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台本置き場

るろうに剣心 第七十八幕 「十本刀・張」

2017-11-25 00:31:41 | 台本
るろうに剣心 第七十八幕 「十本刀・張」



【主な登場人物紹介】

・緋村 剣心(ひむら けんしん)♂♀

本作の主人公。かつて「人斬り抜刀斎」として恐れられた伝説の剣客。初登場時28歳。
生来争い事を好まない性格だが、戦国時代に端を発する古流剣術
「飛天御剣流(ひてんみつるぎりゅう)」の使い手で、ひとたび戦いとなれば逆刃刀という、
峰と刃が逆転した刀で人智を越えた剣技を繰り出し、
軍の一個大隊をも遥かに超える一騎当千の戦力を発揮する。

・沢下条 張(さわげじょう ちょう)♂

“刀狩”の張。刀剣蒐集狂で、特に新井赤空作の殺人奇剣を好んで集め、
それを用いた殺戮を楽しむのが趣味の男。
赤ん坊を斬ることすら厭わない残忍さの反面、陽気で義理堅い性格でもある。
大阪在住で関西弁で喋り、逆立った金髪が特徴で、その髪型を馬鹿にされると激怒する。

・巻町 操(まきまち みさお)♀

紫に恋する、男勝りで感情豊か、かつ我が儘な一面を持つ少女。
御庭番衆先代御頭(蒼紫の師匠)の孫娘。
東海道で京都に向かっていた剣心に会い、京都まで同行する。
その時は路銀をなくして追剥をしていた。
御庭番式苦無術と、般若譲りの御庭番式拳法を使いこなし、常人レベルを超えた実力を誇る。

・翁(おきな)《本名:柏崎 念至(かしわざき ねんじ)》♂

京都探索方。通称「翁(おきな)」で、劇中では一貫してそう呼ばれている。
普段は料亭兼旅籠「葵屋(あおいや)」を営む。
操の育ての親。スケベな好々爺で、時に操にも通ずる我が儘な一面も見せる。

・新井 青空(あらい せいくう)♂

赤空の息子で、彼の技術を継承した刀工。
廃刀令施行後は、包丁や鎌などの生活用具を作って暮らしている。

・新井 梓(あらい あずさ)♀

青空の妻。生活用具を売る青空を支える。

・伊織(いおり)

青空と梓の息子で赤空の孫。張に人質とされる。

・新井 赤空(あらい しゃっくう)♂

幕末の刀工。数々の殺人奇剣を作り、張や志々雄など愛好者は多い。
人斬りを辞めた剣心に逆刃刀を授けた張本人。
数々の殺人剣を作りつつも内心はそんな己の在り様に疑問と苦悩を抱いており、
平和な時代を作ることに信念と理想を見出してひたすらに刀剣を打ち続けていた。
明治3年(1870年)に他界。



声劇の場合、新井赤空は翁もしくは新井青空との兼任推奨。
新井赤空は回想シーンのみの出演です。

伊織・新井梓はセリフ少なめです。


【キャスト表】

緋村 剣心 ♂♀:
沢下条 張  ♂:
巻町 操   ♀:
翁      ♂:
新井 青空  ♂:
伊織・新井 梓♀:

新井赤空   ♂:


【シーン説明】


新井赤空の最後の一振りを手に入れるため、
白山神社に奉納されている御神刀を手に入れようとする“刀狩”の張。
操から新井青空の子供の伊織が何者かに拉致された知らせを受けた剣心は、急ぎ白山神社に向かう。
張が神社に到着した時には、既に剣心が待ち構えていた。逆刃刀が折れているにもかかわらず。



※注 セリフ番号の関係上、同じキャラのセリフが続いている場合がございます。


【本編】


001伊織「ぶみぇ~~~~」

002張 「ちょいと時間喰ってもうたなァ。京都の地理はどうもわかりづろうてかなわんわ。
     さて、赤空の最後の一振り 一体どんな殺人刀」

003剣心「ハァ・・・ハァ・・・ハァ・・・」

004伊織「ごじゃる~~~!!」(剣心の発見を喜んで)

005張 「・・・どうやら神社の参拝客やないな。あんた誰や?」

  剣心が隠していた左頬の十字傷を張に見せる。

006張 「・・・その十字傷」

007剣心「その子を放せ」

008張 「左頬の十字傷・・・成程 あんたが有名な人斬り抜刀斎さんかい」

009伊織「ごじゃる~~~~~」

010張 「思ってたより小さいんやなァ。なんか女子(おなご)みたいなカンジや。
     まあええで。あんたも赤空の最後の一振り 取りにきたんか?」

011剣心「・・・生憎、拙者が求めているのは別の刀でござる。
     赤空の最後の一振りが欲しくば持っていけ。ただ、その前に、その子を放せ」

012張 「それは不要の闘いは避けたいって事でっか。そりゃそうでっしゃろ。
     頼みの逆刃刀とやらが折れて、闘いたくとも十分 闘えへんのやさかい」

013剣心「・・・・・・」

014張 「まっ、わいも十分に闘えん男を倒してもおもしろうないけど。
     敵と遭遇しときながら闘いもせんと済ませたら、わい 志々雄様に殺されてしまう」

015張 「それに!」(伊織を投げて木に引っ掛ける)

016剣心「!?」

017伊織「ふびー」

018張 「せっかく最後の一振りを手に入れても、試し斬りの素材がなければ楽しさ半減。
     前から一度『赤ン坊斬り』やってみたかったんや」

019張 「つう訳であんたの申し出は却下。正々堂々と勝負や」

020剣心「相手の刀が折れているのを知ってて なお人質をとって正々堂々か。ふざけた男だ」

021張 「別にふざけておまへんよ。ただ! あんたが真面目なだけや!」

  鞘を飛ばす 張。それを逆刃刀の鞘で弾く 剣心。

022張 「もろうた!」

023剣心「拙者を突き殺そうとするなら、
     斎藤の牙突を超える技を繰り出してこい」(張の突きを避けて)

024剣心「飛天御剣流 龍巻閃(ひてんみつるぎりゅう りゅうかんせん)」

025張 「う゛おっ」

026伊織「ごじゃる~~~」(嬉しそうに)

027張 「なんや 見かけによらず結構やるやないか。
     背中の愛刀がなかったら危ないトコやったわ。ケド この代償は高(たこ)うつくで」

028張 「どや 新井赤空の殺人奇剣『連刃刀(れんばとう)』 
     この短い間隔でな、同じ傷を二つつけられると傷口の縫合がうまく出来へん」

029張 「つまり、急所から外れてもこいつでサクッと斬りつければ、手当てが出来ず
     傷口から腐って 死に至らしめるんや!」

  剣心に斬りかかる 張。剣心は連刃刀を鍔で受け止める。

030剣心「お前はこの程度でござるか」

  剣心は逆刃刀の鞘を回転させて連刃刀を折る。

031剣心「飛天御剣流 龍翔閃(ひてんみつるぎりゅう りゅうしょうせん)!」

  剣心の技を受けた張は、その場に倒れる。

032剣心「またせたでござるな。今 降ろすでござるよ」(伊織が引っかかっている木に近づく)

033張 「成程・・・あんたのいうとおりや。どうやら わい 少しふざけ過ぎてたようや」

034剣心M「水月(すいげつ)に打ち込んだはずなのに、ものともしていない」

035伊織「ごじゃる~~~」(寂しそうに)

036剣心「すまんな、伊織。少し長引きそうでござるよ」

037張 「ガキと喋くっとらんと こっち向かんかいダボが!
     なめてっと そのガキから解体(バラ)すぞ コラ!」

  剣心が鋭い眼光を張へ向ける。

038張 「なんや、あんたもそんなツラ出来るんやないか。出し惜しみしよって、人が悪い。
     始めからそのツラしとったらこっちも出し惜しみせんかったのに」

  上着の脱ぐ 張。

039剣心「白銀(しろがね)の胴鎧(どうがい)・・・あれが龍翔閃を防いだのか」


  《場面が変わり 操と新井青空と妻の梓、反対側から翁が神社に駆けつける》


040操 「爺や! 遅いじゃない 今頃来たの! あれ? 緋村は」

041翁 「聞くや否やすっとんでったわ。とても追いつけん」

042操 「え~~~ 緋村 刀折れてるじゃない! だから爺やを頼りにしてたのに!」

043翁 「わしに怒るな~」

044操 「とにかく急げ!」

  操達は急いで階段を登り、神社に向かう。

045操 「げっ もう始まってる!! 緋村のヤツ 意外に短気だからなー」

046翁 「じゃが、緋村君の方が優勢のようじゃ」

047青空「! あれは!」(張が腰に巻いているものを見て)

048青空「いけない! あの男が胴に巻いているヤツ! 
     あれは赤空(ちち)が改良に改良を重ねて造り上げた
     後期型の殺人奇剣(さつじんきけん)です!!」

049操・翁「な!」

050張 「十本刀“刀狩”の張。こっからが真骨頂や。ほな いくで」

051操 「気をつけて 緋村! そいつは まだ刀を隠し持ってるわ!」

052剣心「!」

053張 「どや これがわいの一番の愛刀! 殺人奇剣『薄刃乃太刀(はくじんのたち)』!」

054翁 「長い! それにあのしなり!」

055操 「緋村!」

056剣心「クッ」

057青空「だめです! それを紙一重で避(さ)けちゃ!」

  薄刃乃太刀が急に軌道を変えて 剣心の足を斬る。

058剣心「うっ」

059張 「狙いバッチリ。これでもうチョコマカと動き回れへんやろ」

060青空「殺人奇剣『薄刃乃太刀』 刃の強度を保ったまま可能な限り薄く鍛え、
     更に剣先をわずかに重くする事によって
     手首の微妙な返しをそのまま刀の軌道に伝え操る事が出来る・・・」

061青空「あの足で変幻自在の殺人奇剣『薄刃乃太刀』をよけ切るのは もう・・・」

062張 「いつの間にやら観客も出来てる事やし。
     そろそろ『くらいまっくす』といきまっか。我流『大蛇(おろち)』受けてみい」

  剣心は なんとか避けるが鞘が斬られてしまう。

063張 「よう防ぎよった! けど まだ終わりやないで!」

  さらに攻撃を続ける 張。

064剣心「くっ」

065操 「緋村!」

066青空M「やはりだめだ・・・とても勝ち目はない。このままでは伊織は・・・」

067梓 「あなた?」

068青空「・・・父の刀はあきらめよう。とにかく今は伊織を助けて、
     一刻も早くこんな修羅場は離れるんだ。大阪弁の男は彼との闘いに意識が向いている。
     このスキになら伊織を・・・」

069伊織「ごじゃる~~~」(悲しそうに)

070操 「緋村を囮にするわけ? 刀が折れてて十分に闘えないのを承知で、
    それでも緋村は、いの一番に駆けつけたんだよ! それを」

071青空「そんなのボクが頼んだ訳じゃない。彼が勝手に闘っているだけです」

072操 「!」(怒りで青空を殴ろうとするが翁が止める)

073翁 「青空さん。儂も一応この娘(こ)の養父(おや)じゃ。子を最優先に想う気持ちはわかる。
     じゃが緋村君が何を守ろうとして勝手に闘っているのか それもわかってもらえんかの」

