「last winter。」番外編 ラストサマー!? ~夏だ!プールだ!悩殺ボディ!?~
原作:呉羽和哉 脚本:KIRA.
【登場人物紹介】
・上原 凛子(うえはら りんこ)♀:鷹ノ森学園2年 生徒会 会計。
一応主人公。通称は「りんご」。背が小さいことを翼によくからかわれる。
・松葉 翼(まつば つばさ)♂:鷹ノ森学園3年 生徒会 会長。
基本的に何でもそつなくこなすイケメン。
ちょっと鈍いところがあるけど、頼りになる。唯一、ダンスが苦手。
・南 雪乃(みなみ ゆきの)♀:鷹ノ森学園3年 生徒会 副会長。
いたずらっ子なお姉さん♪ スタイル抜群♪ 実は良家のお嬢様らしいのだが・・・。
・鈴村 陽(ずずむら よう)♂:鷹ノ森学園2年 生徒会 書記。
常に冷静沈着。実家は剣道道場を開いており、剣道二段。
全国模試も常に上位。文武両道。ただ、言葉数は少ない。
・北条院 翔(ほうじょういん かける)♂:北条院グループの御曹司。
常に自分の思い通りにいかないと納得しない典型的なおぼっちゃまタイプ。
雪乃と知り合いのようだが・・・。
【キャスト一覧】
上原 凛子♀:
松葉 翼 ♂:
南 雪乃 ♀:
鈴村 陽 ♂:
北条院 翔♂:
実況&係員&アナウンス♂♀:
《本編》
【満員バスの中 熱気で蒸し風呂状態】
翼 「あっち~。まだ着かないのか? 流石にもう限界だぜ」
凛子 「もうちょっとですよ~。翼会長~」
雪乃 「ひやっ!? ちょっと、翼! どこ触ってんのよ!?」
翼 「どこも触ってねぇよ!!」
凛子 「翼会長・・・えっちぃのは嫌いです」
翼 「だから、どこも触ってねぇってば!!!」
陽 「会長、静かにしてください。周りに迷惑です」
翼 「ううぅ・・・」
凛子M「どうして満員バスの中で、こんなことになっているかというと・・・
それは夏休み前のある日」
【時は逆上り 生徒会室】
雪乃 「海よ! 海!」
翼 「なんだよ、雪乃。いきなり大声出して」
雪乃 「こんなに暑かったら、干からびて死んじゃうわよ!」
陽 「そう言われましても。夏休み前にはインターハイに出場する部活の予算などを組まないと」
雪乃 「わかってるわよ、そんなことは! ねぇ~、りんごちゃん一緒に行こうよ~、海に~」
凛子 「でも、雪乃先輩。海っていっても、どこの海に行くんですか?」
雪乃 「えっと、それは、その・・・」
翼 「ったく。そりゃあ俺だってこんなクーラーも効いてないところに
毎日放課後に缶詰状態なんてゴメンだよ」
雪乃 「ね! ね! だから、リフレッシュのために海に行こうよ! つばさ~」
翼 「うわっ!? 暑いんだからくっつくなって!」
凛子 「ちょ、ちょっと!? 雪乃先輩!? 翼会長から離れてください~!!」
陽 「海に行くにしても、ここからだとかなり遠いですよ。
電車で行っても、2時間以上かかりますし」
雪乃 「じゃあ、私がヘリを飛ばして!」
翼 「ちょっと待て! いつからお前は大富豪のお嬢様設定になったんだ!?」
雪乃 「? 今日から?」
翼 「んなわけあるか!?」
陽 「雪乃先輩。では、こんなのはどうですか?」(そう言って、1枚のチラシを見せる)
【翼と雪乃と凛子がチラシを覗き込む】
翼・雪乃・凛子「リゾートスパ・パイレーツビーチ!?」
陽 「ええ。最近オープンしたらしくて、最寄駅からシャトルバスも出ているので
アクセスも楽みたいですよ。それに」
翼 「オープン記念! 入場料半額キャンペーン!?」
雪乃 「これはもう行くっきゃないわね!」
凛子 「いつの間にか、こんなのが出来ていたんですね」
陽 「ここは温泉やプールはもちろんのこと、ショッピングにグルメ。
映画館まで併設している複合施設のようですね」
翼 「それはすごいな」
雪乃 「見て見て、りんごちゃん! ○○○や△△△も入ってるよ!」
