから」

由紀恵「じゃあ、小野君を想う気持ちだったら負けてない?」

茜  「もちろんです! それだけは絶対に負けません!
    私、ずっと、ずっと見てたんです。入学してからずっと」

由紀恵「それでも吹っ切れるの? これから一緒にやっていける?」

茜  「わかりません。でも、やっていくって決めたから」

由紀恵「そう・・・」

茜  「・・・」

由紀恵「ねぇ、茜ちゃん? あなたがどう思ってるか分からないけど」

茜  「はい?」

由紀恵「隙があったら、小野君とっちゃってもいいのよ?」

茜  「え?」

由紀恵「なんか思い詰めて決めこんじゃってるみたいだから」

茜  「でも、水野さんは先輩の理想の人で」

由紀恵「理想に近ければ近いほど、幻滅が大きいってこともあるわ」

茜  「あの、それって、もしかして財前(ザイゼン)先輩のことですか?」

由紀恵「・・・小野君の気持ちさえ引き寄せることが出来るなら、あなたは彼を奪っちゃっていいの。
    誰もそれを止めることは出来ないわ」

茜  「由紀恵先輩、私の味方してくれるんですか?」

由紀恵「うふふっ、違うわよ。これは敵味方の問題じゃないわ。
    だって、要は小野君の気持ち次第なんだから」

茜  「でも、もしそんなことになったら、水野さんは」

由紀恵「今、あなた辛くないの?」

茜  「・・・辛いです」

由紀恵「でも、それはしょうがないわよね。誰のせいでもないでしょ?」

茜  「そう、でしょうか?」

由紀恵「そうよ。だからたとえ水野さんが悲しむことになってもそれは仕方のないことなの」

茜  「はい」

由紀恵「茜ちゃん。あなたは全然諦める必要なんかないの。
    好きでい続ければ、いつかチャンスが来るかもしれない。
    いつか、彼が振り向いてくれるかもしれない。
    もちろん、あなたがそれまで彼のことを好きでい続けることが出来ればの話、だけどね」

茜  「それで、いいんですか?」

由紀恵「ふふっ、もちろんよ」

茜  「私、絶対にこの気持ちは変わりません」

由紀恵「そう? うふふっ、頑張ってね」


  《由紀恵が椅子から立ち上がり、背伸びをしながら》


由紀恵「ふう・・・そろそろ小野君、戻ってくるんじゃないかな?」

茜  「由紀恵先輩」

由紀恵「なぁに?」

茜  「ありがとうございました」

由紀恵「私はなんにもしてないわよ?」

茜  「これで本当に吹っ切れそうです」

由紀恵「そう、良かったわね。もう、あんなこと言っちゃダメよ?」

茜  「はい。本当にありがとうございました。今日は、もう帰ります」

由紀恵「うん。また明日ね」


 《ドアが開き、真治が部室に帰ってくる》


茜  「あっ」

由紀恵「あら、小野君。どうだったの?」

真治 「いや、ダメです。もう帰っちゃったみたいで・・・あ、茜ちゃん。おはよう」

茜  「おはようございます。あ、でも、今日は撮影しないみたいだから、私帰りますね」

真治 「あ、うん」

由紀恵「部長さんがね、慌てることもないだろうって」

真治 「あ、そうですか」

茜  「じゃあ、失礼します。先輩! 私、もっともっと頑張りますから!」

真治 「あ、うん。よろしく頼むよ。じゃあ、明日」


 《茜が走って部室を去っていく》


真治 「なんか茜ちゃん、元気になったみたいですね」

由紀恵「そうね。もう大丈夫だと思うわ」

真治 「心配してたんです、色々あって」

由紀恵「いろいろ?」

真治 「はい、実はその件で真琴・・・水野さんを怒らせてしまって」

由紀恵「ふ~ん、何があったの?」

真治 「実は、今朝・・・」

由紀恵「うんうん・・・」


 《真治が由紀恵に事の顛末を説明する》


真治 「というわけなんです」

由紀恵「はぁ・・・呆れた人ねぇ~」

真治 「あの、やっぱり僕が間違ってたんでしょうか?」

由紀恵「う~ん、茜ちゃんに対する態度は間違ってないと思うわ。
    っていうかね、それは茜ちゃんの勝ち。仕方ないわね」

真治 「勝ち、ですか? ってことは、僕の負け?」

由紀恵「うふふっ、分からなければいいのよ。
    でもあの子、私がお説教するまでもなかったみたい。うふふっ」

真治 「僕は、どうすれば良かったんでしょう?」

由紀恵「じゃあ、教えてあげる。茜ちゃんとのこと、水野さんには内緒にしておけばよかったの。
    それだけのことよ」

真治 「え? だって、それじゃあ」

由紀恵「小野君。なんでも正しければ良いってもんじゃないのよ?
    人間のすることなんて、善悪はっきり分けることなんて出来ないんだから」

真治 「そういうものですか?」

由紀恵「人の数ほど価値観があるの。それは、映画も同じじゃない?」

真治 「確かに、そういう面もあるかもしれません。でも、僕は」

由紀恵「一つだけ確かなことはね、小野君。君は水野さんを悲しませちゃいけないっていうこと」

真治 「分かっています。けど」

由紀恵「女の子の気持ちって理屈じゃないの。もちろん、間違ったことは注意しなきゃいけないわ。
    でもね、理屈を曲げてでも優しくしてあげなきゃいけない時もあるのよ」

真治 「真琴に同じようなこと言われました」

由紀恵「彼女に幸せでいてほしいでしょ? 笑っててほしいでしょ?」

真治 「ええ! それは本当に! だって、彼女は」

由紀恵「だったら、理屈を曲げてでも、何かを捨ててでも、彼女を守るのよ。
    それは、君自身の幸せのためでもあるんだから」

真治 「僕自身の幸せ?」

由紀恵「彼女にずっと傍に居てほしいでしょ?」

真治 「・・・・・・」

由紀恵「分からなくてもいいわ。水野さんと付き合っているうちに、きっと分かる時が来るから」

真治 「藤原先輩って、凄いですね」

由紀恵「なぁに? 急に?」

真治 「演技が上手いって、きっとそういうことなんですね。
    人の考えていることが分かってるっていうか」

由紀恵「代わりに自分のことはあんまり分からなかったりして、ね」

真治 「僕は、まだまだですね」

由紀恵「いいじゃない。最初は誰でもそうよ。
    まぁ、小野君は人よりちょっと鈍いところ、あるかもしれないけど」

真治 「これから、真琴の家に行ってみます」

由紀恵「そうするといいわ。仲直り出来たら、また撮影始めましょ」

真治 「はい、ありがとうございました!」

由紀恵「どういたしまして。じゃあ、また明日ね」

真治 「あ、そういえば、部長は?」

由紀恵「え? 中田君? あ、ああ、そういえばいないわね。
    もう帰ったんじゃないからしら」

真治 「そうですか。じゃあ、お先に失礼します」

由紀恵「お疲れ様。また明日ね」


  《真治が部室を出て行く》


由紀恵「はぁ・・・なんかカウンセラーみたいなことしてるわね、私。
    ちょっと羨ましいかな、あの子達。青春しちゃって」
    って私、なにオバサンみたいなこと言ってんだろう」

中田 「藤原さんもずいぶんと理解出来ないことを言うな。
    一つや二つ歳が違うからといって、さほどのこともないだろうに」

由紀恵「!? 中田君!? 何してたの!?」

中田 「いや、なんだか出るに出られなくなってしまってな。汗だくになってしまった」

由紀恵「うふふっ、おかしな人」

中田 「よくそう言われるのだが、どうしてなんだろうな?」

由紀恵「うふふっ、さぁ? どうしてかしら?」

中田 「うん、訊いているのは俺なんだが・・・
    ともあれ、事を丸く収めてくれたようだな、ありがとう」

由紀恵「どうかしら? 後はあの子達次第だと思うけど・・・
    え? 中田君、何がどうなってるのか分かってるの?」

中田 「うん、よくは分からんが、そのまま映画になりそうな感じだ。一つ撮ってみるか」

由紀恵「ちょ、ちょっとやめてよ。中田君」

中田 「うん、冗談だ」

由紀恵「もう、びっくりさせないでよ。
    中田君の言うことって、冗談なのか本気なのか全然分からないんだもの」

中田 「うん、それもよく言われる」

由紀恵「うふふっ、本当に、おかしな人ね」

中田 「ん?」

由紀恵「うふふっ、うふふふふふっ」



  《次回予告》



本山 「さ~て、次回はいよいよ最終回っスね。由紀恵さん」

由紀恵「そうね。あの二人、うまくいくといいんだけど」

本山 「あのヘタレの真治が真琴ちゃんとうまく仲直り出来ますかね~?」

中田 「アイツはああ見えて、やるときはやる男だ」

由紀恵「中田君!?」

本山 「ちょっと、部長さん! 俺と由紀恵さんのコーナーにいきなり入ってこないでくださいよ~」

中田 「いつも二人で楽しそうにしていたからな。邪魔しに来た」

本山 「邪魔って・・・」

由紀恵「ふふふっ、中田君おかしすぎ」

本山 「あ~、俺と由紀恵さんのコーナーが~」

中田 「次回『君の瞳に恋してる』」

由紀恵と本山「お、お楽しみに!」





scene.3    終

ラーメン大好き小泉さん 一杯目 ヤサイマシニンニクアブラカラメ

2017-02-14 01:33:20 | 台本
ラーメン大好き小泉さん 一杯目 ヤサイマシニンニクアブラカラメ




【登場人物一覧】


小泉さん(こいずみさん)

ラーメンをこよなく愛する女子高生。名は不詳で姓のみが作中での呼称名。
身長152cm。ウェーブがかった、金髪ではなくかん水の黄色のイメージの髪を持つ美少女。
ラーメンのこと以外に興味がなく、また、つるんで食べるものではないという考えから
友人などもほとんどいない。
物語開始以前に悠たちが通う高校に転校してきた。
ラーメンに関する知識とこだわりは他の追随を赦さず、
突発的にご当地ラーメンが食べたくなると現地まで赴くなど行動力と執着心は高い。
家系や変わり種のラーメンはもちろん、それほど得意ではないが激辛系のラーメンも好み。
痩身の見た目に反してかなりの大食漢だが、本人にその自覚はまったく無い。
また、食べるのは得意だが、作るのはインスタントの袋麺ですら失敗するという料理ベタでもある。
ナンパされることもあるがその全てを素っ気なく断っている。
東北旅行としてラーメンを食べに行ったことにより一度は追試を受ける羽目になったが
基本的に成績は優秀であり、また理由は不明だがドイツ語も堪能である。