074張 「往生際が悪いなあ。なんか見ててミジメやで、あんた」

  剣心が変わらず鋭い眼光を張へ向ける。

075張 「なんか その目 ごっつ ムカツくわ。状況わかってへんのか?
     絶対絶命なんやで? たかがガキ一人に命張ってる場合やないで、オイ」

076剣心「拙者は幕末(むかし) 新時代を開くため 大勢の人間を斬った」

077張 「なんや自慢話かいな。ええでええで
     この期におよんで過去の栄光にすがるなんて見苦しくてサイコーや」

078剣心「死闘と償いきれない流血の果てに とりあえず新時代を迎えて十年・・・
     死闘も流血も知る事もなく優しい家庭で子供が健やかに育つまで
     時代は平和の様相を見せ始めた」

079剣心「貴様にとってたかがガキでも、拙者にはかけがえのない新時代の申し子。
     命にかえても、伊織は青空夫妻の元に無事帰す」

080青空「・・・・・・」

081剣心M「拙者がこいつの注意を引き留めておく。今のうちに早く伊織を!」(青空に目配せする)

082青空「あ・・・う・・・」

083梓 「あなた?」

084張 「なんや正義の味方気取りおって。まるで、わい 悪役やんか。尚更ムカツいたわ。
     もうええ、あんたの役はこれで終わりや。
     この先は志々雄様の下で この『薄刃乃太刀』がまた新たな時代を創るさかい
     安心して死ねや」

085剣心「生憎(あいにく)だが、お前には到底無理でござる。
     時代を創るのは『刀』ではなくそれを扱う『人』でござる」

  急に青空が神社の祠の方へ走り出す。

086梓 「あなた!」

087操 「あいつ」(逃げたと思って)

088翁 「いや待て 違うぞ!」

089青空「待っていろよ 伊織! 必ず助ける もう少しの辛抱だ!」

090張 「観客が何勝手に舞台に上がってんのや!」

  張の薄刃乃太刀が青空を襲う。

091梓 「あなた!」

  剣心が折れた逆刃刀を投げて、それを防ぐ。

092張 「ホンッ・・・・マに、ごっつムカツくわ!!」

093剣心M「青空殿・・・?」

094青空M「この人に賭けてみよう。この人なら託せるかも! 
      この人なら、父の刀を正しく使って伊織と この平和な新時代を必ず守ってくれる!!」

  青空が祠の扉を開けて中に入る。

095青空M「『おれの造った刀が新時代を創る』・・・昔 父がよく言ってた
      この言葉に僕は納得いかなかった。
      今 やっと理由(わけ)がわかった。
      そうなんだ・・・刀が時代を創るなんておこがましい」

096青空M「新時代を創るのは人であり。そして、築いた時代を守るのも 又(また) 人なんだ・・・」

097青空M「この平和を守るために影で闘い続けるあの人に。赤空(ちち)の最後の一振りを――!!」


前編 終了

後編 開始


098張 「もう許さへん! ワイは頭に来たで!! 見さらせ この頭! 
     これぞ『怒髪(どはつ) 天を衝(つ)く』ってヤツや!!」

099剣心「・・・もともとでござろう。そのイカレたホーキ頭は」

100操・翁・梓「うん うん」

101伊織「ホーキ ホーキ」(楽しそうに)

102張 「人のボケに真顔で突っ込むな このドアホゥ! むっちゃムカツクヤツやッ!!」

103操 「突っ込んできた!」

104張 「! 鞘の残がいで受けとめよっ・・・しもうた!」

105張M 「間合いに入り込み過ぎた!」

106剣心「おおおおお!!」(あああああああ でもOK。気合の雄叫び)

117操 「やった!! 交差攻法気味の肘鉄!」

  剣心の肘鉄をくらって吹き飛ばされる 張。

118操 「よっしゃあ!!」

119翁 「挑発で奴を誘い 一足飛びで攻撃出来る間合いに引き込む・・・
     刀のない上に右足に傷を負った緋村君に出来る最後の攻撃手段じゃ。
     これで決まってなければ・・・」

120剣心「ハァ、ハァ」

121張 「危ない 危ない。やっぱ あんた なめてかかったらアカンわ」

122操 「!」

123翁 「駄目か・・・」

124張 「今の一撃で頭に昇った血が一気に下がったわ。もう二度とあんたの間合いに入らへん・・・
     外から刻んで五体解体(バラ)して四条河原(しじょうがわら)に晒(さら)してくれるわ」

125翁 「これでもう勝機はなくなった。後は如何にして全員無事にこの窮地から脱するか・・・だ」

126操M 「・・・刀・・・刀さえあれば・・・」

127青空「緋村さん!! 父の最後の一振りです! これを使って下さい!!」

  青空が御神刀を剣心に投げて渡す。

128操 「緋村!」

129張 「チィ・・・ッ。転がされた分 初動が遅れてもうた・・・
     まあええ。あんたを斃(たお)すのと最後の一振りを手に入れるのと・・・
     二つの目的がこれで一つになった訳や」

130張 「抜けや。ええ加減 決着(けり)つけようや。
     互い真剣同士。殺るか殺られるか、判り易うてええやろ」

131操 「行け 緋村! 刀さえあればこっちのもんよ!」

  刀を受け取った剣心は抜くのをためらっている。

132操 「?」

133翁 「駄目じゃ。緋村君はあの刀は抜かん・・・いや、恐らく抜けんのじゃ」

134操 「え・・・」

135翁 「不殺(ころさず)を心に決めてる彼にとって、逆刃刀以外の抜刀は絶対の禁忌のはずじゃ・・・」

136操 「でも! 今はそんな事 言ってる場合じゃないでしょ! 殺らなきゃ自分が殺られのよ!
     緋村がどんな人斬りだったかよく知らないけど もう一度くらい 人を斬ったって」

137翁 「その一度が問題なんじゃ。志々雄一派という強敵が現れて、今の彼は例えるなら丁度 
     天秤の如く 不殺(ころさず)の流浪人(るろうに)と人斬り抜刀斎の間(はざま)で
     揺れ動いてる」

138操 「人斬り 抜刀斎・・・」

139翁 「今一度 ここであの刀を抜いて斬れば心のタガがはずれ、
     後はずるずると人斬りの修羅道真っしぐら。二度と流浪人(るろうに)には戻れまい」

140翁 「せめてあの刀の鞘が白木ではなく逆刃刀同様の鉄拵えだったなら・・・」

141張 「あんた・・・人斬り抜刀斎やろ。人斬るのに何そんなに躊躇しとんのや・・・
     ええで、人を斬る悦びを忘れました言うんなら このワイが思い出させてやるわ。
     実演を踏まえてな」

142青空・梓「伊織!」

143張 「あんたの言う 平和の申し子とやらから 先に解体(バラ)したるわ!」

144翁・操「くっ」(それぞれ武器を構える)

145剣心「おおおおおお」(あああああああ でもOK。気合の雄叫び)

146張 「かかったな このダボが!!」

147翁 「いかん! 今のは挑発じゃ!!」

148張 「わいをコケにした分はキッチリ 返すで! もろうた!」

149張M 「薄刃乃太刀 切っ先は変幻自在やで。後ろから串刺しや!」

150張 「え・・・?」(剣心に避けられる)

151剣心「おおおおおお」(あああああああ でもOK。気合の雄叫び)

152張 「な・・・なんや 今の超反応は! さっきまでとはまるで別人やんけ・・・」

153剣心「飛天御剣流 龍巻閃・『旋』(つむじ)!」

  剣心の技をくらい、倒れる 張。

154翁 「殺った・・・」

  ただならぬ人斬り抜刀斎の空気が流れる。

155伊織「ふあ」

156操 「緋村・・・」

157剣心「拙者・・・!!」

158操 「あ」

159翁 「ム」

160青空「・・・その刀」

161操 「逆刃刀!」

162翁 「なんと・・・! 新井赤空 最後の一振りは緋村君に渡した逆刃刀と同じ!」

163剣心「いや、これは・・・わずかだが以前の逆刃刀より手になじむ・・・感じでござる」

164操 「でも、それが逆刃刀なら・・・」

165張 「・・・く・・・」

166操 「生きてるよ 緋村! あんた不殺(ころさず)は破ってない!!」

167張 「成程。国盗りっちゅう どでかい目的がありながら、
     志々雄様がなんであんたの事 相手にするか今のでよう解ったで。
     けど イイ気になったらあかんで。特攻部隊十本刀の剣客は まだ残り九人もおるんや。
     その内の二人 あんたも一度剣を交えた事ある宗次郎と
     琉球から京都へ向かってる宇水さんはあんたより上やで」

168張 「あんたは絶対 志々雄様にたどりつけん!
     自分の非力さをかみしめて 大人しゅう志々雄様の国盗りを見ていや!」

169操 「・・・爺や」

170翁 「うむ」

171操 「成敗!!」

  操が仕込み杖で脳天に一撃を入れる。張が気絶する。

172操 「こいつどうする?」

178翁 「そうじゃな。色々と情報聞き出したいから葵屋に運ぼうかの」

179剣心「いや、こいつは警察に引き渡そう。まだ京都についたかどうかわからんが
     警察には志々雄一派の件で全権をまかされている男がいる。その方が安全でござる」

180操 「あいつかあ・・・」

181翁 「緋村君がそういうなら」

182青空「逆刃刀・・・父の最後の一振りが・・・わからない・・・
     殺人剣ばかりつくっていた父が・・・何故」

  刀の柄に急にヒビが入る。

183操 「刀が壊れる!?]

184翁 「白木の柄が緋村君の技に耐えられなんだ・・・!」

  刀の柄が壊れて刀身が地面に突き刺さる。

185翁 「大丈夫じゃ・・・刀身に破損はない。ム・・・これは・・・」

  刀の茎の部分に文字が彫ってある。

186青空「我を斬り 刃(やいば) 鍛えて 幾星霜(いくせいそう)
     子に恨まれんとも 孫の世の為」 


  《場面変わって、葵屋》


187翁 「自分自身を斬りつける思いで刀を造り続けて幾年月・・・
     それが自分の子に憎まれる事になろうとも その次の孫の時代のために・・・
     恐らく赤空は辞世(じせい)の句のつもりで刻み残したんじゃろうな」

188青空「途中で父は気づいていたんですね。刀が時代を創るなんてのはおごりだって事・・・」

189青空「でも時代は幕末の動乱の真只中 もう後に退く事も留まって悩むコトも出来ない程
     混乱を極めていて」

190青空「幕末に生きる刀匠(とうしょう)として父は、ただただ前に・・・
     一刻も早く平和の時代が来る事を願って殺人刀を造り続けるしかなかった・・・」

191青空「自分の気持ちとは全く裏腹の・・・
     端から見れば矛盾した生き方をするしかなかった・・・」

192青空「そんな父が深い悔恨とわずかな希望を祈りに込めて残したのが
     この御神刀『逆刃刀・真打(しんうち)』」

193操 「真打(しんうち)?」

194梓 「ええ。御神刀を打つ時 一本ではなく あらかじめ二本
     もしくは複数本打つのが通例でして。
     その中で一本よく出来たのを『真打』といい神に捧げ
     残りを『影打(かげうち)』といい 死蔵(しぞう)したり 人に譲ったりするんです」