(○や△の中には適当に有名ブランド店などをいれてください)
凛子 「ホントですね。ここならなんでも揃いそうですね!」
翼 「せっかくだから、来週の日曜日にみんなで行ってみるか?」
雪乃 「さ~んせ~い!!・・・!?」(チラシの一部が目にとまる)
凛子 「どうしたんですか? 雪乃先輩?」
雪乃 「う、ううん。なんでもないの、気にしないで」
翼 「?」
【現実に戻り リゾートスパの入口に到着 バスから降りる】
翼 「はぁ、はぁ・・・やっと着いた~」
凛子 「頭がクラクラします」
雪乃 「ほんとよね~。翼はドサクサに紛れて私のお尻に触ってくるし」
翼 「だから、触ってねえって!」
陽 「さぁ、行きましょう。こんなところにいても暑いだけですよ」
雪乃 「りんごちゃん、ほら。行こ行こ」
凛子 「あっ、雪乃先輩。そんなに引っ張らないで~」
翼 「俺らも行くか、陽」
陽 「はい、会長」
【建物内に入る】
雪乃 「う~ん、生き返る~。涼しい~」
翼 「だな。じゃあ、早速プールに入るか。
う~んと、15分後くらいに待ち合わせでいいか?」
凛子 「はい、大丈夫です!」
雪乃 「もう、りんごちゃんったら張り切っちゃって。
今日のためにわざわざ水着買いに行ったもんね~」(後半は小声で)
凛子 「も、もう! 雪乃先輩!?」(小声で)
翼 「どうした?」
雪乃 「なんでもないよ~、ね~、りんごちゃん?」
凛子 「は、はい、なんでもないです!」
翼 「ま、いっか。じゃあ俺らも着替えにいこうぜ」
陽 「そうですね」
翼 「じゃあ、また後でな」
雪乃 「さっ、私たちも着替えましょう」
凛子 「はい」
【プール内 流れるプール付近】
翼 「ったく、おっせ~な~。いつまでかかってんだよ。これだから女子は」
陽 「そうですね」
翼 「陽! お前もそんなところで参考書なんて読んでないで、一緒に流れようぜ~」
陽 「すいません。この参考書は防水使用ではないので」
翼 「んなこと訊いてねぇよ!? そもそもこんなところにまで来て勉強・・・」
雪乃 「ごっめ~ん! おっ待たせ~!!」(遠くから小走りで来る感じ)
翼 「!?」
陽 「!?」
雪乃 「二人ともごめんね~。待たせちゃって」
翼M 「ダ、ダイナマイトォォォ!!!!!」
陽M 「目、目のやり場が・・・」
雪乃 「翼? 陽君?」
翼M 「前々から思っていたが・・・この破壊力ハンパねぇ!?」
陽 「ごほん、ごほっ、ごほっ」(ごまかす感じで)
雪乃 「どうしたの? 二人とも?」
翼 「そ、そういえば、り、りんごはどうしたんだ!? 一緒じゃないのか?」
雪乃 「あれ? さっきまで一緒にいたのに・・・
あっ! いたいた! りんごちゃ~ん! こっちこっち!」
凛子 「お、お待たせしました」(恥ずかしがる感じで)
翼 「お、おう・・・」
凛子 「・・・・・・」
雪乃 「ちょっと翼~? それだけ~?」
翼 「なんだよ?」
雪乃 「もっとこう、無いの~? 可愛いね♪とか。似合ってるね♪とか~」
翼 「べ、別にねぇよ・・・」
雪乃 「あのね~!! 翼!? りんごちゃんは今日のために一生懸命水着を選んで!」
凛子 「雪乃先輩! もう、いいんです! もう・・・」
雪乃 「ふぅ・・・ほんとに翼はこういう時に空気読めないんだから」
翼M 「どストライクすぎて、言葉が出なかったんだよ」
雪乃 「空気読めない翼は置いといて。行こ、りんごちゃん! あっちで泳ごう!」
翼 「おいおい、そんなに走ったら危ねぇ」
凛子 「きゃあ!?」(滑って転びそうになる)
翼 「バカっ!?」(一瞬で凛子を抱きかかえて倒れる)
陽 「会長!?」
雪乃 「りんごちゃん!?」
翼 「いてて・・・りんご、ケガは無いか?」
凛子 「は、はい・・・」(翼に抱きかかえられて、恥ずかしい)