大澤 悠(おおさわ ゆう)

小泉さんのクラスメイト。高校1年生。身長160cm、血液型O型、家族構成は両親と兄。
ショートカットでアグレッシブな少女。昔から可愛い女の子が大好きで、
クールビューティな小泉さんと仲良くなることに異常な執着心を見せる。
その入れ込みっぷりは新幹線に乗って名古屋に停車した際、
小泉さんを見かけたというだけで後先を考えず行動した結果、
ほぼ文無しで見知らぬ土地で迷子になるほどで、
通常もストーカー的に彼女と行動を共にしているが大抵はスルーされている。
それでもめげずに小泉さんと交流を持とうとするが、小泉さんの連絡先を知ったのが、
美沙、潤に次いで最後だったことは本人もショックを隠せなかった。
両親が共働きしている影響で料理が得意。
小泉さんに家庭風アレンジラーメンを振る舞った際は彼女を唸らせた。



【キャスト一覧】


小泉さん♀:
大澤 悠♀:
店員&男♂:


【本編】


店員「おまちどうさん」

悠N「――きっと」

小泉「いただきます」

悠N「今日もどこかで 彼女はラーメンを食べている」


  一杯目 ヤサイマシニンニクアブラカラメ


《放課後 帰り道で悠が友人と別れる》

悠 「んじゃーねー」

《携帯に母から残業のため夕飯は各自で食べてと連絡が入る》

悠 「――・・・・・・あらっ ゴハンどーしよ。コンビニかなぁ」

《ラーメン屋の前にたくさん人が並んでいる》

悠M「ラーメン食べたいけど、女子が一人で入るのもなぁ。こんなでも一応女のコですし・・・!」

《ラーメン屋に並んでいる小泉さんを見つける》

悠M「あれはっ 先週転校してきた小泉さん!? えー何でこんな所に!?」

男 「ここ 並んでます?」

悠 「!? えっ え」

小泉「・・・・・・」(じーっと悠を見つめる)

悠 「あ えーっと・・・・・・はい」

《結局、ラーメン屋に並ぶ悠》

悠M「何だーこの状況・・・ま、いーか。ラーメン好きだし。てか そんなことより!
   小泉さん 近くでみるとやっぱり可愛いなー。転入してきてまだあんまり話せてなかったけど
   ――これはチャンス」

悠 「あの わかるかな。あたし同じクラスの大澤 悠。よろしくっ。
   一人でラーメン食べたりするんだ!? 意外ー」

小泉「つるんで食べるものじゃないですから」

《一瞬、しん・・・となる》

悠 「すごいなーー あたしとかムダに周りの目とか気にしちゃって。
   小泉さんはこのお店によく来るの?」

小泉「・・・・・・」(本を読んだまま沈黙)

悠M「――って聞いてにゃい」

店員「おまたせしましたー」(遠くから呼びかける)

悠 「あ ちょうど開店みたい!」


《店内に入り、小泉さんが『ぶたダブルラーメン』のボタンを押す》


悠 「食券なんて学食みたい。じゃ私も同じの!」

《カウンターの隣同士で席に着く小泉さんと悠》

悠M「学校帰りにラーメン屋なんて初めて」

店員「左の方 ニンニク入れますか?」

小泉「ヤサイマシニンニクアブラカラメ」

悠 「!?」

店員「そちらの方 ニンニク入れますか?」

悠 「え? あ、ハイ!! 何かこう 同じ感じ(?)で!」

店員「ぶたダブルヤサイマシニンニクアブラカラメ おまちどー」


《悠の前に野菜と肉がたっぷり山盛りに盛られたラーメンが置かれる》


悠M「!? 麺が見えん!!! コレ ラーメンなの!?」

店員「豚ダブルヤサイマシニンニクアブラカラメ おまちどー」

悠 「!」

小泉「・・・・・・」(腕まくりをしながら、関節を鳴らしている)


《箸を手に取り、カッと目を見開いて、もの凄い勢いでラーメンを食べる小泉さん》


小泉「がふ ずるっ ずるずるずるっ
   がぶ がつがつ ず ずず
   ごく ごく ごっくん
   はーーーーーーーーーーーーー」(最後は至福の笑顔)

悠M「な な 何 今のーーー!!?
   しかも 何て幸せそうな表情(かお)」

小泉「・・・・・・・・・」(悠に見られていることに気づいて表情を元に戻す)

悠M「あ 戻っちゃった」

小泉「伸びますよ」

悠 「!? ぎゃ~~~」


《二人とも完食して店を出て、神社の前でへたりこむ悠》


悠 「うぷ 何て量だ・・・体中の穴という穴からラーメンが吹き出そうだ」

小泉「てっきり常連なのかと」

悠 「初めてっス・・・」

小泉「では私はこれで」

悠 「あ 小泉さんてさ ラーメン好きなんだね!?」

小泉「・・・・・・・・・・・・好きです」(振り返らずに)

悠M「クールだけど案外庶民的でフツーの子なのかも」

悠 「じゃあ美味しいお店知ってたら今度教えてよ」(小泉さんについていきながら)

小泉「お断りします」(振り返らずに)

悠 「・・・・・・アレか! ホントにウマい店は自分だけの秘密にしておきたい的な!?」

小泉「・・・・・・・・・」(早足で歩き出す)

悠 「ちょっと待った! せっかくクラスメイトになったんだし
   これからはもっと話しようよ。ラーメンのことでも何でも」 

小泉「お断りします」(振り返って)

悠M「・・・・・・桜舞う中の小泉さん絵になるなぁ・・・
   よし また明日話しかけてみよう」




悠N「これはラーメン大好き小泉さんのお話」






一杯目 完食


ダンジョン飯 第1話 水炊き

2017-02-10 00:00:15 | 台本
ダンジョン飯 第1話 水炊き


【あらすじ】

主人公であるライオス一行は、ダンジョンの深層にてレッドドラゴンに挑むも、
空腹からチームプレイに乱れが生じて壊滅状態となり、
ライオスの妹ファリンはライオスをかばい、ドラゴンの餌食となってしまう。
彼女が最後に使った脱出魔法の力で、一行は辛くも迷宮から脱出したものの、
装備品以外の所持金もアイテムも失ってしまった。
金銭的な問題から仲間の2人、ナマリとシュローは他に職を求め離脱。
リーダーのライオス、残留した魔法使いのマルシル、鍵師のチルチャックの3人は、
ダンジョン内では死亡して遺体が損傷していても、
肉体を補修する蘇生の魔術を施せば生き返ることが可能なため、
ファリンが完全に消化される前に救出すべく、ダンジョンに戻ることにする。


【登場人物紹介】


ライオス

トールマン(人間)の男性で金属鎧を身にまとった長身の戦士。
年齢は不明だがチルチャック(29歳)よりは年下であるかのような描写がある。
パーティー(作中ではギルド)のリーダーでファリンの実兄。
経験豊富で戦士としての実力は高いが重度の魔物マニアであり、
生態や能力だけでなく「味も知りたくなった」と、
以前から魔物を食べることに強い興味を抱いていた。
仲間たちにはその願望を隠していたが、
ファリン救出策で経費節約の必要に迫られたことを機に打ち明けている。


マルシル

エルフの女性で魔法使い。親は宮廷魔術師。
攻撃から解呪や鍵開けの魔法まで様々な魔法を行使することができる上に、
死亡している他者を蘇生させることも可能。
魔法学校在籍時に同じ学科を専攻していたファリンと仲が良く、
採算度外視で友人であるファリン救出のためにライオスに同行を申し出る。
武器は木の根を手編みした木製の杖で、愛着があるらしく「アンブロシア」という名前を付けている。
輪状の杖頭の先端には魔力で生育する双葉が生えており、
動く鎧の剣の攻撃を直接防いでいることから硬さもかなりある模様。
金髪のロングヘアーは、就寝時以外は常に綺麗に結っており、
第14話の扉絵ではマルシルの髪の一連の結い方が描かれている。
マルシルは「毛髪は魔術的にも大切な物で、それを手入れするのは魔法の準備運動のようなもの」
と語っている。


チルチャック

ハーフフットという種族の男性で、童顔で小柄な鍵師。
生来の器用さと種族特有の身軽さや鋭敏な感覚で扉や宝箱の開錠、罠の解除を得意とし、
そのため常に、ピッキングツールを腰に付けたポシェットの中に携帯している。
武器として弓矢を使用している描写もあるが、本人は戦いが得意というわけではなく、
「俺を戦力として期待するな」と再三発言している。
幼い少年のような外見だが、これは種族の特徴によるもので、年齢は29歳。
パーティーでは最も落ち着いた性格で思慮深い面も多いが、
パーティーの命を預かるという責任感から危険な罠を前にすると熱くなる。
過去には、宝箱に仕掛けられていた煮え油を被ってしまい、
死にはしなかったが口にするも憚られるような酷い被害にあったことがある。
また、役割上ミミックによる被害を何度も経験しており、ミミックを非常に嫌っている。


センシ

ドワーフの男性で、斧戦士。屈強な体格と豊かな髭を蓄えている。
名はドワーフ語で「探求者」を意味する。
魔物食に初挑戦したライオスたちの素人振りを見かねてパーティーに加わり、
パーティーの事情を知った後は、
ファリンを捕食したというレッドドラゴンの調理を目的として同行を申し出、
ライオス一行を主に料理面でサポートする。また、戦士としてライオスとともに前衛を務めている。


【キャスト一覧】

ライオス♂:
マルシル&ナマリ♀:
チルチャック♂♀:
センシ♂:

ナレーション♂♀:

※ナレーションはセリフ少なめ。
チルチャックorセンシが兼役可。ナマリは回想で一言のみ。


【本編】


《草原で目を覚ますライオス》


ライオス 「う・・・・・・」

SE:ライオスのお腹が鳴る音

ライオスM「腹が減った・・・・・・」(起き上がる)