195翁 「成程な。じゃから逆刃刀は初めから二本・・・」

196操 「そしてこっちが真打。つまり、前の逆刃刀を超える逆刃刀!」

197青空「お受け取り下さい 緋村さん。父もそれを望んでいると思います」


  【回想シーン 新井赤空と剣心の別れ】


198赤空「志士を抜けるんだってな 緋村。まだ鳥羽・伏見での緒戦に勝っただけ。
     維新回転はこれからだってのに 手前(てめぇ)勝手に。
     おまけに刀も持たず何処へ何しに行きやがる」

199剣心「・・・桂先生に許しはもらってます 赤空殿。
     俺は、これから人を斬る事なく新時代に生きる人達を守れる道を探すつもりです」

200赤空「フ・・・そんな道があるなら 是非 俺にも お教え願いたいモンだな」

201赤空「何人も何人も斬り殺しておいて 今更 逃げるんじゃねーよ。
     剣に生き 剣にくたばる。それ以外にてめえの道は無えはずだぜ」

  赤空が刀を剣心に投げて渡す。

202剣心「!」

203赤空「餞別(せんべつ)だ。出来損ないだが 今のお前には十分過ぎる一振りだ。
     とりあえずそいつを腰に剣客やってみな。
     自分の言ってる事がどれだけ甘いか身に染みてわかるってもんだ」

204赤空「そいつが折れた時、それでもまだ甘い戯れ言を言い続けられるなら。
     もう一度 俺を訪ねて京都へ来な」


  【回想シーン 終わり】


205剣心M「赤空殿・・・俺はまだ あなたと同じく甘い戯れ言に賭けてみたい。だから」

206剣心「逆刃刀・真打・・・有難く頂戴致す・・・」

207青空「では、私達はこれで・・・」

208翁 「おお、気をつけてな」

209伊織「ごじゃるぅ。あくす あくす。ばいばいのあくす」






るろうに剣心 第七十八幕 「十本刀・張」


終わり




「last winter。」番外編 ラストサマー!? ~夏だ!プールだ!悩殺ボディ!?~

2017-07-20 09:50:06 | 台本

「last winter。」番外編 ラストサマー!? ~夏だ!プールだ!悩殺ボディ!?~


原作:呉羽和哉 脚本:KIRA.


【登場人物紹介】


・上原 凛子(うえはら りんこ)♀:鷹ノ森学園2年 生徒会 会計。

一応主人公。通称は「りんご」。背が小さいことを翼によくからかわれる。

・松葉 翼(まつば つばさ)♂:鷹ノ森学園3年 生徒会 会長。

基本的に何でもそつなくこなすイケメン。
ちょっと鈍いところがあるけど、頼りになる。唯一、ダンスが苦手。

・南 雪乃(みなみ ゆきの)♀:鷹ノ森学園3年 生徒会 副会長。

いたずらっ子なお姉さん♪ スタイル抜群♪ 実は良家のお嬢様らしいのだが・・・。

・鈴村 陽(ずずむら よう)♂:鷹ノ森学園2年 生徒会 書記。

常に冷静沈着。実家は剣道道場を開いており、剣道二段。
全国模試も常に上位。文武両道。ただ、言葉数は少ない。

・北条院 翔(ほうじょういん かける)♂:北条院グループの御曹司。

常に自分の思い通りにいかないと納得しない典型的なおぼっちゃまタイプ。
雪乃と知り合いのようだが・・・。




【キャスト一覧】

上原 凛子♀:
松葉 翼 ♂:
南 雪乃 ♀:
鈴村 陽 ♂:

北条院 翔♂:
実況&係員&アナウンス♂♀:



《本編》



【満員バスの中 熱気で蒸し風呂状態】


翼  「あっち~。まだ着かないのか? 流石にもう限界だぜ」

凛子 「もうちょっとですよ~。翼会長~」

雪乃 「ひやっ!? ちょっと、翼! どこ触ってんのよ!?」

翼  「どこも触ってねぇよ!!」

凛子 「翼会長・・・えっちぃのは嫌いです」

翼  「だから、どこも触ってねぇってば!!!」

陽  「会長、静かにしてください。周りに迷惑です」

翼  「ううぅ・・・」

凛子M「どうして満員バスの中で、こんなことになっているかというと・・・
    それは夏休み前のある日」


【時は逆上り 生徒会室】


雪乃 「海よ! 海!」

翼  「なんだよ、雪乃。いきなり大声出して」

雪乃 「こんなに暑かったら、干からびて死んじゃうわよ!」

陽  「そう言われましても。夏休み前にはインターハイに出場する部活の予算などを組まないと」

雪乃 「わかってるわよ、そんなことは! ねぇ~、りんごちゃん一緒に行こうよ~、海に~」

凛子 「でも、雪乃先輩。海っていっても、どこの海に行くんですか?」

雪乃 「えっと、それは、その・・・」

翼  「ったく。そりゃあ俺だってこんなクーラーも効いてないところに
    毎日放課後に缶詰状態なんてゴメンだよ」

雪乃 「ね! ね! だから、リフレッシュのために海に行こうよ! つばさ~」

翼  「うわっ!? 暑いんだからくっつくなって!」

凛子 「ちょ、ちょっと!? 雪乃先輩!? 翼会長から離れてください~!!」

陽  「海に行くにしても、ここからだとかなり遠いですよ。
    電車で行っても、2時間以上かかりますし」

雪乃 「じゃあ、私がヘリを飛ばして!」

翼  「ちょっと待て! いつからお前は大富豪のお嬢様設定になったんだ!?」

雪乃 「? 今日から?」

翼  「んなわけあるか!?」

陽  「雪乃先輩。では、こんなのはどうですか?」(そう言って、1枚のチラシを見せる)


【翼と雪乃と凛子がチラシを覗き込む】


翼・雪乃・凛子「リゾートスパ・パイレーツビーチ!?」

陽  「ええ。最近オープンしたらしくて、最寄駅からシャトルバスも出ているので
    アクセスも楽みたいですよ。それに」

翼  「オープン記念! 入場料半額キャンペーン!?」

雪乃 「これはもう行くっきゃないわね!」

凛子 「いつの間にか、こんなのが出来ていたんですね」

陽  「ここは温泉やプールはもちろんのこと、ショッピングにグルメ。
    映画館まで併設している複合施設のようですね」

翼  「それはすごいな」

雪乃 「見て見て、りんごちゃん! ○○○や△△△も入ってるよ!」
    (○や△の中には適当に有名ブランド店などをいれてください)

凛子 「ホントですね。ここならなんでも揃いそうですね!」

翼  「せっかくだから、来週の日曜日にみんなで行ってみるか?」

雪乃 「さ~んせ~い!!・・・!?」(チラシの一部が目にとまる)

凛子 「どうしたんですか? 雪乃先輩?」

雪乃 「う、ううん。なんでもないの、気にしないで」

翼  「?」



【現実に戻り リゾートスパの入口に到着 バスから降りる】



翼  「はぁ、はぁ・・・やっと着いた~」

凛子 「頭がクラクラします」

雪乃 「ほんとよね~。翼はドサクサに紛れて私のお尻に触ってくるし」

翼  「だから、触ってねえって!」

陽  「さぁ、行きましょう。こんなところにいても暑いだけですよ」

雪乃 「りんごちゃん、ほら。行こ行こ」

凛子 「あっ、雪乃先輩。そんなに引っ張らないで~」

翼  「俺らも行くか、陽」

陽  「はい、会長」



【建物内に入る】



雪乃 「う~ん、生き返る~。涼しい~」

翼  「だな。じゃあ、早速プールに入るか。
    う~んと、15分後くらいに待ち合わせでいいか?」

凛子 「はい、大丈夫です!」

雪乃 「もう、りんごちゃんったら張り切っちゃって。
    今日のためにわざわざ水着買いに行ったもんね~」(後半は小声で)

凛子 「も、もう! 雪乃先輩!?」(小声で)

翼  「どうした?」

雪乃 「なんでもないよ~、ね~、りんごちゃん?」

凛子 「は、はい、なんでもないです!」

翼  「ま、いっか。じゃあ俺らも着替えにいこうぜ」

陽  「そうですね」

翼  「じゃあ、また後でな」

雪乃 「さっ、私たちも着替えましょう」

凛子 「はい」


【プール内 流れるプール付近】


翼  「ったく、おっせ~な~。いつまでかかってんだよ。これだから女子は」

陽  「そうですね」

翼  「陽! お前もそんなところで参考書なんて読んでないで、一緒に流れようぜ~」

陽  「すいません。この参考書は防水使用ではないので」

翼  「んなこと訊いてねぇよ!? そもそもこんなところにまで来て勉強・・・」

雪乃 「ごっめ~ん! おっ待たせ~!!」(遠くから小走りで来る感じ)

翼  「!?」

陽  「!?」

雪乃 「二人ともごめんね~。待たせちゃって」

翼M 「ダ、ダイナマイトォォォ!!!!!」

陽M 「目、目のやり場が・・・」
 
雪乃 「翼? 陽君?」

翼M 「前々から思っていたが・・・この破壊力ハンパねぇ!?」

陽  「ごほん、ごほっ、ごほっ」(ごまかす感じで)

雪乃 「どうしたの? 二人とも?」

翼  「そ、そういえば、り、りんごはどうしたんだ!? 一緒じゃないのか?」

雪乃 「あれ? さっきまで一緒にいたのに・・・
    あっ! いたいた! りんごちゃ~ん! こっちこっち!」

凛子 「お、お待たせしました」(恥ずかしがる感じで)

翼  「お、おう・・・」

凛子 「・・・・・・」

雪乃 「ちょっと翼~? それだけ~?」

翼  「なんだよ?」

雪乃 「もっとこう、無いの~? 可愛いね♪とか。似合ってるね♪とか~」

翼  「べ、別にねぇよ・・・」

雪乃 「あのね~!! 翼!? りんごちゃんは今日のために一生懸命水着を選んで!」

凛子 「雪乃先輩! もう、いいんです! もう・・・」

雪乃 「ふぅ・・・ほんとに翼はこういう時に空気読めないんだから」

翼M 「どストライクすぎて、言葉が出なかったんだよ」

雪乃 「空気読めない翼は置いといて。行こ、りんごちゃん! あっちで泳ごう!」

翼  「おいおい、そんなに走ったら危ねぇ」

凛子 「きゃあ!?」(滑って転びそうになる)

翼  「バカっ!?」(一瞬で凛子を抱きかかえて倒れる)

陽  「会長!?」

雪乃 「りんごちゃん!?」

翼  「いてて・・・りんご、ケガは無いか?」

凛子 「は、はい・・・」(翼に抱きかかえられて、恥ずかしい)

雪乃 「りんごちゃん!? 大丈夫!?」

翼  「ちょっと待て、俺の心配はどうした?」

雪乃 「ま、りんごちゃんを助けてくれたことだけは褒めてあげるわ」

翼  「おいおい、まだ怒ってんのかよ」

凛子 「あ、ありがとうございます・・・翼会長」

翼  「あ、いや・・・ケガがなくて、良かったよ」

陽  「会長、いつまで抱いているんですか?」

翼  「おわっと!」(驚いて凛子を離す」

凛子 「きゃっ」(驚いて立ち上がる)