雪乃 「りんごちゃん!? 大丈夫!?」
翼 「ちょっと待て、俺の心配はどうした?」
雪乃 「ま、りんごちゃんを助けてくれたことだけは褒めてあげるわ」
翼 「おいおい、まだ怒ってんのかよ」
凛子 「あ、ありがとうございます・・・翼会長」
翼 「あ、いや・・・ケガがなくて、良かったよ」
陽 「会長、いつまで抱いているんですか?」
翼 「おわっと!」(驚いて凛子を離す」
凛子 「きゃっ」(驚いて立ち上がる)
雪乃M「翼は鈍いところはあるけど、いざって時には頼りになるんだけどな~」
翼 「あっ、そ、そうだ! あっちにウォータースライダーがあったんだ~。
みんなで滑りにいこうぜ!」(ぎこちない感じで)
凛子 「つ、翼会長~!」(翼に手を引っ張られながら)
雪乃 「ちょっと! 翼!・・・もう、置いて行かないでよね。
しょうがないな~。陽君、私たちも行こう」
陽 「あっ、ちょっと」(雪乃に手を引っ張られながら)
【ビッグウォータースライダー 頂上付近】
係員 「ビッグウォータースライダーはこちらで~す!」
翼 「ふぅ、やっと頂上に着いたな」
凛子 「うわっ! 高~い!」
係員 「それじゃ、彼氏さんは後ろで、彼女さんは前に乗ってください」
凛子 「え!? いや、私達はそんなんじゃ・・・!?」
翼 「ほらほら、りんごは前に乗れって」
凛子 「きゃっ」(翼に軽々と抱きかかえられて、二人乗り用の浮き輪に乗せられる)
翼 「よし、OK!・・・よっと。それじゃ、お願いします」
係員 「はい。しっかり掴まっててくださいね。いきますよ」
凛子 「うわっ! うわっ!!」
翼 「おおっ!」
凛子 「速い! 速いです翼会長!」
翼 「振り落とされんなよ、りんご~! ふぅ~、最っ高っ!」
SE:水しぶき
凛子 「ぷっはぁ~っ!」
翼 「ふぅ~! りんご、大丈夫か?」
凛子 「は~い、なんとか」
翼 「面白かったな!」
凛子 「はい!」
翼 「次の雪乃達が降りてくるから、少し離れようぜ」
凛子 「そうですね」
【再びビッグウォータースライダー 頂上付近】
雪乃 「今度は私達の番ね。じゃあ、私が前でいいかな?」
陽 「ええ、どうぞ」
雪乃 「あ~、陽君。ドサクサに紛れて、翼みたいにエッチなことしちゃダメだからね」
陽 「し、しませんよ!」
雪乃 「うふふっ、分かってるって。陽君は翼と違って真面目だもんね」
陽 「・・・・・・」
係員 「それじゃあ、いきますよ~」
雪乃 「お願いしま~す♪」
陽 「うわっ」
雪乃 「すご~い! 気持ちいい~♪」
《その場から翼と凛子が離れて、しばらくすると雪乃達が降りてくる》
翼 「そろそろかな?」
雪乃 「きゃあああ~!!」
陽 「うっ」
SE:水しぶき
雪乃 「ぷっはぁ~! ああ~、気持ちよかった!」
陽 「ふ~~」
翼 「よお~、二人ともお疲、れ・・・」
凛子 「雪乃先輩!? 前っ! 前っ!! 水着がっ!!」
雪乃 「え?・・・きゃあああ~~~!!」(胸を隠しながら、水の中に潜る)
凛子 「ゆ、雪乃先輩! だ、大丈夫ですか?」
翼 「はぁ~、ったく・・・は、はしゃぎ過ぎなんだよ」
雪乃 「翼・・・見たの?」
翼 「え? な、何がだよ」
雪乃 「見たんでしょ?」
翼 「だ、だから何がだよ?」
雪乃 「見たのよね?」
翼 「だから何の話だよ?」
雪乃 「見たんだ・・・」
翼 「ちょ、ちょっと待てよ!? あ、あれは不可抗力で」
雪乃 「翼のエッチっ!!」
SE:平手打ち
【しばらく経って、プール内のレストランエリアに移動した4人で昼食を食べている】
翼 「痛って~。まだ、腫れが引かねぇよ」
雪乃 「自業自得でしょ」
翼 「どこが自業自得なんだよ!? あれは不可抗力で!」
雪乃 「翼のエッチ」
翼 「か~!・・・そんなキワどい水着着て来るからだろ」(小声で)