マルシル 「ライオス! 目が覚めた? 私たち魔法で迷宮から脱出したみたい。
      でもファリンの姿だけどこにもなくて・・・・・・」

ライオス 「・・・・・・食われたんだ・・・・・・」

マルシル 「えっ」

ライオス 「ドラゴンの腹の中で魔法が効かなかった」

マルシル 「そんな・・・・・・!」

ライオス 「多分まだ迷宮内だ」


《ライオスが立ち上がる》


ライオス 「今すぐ助けに行く」

マルシル 「ちょ、ちょっと待って」

ライオス 「?」

マルシル 「実は・・・・・・私たち荷物をほとんど迷宮に置いてきたみたいで。
      つまり、ほぼ一文無し」

ライオス 「なんだって?」

チル   「そしてもっと困ったことに。今しがた仲間をふたり失った」

ライオス 「チルチャック。それは」(チルが持ってる辞表を見て)

ナマリ  『こっちも生活がかかっとる。ライオスが起きたら渡してくれ』(回想シーン)

チル   「前々から別のギルドに勧誘を受けていたらしい」

ライオス 「ええ!」(辞表に目を通しながら)

ナレ   「迷宮探索には金がいる。仲間の雇用費。武器等の装備品代。日用品代。そして食費」

ライオス 「今ある武具を売って当面の金を確保するとして・・・・・・
      その金で安い武具に買い替え、食糧に薬、日用品を揃えて、
      新しい仲間を雇い・・・・・・足りるか?」

チル   「全然」

ライオス 「装備を整えている間に妹が消化されてしまう。
      みじん切りまでは蘇生した奴がいたよな!? 
      うんこから生き返った冒険者の例は!?」

チル   「聞いたことないな」

SE:マルシルのお腹が鳴る音

マルシル 「お金の問題はあるけど、とりあえず何か食べない?
      私たち空腹が原因で失敗したようなものだし。
      食べ物はきちんと揃えなきゃ。
      何食べようか。安いご飯なら大通りの大衆食堂か。
      量があるのは『笑い狼亭』だけど。
      あっでも携帯食糧をサービスしてくれる
      あそこの酒場も捨てがたい。
      あそこのスープ肉まん すごいおいしいし」

ライオス 「いや、今すぐ迷宮に潜らなくては」

マルシル 「でも、このままじゃ・・・・・・」

ライオス 「・・・・・・ひとつ・・・・・・考えがある。
      ふたりにはギルドを抜けてもらう」

マルシル 「え・・・・・・!?」

ライオス 「そしてその装備を売って、俺が迷宮に潜る」

マルシル 「そ、そんな無茶よ!」

チル   「死ぬつもりか」

ライオス 「いや、これなら武具の性能を落とさずにすむし。
      ひとりなら、魔物を避け最小の戦いで最深層に行ける。
      不可能な話じゃない。元々は俺の落ち度だ。
      ふたりにまで危険なことをさせるわけには・・・・・・」

マルシル 「ライオス・・・・・・そこまで・・・・・・
      いいえ! 私も絶対についていく!
      ファリンのことは私も大好きだもの。
      足手まといなんて言わせない。
      私の魔法の強力さはよく知ってるでしょ」

チル   「俺の仕事を忘れてもらっちゃ困る。
      扉や罠の解除役が不必要とは言わせないぜ」

ライオス 「ふたりとも・・・・・・」


《少し照れるマルシルとチルチャック》


SE:ライオスがガシィっとふたりの肩を掴む音

ライオス 「本当に俺についてくる意思があるんだな?
      どんなことがあろうと!!」

チル   「?」

マルシル 「? う、うん・・・・・・?」


《迷宮入口》


ライオス 「食糧は迷宮内で自給自足する」

マルシル 「は!?」

ライオス 「迷宮内には魔物が溢れている。
      つまり生態系が存在しているということだ
      肉食の魔物がいれば、その糧となる草食の魔物が!
      草食の魔物が食う植物に植物の栄養となる水や光や土が!
      すなわち、人間も迷宮で食っていけるということだ!」

チル   「いやいやいや」

マルシル 「え、それってつまり魔物を食べるってこと?」

ライオス 「魔物も食べる。とにかく食えそうなものはなんでも食う。
      今までの冒険を思いかえしてみろ。
      なんか結構うまそうなのがいたはずだ」


《いろいろな魔物を思いかえすマルシルとチルチャック》


マルシル 「無理無理 絶対に無理!」

ライオス 「魔物を狩って食い扶持にしている人間は割りといる」

マルシル 「地上に戻れない犯罪者とかの話でしょ!?」
      そいつらだって、しょっちゅう食中毒で搬送されてんじゃない!」

ライオス 「ファリンを助けるためならなんでもするって言っただろ」

マルシル 「魔物を食べるとは言ってない!!」


《物陰から怪しい人物が覗いている》


ライオス 「では、食糧を買う金はない。時間もない。他に案があるか?」

マルシル 「だからって! 変な物食べて食中毒で動けなくなっちゃ意味がな・・・・・・」


《遠くから悲鳴が聞こえてきて、別の冒険者と歩き茸(魔物)が前を通り過ぎる》

SE:歩き茸をライオスが一刀両断にする音

マルシル 「・・・・・・今の迷宮初心者ね。
      この程度の魔物に総崩れなんて向いてないんじゃ・・・・・・ん?」


《倒した歩き茸をじっと見ているライオス》


マルシル 「ちょっとライオス・・・・・・」

ライオス 「これを今日の昼飯にしてみよう」(歩き茸を手に取り)

マルシル 「ヤダーッ(必死の形相で)
      やだやだ 絶対やだ」

チル   「いきなり茸ってのは危うくないか。毒とか」

ライオス 「『迷宮グルメガイド』によると初心者向け食料ではあるらしい」


《ライオスがマルシルとチルチャックに本を渡す》


ライオス 「肉厚で癖のない味わいだとか」

マルシル 「何、この本」

チル   「随分年季が入ってる」

ライオス 「少し進んで開けた所で火をたこう。もうひとつふたつ具材がほしいが」


《遠くで、カサカサという音に気づくライオス》


ライオス 「はっ この足音は大サソリだな!」

チル   「あいつ、まさかさあ・・・・・・」


《迷宮1階》


ナレ   「迷宮内といえど往来も多く冒険者や商人で賑わっている。
      元々は墓所で村人らの祖先が眠る静かな聖域であったが、
      迷宮に繋がってしまってからは、村一番の賑やかな場所となってしまった。
      魔物は迷宮の底から湧いてくるという。
      地上の生き物が禁忌の魔術により豹変した姿なのか。
      魔界から呼び寄せられたものなのかは不明だが
      皆一様に奇妙な姿をしていて、何かを守るように襲いかかってくる。
      しかし、それらこそ呪われた黄金の都の存在を示す唯一の証なのだった」


《ライオスが布を巻きつけた棒を穴に入れると、大サソリのハサミがくらいつく》


マルシル 「ザリガニみたいに獲るな」

ライオス 「大サソリはまずハサミで獲物を固定してから、尾の神経毒を打ち込む。
      餌がなくても刺激すれば釣れるからザリガニより簡単」

チル   「あのな~~。ひょっとしなくても、おまえ前々から食べる機会伺ってただろう」

ライオス 「(照れる)・・・・・・でも、妹を助けたい気持ちに偽りはないんだ」

マルシル 「はいはい」

ライオス 「・・・・・・ずっと黙っていたが。俺は魔物が好きだ。
      姿や鳴き声。どんな生態をしてるのか。
      そのうち味も知りたくなった」

チル   「サイコパスだ」


《初心者の広場》


チル   「もう少し人目のない所でやったほうがいいのでは?」

ライオス 「水を使うのに何度も往復するのは辛いだろう」

マルシル 「で、これどうやって食べるの?」(大サソリを横目に見ながら)

ライオス 「オーソドックスに煮てみるか」

マルシル 「オーソドックスとは」

ライオス 「むっ」(歩き茸にナイフを入れて切ろうとした時)

マルシル 「どうしたの!?」

ライオス 「縦には切りやすいが横に入れると抵抗がある。
      キノコ系の敵を相手にする時は、袈裟(ケサ)斬りや胴斬りは効果が薄いのかも。
      勉強になった」

マルシル 「そうか」

チル   「スライスしたら食べ物みたいに見える」(キノコを持ちながら)

マルシル 「どこが」


《ライオスが大サソリをそのまま鍋に入れようとしている》


マルシル 「ちょ、ちょっと。サソリはそのまま食べるの? 毒がまわるんじゃ」

ライオス 「このサソリの毒は食べても害はない」

マルシル 「本当に?」

ライオス 「と言われているので食べてみたい。
      ぱく・・・オエー」

センシ  「ちょっと待った!」


《斧を持ったドワーフのセンシが現れる》


センシ  「サソリ鍋か。しかしそのやり方には感心せんのう」

マルシル 「何者」

センシ  「大サソリを食べる時は、ハサミ 頭 足 尾は必ず落とす。
      尾は腹をくだす」
      
ライオス 「腹を下すのか・・・・・・本には平気と書いてあったのに。
      というか単純にまずい」

センシ  「身にも切れ込みを入れておく。熱も通りやすく出汁も出て
      鍋全体がうまくなる。食べやすいしな。
      内臓も簡単にとっておく。苦いし歯触りがよくない。
      漬け込んで発酵させるといいつまみになるが、素人にはちと早いな。
      歩き茸は尻と表面3センチメートル分捨てる。
      足はうまいのですべて入れる」

ライオス 「足はうまいんですか」

センシ  「そうだ。独特ないい香りがするだろう」(ライオスに嗅がせる)

マルシルM「足の匂いか・・・・・・」

センシ  「この鍋では小さいな。わしの鍋を使おう」

マルシル 「えらい準備がいいな」

センシ  「サソリと茸だけでは寂しいのう。ウーム・・・・・・」


《センシは壁に根を張る植物を採取して戻ってくる》


チル   「帰ってきた」

マルシル 「ちょっと待って! それはだめ!!」

ライオス 「マルシル」

マルシル 「ダメダメ無理無理。あのさここ墓場よ。
      百歩譲って魔物はいいわ。でも根を張る植物はNG! 宗教的にNG!
      いいじゃんサソリと歩き茸だけで十分おいしそうじゃん。
      これにしようよこれに」

ライオス 「でもマルシル」

マルシル 「大体あんた誰なのよ。一体全体どういう」

ライオス 「マルシル! 上だ!」

マルシル 「上? う !!!」(頭上からスライムが降ってくる)