雪乃M「翼は鈍いところはあるけど、いざって時には頼りになるんだけどな~」

翼  「あっ、そ、そうだ! あっちにウォータースライダーがあったんだ~。
    みんなで滑りにいこうぜ!」(ぎこちない感じで)

凛子 「つ、翼会長~!」(翼に手を引っ張られながら)

雪乃 「ちょっと! 翼!・・・もう、置いて行かないでよね。
    しょうがないな~。陽君、私たちも行こう」

陽  「あっ、ちょっと」(雪乃に手を引っ張られながら)


【ビッグウォータースライダー 頂上付近】


係員 「ビッグウォータースライダーはこちらで~す!」

翼  「ふぅ、やっと頂上に着いたな」

凛子 「うわっ! 高~い!」

係員 「それじゃ、彼氏さんは後ろで、彼女さんは前に乗ってください」

凛子 「え!? いや、私達はそんなんじゃ・・・!?」

翼  「ほらほら、りんごは前に乗れって」

凛子 「きゃっ」(翼に軽々と抱きかかえられて、二人乗り用の浮き輪に乗せられる)

翼  「よし、OK!・・・よっと。それじゃ、お願いします」

係員 「はい。しっかり掴まっててくださいね。いきますよ」

凛子 「うわっ! うわっ!!」

翼  「おおっ!」

凛子 「速い! 速いです翼会長!」

翼  「振り落とされんなよ、りんご~! ふぅ~、最っ高っ!」

SE:水しぶき

凛子 「ぷっはぁ~っ!」

翼  「ふぅ~! りんご、大丈夫か?」

凛子 「は~い、なんとか」

翼  「面白かったな!」

凛子 「はい!」

翼  「次の雪乃達が降りてくるから、少し離れようぜ」

凛子 「そうですね」


  【再びビッグウォータースライダー 頂上付近】


雪乃 「今度は私達の番ね。じゃあ、私が前でいいかな?」

陽  「ええ、どうぞ」

雪乃 「あ~、陽君。ドサクサに紛れて、翼みたいにエッチなことしちゃダメだからね」

陽  「し、しませんよ!」

雪乃 「うふふっ、分かってるって。陽君は翼と違って真面目だもんね」

陽  「・・・・・・」

係員 「それじゃあ、いきますよ~」

雪乃 「お願いしま~す♪」

陽  「うわっ」

雪乃 「すご~い! 気持ちいい~♪」


  《その場から翼と凛子が離れて、しばらくすると雪乃達が降りてくる》


翼  「そろそろかな?」

雪乃 「きゃあああ~!!」

陽  「うっ」

SE:水しぶき

雪乃 「ぷっはぁ~! ああ~、気持ちよかった!」

陽  「ふ~~」

翼  「よお~、二人ともお疲、れ・・・」

凛子 「雪乃先輩!? 前っ! 前っ!! 水着がっ!!」

雪乃 「え?・・・きゃあああ~~~!!」(胸を隠しながら、水の中に潜る)

凛子 「ゆ、雪乃先輩! だ、大丈夫ですか?」

翼  「はぁ~、ったく・・・は、はしゃぎ過ぎなんだよ」

雪乃 「翼・・・見たの?」

翼  「え? な、何がだよ」

雪乃 「見たんでしょ?」

翼  「だ、だから何がだよ?」

雪乃 「見たのよね?」

翼  「だから何の話だよ?」

雪乃 「見たんだ・・・」

翼  「ちょ、ちょっと待てよ!? あ、あれは不可抗力で」

雪乃 「翼のエッチっ!!」

SE:平手打ち



【しばらく経って、プール内のレストランエリアに移動した4人で昼食を食べている】


翼  「痛って~。まだ、腫れが引かねぇよ」

雪乃 「自業自得でしょ」

翼  「どこが自業自得なんだよ!? あれは不可抗力で!」

雪乃 「翼のエッチ」

翼  「か~!・・・そんなキワどい水着着て来るからだろ」(小声で)

雪乃 「なんか言った?」

翼  「別に~」

陽  「まぁまぁ、幸い周りに我々しか人がいなくて良かったですよ」

雪乃 「ホントよ~。他人に見られたりしてたら、もうこんなところにいられないわ」

翼  「あっ! それ、俺のたこ焼き!」

雪乃 「もぐもぐ・・・残してるからいらないのかと思った~」

翼  「今、食べようと思ってたんだよ!」

凛子 「翼会長、私のあげますから! もう、二人ともケンカしないでください!」

雪乃 「ふん」

翼  「けっ」

凛子 「陽君も黙ってないで、なんとか言ってあげてよ~」

陽  「触らぬ神に祟りなし」

凛子 「もう~!」

SE:チャイム(ピンポンパンポン)

アナウンス「本日はリゾートスパ・パイレーツビーチにお越しいただき、誠にありがとうございます。
      ここで、ご来場のお客様にご案内いたします。
      本日15時より50メートル公認プールにて『パイレーツカップ』を開催いたします!
      参加費は無料! 優勝者には豪華商品もご用意しておりますので、
      泳ぎに自信のあるお客様は是非ご参加くださいませ~!」

翼  「へ~、こんなイベントもやってるんだな」

雪乃 「翼、参加して来たら? 優勝して豪華商品を私にくれたら許してあげるわよ」

翼  「なんで許してもらうためにそんなことしないといけないんだよ!?」

雪乃 「まぁ、無理にとは言わないけどね~。
    ダンスもロクに踊れない翼じゃ、やっぱり無理よね~?」

翼  「あのな~!」

凛子 「だから! ケンカしないでくださいよ~!!」


【そこへ北条院が黒服の男を従えて現れる】


翔  「おやおや、これはこれは雪乃さんではありませんか。奇遇ですね~」

雪乃 「!?」

翼  「? 誰だ?」

翔  「いつ見てもお美しい。あ、そうだ。この施設内にVIPルームがあるんですよ。
    よろしければ、一緒にいかがですか? ここよりも素敵なお食事をご用意いたしますよ」

雪乃 「・・・け、結構よ」

翔  「ふっ、つれないな~。僕と雪乃さんの仲じゃないですか。
    こんな連中と一緒にいても時間の無駄ですよ。さっ、行きましょう」

雪乃 「ちょ、ちょっと!?」

翼  「おい」(翔の肩を掴む)

翔  「なんですか? 君は」

翼  「お前こそ、誰なんだよ?」

翔  「失礼。僕は北条院 翔。北条院グループの次期社長ですよ」

凛子 「北条院グループ?」

陽  「主に飲食・ホテル・レジャー施設を経営している企業グループです」

翔  「その通り。もちろん、この複合施設も北条院グループのものですよ」

翼  「で、その北条院グループのおぼっちゃんが、なんで勝手に雪乃を連れて行こうとしてんだよ」

翔  「僕と雪乃さんは昔からの知り合いでね。君にとやかく言われる筋合いはないのですが。
    まぁ、いきなりでは驚くのも仕方ありませんね。オイ」(指を鳴らす)


  《黒服が北条院へ何かを渡す》


翔  「これでここは手を引いてくれませんか?」(翼へそれを渡そうとする)

翼  「なんだこれは?」

翔  「この施設内で使える商品券10万円分ですよ」

凛子 「10万円!?」

翔  「ええ。これで服を買うなり食事をするなり好きに使ってください」

凛子 「つ、翼会長・・・」

翼  「嫌だと言ったら?」

翔  「ふっ、君は何か勘違いをしているんじゃないかな~? 僕はここから去れと言っているんだ」

雪乃 「やめて、二人とも」

SE:チャイム(ピンポンパンポン)

アナウンス「本日はリゾートスパ・パイレーツビーチにお越しいただき、誠にありがとうございます。
      まもなく、『パイレーツカップ』の参加受付を開始させていただきます。
      エントリーされるお客様は、インフォメーションカウンターまでお越しくださいませ」

翼  「そうだな・・・なぁ、水泳で勝負しないか?」

翔  「? どういうことですか?」

翼  「今日は『パイレーツカップ』っていう水泳大会があるそうじゃねぇか。
    お互いに出場して、アンタが勝ったら俺達は雪乃を置いてさっさと帰る。
    ただし! こっちが勝ったら、二度と俺達の前に姿を見せるな」

雪乃 「ちょっと翼! 何勝手に決めてるのよ!」

凛子 「そうですよ! 翼会長!」

翔  「その自信はどこからくるのでしょうね~・・・
    ふっ、いいでしょう。その勝負受けて立ちますよ」

雪乃 「翔君まで!」

翼  「よし、決まりだな。こっちは俺とそこの陽が出るからな」

翔  「どうぞご自由に。雪乃さん、水泳大会後にまたお会いしましょう。では」


  《北条院が黒服を連れて去っていく》


雪乃 「ちょっと翼~! 私に相談もしないで勝手に決めないでよ~!」

凛子 「ホントですよ~! もしも、負けちゃったらどうするんですか~!?」

翼  「大丈夫だって。勝てばいいんだよ、勝てば。泳ぎにはちょっと自信あるしな」

陽  「だったら、なぜ私も出ることになってるんですか?」

翼  「確立は少しでも高い方がいいだろ?」

陽  「ふっ、全く。会長は」

雪乃 「あのね、翼。知らないと思うけど、翔君は水泳でインターハイに出場したことがあるのよ」

翼  「なっ!? マジかっ!?」

雪乃 「本当よ。だから、もう・・・」

翼  「そんじゃ、気合入れていかないとな。陽、とりあえずエントリーしに行こうぜ。
    その後に作戦も立てないとな」

陽  「分かりました。会長」

雪乃 「だ、だから翔君は」

翼  「安心しろ、雪乃。絶対負けねぇから」
 
雪乃 「・・・・・・」

翼  「よし、行こうぜ!」

陽  「はい」


  《翼と陽がエントリーのためインフォメーションカウンターへ向かう》


凛子 「雪乃、先輩?・・・」

雪乃 「・・・・・・」



前編 終了

=============================

後編 開始



【凛子と雪乃が二人きり。沈黙に耐え切れず、凛子が口を開ける】


凛子 「・・・つ、翼会長たち、お、遅いですね?」

雪乃 「そうね・・・」

凛子 「・・・あ、あの、さっきの人は雪乃先輩のお知り合いなんですよね?」

雪乃 「うん、幼馴染なんだ」

凛子 「幼馴染?」

雪乃 「南家と北条院家はね、私が子供の頃から交流があったの」

凛子 「そうなんですか」

雪乃 「昔は翔君とも一緒に遊んだりしたわ。それに、当時は私も知らなかったんだけど。
    私と翔君は許婚(いいなずけ)だったらしいの」

凛子 「許婚!?」

雪乃 「うん。まぁ、そういう家系だとたまにあるんだって。
    それでね、親同士はいずれ二人を結婚させるつもりだったんだけど。
    私が中学生の頃にお父さんの事業が失敗して、会社に大きな損害を出してしまったの。
    だから、許婚の話も一旦白紙に戻されちゃったんだって」