雪乃 「なんか言った?」
翼 「別に~」
陽 「まぁまぁ、幸い周りに我々しか人がいなくて良かったですよ」
雪乃 「ホントよ~。他人に見られたりしてたら、もうこんなところにいられないわ」
翼 「あっ! それ、俺のたこ焼き!」
雪乃 「もぐもぐ・・・残してるからいらないのかと思った~」
翼 「今、食べようと思ってたんだよ!」
凛子 「翼会長、私のあげますから! もう、二人ともケンカしないでください!」
雪乃 「ふん」
翼 「けっ」
凛子 「陽君も黙ってないで、なんとか言ってあげてよ~」
陽 「触らぬ神に祟りなし」
凛子 「もう~!」
SE:チャイム(ピンポンパンポン)
アナウンス「本日はリゾートスパ・パイレーツビーチにお越しいただき、誠にありがとうございます。
ここで、ご来場のお客様にご案内いたします。
本日15時より50メートル公認プールにて『パイレーツカップ』を開催いたします!
参加費は無料! 優勝者には豪華商品もご用意しておりますので、
泳ぎに自信のあるお客様は是非ご参加くださいませ~!」
翼 「へ~、こんなイベントもやってるんだな」
雪乃 「翼、参加して来たら? 優勝して豪華商品を私にくれたら許してあげるわよ」
翼 「なんで許してもらうためにそんなことしないといけないんだよ!?」
雪乃 「まぁ、無理にとは言わないけどね~。
ダンスもロクに踊れない翼じゃ、やっぱり無理よね~?」
翼 「あのな~!」
凛子 「だから! ケンカしないでくださいよ~!!」
【そこへ北条院が黒服の男を従えて現れる】
翔 「おやおや、これはこれは雪乃さんではありませんか。奇遇ですね~」
雪乃 「!?」
翼 「? 誰だ?」
翔 「いつ見てもお美しい。あ、そうだ。この施設内にVIPルームがあるんですよ。
よろしければ、一緒にいかがですか? ここよりも素敵なお食事をご用意いたしますよ」
雪乃 「・・・け、結構よ」
翔 「ふっ、つれないな~。僕と雪乃さんの仲じゃないですか。
こんな連中と一緒にいても時間の無駄ですよ。さっ、行きましょう」
雪乃 「ちょ、ちょっと!?」
翼 「おい」(翔の肩を掴む)
翔 「なんですか? 君は」
翼 「お前こそ、誰なんだよ?」
翔 「失礼。僕は北条院 翔。北条院グループの次期社長ですよ」
凛子 「北条院グループ?」
陽 「主に飲食・ホテル・レジャー施設を経営している企業グループです」
翔 「その通り。もちろん、この複合施設も北条院グループのものですよ」
翼 「で、その北条院グループのおぼっちゃんが、なんで勝手に雪乃を連れて行こうとしてんだよ」
翔 「僕と雪乃さんは昔からの知り合いでね。君にとやかく言われる筋合いはないのですが。
まぁ、いきなりでは驚くのも仕方ありませんね。オイ」(指を鳴らす)
《黒服が北条院へ何かを渡す》
翔 「これでここは手を引いてくれませんか?」(翼へそれを渡そうとする)
翼 「なんだこれは?」
翔 「この施設内で使える商品券10万円分ですよ」
凛子 「10万円!?」
翔 「ええ。これで服を買うなり食事をするなり好きに使ってください」
凛子 「つ、翼会長・・・」
翼 「嫌だと言ったら?」
翔 「ふっ、君は何か勘違いをしているんじゃないかな~? 僕はここから去れと言っているんだ」
雪乃 「やめて、二人とも」
SE:チャイム(ピンポンパンポン)
アナウンス「本日はリゾートスパ・パイレーツビーチにお越しいただき、誠にありがとうございます。
まもなく、『パイレーツカップ』の参加受付を開始させていただきます。
エントリーされるお客様は、インフォメーションカウンターまでお越しくださいませ」
翼 「そうだな・・・なぁ、水泳で勝負しないか?」
翔 「? どういうことですか?」
翼 「今日は『パイレーツカップ』っていう水泳大会があるそうじゃねぇか。