ライオス 「スライム! 動くなマルシル」

マルシルM「しまった。顔にかぶるなんて。
      火の魔法・・・・・・あ ダメだ。詠唱できない。
      そういえば、はじめて死んだのもスライムだった。
      あっ 走馬灯」


《センシがナイフをスライムに差し込むと、一瞬でマルシルの顔から剥がれる》


マルシル 「ぷはっ げぇーほ げほげほ」

チル   「マルシル大丈夫か」

マルシル 「大丈夫。ちょっと鼻に入ったけど」

ライオス 「スライムをナイフで撃退するなんて」

センシ  「構造を知っていれば簡単なもの。
      不定形のように見えてその実、その辺の人間より一律だ。
      スライムの内臓はこんなふうになっている。(本来は絵がある)
      人間でいうと胃がひっくり返って消化液で内臓と頭を包んでいるのだな。
      獲物の吐く息を察知し飛びかかってくる。
      だから大声を出してわめくと襲われやすくなるのだ。
      このままではとても食えないが、柑橘類の果汁を加えた熱湯でよく洗い
      水分をよく拭き取るか、あるいは塩をもみこみ
      じっくり天日干しすれば高級食材の完成だ。
      ただ、できれば2週間ほど絶食させたほうがいい。
      乾燥には時間もかかる。本来 迷宮の中で気軽につまめる食材ではない。
      これはわしが作った携帯スライム干し網。
      完成には時間がかかるが、ここに完成品がある。今日はこれを加えよう」

ライオス 「しかし高級食材なのでは」

センシ  「かまわん。わしはこの迷宮で10年以上魔物食の研究をしている。
      魔物食に興味をもってもらえることが何よりも嬉しいのだ」

ライオス 「10年!」

チル   「そんな昔からあったっけ」

センシ  「まあ少し待っとれ。すぐにできるわい」


《センシがイモや調味料を入れて味を調えて完成》


=================
大サソリと歩き茸の水炊き

材料(3~4人分)

大サソリ――――――――1匹
歩き茸―――――――――1匹
茸足――――――――――2本
藻(花苔・イシクラゲ)――適量
サカサイモ―――――――中5本程度
干しスライム――――――お好みで
水―――――――――――適量
=================


センシ  「できたぞ」

チル   「大サソリってゆでると赤くなるのか」

ライオス 「本当にサソリなのかな」

チル   「なんだかうまそうな匂いが」

ライオス 「本で読むのと見るのは大違いだ」

センシ  「熱を通すと身が少し縮むから簡単に殻から身がほぐれるぞ」

ライオス 「ほんとだ」


《ライオスが一口、大サソリを食べてみる》


ライオス 「うまい!」

センシ  「そうだろう そうだろう」

ライオス 「調理次第でこんなにも味が変わるなんて」

センシ  「そうだろう そうだろう」

SE:マルシルのお腹が鳴る音

マルシル 「・・・・・・私にも1杯ちょうだい!」


《マルシルがところてんのようなものをすくいとる》


マルシル 「何これ」

センシ  「スライムの内臓の干物」

マルシル 「・・・・・・」


《意を決してスライムの内臓の干物を食べるマルシル》


マルシル 「うわっ おいしい!」

ライオス 「スライムってこういうふうに食べるんですね」

センシ  「どうやってもいける。果汁に浸して食べてもうまいぞ」

チル   「この木の根もほくほくしてうまいですね」

センシ  「正確には根ではない。上下逆さまに迷宮に咲く植物の幹だ」

マルシル 「この藻も柔らかくっておいしい。これも迷宮に咲く植物なの?」

センシ  「それはよく湿った所にわく 普通の藻だ」

マルシル 「・・・・・・」

チル   「普段何気なくかよっている迷宮にこんなものがあるなんて」


《4人で鍋を食べる。アドリブで会話しても可。そして食べ終わる》


ライオス 「ふー くったくった。
      そういえば、自己紹介がまだでした」

センシ  「わしの名はセンシ。ドワーフ語で探求者という意味だ」

ライオス 「俺はライオス。魔法使いのマルシルに、鍵師のチルチャック」

センシ  「何かわけある旅のようだが?」

ライオス 「ええまあ。仲間がひとり迷宮の下層で魔物に食われてしまって
      消化される前に助けたいのです」

センシ  「なんと魔物に。一体どんな」

ライオス 「竜です。真っ赤な鱗の」

センシ  「真っ赤な鱗・・・・・・下層・・・・・・炎竜(レッドドラゴン)か!
      竜はその巨体を維持するためにほとんど眠って過ごすという。
      消化も他の魔物よりずっと遅いはずだ」

ライオス 「だといいのですが」

センシ  「頼む。わしも同行させてはもらえんか」

ライオス 「それはもちろん喜んで。こちらとしても随分助かります」

センシ  「本当か! いや有難い」

ライオス 「こちらこそ・・・・・・」(お互いに握手をする)

センシ  「炎竜を調理するのは長年の夢だったのだ!
      炎竜か・・・・・・やはり王道にステーキか
      それともハンバーグか。しゃぶしゃぶも捨てがたいが
      いや卵があれば親子丼という手も・・・・・・」


《ファリンを炎竜が食べ、炎竜をライオスたちが食べるという構図を思い浮かべる》


ライオスN「『それは食ってもいいもんなのか?』
      と 思わなくもなかったが、誰も何も言わなかった。
      ダンジョン飯 それは食うか食われるか
      そこには上も下もなく、ただひたすらに食は生の特権であった。
      ダンジョン飯 ああ ダンジョン飯」




第一話 終わり




メモリーズオフ 2nd ドラマCD 第四話『もう一度、永遠の約束』(Aパート)

2017-02-05 00:07:49 | 台本

メモリーズオフ 2nd ドラマCD 第四話『もう一度、永遠の約束』(Aパート)


【あらすじ】

健とほたるは、別々の旅館で過ごすことになる。
信にほたるを奪われそうになって、健は自分の本当の気持ちに気づく。
巴の協力を得て、ラジオでほたるにメッセージを伝えることに・・・。


【登場人物紹介】


伊波 健(いなみ けん)

主人公。父の転勤をきっかけに一人暮らしを始めた。引越し先のアパートは「朝凪荘」。
浜咲学園の3年生。受験のためにサッカー部を引退。
ほたるとは2年生の冬から交際しており、"健ちゃん"と呼ばれている。
巴には"イナ"、信には"イナケン"というあだ名を付けられた。
信に誘われて、ファミレスの「ルサック」でバイトをする。
11月4日生まれ。


白河 ほたる(しらかわ ほたる)

浜咲学園の3年生。健のクラスメイトで彼女。
2年生の冬に告白して以降、交際中。1stの今坂唯笑とは同じ中学である。
姉の静流を真似てピアノを始めたが、静流よりもその才能を発揮した。学園の天才ピアニストである。
自称「ほたる的ギャグ」を会話に入れるが、内容はおやじギャグ同様、ひたすら寒い。
9月25日生まれ。


飛世 巴(とびせ ともえ)

澄空学園の3年生。白河ほたるの親友で、劇団バスケット所属。通称「あだ名大魔神」
性格は明るいというよりうるさいと見られることもしばしば。
他人に変なあだ名を付けることが趣味で、"ほわちゃん"(白河ほたる)
および"イナ"(伊波健)は彼女が付けた物である。
健とほたるには"とと"と呼ばれている。
8月17日生まれ。


稲穂信(いなほ しん)

澄空学園の3年生。健の友達で一つ屋根の下に住む(同じアパートに住んでいる)。
ファミレスの「ルサック」でバイトをしていて、健を誘った。
また、愛犬「トモヤ」は前作の三上智也からのもの。
前作ではキャラ間の関係に多少なりと関わりを持ったが、
今作では傍観者かあるいは助言者的存在となっている。
健のことを"イナケン"、ほたるのことを"たるたる"と呼んでいる。
1月4日生まれ。


【メモリーズオフ 2nd ドラマCD 一覧】

メモリーズオフ 2nd ドラマCD 第一話『そのキスも、愛の言葉も』
メモリーズオフ 2nd ドラマCD 第二話『それは夢の中の出来事』
メモリーズオフ 2nd ドラマCD 第三話『思いがけない恋の危機』(Aパート)
メモリーズオフ 2nd ドラマCD 第四話『もう一度、永遠の約束』(Aパート)


【キャラクター一覧】


伊波 健♂:
白河 ほたる♀:
飛世 巴♀:
稲穂 信♂:
ラジオのおねえさん&携帯のアナウンス♀:


【本編】



ほたる「メモリーズオフ 2nd 第四話『もう一度、永遠の約束』」(タイトルコール)


《ほたると信の旅館。ほたるの部屋。外は雷雨》


ほたる「ぐすっ、ぐすっ・・・」

SE:ノック音

ほたる「へ?」

SE:ドアの開ける音

信  「なに泣いてんだよ」

ほたる「あ、信君! ごめん、なんでもないよ」

信  「泣いている理由は、あのバカの嘘のせいだろ?」

ほたる「うっ・・・。ほたるは邪魔者なのかな~って。もう、一緒には居られないのかな~って」

信  「昼間はあんなにはしゃいでたのに」

ほたる「押し潰されそうだったんだもん」

信  「あんなやつのどこがいいんだよ。いろんな女に甘い言葉かけてさ」

ほたる「みんなに優しいってことだよ」

信  「ふっ、ほんとに好きなんだな」

ほたる「好き。だけど、ほたるが邪魔になるなら、居なくなってあげなきゃ。
    それが、健ちゃんのためだから」

信  「出来るのか?」

ほたる「健ちゃんに会えないくらいなら、死んだほうがマシだっぺ。だから苦しんでるんだっぺよ~」

信  「なあ、たるたる」

ほたる「なに?」

信  「今だけでも、あいつのこと、忘れさせてやろうか」

ほたる「!? どうしたの? 信君? なにするつもり!?」


《健と巴の旅館。健の部屋》


携帯 「おかけになった電話は、現在、電源が切れているか」

健  「くそっ!」(電話を切る)