凛子 「え? それでおじさんの会社は大丈夫なんですか?」

雪乃 「今は大丈夫。元通りとまではいかないけど、
    ある程度軌道に乗り出したから心配するなって言ってたわ」

凛子 「よかった~」

雪乃 「ふふっ、ありがとう、りんごちゃん。
    それもあって本来なら有名私立高校に通う予定だったんだけど、
    公立の鷹ノ森学園に入学したのよ」

凛子 「そうだったんですね・・・わ、私は雪乃先輩と出会えて嬉しかったです!」

雪乃 「私もりんごちゃんと出会えて嬉しいわ」

凛子 「えへへ」

雪乃 「ただ、翔君は婚約が破棄されたことを納得出来ないらしくて」

凛子 「それって、やっぱり・・・」

雪乃 「うん・・・悪い子じゃないんだけどね。私はそういう風に彼を見られなくて」

凛子 「でも、さっきの態度はやっぱりダメです。レディを誘う態度じゃありません!」

雪乃 「ふふっ、そうね。その通りだわ」

SE:チャイム(ピンポンパンポン)

アナウンス「本日はリゾートスパ・パイレーツビーチにお越しいただき、誠にありがとうございます。
      まもなく、本日のメインイベント『パイレーツカップ』を開催いたします!
      ご来場のお客様。是非、50メートル公認プールエリアまでお越しくださいませ!」

凛子 「うわっ、そろそろ始まるみたいですね。雪乃先輩、二人を応援しに行きましょう!」

雪乃 「うん!」



【パイレーツカップ開催場所 50メートル公認プール】


実況 「ご来場のお客様! 大変長らくお待たせいたしました!
    ただいまより、『パイレーツカップ・決勝戦』を開催いたしま~す!」

SE:歓声

実況 「今大会の優勝者には、ネズミーランドのパークチケットと
    ネズミーランドホテルの宿泊券をそれぞれペア1組でプレゼントさせていただきま~す!」

SE:歓声

翔  「予選は通過してきたようだな。おめでとう」

翼  「それはどうも」

翔  「だが、優勝はインターハイ経験者の僕のものだからね」

翼  「それはどうかな?」

翔  「ふっ」

実況 「なんと! 本日は、リゾートスパ・パイレーツビーチの経営者のご子息であられる、
    北条院 翔様も特別にご参加されま~す!」

SE:歓声

実況 「もし、北条院 翔様が優勝された場合には、今会場にいらっしゃるお客様全員に
    次回パイレーツビーチへの入場料無料券をプレゼントさせていただきま~す!」

SE:歓声

実況 「ちなみに、北条院 翔様はインターハイにも出場されたご経験もあるということで、
    優勝の期待大ですよ~!」

SE:歓声

雪乃 「うわっ、すごい歓声ね」

凛子 「翼会長! 頑張れ~!」

雪乃 「陽君も頑張って~!」

実況 「それでは、再度ルールをご説明させていただきます!
    今回は北条院様も含め、予選を勝ち上がった計8名で争われます!
    種目は自由形。50メートルプールを一往復で計100メートルです。
    さぁ、はたして栄冠は誰の手に輝くのでしょうか!?
    まもなく、スタートです!」

翼  「陽、予定通りに行くぞ」

陽  「はい、会長」

実況 「よーい・・・」

SE:ピッ(スタートの合図)

SE:歓声

実況 「パイレーツカップ決勝がスタートしました!
    さぁ、どんな展開が待っているのか!?
    大本命の北条院選手は4レーンです!
    おおっと、5レーンの松葉選手! ものすごいスピードで飛ばしている! 
    一気に先頭に踊り出た~!」

翼  「はぁ!・・・はぁ!・・・はぁ!・・・はぁ!」

実況 「続いて、4レーンの北条院選手! 6レーンの鈴村選手と続きます!」

雪乃 「行け~! 翼~!」

凛子 「陽く~ん! 頑張れ~!」

翔M 「ふっ、そんなに序盤に飛ばしたら後半まで保たないぞ。バカめ」

実況 「さあ、ここで50mのターン! トップは松葉選手! このまま逃げ切るのか~!?」

翼  「はぁ!・・・はぁ!・・・はぁ!・・・はぁ!」

翔M 「まさか、本当にこのまま逃げ切る気か!? くそっ!」

実況 「おおっと、ここで北条院選手! スパートをかけてきたか!?
    トップの松葉選手にどんどん迫っていく~!」

雪乃 「翼~!」

凛子 「翼会長!」

実況 「残り25m! ここで北条院選手がトップに立った~!
    いや、松葉選手も必死にくらいついていく! まだまだ分かりません!」

翼M 「・・・くそっ! ここまでか・・・」

翔M 「そんなに甘くないんだよ。僕の勝ちだ!」

翼  「はぁ!・・・はぁ!・・・へへっ」

翔M 「!? アイツ、一瞬笑ったような・・・!?」

実況 「おおっと! 6レーンの鈴村選手! ここで一気にスピードを上げてきた~!」

翔M 「何っ!?」

陽  「はぁ!・・・はぁ!・・・はぁ!・・・はぁ!」

凛子 「陽君!?」

雪乃 「行け行け行け~~!!」

翔M 「こんなやつに~!・・・くっ、さっきスパートをかけたから力が・・・」

翼M 「ぶっちぎれ~! 陽!!」

実況 「北条院選手! 松葉選手! 鈴村選手! これは稀に見るデッドヒートだ~!」

翔  「はぁ!・・・はぁ!・・・はぁ!・・・はぁ!」

翼  「はぁ!・・・はぁ!・・・はぁ!・・・はぁ!」

陽  「はぁ!・・・はぁ!・・・はぁ!・・・はぁ!」

実況 「さぁ~、タッチは~!?・・・優勝は、鈴村選手~!!」

SE:歓声

凛子 「陽君が! 陽君が!!」

雪乃 「やった~! やった~、りんごちゃん!!」

実況 「本日のパイレーツカップの優勝者は、6レーン 鈴村選手です! おめでとうございま~す!
    優勝した鈴村選手には、ネズミーランドのパークチケットと
    ネズミーランドホテルの宿泊券をそれぞれペア1組で贈られます!」

SE:歓声

翼  「はぁ、はぁ、やったな。はぁ、はぁ、おめでとう、陽」

陽  「はぁ、はぁ、ありがとうございます。はぁ、はぁ、会長」



【表彰式が終わってプールを出た四人】



翼  「ふぅ~、今日はいろいろあったけど。なんとかなったな」

雪乃 「翼が勝手に勝負するって言い出した時はどうなるかと思ったけど」

翼  「まぁまぁ、勝ったからいいじゃねぇか。
    そういえば、あのおぼっちゃんはどこ行ったんだ?
    一言言ってやろうと思ったら、すぐにいなくなるし」

凛子 「もう、帰っちゃったんですかね?」

陽  「約束を果たしたんだと思いますよ、彼なりに」

雪乃 「それから言っとくけど、翼が私のお尻触ったり、胸を見たこと。まだ許してないから」

翼  「か~! まだ言うか!? それ!・・・ったく、陽!」

陽  「はい、会長」

翼  「ほら、優勝商品のネズミーランドのチケットと宿泊券やるから、これで機嫌直せって」

雪乃 「ダメ。それは陽君が勝ち取った物でしょ」

翼  「だからさっきも説明したじゃねぇか~!? あれは作戦で~」

雪乃 「りんごちゃん、お腹すいてない?」

凛子 「もうお腹ぺこぺこです~」

雪乃 「今日は翼が奢ってくれるって♪」

凛子 「え? 本当ですか!? 翼会長!」

翼  「え? いや、俺はそんなことは一言も」

凛子 「あっ! さっきレストランフロアガイドを見ていて、
    おいしそうなお店を発見したんですよ! 行きましょう! 翼会長!」

翼  「あっ、ちょ、ちょっと待て! りんご! 手を引っ張るな!
    ゆ、雪乃~! 覚えてろ~~!」


  《翼が凛子に手を引っ張られて行く》


雪乃 「ふふっ、じゃあ、私達もゆっくり行きましょうか?」

陽  「あ、あの、雪乃先輩」

雪乃 「? なに? 陽君」

陽  「え、えっと、その・・・」

雪乃 「あ、そうだ。陽君にしっかりとお礼を言ってなかったわね。
    さっきは、私のために頑張ってくれてありがとう」

陽  「い、いえ! そんな・・・僕は」

雪乃 「ちゅ♪」(陽のほっぺにキスする)

陽  「!?」

凛子 「雪乃せんぱ~い! 置いていきますよ~!」

雪乃 「う~ん! 今行く~! 陽君、行こ!」

陽  「・・・・・・」


  《四人が店の前で合流する。会話しながら徐々にフェードアウト》


翼  「あっ! 雪乃てめ~、俺がいつ奢るって言った~!?」

雪乃 「なんのことかしら~?」

翼  「とぼける気か~!」

凛子 「翼会長! ここですよ! ささっ、入りましょう! 
    それで~、デザートにミラクルパイレーツジャンボパフェを食べるんです~♪」

翼  「りんご~、言っとくけど奢らないからな~」

凛子 「ええ~~!! 翼会長のウソつき~~!!」

翼  「あのな~! ってか陽! お前も何か言ってくれ! ? 陽~~~~!!!!」






終わり




ポンコツクエスト ~魔王と派遣の魔物たち~ 第三十一章「紅一点」

2017-05-28 21:09:02 | ポンコツクエストシリーズ
ポンコツクエスト ~魔王と派遣の魔物たち~ 第三十一章「紅一点」


【キャラクター紹介】

カク

角の生えた獣の魔物。だらしがない、口が悪い、と言うダメダメな性格で、
いつも愚痴ってはイムラになだめられている。
自慢の角は唯一の武器だが、とても脆く、すぐ折れる。折れると言うより、むしろ砕ける。
「労災は下りんの?ちゃんと。」

イムラ

カクと仲のよいスライム。比較的真面目で大人な性格なので、カク達のツッコミ役になる事が多い。
魔物の中でも最弱で、特技は自爆。(ただし相手にダメージはなし)
すぐ死んですぐ生き返るので、死生観がユルユル。
「テロレロレロ、じゃねえよ!」

カツラギ

炎の力をアレした剣による必殺技が得意なヒト型の魔物。
魔王直属の部下四天王の一人だが、現在四天王のメンバーは四人揃っておらず、
その事をイジると激怒して必殺技を放ってくる。
決めポーズや決めゼリフを好むナルシストで、アイドルと呼ばれるのを否定しない。
「あっ、またゴキブリだ!えっと…逆流性食道炎!!」

カザミ

鳥のような大きな羽根を持つヒト型の魔物。
魔王直属の部下四天王の一人で、自称お色気担当。
お色気担当であるにも関わらず露出度の高い衣装を嫌がり、
自慢の生足を「鳥足」といじられるとショックでえづく。
キャラ付けの為に無理矢理語尾に「ですわ」を付けて喋ったり、
ネットの翻訳サイトで調べた適当なフランス語で必殺技を叫ぶ。
「そうですわよ!このチョビヒゲ!」



【キャスト一覧】

カク  ♂♀:
イムラ  ♂:
カツラギ ♂:
カザミ  ♀:


【本編】


《広場》


カク  「あ~~、だり~~、帰ろうかなもう」

イムラ 「今日もやる気ないな~、コイツ」

カク  「あ~あ、今日もやる気がないな~!」

イムラ 「はっきり言ったな~」

カツラギ「おい、貴様ら」

カク&イムラ「?」

カツラギ「またダラけているのか」

カク  「一天、カツラギさんじゃないですか」

イムラ 「どうしたんですか急に」

カツラギ「おい、今一天王って言おうとしたな貴様そこのバカよ!
     あっはっはっはっはっ! バカめ!」

イムラ 「テンション高いな、おいどうした?」

カツラギ「もう一天王とは言わせんぞ!」

カク  「ええ~、なんスか~」

イムラ 「四人揃ったんスか~?」

カツラギ「おい! カザミ!」

カク  「カザミ?」

イムラ 「え~?」

カツラギ「カザミ~!」

イムラ 「おお、なんだ、なんか来た」

カク  「だま~って歩いて来たけど」

カツラギ「カザミよ。あのな」

カザミ 「え?」

カツラギ「呼ばれたら一応、返事はした方がいいぞ」

カザミ 「あ、すいません」

カク  「あ、いきなりちょっと怒られた」

カツラギ「よしカザミ!」

カザミ 「はい!」

カツラギ「自己紹介してやれ!」

カザミ 「はい!」

イムラ 「めっちゃ返事してるw」

カク  「まじめw」

カザミ 「あたいが四天王の紅一点。疾風の女王こと、カザミですわ! おーほっほっほっ!」

イムラ 「ええ~?」

カク  「急にテンション高いな」

カツラギ「どうだ!」

イムラ 「いや、どうだって言われても。こちらの方が新メンバーなんですか?」

カツラギ「そうだ。カザミが加わって、なんと四天王が二人になったのだ!」

カク  「ニ天王じゃないっスか」


カツラギ「誰がニ天王だ、無礼者!」(カザミと同時に)

カザミ 「二天王ってなんだバカ!」(カツラギと同時に)


カク  「いっぺんにめっちゃ怒られた、すいません」

イムラ 「っていうか新しい人、女性なんですね」

カツラギ「そうだ、こういうのにお色気キャラは必須だからな」

カザミ 「そのとおり! あたいは四天王のお色気担当ですわ! おーほっほっほっ!」

カク  「なんかうるせぇな、この人」

イムラ 「ちなみにカツラギさんは、何担当なんですか?」

カツラギ「私はキザ担当だ」

イムラ 「自分で言うのすげぇな」

カザミ 「私はお色気担当ですわ!」

イムラ 「何回言うんだ、聞いたよさっき」

カク  「でもなんかお色気担当って感じじゃなくないっスか?」

カツラギ&カザミ「!?」

カク  「お色気担当だと、もっとエロい格好とかしないと」

カザミ 「エグり殺しますわよ!」

カク  「エグり殺すってなんだ、怖い!」

カザミ 「エロい格好なんて嫌に決まってるじゃない」

カク  「え?」

カザミ 「あんた地獄に落ちるわよ!」

イムラ 「いや占い師か」

カク  「なんでエロい格好嫌なんだよ。お色気担当のくせに」

カザミ 「だって似合わないもん。恥ずかしいし」

カク  「あれ? 向いてないな」

イムラ 「内気だな」

カツラギ「いや、でもちょっとよく見ろ。この格好」

カク  「ええ?」

カツラギ「生足が結構出ている」

カザミ 「そうですわよ、ほら生足」

カク  「いやでも鳥の足、鳥足じゃん」

カザミ 「と、鳥足!? おえええ~」

イムラ 「どうした!?」

カク  「えづいた!?」

カツラギ「おい貴様! カザミの足をフライドチキンみたいに言うな!
     ショックで『おええ~』ってなってるではないか!」

カザミ 「そうですわよ、このチョビヒゲ!」

カク  「チョビヒゲではない」

イムラ 「チョビヒゲってなんだ」

カザミ 「もうお前達がなんと言おうとあたいはお色気キャラでいくんだよ!
     このチョビヒゲ野郎!」

カツラギ「落ち着けカザミ! チョビヒゲではない」

イムラ 「チョビヒゲってなんだ!?」

カク  「いや、でもお色気キャラやっぱ向いてないと思いますけどね」

イムラ 「う~ん、やっぱちょっと考え直した方が」

カツラギ「というか貴様ら、さっきから生意気な言動が過ぎるぞ」

カザミ 「そうですわよ! 四天王に向かってそんな態度とっていいと思ってんのか、ですわ!」

カク  「『ですわ』の使い方も下手なんだよな~」

カツラギ「貴様ら、どうやらお仕置きが必要なようだな」

イムラ 「え~、お仕置き?」

カツラギ「我々四天王二人による合体技を見せてやろう!」

カザミ 「地獄に落ちるわよ!」

カク  「占い師かって」

イムラ 「いや、でもヤバいぞ。地獄に落とされる。謝ろう」

カク  「すいませんでした! 許してください!」

カツラギ「い~や、許さん! いくぞ!」

カザミ 「いきますわよ!」


カツラギ「酩酊(めいてい)!」(カザミと同時に)

カザミ 「フラーム!」(カツラギと同時に)


カツラギ「あ、そっちか」(カザミと同時に)

カザミ 「あ、すいません」(カツラギと同時に)


イムラ 「いや合ってねぇじゃねぇか!」

カク  「決めとけよ! 何やるか!」

カツラギ「ま~、あ~、あの~、今日はアレだな。カザミが主役の日だからな。二人技は止めとくか」

カク  「言い訳するな」

カツラギ「うるさい! カザミ! 見せてやれ!」

カザミ 「わかりましたわ。トルナード・テリーブルで吹き飛ばしてやるですわ!」
               <恐ろしい竜巻>

イムラ 「トルナード? なに?」

カク  「ちょっとたどたどしかったけど、何語ですか?」

カザミ 「フランス語ですわ」

カク  「へ~~~、だっせ~」

イムラ 「恐ろしい竜巻って、単純だな~」

カザミ 「それとも、フランボワーズ・ドゥ・エスポワールで切り裂いてやろうかしら!」
              <希望の木いちご>

イムラ 「木いちごって何だ!? 希望の木いちごって」

カク  「フランス語分かってないだろ、さては」

カツラギ「いーや! カザミはちゃんと、ネットの翻訳サイトとかでフランス語を調べているのだ!」

イムラ 「翻訳サイト使うんかい!」

カク  「全然分かってねぇ奴じゃねぇか」

カザミ 「やはりここは、シャトーブリアン・エ・フランボワーズかしら!」
            <最高級ヒレ肉に木いちごを添えて>

イムラ 「料理名か! また出てきた木いちご」

カク  「添えるな木いちご」

カザミ 「それともやっぱり、イル・オフェ・サ・コンフィアンス・エ・ソン・アムールかしら!!」
                     <信頼と愛情をお届けします>

イムラ 「いやもう、どれでもいいわ!」

カク  「なんか昔のCMで聞いたことある!」

カザミ 「あ~、もうなんかゴチャゴチャめんどくさいからフランスパンで殴ろう」

イムラ 「ええ~~!?」

カク  「雑っ! 急に!?」

カザミ 「おりゃああああ!!」

カク  「あ~! でも普通にめっちゃ痛い!!」









おわり



ラーメン大好き小泉さん 六・七杯目 コココココイズミさん(前編・後編)

2017-03-23 21:10:10 | 台本
ラーメン大好き小泉さん 六・七杯目 コココココイズミさん(前編・後編)




【登場人物一覧】


小泉さん(こいずみさん)

ラーメンをこよなく愛する女子高生。名は不詳で姓のみが作中での呼称名。
身長152cm。ウェーブがかった、金髪ではなくかん水の黄色のイメージの髪を持つ美少女。
ラーメンのこと以外に興味がなく、また、つるんで食べるものではないという考えから
友人などもほとんどいない。
物語開始以前に悠たちが通う高校に転校してきた。
ラーメンに関する知識とこだわりは他の追随を赦さず、
突発的にご当地ラーメンが食べたくなると現地まで赴くなど行動力と執着心は高い。
家系や変わり種のラーメンはもちろん、それほど得意ではないが激辛系のラーメンも好み。
痩身の見た目に反してかなりの大食漢だが、本人にその自覚はまったく無い。
また、食べるのは得意だが、作るのはインスタントの袋麺ですら失敗するという料理ベタでもある。
ナンパされることもあるがその全てを素っ気なく断っている。
東北旅行としてラーメンを食べに行ったことにより一度は追試を受ける羽目になったが
基本的に成績は優秀であり、また理由は不明だがドイツ語も堪能である。


大澤 悠(おおさわ ゆう)

小泉さんのクラスメイト。高校1年生。身長160cm、血液型O型、家族構成は両親と兄。
ショートカットでアグレッシブな少女。昔から可愛い女の子が大好きで、
クールビューティな小泉さんと仲良くなることに異常な執着心を見せる。
その入れ込みっぷりは新幹線に乗って名古屋に停車した際、
小泉さんを見かけたというだけで後先を考えず行動した結果、
ほぼ文無しで見知らぬ土地で迷子になるほどで、
通常もストーカー的に彼女と行動を共にしているが大抵はスルーされている。
それでもめげずに小泉さんと交流を持とうとするが、小泉さんの連絡先を知ったのが、
美沙、潤に次いで最後だったことは本人もショックを隠せなかった。
両親が共働きしている影響で料理が得意。
小泉さんに家庭風アレンジラーメンを振る舞った際は彼女を唸らせた。


中村 美沙(なかむら みさ)

小泉さんのクラスメイト。身長153cm、血液型A型、家族構成は両親と弟3人。
小柄でツインテールが特徴。愛らしい見た目で普通にモテるのだが、
もう彼氏がいるだろうと思われて告白されないタイプ。
当初は小泉さんに対して多少の苦手意識や嫉妬心を持っていたが、
本意でないにせよ一緒にラーメンを食べたのを機に仲良くなっていく。
実は激辛マニア。美容に関しては博識。弟のうち1人はケンタという名前で中学生。


高橋 潤(たかはし じゅん)

小泉さんのクラスメイト。身長158cm、血液型A型、母子家庭で一人っ子。
母親は出版社で編集の仕事をしている。外ハネした長髪に眼鏡をかけた少女。
クラス委員長を務めており、みんなからは委員長と呼ばれている。
テストでは学年上位に入る才女。眼鏡が曇るから、という理由で熱々の麺系を食べるのが苦手。



【キャスト一覧】

4人用

小泉さん    ♀:
大澤 悠・先生 ♀:
中村 美沙・店員♀:
高橋 潤    ♀:

5人用

小泉さん    ♀:
大澤 悠    ♀:
中村 美沙   ♀:
高橋 潤    ♀:
先生・店員   ♀:


【六杯目 コココココイズミさん(前編)】


《校内の掲示板に成績順位表が貼り出されている》


============
1位 安浦
2位 高橋 潤
3位 十津川
============


悠 「潤 すごっ!」

潤 「あー うん」

《男子生徒たちが周りで『さすがウチのクラス委員長!!』
 『委員長スゲーー』などと盛り上がる》

潤M「はーーー・・・"委員長"ってアダ名やめてくんないかな?
   誰もやりたがらないから引き受けただけなのに」

美沙「美沙 今回追試じゃなかった~~~~ イエーーーイ
   赤点ギリギリセーフー」

悠 「ホントだーー めずらし・・・!」


============
   追試者一覧

A組 鳥居
B組 小泉
C組 亀山
C組 藤堂
A組 大門
============


悠 「追試のとこに小泉さんの名前が!! うっそぉー」

美沙「あっ 小泉!!(振り返って)
   やだっ 小泉 赤点? 追試? カ・ワ・イ・ソ~~~~
   女は見た目だけじゃなく"きょうよう"もないとね~~~~
   って 無視すんな~~~~」