お互いに出場して、アンタが勝ったら俺達は雪乃を置いてさっさと帰る。
ただし! こっちが勝ったら、二度と俺達の前に姿を見せるな」
雪乃 「ちょっと翼! 何勝手に決めてるのよ!」
凛子 「そうですよ! 翼会長!」
翔 「その自信はどこからくるのでしょうね~・・・
ふっ、いいでしょう。その勝負受けて立ちますよ」
雪乃 「翔君まで!」
翼 「よし、決まりだな。こっちは俺とそこの陽が出るからな」
翔 「どうぞご自由に。雪乃さん、水泳大会後にまたお会いしましょう。では」
《北条院が黒服を連れて去っていく》
雪乃 「ちょっと翼~! 私に相談もしないで勝手に決めないでよ~!」
凛子 「ホントですよ~! もしも、負けちゃったらどうするんですか~!?」
翼 「大丈夫だって。勝てばいいんだよ、勝てば。泳ぎにはちょっと自信あるしな」
陽 「だったら、なぜ私も出ることになってるんですか?」
翼 「確立は少しでも高い方がいいだろ?」
陽 「ふっ、全く。会長は」
雪乃 「あのね、翼。知らないと思うけど、翔君は水泳でインターハイに出場したことがあるのよ」
翼 「なっ!? マジかっ!?」
雪乃 「本当よ。だから、もう・・・」
翼 「そんじゃ、気合入れていかないとな。陽、とりあえずエントリーしに行こうぜ。
その後に作戦も立てないとな」
陽 「分かりました。会長」
雪乃 「だ、だから翔君は」
翼 「安心しろ、雪乃。絶対負けねぇから」
雪乃 「・・・・・・」
翼 「よし、行こうぜ!」
陽 「はい」
《翼と陽がエントリーのためインフォメーションカウンターへ向かう》
凛子 「雪乃、先輩?・・・」
雪乃 「・・・・・・」
前編 終了
=============================
後編 開始
【凛子と雪乃が二人きり。沈黙に耐え切れず、凛子が口を開ける】
凛子 「・・・つ、翼会長たち、お、遅いですね?」
雪乃 「そうね・・・」
凛子 「・・・あ、あの、さっきの人は雪乃先輩のお知り合いなんですよね?」
雪乃 「うん、幼馴染なんだ」
凛子 「幼馴染?」
雪乃 「南家と北条院家はね、私が子供の頃から交流があったの」
凛子 「そうなんですか」
雪乃 「昔は翔君とも一緒に遊んだりしたわ。それに、当時は私も知らなかったんだけど。
私と翔君は許婚(いいなずけ)だったらしいの」
凛子 「許婚!?」
雪乃 「うん。まぁ、そういう家系だとたまにあるんだって。
それでね、親同士はいずれ二人を結婚させるつもりだったんだけど。
私が中学生の頃にお父さんの事業が失敗して、会社に大きな損害を出してしまったの。
だから、許婚の話も一旦白紙に戻されちゃったんだって」
凛子 「え? それでおじさんの会社は大丈夫なんですか?」
雪乃 「今は大丈夫。元通りとまではいかないけど、
ある程度軌道に乗り出したから心配するなって言ってたわ」
凛子 「よかった~」
雪乃 「ふふっ、ありがとう、りんごちゃん。
それもあって本来なら有名私立高校に通う予定だったんだけど、
公立の鷹ノ森学園に入学したのよ」
凛子 「そうだったんですね・・・わ、私は雪乃先輩と出会えて嬉しかったです!」
雪乃 「私もりんごちゃんと出会えて嬉しいわ」
凛子 「えへへ」
雪乃 「ただ、翔君は婚約が破棄されたことを納得出来ないらしくて」
凛子 「それって、やっぱり・・・」
雪乃 「うん・・・悪い子じゃないんだけどね。私はそういう風に彼を見られなくて」
凛子 「でも、さっきの態度はやっぱりダメです。レディを誘う態度じゃありません!」
雪乃 「ふふっ、そうね。その通りだわ」
SE:チャイム(ピンポンパンポン)
アナウンス「本日はリゾートスパ・パイレーツビーチにお越しいただき、誠にありがとうございます。
まもなく、本日のメインイベント『パイレーツカップ』を開催いたします!