SE:ノック音

健  「!? ほたるか!?」

SE:ドアを開ける音

健  「なんだ、"とと"か」

巴  「なんだとは、なによ」

健  「どうかしたの?」

巴  「今夜、私、この部屋に居ていい?」

健  「え?」

巴  「子供じゃないんだから。どういう意味か、わかるでしょ」

健  「あの・・・」

巴  「ふふっ、冗談よ。やっぱり、ほわちゃんが気になるんだ」

健  「そういうわけじゃ」

巴  「あのさ、バカにするのもいい加減にしてくれない?」

健  「バカになんて」

巴  「ほわちゃん騙して旅行に来て、私のこと抱きしめてその気にさせて。
    それで、信君に取られそうになったら大慌て?」

健  「それは」

巴  「取られそうにならないと、大切さに気づかないなんて。イナ子供なんじゃない!?
    小学校からやり直したら!?」

健  「そうだな。最低だ。恋をする資格なんて、ない」

巴  「ほんとにずるくてバカで最低よ! 死んでも治らない病気! つける薬なんてないわ!
    ・・・でも、ほわちゃんのこと、好きなんでしょ?」

健  「・・・・・・」

巴  「うふふっ。怒ったフリは、このくらいにしてあげるわ」

健  「とと」

巴  「抱きしめてくれたのは、正直嬉しかった。
    だけどあれは、異次元の出来事ってことで忘れてあげる」

健  「ごめん」

巴  「あと一回でも謝ったら、グーで殴るよ。
    あの子、イナのことが誰よりも好きよ。そして、誰よりも仲のいい私の親友」

健  「そうだね」

巴  「きちんと元の鞘に戻って、また一緒に遊ぼう!
    笑って笑って、笑いあっていこうよ! ね?」

健  「本当にごめんな」

SE:健を叩く音

健  「くっ」

巴  「謝ったら叩くって言ったよね?」

健  「一発叩かれたかったんだ」

巴  「そ、そういう趣味?」(怪訝そうな顔で)

健  「違う! もう迷ったりしないようにさ」

巴  「よろしい! じゃ、ほわちゃんに伝えに行きなよ、好きだ~って!」

健  「今、どこにいるかわからないんだ」

巴  「っと、ここで、巴ちゃんマル秘手帳登場!」

健  「マル秘手帳?」

巴  「前にさ、ほわちゃんと一緒にラジオに出てもらったことあったでしょ? 浜咲FMの」

健  「ああ、海でインタビュー受けたやつだよね? 確か、地元でしか流れない放送だって」

巴  「さあ~て、お立会い!」


《ほたると信の旅館。ほたるの部屋》


ほたる「ね、ねぇ、信君? なにするつもり!?」

信  「ちょっと、ラジオでも聞いて気分転換をね」

ラジオ「・・・いきなりなんですが、公共の電波を使って、
    告白したいな~つう不届き者が居やがります。その名も、伊波健君!」

ほたる「え? これ?・・・信君? 信君!?」(信がほたるの部屋から去る)

ラジオ「はりきってどうぞ~」

健  「ほたる?」

ほたる「!? 健ちゃん」

健  「聞いてくれていることを祈って、話します。まずは謝らせて欲しい。
    嘘ついて、ごめん。傷つけて、ごめん。そして、もう一つ。
    ずいぶん遠回りをして気づいたけど、ほたる。
    僕は君が好きだ。心の底から好きなんだ!」

ほたる「健ちゃん。ほたるも、ほたるも大好きだよ~!」

健  「きっと、何を言っても言い訳になる。きっと、ほたるを傷つける。
    自分が酷い男だってことはわかってる。
    でも、もしも償うチャンスをくれるなら、来てくれないか?
    二人が付き合い始めた、あの場所に」


《出店の射的で信が遊んでいる。隣に巴がいる》


信  「うまくいったな~っと。んがっ、外した~」

巴  「信君、射的下手すぎ」

信  「うっせ~。しかし、よくOKしてくれたな~」

巴  「色恋沙汰って人気あるし」

信  「だけど、ディレクターさん? 何回も拝み倒して頼んだんだろ? ご苦労さん」

巴  「うん」

信  「どうしたの? 元気ないじゃん」

巴  「私もまだまだだな~って思って。ただよろめいているだけだってわかってても、
    イナが私を見つめてくれて、嬉しくなっちゃってさ」

信  「・・・」

巴  「抱きしてめられて、幸せ感じちゃったよ。うふふっ、バッカみたい。
    演技も忘れちゃって、女優失格ね」

信  「次の舞台って、喜劇? 悲劇?」

巴  「悲劇」

信  「練習していいよ」

巴  「・・・あきらめるの、本当は辛いの。
    どうして、ほわちゃんの、親友の彼氏なんだろ? 
    どうして好きになっちゃったんだろう」

信  「それは言っちゃダメだ」

巴  「え?」

信  「好きになられければよかったって思うのは、よくない。俺も経験あるけど」

巴  「だけど、出会わなければ、好きにならなければ、こんなに苦しむこと」

信  「誰かを好きになる力は、それだけでスゲェんだぜ?」

巴  「好きになったことは、無駄じゃないってこと?」

信  「無駄な恋なんて、この世に一つもない。つまり、『恋せよ乙女』ということだな。よっと!」

SE:景品が落ちる音

信  「よっしゃ! ゲット!」

巴  「この変な人形、なに?」

信  「わからん。しいて言うなら、てるてる坊主だな? いる?」

巴  「もらっとく」


《登波離橋 健が立っている》


ほたる「はぁ、はぁ、はぁ・・・健ちゃん」

健  「ほたる。来てくれたのか」

ほたる「健ちゃん!」(健に抱きつく)

健  「ほたる。ほたる、ごめんな。本当にごめん」

ほたる「いいよ。健ちゃんの気持ち、わかったから。それで、それでいいよ」

健  「僕には、愛がなんだかわからなかったけど。今、わかった気がするよ。愛してる」

ほたる「ほたるも、健ちゃんを愛してるよ・・・ううっ、ねぇ、もう離さないで」

健  「どうして泣くんだよ?」

ほたる「だって、嬉しいんだもん!」


《場面変わって 信と巴が空を見上げている》


信  「雨、あがったな。効き目あるじゃん、それ」

巴  「晴れたら金の鈴あげよう、か」

信  「やつらに全部嘘でしたって言って、謝らなきゃ」

巴  「う~ん、そんなことよりもラジオのこと教えた方がよくない?」

信  「ラジオがどうかしたのか?」

巴  「あの番組、全国ネットだよ」

信  「(口笛を吹く)」




第四話(Aパート) 終わり



メモリーズオフ 2nd ドラマCD 第三話『思いがけない恋の危機』(Aパート)

2017-02-05 00:00:01 | 台本

メモリーズオフ 2nd ドラマCD 第三話『思いがけない恋の危機』(Aパート)


【あらすじ】

なんとかその場を切り抜けた健。
その後、四人は温泉を満喫する。
日も落ちてきて、ほたると信は合流組のため別々の旅館に移動することに。
その夜、信から健に電話がかかってきて・・・。


【登場人物紹介】


伊波 健(いなみ けん)

主人公。父の転勤をきっかけに一人暮らしを始めた。引越し先のアパートは「朝凪荘」。
浜咲学園の3年生。受験のためにサッカー部を引退。
ほたるとは2年生の冬から交際しており、"健ちゃん"と呼ばれている。
巴には"イナ"、信には"イナケン"というあだ名を付けられた。
信に誘われて、ファミレスの「ルサック」でバイトをする。
11月4日生まれ。


白河 ほたる(しらかわ ほたる)

浜咲学園の3年生。健のクラスメイトで彼女。
2年生の冬に告白して以降、交際中。1stの今坂唯笑とは同じ中学である。
姉の静流を真似てピアノを始めたが、静流よりもその才能を発揮した。学園の天才ピアニストである。
自称「ほたる的ギャグ」を会話に入れるが、内容はおやじギャグ同様、ひたすら寒い。
9月25日生まれ。


飛世 巴(とびせ ともえ)

澄空学園の3年生。白河ほたるの親友で、劇団バスケット所属。通称「あだ名大魔神」
性格は明るいというよりうるさいと見られることもしばしば。
他人に変なあだ名を付けることが趣味で、"ほわちゃん"(白河ほたる)
および"イナ"(伊波健)は彼女が付けた物である。
健とほたるには"とと"と呼ばれている。
8月17日生まれ。


稲穂信(いなほ しん)

澄空学園の3年生。健の友達で一つ屋根の下に住む(同じアパートに住んでいる)。
ファミレスの「ルサック」でバイトをしていて、健を誘った。
また、愛犬「トモヤ」は前作の三上智也からのもの。
前作ではキャラ間の関係に多少なりと関わりを持ったが、
今作では傍観者かあるいは助言者的存在となっている。
健のことを"イナケン"、ほたるのことを"たるたる"と呼んでいる。
1月4日生まれ。


【メモリーズオフ 2nd ドラマCD 一覧】

メモリーズオフ 2nd ドラマCD 第一話『そのキスも、愛の言葉も』
メモリーズオフ 2nd ドラマCD 第二話『それは夢の中の出来事』
メモリーズオフ 2nd ドラマCD 第三話『思いがけない恋の危機』(Aパート)
メモリーズオフ 2nd ドラマCD 第四話『もう一度、永遠の約束』(Aパート)


【キャラクター一覧】


伊波 健♂:
白河 ほたる♀:
飛世 巴♀:
稲穂 信♂:




【本編】



ほたる「メモリーズオフ2nd 第三話『思いがけない恋の危機』」(タイトルコール)




ほたる「二人とも、どうして抱き合って・・・」

巴  「どう? 虫、取れた?」

健  「ああっ、取れたよ!」

巴  「ありがとう、イナ。襟元から虫入るなんて最悪」

ほたる「なあんだ・・・」

巴  「そんなことより、ほわちゃんこそ今日は来れないんじゃ」

健  「あ、それは」

ほたる「え? ああ~、ごみんごみん。用事がなくなったから、来れるようになったの」

健  「ほたる?」

ほたる「せっかく健ちゃんが誘ってくれたんだもん、ね?」

健  「ああ、来てくれて、嬉しいよ」

信  「ま、そんなわけだ」(近づきながら)