悠 「・・・・・・・・・おっかしーなー 
   私の調べだと 編入試験もそこそこ高得点だったはずなのに」

美沙「マジー?」

潤M「一体何処でそんな情報を・・・」

先生「あ 高橋さん」

潤 「何ですか? せんせー」

先生「あの ちょっといい? 小泉さんのことで・・・」(小声で)

潤 「?」


《昼休み 屋上で小泉さんがカップ麺を食べている》


小泉「ずる ずるるる もぐ もぐ」

潤 「いつも屋上(ここ)でお昼食べてたんだ
   今日とかちょっと肌寒くない? 教室(なか)で食べたら?
   悠 探してたし」

小泉「だからです 基本一人で過ごしたいので」

潤 「――そう 邪魔して悪いね」

小泉「ずるっ ずるっ 何か 御用ですか?」

潤 「試験 答案白紙で出したって本当?
   『もしや心のSOS? 悩みでもあるの?
    クラス委員長としてそれとなく聞き出してくれ』
   って先生から頼まれたの」

小泉「・・・・・・・・・・・・」

潤 「・・・・・・・・・別に言いたくないなら言わなくてもいーと思うよ
   先生には私から適当に言っとくからさ」

小泉「・・・・・・・・・・・・
   ――試験日直前に 東北旅行に行っていました」

潤 「え」

小泉「悪天候で帰りの電車が遅延 何だかんだで試験日の朝に東京駅着・・・
   遅刻した上に 疲労と睡魔に勝てず 気がついた時には試験終了
   それで 白紙のまま提出を」

潤 「え え 旅行? 試験前に? 何で?」

小泉「・・・・・・・・・発作的にどうしても食べたくなってしまったんです
   納豆キムチレアチーズラーメン」

潤M「納豆!? レアチーズ!?」

潤 「それ 美味しいの?」

小泉「はい。」

潤M「それを食べにわざわざ東北まで しかも大事な試験前に
   ・・・理解できない」

小泉「岩手に行ったら冷麺、じゃじゃ麺と並んで押さえておきたい あの味」

潤M「!」


《小泉さんが持っている『パイナップル風味 塩ラーメン 果肉入り』の文字を見る潤》


潤M「"パイナップル"?」

潤 「小泉さんてさあ 変(へ)・・・その・・・変わったカンジのラーメンが好きなわけ?」

小泉「今年は年始から"王道醤油系"を食す機会が多くて その反動か ここ最近は一風変わった
   "個性派創作系"達が無性に恋しいのです 旅行もその流れでつい・・・」

潤 「変(へ)・・・いや 個性的なラーメンってそんなにあるものなの?」

小泉「例えば バレンタインに大量発生する チョコ系ラーメン&つけ麺
   夏期にかけてのアイスクリームラーメン レモンラーメン
   ナッツにイチゴ・・・基本 期間限定が多いですね」

潤 「"何故それを混ぜた?"的な・・・ラインナップね」

小泉「これが意外と美味 このラーメンも都内に店舗があるのでお試しあれ」

潤M「・・・ラーメンにフルーツかぁ ちょっと気になるけど」

潤 「・・・・・・・・・実は 私さ ラーメンって苦手なんだよね
   あ 別に嫌いってワケじゃなくて
   ちょっと理由(ワケ)があって・・・!」


《小泉さんが一気に潤から距離をとる》


潤M「――って 遠・・・!! 一気に距離置かれた」

小泉「つまらない話を長々としてしまったようで」(あとずさりしながら)

潤 「あっ いや そうじゃなくて・・・・・・聞いてっ どんどん遠ざからないで」

SE:チャイムの音

小泉「もう用が無いなら私はこれで」

潤 「え あ うん」


《小泉さんがすたすたと屋上から去っていく》


潤M「・・・あちゃー・・・まずった?」


《教室》


悠 「小泉さん! 追試の勉強手伝うよ!!」

美沙「美沙も付き合ってやってもいーよ☆ 小泉がどうしてもっていうならね!!」

小泉「結構です。」




【前編 終わり】


==============================


【七杯目 コココココイズミさん(後編)】


《潤が電車に乗っている》


潤M「何か小泉さんに勘違いされたっぽいな
   ラーメンは嫌いじゃないし むしろ前は好きだったんだけど
   だけど・・・・・・・・・
   あー あれ何だっけ? 小泉さんが食べてたやつ パイナップルの
   ホントに店がある(スマホで調べて発見する)
   しかも 帰り道じゃん 家の近く!」


《パイナップルラーメン屋さんの前に到着する》


潤M「ラーメン屋 久々に来たな ここしばらく避けてたからなぁ
   小泉さんと話してから無性にラーメンが食べたくて仕方無いんだけど
   っていうか あんなしゃべるキャラだったんだ」


《店内に入り、パイナップル海老塩ラーメンのボタンを押す》


店員「いらっしゃいませー」

潤M「・・・・・・・・・・・・ラーメン屋だよね?」(店内を見回して)

店員「どうぞ "パイナップルエビ塩"です」

潤M「うわぁ ホントにあった パインが見える・・・食べきれるかな?
   100均でシュシュ買っといて良かった・・・よし。
   いただきます」

潤 「ふーー ふーー ずず ちゅるっ」

潤M「――あれ? ホント 意外と・・・好きかも
   ・・・煮たまご コレ、好き
   ――やばい おいしいじゃん コレ、かなりパイナップル感
   あーーー・・・久々のラーメンやっぱイイな 体 あったまる」

店員「いらっしゃいませ」


《小泉さんが店内に入ってきて、潤の隣に座る》


潤 「ずるっ ずるっ ずるるる」

小泉「ラーメン苦手だったんじゃないんですか」

潤 「苦手よ だって 眼鏡が曇るんだもの」(恥ずかしそうに)

小泉「・・・・・・・・・・・・そんなことで?」

潤 「そんなこととは何!?
   前に学食でラーメン食べた時 うっかり大勢の前でこうなっちゃって・・・
   笑われて結構恥ずかしかったんだから
   それ以来何となく熱々の麺類食べるの避けてたんだけど」

小泉「眼鏡外して食べたらどうですか?」

潤 「何も見えなくなる。極悪視力 ナメないで」


《後日 学校》


潤 「――で 追試はどーだったのよ?」

小泉「及第点クリアです」

悠M「あれ? 何で2人、フツーに話して・・・」




【後編 終わり】


ラーメン大好き小泉さん 五杯目 北極

2017-03-23 21:05:36 | 台本
ラーメン大好き小泉さん 五杯目 北極




【登場人物一覧】


小泉さん(こいずみさん)

ラーメンをこよなく愛する女子高生。名は不詳で姓のみが作中での呼称名。
身長152cm。ウェーブがかった、金髪ではなくかん水の黄色のイメージの髪を持つ美少女。
ラーメンのこと以外に興味がなく、また、つるんで食べるものではないという考えから
友人などもほとんどいない。
物語開始以前に悠たちが通う高校に転校してきた。
ラーメンに関する知識とこだわりは他の追随を赦さず、
突発的にご当地ラーメンが食べたくなると現地まで赴くなど行動力と執着心は高い。
家系や変わり種のラーメンはもちろん、それほど得意ではないが激辛系のラーメンも好み。
痩身の見た目に反してかなりの大食漢だが、本人にその自覚はまったく無い。
また、食べるのは得意だが、作るのはインスタントの袋麺ですら失敗するという料理ベタでもある。
ナンパされることもあるがその全てを素っ気なく断っている。
東北旅行としてラーメンを食べに行ったことにより一度は追試を受ける羽目になったが
基本的に成績は優秀であり、また理由は不明だがドイツ語も堪能である。


大澤 悠(おおさわ ゆう)

小泉さんのクラスメイト。高校1年生。身長160cm、血液型O型、家族構成は両親と兄。
ショートカットでアグレッシブな少女。昔から可愛い女の子が大好きで、
クールビューティな小泉さんと仲良くなることに異常な執着心を見せる。
その入れ込みっぷりは新幹線に乗って名古屋に停車した際、
小泉さんを見かけたというだけで後先を考えず行動した結果、
ほぼ文無しで見知らぬ土地で迷子になるほどで、
通常もストーカー的に彼女と行動を共にしているが大抵はスルーされている。
それでもめげずに小泉さんと交流を持とうとするが、小泉さんの連絡先を知ったのが、
美沙、潤に次いで最後だったことは本人もショックを隠せなかった。
両親が共働きしている影響で料理が得意。
小泉さんに家庭風アレンジラーメンを振る舞った際は彼女を唸らせた。


中村 美沙(なかむら みさ)

小泉さんのクラスメイト。身長153cm、血液型A型、家族構成は両親と弟3人。
小柄でツインテールが特徴。愛らしい見た目で普通にモテるのだが、
もう彼氏がいるだろうと思われて告白されないタイプ。
当初は小泉さんに対して多少の苦手意識や嫉妬心を持っていたが、
本意でないにせよ一緒にラーメンを食べたのを機に仲良くなっていく。
実は激辛マニア。美容に関しては博識。弟のうち1人はケンタという名前で中学生。


高橋 潤(たかはし じゅん)

小泉さんのクラスメイト。身長158cm、血液型A型、母子家庭で一人っ子。
母親は出版社で編集の仕事をしている。外ハネした長髪に眼鏡をかけた少女。
クラス委員長を務めており、みんなからは委員長と呼ばれている。
テストでは学年上位に入る才女。眼鏡が曇るから、という理由で熱々の麺系を食べるのが苦手。



【キャスト一覧】


小泉さん    ♀:
大澤 悠    ♀:
中村 美沙   ♀:

悠の兄・男A  ♂:
彼氏・男B・店員♂:


【本編】


《大澤家 リビングで悠がくつろいでいる》


兄  「あれ? 悠 今日学校休み?」

悠  「あ お兄ちゃんおはよー 今日は創立記念日で学校やすみ」

兄  「ふーん せっかくの休みに家でダラダラって・・・
    ―――デートする相手とかいねぇの?」

悠  「うっさいなー 今、美沙たち誘って買い物でも行こうと思ってたとこ!!
    さっさと大学行きなよ!!」

兄  「へいへい」

悠  「あ! 返信来た♪
    え~~~~ デート!!?」(美沙は井の頭公園でデートという文字を見て)
    美沙 昔からモテんの知ってたけど彼氏なんかいたっけ? ま いっか」


悠M 「小泉さんも誘いたいけどアドレスとか知らないや
    ――てか絶対教えてくれないんだろうな
    そしてきっと今日もラーメンを食べている」


《井の頭公園》


彼氏 「――ごめん やっぱり別れて下さい!」

美沙 「え」

彼氏 「何ていうか 美沙ちゃんモテるし 
    常に不安で一緒にいて心から楽しめないっていうか・・・
    何も僕みたいなのとつき合わなくても 他にいい奴はたくさんいるよ
    そういうことだから」

美沙 「ちょ・・・まっ(彼氏が去っていく)
    いっ! 嫌っ だめっ ありえない・・・
    美沙がフラれるとか・・・手すら繋がないうちに
    つき合ったのも告白されたのも初めてだったのに!!」
    『好き』っていったじゃん なんでだーーー」