ご来場のお客様。是非、50メートル公認プールエリアまでお越しくださいませ!」
凛子 「うわっ、そろそろ始まるみたいですね。雪乃先輩、二人を応援しに行きましょう!」
雪乃 「うん!」
【パイレーツカップ開催場所 50メートル公認プール】
実況 「ご来場のお客様! 大変長らくお待たせいたしました!
ただいまより、『パイレーツカップ・決勝戦』を開催いたしま~す!」
SE:歓声
実況 「今大会の優勝者には、ネズミーランドのパークチケットと
ネズミーランドホテルの宿泊券をそれぞれペア1組でプレゼントさせていただきま~す!」
SE:歓声
翔 「予選は通過してきたようだな。おめでとう」
翼 「それはどうも」
翔 「だが、優勝はインターハイ経験者の僕のものだからね」
翼 「それはどうかな?」
翔 「ふっ」
実況 「なんと! 本日は、リゾートスパ・パイレーツビーチの経営者のご子息であられる、
北条院 翔様も特別にご参加されま~す!」
SE:歓声
実況 「もし、北条院 翔様が優勝された場合には、今会場にいらっしゃるお客様全員に
次回パイレーツビーチへの入場料無料券をプレゼントさせていただきま~す!」
SE:歓声
実況 「ちなみに、北条院 翔様はインターハイにも出場されたご経験もあるということで、
優勝の期待大ですよ~!」
SE:歓声
雪乃 「うわっ、すごい歓声ね」
凛子 「翼会長! 頑張れ~!」
雪乃 「陽君も頑張って~!」
実況 「それでは、再度ルールをご説明させていただきます!
今回は北条院様も含め、予選を勝ち上がった計8名で争われます!
種目は自由形。50メートルプールを一往復で計100メートルです。
さぁ、はたして栄冠は誰の手に輝くのでしょうか!?
まもなく、スタートです!」
翼 「陽、予定通りに行くぞ」
陽 「はい、会長」
実況 「よーい・・・」
SE:ピッ(スタートの合図)
SE:歓声
実況 「パイレーツカップ決勝がスタートしました!
さぁ、どんな展開が待っているのか!?
大本命の北条院選手は4レーンです!
おおっと、5レーンの松葉選手! ものすごいスピードで飛ばしている!
一気に先頭に踊り出た~!」
翼 「はぁ!・・・はぁ!・・・はぁ!・・・はぁ!」
実況 「続いて、4レーンの北条院選手! 6レーンの鈴村選手と続きます!」
雪乃 「行け~! 翼~!」
凛子 「陽く~ん! 頑張れ~!」
翔M 「ふっ、そんなに序盤に飛ばしたら後半まで保たないぞ。バカめ」
実況 「さあ、ここで50mのターン! トップは松葉選手! このまま逃げ切るのか~!?」
翼 「はぁ!・・・はぁ!・・・はぁ!・・・はぁ!」
翔M 「まさか、本当にこのまま逃げ切る気か!? くそっ!」
実況 「おおっと、ここで北条院選手! スパートをかけてきたか!?
トップの松葉選手にどんどん迫っていく~!」
雪乃 「翼~!」
凛子 「翼会長!」
実況 「残り25m! ここで北条院選手がトップに立った~!