健  「信君?」

信  「温泉旅行、楽しもうぜ!」

ほたる「ほたる、温泉入りた~い! ほら、ととちゃんもレッツらご~!」」

巴  「うわっ! うふふっ、もう、引っ張らないで~」


《ほたると巴は先に温泉へ向かう。残された健と信》


信  「なあ、イナケン。お前
    『嘘をつかないことは良いことだけど、嘘をつけないのは悪いことだ』
    って言ってたよな?」

健  「ああ」

信  「今の会話。いくつ嘘があった?」

健  「・・・・・・」

信  「その一つでもバレたら、あいつらのあの笑顔はなくなるって、わかってんだろうな?」

健  「・・・わかってるよ」


《健と信が温泉に入っている》


信  「ああ~~! いい湯だ~~!」

健  「おっさんですか」

信  「うめき声をあげるのが、温泉の作法なのだよ」


《隣の女湯から、ほたると巴の声が聞こえてくる》


巴  「ほわちゃんとお風呂一緒に入るなんて、久しぶりだね」

ほたる「ね~♪」

健  「ごほん」

信  「うおっほん」

健  「・・・」

信  「・・・」

健  「なんで黙ってるんですか?」

信  「イナケンこそ」

巴  「う~ん! いいお湯!」

ほたる「きゃっほう!」(温泉に飛び込む)

巴  「うわっ! 飛び込んじゃダメだって!」

ほたる「プールみたいで楽しいんだもん! そ~れ、クロール! 平泳ぎ! いぬかき~♪」

健  「あははっ。ったく、ほたるのやつ」

信  「やっぱ、たるたるってかわいいよな~」

健  「え?」

信  「イナケン。お前もう たるたるのこと好きじゃないんだろ? 俺にくれよ」

健  「そんな物みたいに」

信  「物みたいに捨てようとしたのは、お前だろ」

健  「僕は、そんなことは」

信  「じゃあ、なんで嘘ついて、"とと"と二人きりで旅行に来たんだ!?」

健  「それは・・・」

信  「じゃ、そういうわけなんで。たるたるは俺がいただくから」

健  「そんな」

ほたる「ところで、ととちゃ~ん? ちょっと大きくなったんじゃ、ありませんこと~?」

巴  「いやっ! やめてよ! くすぐったい!
    そーゆーほわちゃんこそ、成長したんじゃな~い?」(イチャつきながら)

健&信「ごほんごほん!」

信  「大きくなったというのは、身長のことではないよな?」

健  「おそらく」

巴  「それにしても、肌きれいだね~。真っ白でスベスベ。うりゃ~~!!」

ほたる「きゃははははっ! やめてよ! ほたるくすぐったがりなの! あははははは!」

健&信「ごほんごほん! ごほんごほん!」

信  「日本全国の健全かつハラペコな青少年の皆さん! 長らくお待たせいたしました~!」

健  「は?」

信  「題して!『稲穂探検隊スペシャル ~知られざる神秘に挑む~』」

健  「なんスか、それ!? どっから流れてるんスか、このファンファーレは!?」

信  「細かいことは気にするな! さ、行くぞ伊波隊員! 隊長の後に続くのだ!
    は~~」(息を吸って潜る)

健  「こら、待て!」



信  「うはっ! なにするんだ!?」(健に体を掴まれて、止められる)

健  「それは僕のセリフですよ」

信  「決まってるだろ? ノ・ゾ・キだよ! 温泉旅行の醍醐味は、
    『ノゾキ・卓球・夜這い』とジュラ紀の頃から決まってるんだ!」

健  「その認識、たぶん間違っていますよ。大幅に! それに、どうして覗くのに潜るんです?」

信  「はっは~。まだまだ素人だな~」

健  「信君はプロなんですか?」

信  「男湯と女湯の湯船はな、お湯を対流させるために穴で繋がっているのだよ! 
    それが我ら探検隊のアタックルートだ!」

健  「我らって、一緒にしないでください!」

信  「え? では、我輩一人で行って参る! は~~」(息を吸って潜る)


《旅館の休憩ルーム 寝ている信をほたるが団扇で扇いでいる》


ほたる「大丈夫? 信君?」

信  「へーき、へーき。あ、だけど、もうちょっと扇いでて~」

巴  「自業自得でしょ~。覗こうとなんてするから」

信  「まさか、頭がハマるとは思わなかった~。稲穂信、一生の不覚」

ほたる「そ、それで、その~、ほたる達がお風呂入ってるとこ、見えちゃった?」

信  「うんにゃ。だけど、裸のおねえさんが見えたぞ。羽生えてたけど」

巴  「っておい! それ違うでしょ~!」

健  「僕が助けなかったら、今頃」

ほたる「でもよかった。見られちゃったら、恥ずかしいし。
    健ちゃんにだったらいいけど・・・とか言ってとか言って~!」

信  「こ、こら、叩くな! い、痛いって!」

ほたる「あ、ごめんなさい」

信  「おい、イナケン。卓球で勝負しようぜ」

巴  「平気なの?」

信  「ハンデにゃなんないね。澄空(スミソラ)のピンポンキンと言われた俺様だぜ」

ほたる「アンポンタン? メンタンピン?」

信  「ピンポンキン! ピンポンキングの略!」

巴  「『グ』しか略されてないし」

健  「やってもいいですよ」

信  「よし。勝った方は・・・たるたるにキスしてもらえるってのは?」

ほたる「ええ~~!?」

信  「ま、いいだろ? 要はイナケンが勝てばいいんだ。な?」

健  「う、うん」

ほたる「健ちゃんが、そう言うなら」

信  「じゃ、始めるか~」


《お風呂上りに浴衣で四人が町を散歩している》


ほたる「あの、あの、ごめんね。だけど、ほっぺだから、いいよね?」

健  「負けた僕が悪いんだから、謝らなくてもいいよ」

ほたる「うふふふっ。こうして、健ちゃんとお風呂上りに浴衣着て歩けるなんて、嬉しいな。
    夢が一個叶っちゃった。健ちゃんにもキスしたげよっか?
    それとも、ほたるのチューなんて、いらないかな?」

健  「そんなことないよ」

ほたる「じゃ~」

信  「おい、たるたる! こっち来てみろよ~!」

ほたる「うわっ! 引っ張らないで、信君!」

巴  「イナ、どうしたの? 怖い顔して」

健  「いや、別に」

ほたる「うわ~! ほんとにおんなじ!」

信  「な? 言った通りだろ? これが本家の登波離橋(トワリバシ)」

巴  「確かに。桜峰にあるのと似てるね」

ほたる「健ちゃんとほたるが付き合い始めたのが、登波離橋(トワリバシ)なんだよね~?」

健  「そうだね」

巴  「何度も聞いた。耳にタコが出来るほど」

信  「二人にとっちゃ~、幸せな場所かもしれないけど。
    ここって、悲恋の伝説がある場所なんだぜ」

巴  「そうなの?」

信  「ああ。詳しいことは忘れたけど・・・
    二股野郎のせいで女の子が二人、谷川に落ちるハメになった。そんな話だ」

ほたる「ほんとに?」

信  「ああ。全く、俺には信じられないね。よそ見して女の子を傷つける野郎なんざ」

健  「・・・・・・」

信  「じゃ、ここらで別れようか」

健  「え?」

信  「旅館の話だよ。俺とたるたるは合流組だからな。お前達とは違うんだ」

ほたる「ええ~、そうなの~? 枕投げとかしたかったのに~」

信  「マンツーマンでやってやるよ。じゃあな、イナケン」

健  「ああ、ちょ、待っ」

信  「お前に文句言われる筋合いはないぜ」(健を遮って、小声で)

健  「・・・」

信  「じゃ、行こうぜ! たるたる!」

ほたる「う、うん。健ちゃん、また連絡するからね!」

巴  「・・・イナ?」

健  「あ、ああ」


《それぞれが旅館に着く。健の携帯が鳴る》


SE:携帯の着信音

信  「よう、イナケン。そっち、旅館着いたか?」

健  「とっくですよ! あの、ほたるは?」

信  「部屋にいるだろ?・・・本気でたるたる狙うぞ。じゃあな」

健  「待ってくださいよ!」

SE:携帯が切れる音

健  「ちょっと信君! 信君!? くそっ・・・」







第三話(Aパート) 終わり


第四話(Aパート)へ


メモリーズオフ 2nd ドラマCD 第二話『それは夢の中の出来事』

2017-02-04 23:54:25 | 台本

メモリーズオフ 2nd ドラマCD 第二話『それは夢の中の出来事』


【あらすじ】


ほたるに黙って、巴と二人で旅行に行くことにした健。
それを知らないほたるは、信から健が旅行に行ったことを知ってしまう。
信と一緒に急いで旅行先へ向かうほたる。
そこで、ほたるが目にしたものは・・・。



【登場人物紹介】


伊波 健(いなみ けん)

主人公。父の転勤をきっかけに一人暮らしを始めた。引越し先のアパートは「朝凪荘」。
浜咲学園の3年生。受験のためにサッカー部を引退。
ほたるとは2年生の冬から交際しており、"健ちゃん"と呼ばれている。
巴には"イナ"、信には"イナケン"というあだ名を付けられた。
信に誘われて、ファミレスの「ルサック」でバイトをする。
11月4日生まれ。


白河 ほたる(しらかわ ほたる)

浜咲学園の3年生。健のクラスメイトで彼女。
2年生の冬に告白して以降、交際中。1stの今坂唯笑とは同じ中学である。
姉の静流を真似てピアノを始めたが、静流よりもその才能を発揮した。学園の天才ピアニストである。
自称「ほたる的ギャグ」を会話に入れるが、内容はおやじギャグ同様、ひたすら寒い。
9月25日生まれ。


南 つばめ(みなみ つばめ)

浜咲学園には臨時国語講師としてやってきた。住居は「朝凪荘」で健の隣の部屋。
授業中に言うことの中には普通の教師にはないような冷たい部分もある。
他にも不可解な発言の多い不思議な女性である。
5月30日生まれ。


飛世 巴(とびせ ともえ)

澄空学園の3年生。白河ほたるの親友で、劇団バスケット所属。通称「あだ名大魔神」
性格は明るいというよりうるさいと見られることもしばしば。
他人に変なあだ名を付けることが趣味で、"ほわちゃん"(白河ほたる)
および"イナ"(伊波健)は彼女が付けた物である。
健とほたるには"とと"と呼ばれている。
8月17日生まれ。


稲穂信(いなほ しん)

澄空学園の3年生。健の友達で一つ屋根の下に住む(同じアパートに住んでいる)。
ファミレスの「ルサック」でバイトをしていて、健を誘った。
また、愛犬「トモヤ」は前作の三上智也からのもの。
前作ではキャラ間の関係に多少なりと関わりを持ったが、
今作では傍観者かあるいは助言者的存在となっている。
健のことを"イナケン"、ほたるのことを"たるたる"と呼んでいる。
1月4日生まれ。


【メモリーズオフ 2nd ドラマCD 一覧】

メモリーズオフ 2nd ドラマCD 第一話『そのキスも、愛の言葉も』
メモリーズオフ 2nd ドラマCD 第二話『それは夢の中の出来事』
メモリーズオフ 2nd ドラマCD 第三話『思いがけない恋の危機』(Aパート)
メモリーズオフ 2nd ドラマCD 第四話『もう一度、永遠の約束』(Aパート)


【キャラクター一覧】

♂2♀3

伊波 健♂:
白河 ほたる♀:
飛世 巴♀:
稲穂 信&トモヤ(犬)♂:
南 つばめ&男の子♀:


♂2♀4

伊波 健♂:
白河 ほたる♀:
飛世 巴♀:
稲穂 信&トモヤ(犬)♂:
南 つばめ♀:
男の子♀:



【本編】



ほたる「メモリーズオフ2nd 第二話『それは夢の中の出来事』」(タイトルコール)


《健と巴が旅行先の町を散策している》


健  「浴衣似合ってる! かわいいよ!」

巴  「まっ、また、口説こうとするし。イナはね、みんなに優しすぎ。
    冗談でもそういうこと言っちゃダメ!」

健  「本気なら、いいかな?」

巴  「本気なら・・・本気だったらもっとダメだよ! 私とイナは友達。
    イナは親友の恋人。OK?」

健  「あ・・・ああっ」

巴  「ふふっ・・・それにしても、ちょっと寂れてるけど、いい町ね」

健  「うん」


《小学生くらいの男の子が泣きながら走ってくる》


男の子「おかあさ~ん!!」(巴に抱きつく)

巴  「きゃっ」

男の子「ううっ、うわぁぁぁん!! うううっ・・・」(巴にしがみついて泣く)

巴  「なによ? その目?」(健に向かって)

健  「隠し子か~。人は見かけによらず」

巴  「こんな大きな子供がいるはずないでしょう!」(被り気味で)

健  「冗談だよ」

巴  「この子、ひょっとして迷子じゃない?」

男の子「うわぁぁぁん! ううっ、うううっ・・・」


《場面戻って、ほたるがトモヤ(犬)を散歩している》


ほたる「ねぇ~? トモヤ~」

トモヤ「ワンワン!」

ほたる「健ちゃんは、どこに行ったのかな~?」

トモヤ「ワン! ワンワンワンワン!」(トモヤが急に走り出す)

ほたる「トモヤ~!?」(トモヤにひっぱられて、ついて行く)


《トモヤにひっぱられて、ついていくと開けた場所に出る》


トモヤ「ワンワンワン! ワンワンワン!」

ほたる「どうしたのよ~? トモヤ~? って、つばめ先生!
    ・・・つ、つばめ先生が、死んでる!」

つばめ「勝手に殺さないで」

ほたる「って、生き返った~!?」

つばめ「だから、死んでません。昼寝をしていたの。メリッサの香りを楽しみながら」

ほたる「まぎらわしいですよ~。本当に死んじゃったかと~」

つばめ「眠りを死の予行演習と仮定するなら、その指摘は半分当たっていますね。おめでとう」

ほたる「当たっても嬉しくないです!」

つばめ「そういえば、健君とは、うまくいっているの?」

ほたる「ど、どうしてですか? うまくいってますよ~。
    もうラブラブファイヤー大炸裂って感じで!」

つばめ「あなたにも健君にも、危うさを感じるわ。蜻蛉(カゲロウ)のような危うさを」

ほたる「かげろう?」

つばめ「成虫になってからは、物も食べず、ただ恋をして死んでいく昆虫」

ほたる「はぁ~?」

つばめ「いいことを教えてあげる」


《旅行先の神社 周りには出店もあり賑わっている》 


巴  「この神社で、はぐれちゃったのね?」

男の子「うううっ、ううううっ・・・」

巴  「男の子でしょ? 泣かないで。そうだ! いいもの見せてあげる。
    ほら、おねえちゃんの手、見て。なんにも持ってないでしょ?」

男の子「う、うん」

巴  「だけど・・・ほ~ら!」

男の子「あっ! 風車!」

巴  「あげるね! だから泣かないで? ね?」

男の子「うんっ!」

巴  「どうしたの? 黙っちゃって」

健  「さっきの手品」

巴  「うふふっ、今時の子供は袂(タモト)が物を入れる場所だって知らないでしょ?」

健  「気づかなかった」

巴  「それは、私の演技力の賜物ってやつ?」

健  「それにしても、やっぱり女の子なんだね。いいお母さんになれるよ。感動した!」

巴  「そ、そんなことより、この子のお母さん探さなきゃ。結構人がいるよ。どうする?」

健  「う~ん、そうだな・・・なあ、肩車してあげようか?」

男の子「うんっ! してしてっ!」

健  「ほ~ら、乗って。そうしたら、お母さんを呼ぶんだ!」

巴  「な~るほど」

健  「さっ、しっかり掴まるんだよ。いい?」

男の子「へいきっ!」

巴  「イナも、いいお父さんになれるかもね」

健  「なんか言った?」

巴  「別に。さあ、行こう!」


《場面戻って ほたるとつばめが話している》


つばめ「わかった?」

ほたる「ぜんぜん」

つばめ「繰り返しになるけど、人間の心も実は物理法則の鎖に縛られてるってことが言いたいの」

ほたる「?」

つばめ「もちろん、質量も存在する。だから気をつけて。
    相手に背負わせれば、応力を要求することになるの」

ほたる「え~と、いましゃべってるのは日本語ですか?」

つばめ「あいにく、スワヒリ語は知らないわ」

ほたる「そっか、スワヒリ語ならわかったのに~」

つばめ「ついでに言うなら、人間の心は熱力学(ネツリキガク)第二法則にも従うわ」

ほたる「無視ですか・・・」

つばめ「わかりやすく言えば、心もエントロピーが増大してしまうってことよ」

ほたる「ああ、なるほど! それはわかりますって、わかりませんって~!」

信  「つまり、恋の炎はいつしか消えてしまう。そういうことッスよね」

ほたる「あ、信君」

つばめ「難しい言い方をすれば、そうなるわ」

信  「難しいかな? んなことより、どうしてたるたるがここに居んだよ?
    イナケンと旅行行ったんじゃ」

ほたる「旅行? なにそれ?」

信  「誘われただろ?」

ほたる「そんなの知らない・・・!」(最後は走り出す)

信  「おい! たるたる! まさか追いかける気か!?」

ほたる「・・・健ちゃん、どこに行ったの?」(戻ってきて信に訊く)

信  「温泉だよ。こっから新幹線で二時間」

ほたる「わかった!・・・はぁ、はぁ、はぁ、温泉って、いっぱいあるよね?
    いっぱい、あるよね!?」
    (信の言葉を遮って走り出すが、また戻ってくる)

信  「わかったよ! 一緒に行ってやるよ!」

ほたる「ありがと~」


《旅行先 千本鳥居を健と巴の二人で歩いている》


巴  「すごいね。この世の物とは思えない」

健  「京都の伏見稲荷(フシミイナリ)にもあるよね。こういう鳥居で出来たトンネル」

巴  「千本鳥居だっけ? 異次元に繋がってるみたいだね」

健  「そうだね~」

巴  「あの子、お母さんに会えてよかったね」

健  「おかげでもう夕方になっちゃったけどね」

巴  「うふふふっ。でも、ま、ここを教えてもらえたからいいじゃない」

健  「僕達が夫婦円満の祠(ホコラ)にお参りして、どうするって気はするけど」

巴  「きゃっ!」(転びそうになる)

健  「うわっ、大丈夫?」(巴を受け止める)

巴  「平気」

健  「気をつけなよ」

巴  「ちょっ・・・なんで、そこで手を握るかな。誰かに見られたら、どうするの?」

健  「誰かって?」

巴  「それは・・・」


《そのまま黙ったまま二人は、祠に到着する》


健  「本当に異次元に来たみたいだね」

巴  「うん。まるで、真っ赤な紅葉(モミジ)の雨・・・きれい・・・。
    来て、よかったな。あれ? おかしいね? どうして私、泣いてるんだろう?」

健  「とと」(巴を抱きしめる)

巴  「あっ・・・やめてよ、イナ。ほわちゃんがいるのに。あんなにいい子、他に」

健  「そんなことはわかってる。だけど、だからこそ、重いんだ。自分の気持ちがわからないんだ」

巴  「じゃあ、どうして抱きしめるの? そんなの」

健  「だったら突き飛ばせばいい」

巴  「ずるいよ。こうされて、嬉しいの知ってて言ってる。
    ほわちゃんはね、親友なの。イナのあったかさとか、愛の言葉とか、
    全部話してくれるくらい仲がいいの。
    羨ましいけど、友達の宝物だから、我慢出来たの」

健  「とと」

巴  「イナは、本当にあったかいね。残酷なくらい、あったかいね」

健  「・・・・・・」

巴  「お願いだから、離して、ください。このままじゃ、演技が出来なくなる」

健  「演技?」

巴  「イナを、好きじゃないフリ」


《健と巴が抱き合っているところをほたるが走ってくる》


ほたる「はぁ、はぁ、はぁ・・・」(走ってくる)

健  「!?」(ほたるを見つける)

ほたる「け、健ちゃん・・・」

健  「ほたる・・・」





第二話 終わり



第三話(Aパート)へ



メモリーズオフ 2nd ドラマCD 第一話『そのキスも、愛の言葉も』

2017-02-04 23:28:25 | 台本

メモリーズオフ 2nd ドラマCD 第一話『そのキスも、愛の言葉も』


【あらすじ】

ほたると付き合ってはいるが、本当にほたるのことを愛しているのか悩んでいる健。
そんな時に巴から旅行のチケットを貰う。最初は、ほたると巴と三人で旅行に行くつもりだったが・・・。


【登場人物紹介】


伊波 健(いなみ けん)

主人公。父の転勤をきっかけに一人暮らしを始めた。引越し先のアパートは「朝凪荘」。
浜咲学園の3年生。受験のためにサッカー部を引退。
ほたるとは2年生の冬から交際しており、"健ちゃん"と呼ばれている。
巴には"イナ"、信には"イナケン"というあだ名を付けられた。
信に誘われて、ファミレスの「ルサック」でバイトをする。
11月4日生まれ。