いや、松葉選手も必死にくらいついていく! まだまだ分かりません!」
翼M 「・・・くそっ! ここまでか・・・」
翔M 「そんなに甘くないんだよ。僕の勝ちだ!」
翼 「はぁ!・・・はぁ!・・・へへっ」
翔M 「!? アイツ、一瞬笑ったような・・・!?」
実況 「おおっと! 6レーンの鈴村選手! ここで一気にスピードを上げてきた~!」
翔M 「何っ!?」
陽 「はぁ!・・・はぁ!・・・はぁ!・・・はぁ!」
凛子 「陽君!?」
雪乃 「行け行け行け~~!!」
翔M 「こんなやつに~!・・・くっ、さっきスパートをかけたから力が・・・」
翼M 「ぶっちぎれ~! 陽!!」
実況 「北条院選手! 松葉選手! 鈴村選手! これは稀に見るデッドヒートだ~!」
翔 「はぁ!・・・はぁ!・・・はぁ!・・・はぁ!」
翼 「はぁ!・・・はぁ!・・・はぁ!・・・はぁ!」
陽 「はぁ!・・・はぁ!・・・はぁ!・・・はぁ!」
実況 「さぁ~、タッチは~!?・・・優勝は、鈴村選手~!!」
SE:歓声
凛子 「陽君が! 陽君が!!」
雪乃 「やった~! やった~、りんごちゃん!!」
実況 「本日のパイレーツカップの優勝者は、6レーン 鈴村選手です! おめでとうございま~す!
優勝した鈴村選手には、ネズミーランドのパークチケットと
ネズミーランドホテルの宿泊券をそれぞれペア1組で贈られます!」
SE:歓声
翼 「はぁ、はぁ、やったな。はぁ、はぁ、おめでとう、陽」
陽 「はぁ、はぁ、ありがとうございます。はぁ、はぁ、会長」
【表彰式が終わってプールを出た四人】
翼 「ふぅ~、今日はいろいろあったけど。なんとかなったな」
雪乃 「翼が勝手に勝負するって言い出した時はどうなるかと思ったけど」
翼 「まぁまぁ、勝ったからいいじゃねぇか。
そういえば、あのおぼっちゃんはどこ行ったんだ?
一言言ってやろうと思ったら、すぐにいなくなるし」
凛子 「もう、帰っちゃったんですかね?」
陽 「約束を果たしたんだと思いますよ、彼なりに」
雪乃 「それから言っとくけど、翼が私のお尻触ったり、胸を見たこと。まだ許してないから」
翼 「か~! まだ言うか!? それ!・・・ったく、陽!」
陽 「はい、会長」
翼 「ほら、優勝商品のネズミーランドのチケットと宿泊券やるから、これで機嫌直せって」
雪乃 「ダメ。それは陽君が勝ち取った物でしょ」
翼 「だからさっきも説明したじゃねぇか~!? あれは作戦で~」
雪乃 「りんごちゃん、お腹すいてない?」
凛子 「もうお腹ぺこぺこです~」
雪乃 「今日は翼が奢ってくれるって♪」
凛子 「え? 本当ですか!? 翼会長!」
翼 「え? いや、俺はそんなことは一言も」
凛子 「あっ! さっきレストランフロアガイドを見ていて、
おいしそうなお店を発見したんですよ! 行きましょう! 翼会長!」
翼 「あっ、ちょ、ちょっと待て! りんご! 手を引っ張るな!
ゆ、雪乃~! 覚えてろ~~!」
《翼が凛子に手を引っ張られて行く》
雪乃 「ふふっ、じゃあ、私達もゆっくり行きましょうか?」
陽 「あ、あの、雪乃先輩」
雪乃 「? なに? 陽君」
陽 「え、えっと、その・・・」
雪乃 「あ、そうだ。陽君にしっかりとお礼を言ってなかったわね。
さっきは、私のために頑張ってくれてありがとう」
陽 「い、いえ! そんな・・・僕は」
雪乃 「ちゅ♪」(陽のほっぺにキスする)
陽 「!?」
凛子 「雪乃せんぱ~い! 置いていきますよ~!」
雪乃 「う~ん! 今行く~! 陽君、行こ!」
陽 「・・・・・・」
《四人が店の前で合流する。会話しながら徐々にフェードアウト》
翼 「あっ! 雪乃てめ~、俺がいつ奢るって言った~!?」
雪乃 「なんのことかしら~?」
翼 「とぼける気か~!」
凛子 「翼会長! ここですよ! ささっ、入りましょう!
それで~、デザートにミラクルパイレーツジャンボパフェを食べるんです~♪」
翼 「りんご~、言っとくけど奢らないからな~」
凛子 「ええ~~!! 翼会長のウソつき~~!!」
翼 「あのな~! ってか陽! お前も何か言ってくれ! ? 陽~~~~!!!!」
終わり