白河 ほたる(しらかわ ほたる)

浜咲学園の3年生。健のクラスメイトで彼女。
2年生の冬に告白して以降、交際中。1stの今坂唯笑とは同じ中学である。
姉の静流を真似てピアノを始めたが、静流よりもその才能を発揮した。学園の天才ピアニストである。
自称「ほたる的ギャグ」を会話に入れるが、内容はおやじギャグ同様、ひたすら寒い。
9月25日生まれ。


飛世 巴(とびせ ともえ)

澄空学園の3年生。白河ほたるの親友で、劇団バスケット所属。通称「あだ名大魔神」
性格は明るいというよりうるさいと見られることもしばしば。
他人に変なあだ名を付けることが趣味で、"ほわちゃん"(白河ほたる)
および"イナ"(伊波健)は彼女が付けた物である。
健とほたるには"とと"と呼ばれている。
8月17日生まれ。


相摩 希 (そうま めぐみ)

澄空学園2年生。
澄空学園の後輩で、健と同時期に「ルサック」でバイトを始めた。
趣味は絵を描くことであり、美術部に所属している。
望という双子の妹がいるが、体が弱く入退院を繰り返している。
4月13日生まれ


稲穂信(いなほ しん)

澄空学園の3年生。健の友達で一つ屋根の下に住む(同じアパートに住んでいる)。
ファミレスの「ルサック」でバイトをしていて、健を誘った。
また、愛犬「トモヤ」は前作の三上智也からのもの。
前作ではキャラ間の関係に多少なりと関わりを持ったが、
今作では傍観者かあるいは助言者的存在となっている。
健のことを"イナケン"、ほたるのことを"たるたる"と呼んでいる。
1月4日生まれ。


【メモリーズオフ 2nd ドラマCD 一覧】

メモリーズオフ 2nd ドラマCD 第一話『そのキスも、愛の言葉も』
メモリーズオフ 2nd ドラマCD 第二話『それは夢の中の出来事』
メモリーズオフ 2nd ドラマCD 第三話『思いがけない恋の危機』(Aパート)
メモリーズオフ 2nd ドラマCD 第四話『もう一度、永遠の約束』(Aパート)


【キャラクター一覧】


伊波 健♂:
白河 ほたる♀:
飛世 巴♀:
稲穂 信♂:
相摩 希♀:



【本編】



健M 「僕は、かわいい女の子と付き合っている。そう僕にはもったいないほどの・・・」



ほたる「メモリーズ オフ 2nd 第一話『そのキスも、愛の言葉も』」(タイトルコール)



《ベッドで一緒に寝ている健とほたる。外は雨が降っている》



ほたる「ねぇ、健ちゃん。まだ起きてる?」

健  「? どうしたの? ほたる」

ほたる「なんか眠れなくて・・・雨、止まないね」

健  「ここんとこ、小雨が続いてるよね」

ほたる「はむっ!」

健  「うわっ! なんで噛み付くんだよ~?」

ほたる「コサメのマネ」

健  「海に住むサメとは」

ほたる「そんなの知ってるっぺ。ギャグだっぺよ~♪」

健  「ははっ・・・ったく」


《ほたるが健に抱きつく》


ほたる「しぺっと」

健  「お、おいっ」

ほたる「ん~! 健ちゃんってあったかいね~。ほたる、泣きそうなくらい幸せだな~。
    時間が止まっちゃえばいいのに」

健  「ほたる」

ほたる「ねぇ、ぎゅってして。ちょっとくらい痛くってもいいから」


《健がほたるをぎゅっと抱きしめる》


ほたる「健ちゃん、大好きだよ」

健M 「僕は、かわいい女の子と付き合っている。でも、好きなわけじゃない。
    もちろん、嫌いじゃない。だけどきっと、愛してはいない」

ほたる「明日天気にしておくれ」



《ファミリーレストラン ルサック》



健  「あの~、信君? いい加減休憩を」

信  「ほ~いじゃ次! 一のニの団体客に、和風ハンバーグ3つとナポリタンにラタトゥーユ2枚!
    イナケン、持ってって!」

健  「おおい!? 休ませる気ないんですか!?」

信  「これ持ってったら休んでいいから!」

希  「あ、私いきますよ」

健  「希ちゃん、でも」

希  「お客さんが来てますよ。かわいい女の子」

信  「なにっ!?・・・あっ、飛世さんか」

希  「だから、私持っていきます。よっいっしょっと!」

健  「大丈夫? 重いでしょ?」

希  「平気、です・・・きゃあああ!!」


《希が客に料理をぶっかけてしまう》


希  「って、どうわあああ!! お客様! どうしてスープを頭からかぶってるんですか!?
    面白い飲み方ですねって、私のせいですね~!」
    
信  「ええっと・・・休憩、する?」

健  「え? あ、あははは・・・」(苦笑い)

希  「コールドスープで良かった・・・って良くないですよね、ごもっともです!
    今、お顔拭きますからねって、これ雑巾でした~! すいませ~ん!!」


《一段落して、健と巴が席に着いている》


巴  「あははははっ、あはははははっ」

健  「それは笑いすぎ!」

巴  「ごめんごめん。でもさ、『血、血まみれだ~!』だよ?
    トマトスープひっかぶったお客指差して」

健  「ほんとに血が出てるかと思ったんだ」

巴  「それで余計お客さん怒らしちゃってるんだもん。世話ないよ」

健  「うるさいな~。ひやかしなら帰ってくれ」

巴  「あら? ちゃ~んといいもの見せてもらった代金は支払いますことよ~?」

健  「じゃあ~、僕。ブルーベリーのスムージー!」

巴  「誰が奢るって言った? これをあげるってこと、ジャジャ~ン!」

健  「? チケット? 芝居の?」

巴  「チッチッチッチッ。かの有名な長野県は大谷温泉へご招待!
    豪華温泉旅館の宿泊券、三枚組みセット~! ほわちゃんと行っといでよ」

健  「ほたると?」

巴  「なんで意外そうな顔するかな」

健  「あ、いや・・・"とと"も行くんだろ?」

巴  「冗談。邪魔者はお留守番してるよ。愛を確かめ合ってくれば~?」

健  「・・・・・・」

希  「ブルーベリースムージー、お待たせしました」

健  「え? 頼んでないけど?」

希  「奢りです。さっきはごめんなさい。私のせいで」

健  「あ、いや、僕のせいでもあるし。希ちゃんにケガがなくてなによりだよ」

巴  「優しい言葉ね~。そうやって口説いてるんだ?」

希  「え?」

健  「そ、そんなわけないだろ!」

巴  「冗談だってば~」

希  「・・・あ、旅行行くんですか?」

健  「まだ、わからないけど」

希  「旅行っていいですよね。普段の生活から離れて、初めて見えるものってあるだろうし。
    自分を見つめ直せるし」

健  「旅行好きなの?」

希  「病気がちだから、遠出は・・・」(双子の妹が病気がちのため)

健  「あ、ごめん」

希  「いいんです」

信  「希ちゃん! ちょっといいかな~?」(奥の厨房から呼ぶ)

希  「それじゃ、ごゆっくりどうぞ!」

巴  「どうしたの? 難しい顔して」

健  「ううん。ああ、チケットありがたく貰っとくよ」

巴  「どういたしまして。あ、とりあえず、ここは奢ってね」

健  「いいよ」

巴  「マジ!?」

健  「言っといてなに驚いてるんだよ? でも、そのかわりっていったらなんだけど・・・
    一緒に行ってくれないか? 旅行。もちろん、ほたるも一緒に」


《海辺でほたるが座っている》


健  「ほたる~! ほたる~!」(遠くからほたるに呼びかける)

ほたる「あっ! 健ちゃん!」


《健がほたるのそばに行く》


健  「なに聴いてたの?」

ほたる「『愛の夢』っていう曲なんだよ。ここ、座って。もっと近く」

健  「?」

ほたる「イヤホン届かないでしょ? はい」


《健がほたるから片方のイヤホンを耳に差し、その場に座る》


ほたる「こうして、片っぽずつのイヤホンで聴いてるのって、ちょっと幸せ」

健  「どうして?」

ほたる「ぴったり寄り添っていられるし。それに、イヤホンって右と左で違う音が出てるよね?」

健  「ステレオだと、そうなるな」

ほたる「今、ほたると健ちゃんが聴いている曲は、ちょっとずつ違うけど。
    二人の心が合わされば、一つの曲になるんだよ」


《しばらくの沈黙が続く》


ほたる「ねぇ、健ちゃん・・・キス、して」


《健とほたるがキスする》


ほたる「・・・今、きっと、曲が一つになったね」


《そのまましばらく経って》


健  「今日は、なんか用だったの? 結構待ったでしょ、バイト長引いたから」

ほたる「用がなきゃ会いに来ちゃだめ~?」(ちょっと怒って)

健  「そんなことないけど」

ほたる「最近遊べなかったし、メールの返事もあんまり返ってこなかったから」

健  「ごめんな。忙しくて・・・」


《少しの沈黙の後》


ほたる「ねぇ、一緒に、旅行でも行かない? 明日から連休でしょ?」

健  「ああ、旅行なら!」(旅行のチケットを出そうとする)

ほたる「旅行なら?」

健  「いや、どうして旅行に行きたいの?」(出そうとした旅行のチケットをしまう)

ほたる「さっきから理由訊いてばっかり。一つしかないでしょう?」

健  「そうだね」

ほたる「ダメ?」

健  「・・・そんな急に言われても無理だよ。ごめん」

ほたる「そっか。ほたるこそごめんね。わがまま言って」

健  「そろそろ帰ろう」(立ち上がる)

ほたる「あ、あのっ! 今日、健ちゃん家、お泊りしちゃあ」

健  「やめとこ。親とか心配するだろうし。家まで送ってくよ」

ほたる「ありがとう。健ちゃんは、やさしいね」


《旅行 当日》


巴  「ええ~!? ほわちゃん行けなくなっちゃったの?」

健  「ああ~、誘ったんだけど用事が出来たって。二人で楽しんできてって言ってたよ」





健M 「嘘をつかないことは良いことだけど、嘘をつけないことは悪いことだ。
    僕は、そう思ってる。
    でも、僕が今ついている嘘は、きっと最悪の・・・嘘だ」





第一話 終わり



第二話へ続く