<美沙は『モテるしどうせ彼氏いるんだろうと』思われて告白されないタイプ>


《すぐに後ろから男性二人組に声をかけられる美沙》


男A 「ねぇねぇ 一人? オレらと一緒にご飯でも行かない?」

美沙 「行かない!!」

男A 「お あっちの子のがカワイイ!」

男B 「ホントだ」

美沙M「むっ 小泉!! 何でここに!? 学校休みなのに何で制服!?」

男B 「ねーー」

男A 「一緒にお昼どう?」

小泉 「結構です」

美沙M「さっきのフラれ現場見られてないよね!?・・・・・・・・・・・・」


《小泉さんを尾行する美沙》


美沙M「・・・・・・・・・ラーメン屋? 小泉一人で・・・? 待ち合わせとかじゃなく?」

美沙 「ごくっ」(辛うまラーメンのポスターを見て唾を飲み込む)


《店内に入り小泉さんの隣に座る美沙》


美沙 「・・・・・・・・・。」(隣の小泉さんをチラチラと見る)

小泉 「あの・・・見ないでもらえますか?」

美沙 「あら 小泉さん 偶然ね 私もここで食べよーと思って お昼だし!!」

小泉 「どちら様でしたっけ?」

美沙M[そこからかよ!!」

美沙 「同じクラスの中村美沙 仲良くなる気は無いけど覚えときなさい!!」

店員 「あの お客様 先に食券を・・・」

美沙 「食券!? 何それ美沙知らない」


《食券機の前に立つ美沙》


美沙 「・・・・・・・・・。
    メニューいっぱいあって迷うー ね~ 店員さーん」


《北極ラーメンの食券を購入して席にもどる美沙》


美沙 「店員の制止を振り切って 超激辛のにしてやったわ!
    フフン ホントは初心者お断りらしいけどー」

小泉 「・・・・・・・・・大丈夫ですか? "北極"は辛さレベル9
    ―――辛さはこの店のラスボス級
    レベル上げは段階を踏んだ方が賢明かと・・・
    ちなみに私はレベル9まで一年の歳月をついやしました・・・」

美沙 「ふーん そんなに辛いんだ?
    でも美沙 辛いの得意だから平気!! (※実は激辛マニア)
    今 ストレス溜まってるから超辛いのでスカッとしたい気分なの
    って 小泉聞いてる!? 無視すんなっ」


《小泉さんは、せっせとエプロンをして髪を縛っている》


美沙 「だいたいさー 女子高生が休日に一人でラーメンとかさみしくないの?」

小泉 「あなたも一人じゃないですか」

美沙 「私はさっきまで連れがいたの!!」

小泉 「ああ 別れ話をしてた彼ですか」

美沙 「やっぱ見てたの!?」

小泉 「たまたま」

美沙 「学校で言いふらしたらタダじゃおかないからね!!」

小泉 「別に言いません」

美沙M「ぐぐ・・・一番見られたくない奴に・・・・・・」

店員 「おまちどうさまー "北極" (美沙の前へ)
    "北極スペシャル" 学生サービスゆで玉子入り あと追加のバターです」(小泉さんの前へ)

美沙 「赤っ 何これっ」

小泉 「いただきます」

美沙 「あれ 小泉の何か白いのかかってる? 同じのじゃないの?」

小泉 「"スペシャル"は今の期間の木金曜限定 通常の"北極"の上にとろりとしたチーズ
    そして豚肉のかわりにチョリソー ですが 激辛スープ+きざみ青唐辛子の辛さで
    本来のチョリソーのピリ辛感は皆無。チーズのおかげで辛さは多少マイルドに・・・
    さらにゆで玉子とバターを追加して辛さを軽減・・・ずるっ ずるるっ う・・・」

美沙 「! 汗と涙 凄いよ!? ひと口目で!?」

小泉 「激辛系はそこまで得意ではないので・・・」

美沙 「なのに辛いラーメン食べるアンタは何なの!?
    美沙も食べるっ いただきまーす
    ちゅるっ 痛っ!!! 口がっ 辛痛いいいいいいっ」

小泉M「だから言ったのにっ」

美沙 「ひっ 舌(ひた)が超ヒリヒリひゅるっ
    ・・・・・・・・・っ っ・・・けど いいよ これっ
    はぁーーー いいっ すっごい美沙好み」


《二人とも激辛ラーメンにがっつく》


小泉&美沙 「ずぞぞぞぞ」

小泉&美沙 「ずるずる ずるるっ」

小泉&美沙 「ずずずず」

小泉&美沙 「ごくごくごくっ」

小泉&美沙 「はぁ~~~~~~~」(激辛ラーメンを完食した時の至福の笑顔)


美沙 「は はじめて面と向かって『好き』って言われて 結構嬉しかったのに・・・
    もぉ 辛すぎ ぐすっ」


《ラーメン完食した二人はお店を出る》


美沙 「んーーーっ 満足 満足!!」

小泉 「アツい・・・」

美沙 「小泉! アドレス教えて!! 他にも激辛ラーメンの情報ほしいんだけど
    ハマリそうッ ラインのIDでもいーよ
    別にアンタと一緒に行きたいわけじゃないからっ(急に体裁を繕って)
    新しい彼氏作って行くんだからね!!」

小泉 「・・・別に構いませんが それでしたら」

美沙 「美沙 もっと辛いのもイケちゃうよ♪」

小泉 「今日のラーメン 辛さ5倍もできますよ」

美沙 「マジ!?」

SE:カバンをドサッと落とす音


《二人が振り返ると、そこに買い物帰りの悠と潤が立っている》


美沙 「あ」

悠  「あれ~~~~? 何でだ~~~~ 何で二人が一緒にいるんだ~~~~?
    美沙 今日デートって・・・・・・
    美沙の裏切り者ー!! 何で小泉さんと先に仲良くなってんのさー」

美沙 「あー もー 悠めんどいっ!!」

小泉 「・・・・・・・・・帰ります」





五杯目 完食


ラーメン大好き小泉さん 四杯目 サイミン

2017-03-23 21:03:31 | 台本
ラーメン大好き小泉さん 四杯目 サイミン




【登場人物一覧】


小泉さん(こいずみさん)

ラーメンをこよなく愛する女子高生。名は不詳で姓のみが作中での呼称名。
身長152cm。ウェーブがかった、金髪ではなくかん水の黄色のイメージの髪を持つ美少女。
ラーメンのこと以外に興味がなく、また、つるんで食べるものではないという考えから
友人などもほとんどいない。
物語開始以前に悠たちが通う高校に転校してきた。
ラーメンに関する知識とこだわりは他の追随を赦さず、
突発的にご当地ラーメンが食べたくなると現地まで赴くなど行動力と執着心は高い。
家系や変わり種のラーメンはもちろん、それほど得意ではないが激辛系のラーメンも好み。
痩身の見た目に反してかなりの大食漢だが、本人にその自覚はまったく無い。
また、食べるのは得意だが、作るのはインスタントの袋麺ですら失敗するという料理ベタでもある。
ナンパされることもあるがその全てを素っ気なく断っている。
東北旅行としてラーメンを食べに行ったことにより一度は追試を受ける羽目になったが
基本的に成績は優秀であり、また理由は不明だがドイツ語も堪能である。


大澤 悠(おおさわ ゆう)

小泉さんのクラスメイト。高校1年生。身長160cm、血液型O型、家族構成は両親と兄。
ショートカットでアグレッシブな少女。昔から可愛い女の子が大好きで、
クールビューティな小泉さんと仲良くなることに異常な執着心を見せる。
その入れ込みっぷりは新幹線に乗って名古屋に停車した際、
小泉さんを見かけたというだけで後先を考えず行動した結果、
ほぼ文無しで見知らぬ土地で迷子になるほどで、
通常もストーカー的に彼女と行動を共にしているが大抵はスルーされている。
それでもめげずに小泉さんと交流を持とうとするが、小泉さんの連絡先を知ったのが、
美沙、潤に次いで最後だったことは本人もショックを隠せなかった。
両親が共働きしている影響で料理が得意。
小泉さんに家庭風アレンジラーメンを振る舞った際は彼女を唸らせた。



【キャスト一覧】


小泉さん♀:
大澤 悠♀:



【本編】


《放課後の学校》

SE:チャイム音

悠 「小泉さーん 今から潤や美沙たちとマック行くんだけど一緒にどう?」

小泉「結構です」

悠 「あーー またラーメン屋行くんだー
   ・・・・・・・・・小泉さんてさ マックとか行ったこと無いでしょ?」
   そういう店に興味ないのかもしれないけどさー」

小泉「行きますよ」

悠 「えっ うっそだー」

小泉「・・・・・・・・・あれは2ヵ月前」


《ハワイ州――
 マクドナルドでカップ入りのラーメンをテイクアウトしてくる小泉さん
 場所を移動し、髪を縛り、カップの蓋を開けて、ラーメンをすする》

小泉「ちゅるっ」(回想シーンで麺をすする)

悠 「ちょっと待ったー!! マックにラーメンなんて無いよ!!」

小泉「ありますよ。ハワイ限定ですが"サイミン"という麺類が販売されてます」

悠 「マジで!?」

小泉「ハワイには日本のラーメン店も続々進出していますし
   現地でラーメンに困ることはありませんでした
   ロコモコ、マカダミアナッツに続き
   ラーメンはハワイ名物と言っても過言ではないのかもしれません」

悠 「いやー 過言じゃないかな・・・
   じゃなくてーーー ハンバーガーとか食べたことあるのかって話であって・・・」

小泉「ありますよ 天一で」

悠 「・・・・・・・・・・・・・いやそれこの前のラーメン屋だよね?
   ハンバーガーなんて無・・・」

小泉「ありますよ。大阪喜連瓜破(きれうりわり)店限定ですが
   何故か知りませんがハンバーガーを販売していました」

悠 「ホント 何故!? 店舗名もすごいな」

小泉「しかも味良し ボリューム良し 価格良し
   もちろんラーメンもセットで美味しくいただきました」

悠 「へーーーー・・・・・・・・・・・・
   じゃなくてー!! あれっ何の話だっけ!?」





四杯目 完食

ラーメン大好き小泉さん 三杯目 こってり

2017-03-23 20:59:34 | 台本
ラーメン大好き小泉さん 三杯目 こってり




【登場人物一覧】


小泉さん(こいずみさん)

ラーメンをこよなく愛する女子高生。名は不詳で姓のみが作中での呼称名。
身長152cm。ウェーブがかった、金髪ではなくかん水の黄色のイメージの髪を持つ美少女。
ラーメンのこと以外に興味がなく、また、つるんで食べるものではないという考えから
友人などもほとんどいない。
物語開始以前に悠たちが通う高校に転校してきた。
ラーメンに関する知識とこだわりは他の追随を赦さず、
突発的にご当地ラーメンが食べたくなると現地まで赴くなど行動力と執着心は高い。
家系や変わり種のラーメンはもちろん、それほど得意ではないが激辛系のラーメンも好み。
痩身の見た目に反してかなりの大食漢だが、本人にその自覚はまったく無い。
また、食べるのは得意だが、作るのはインスタントの袋麺ですら失敗するという料理ベタでもある。
ナンパされることもあるがその全てを素っ気なく断っている。
東北旅行としてラーメンを食べに行ったことにより一度は追試を受ける羽目になったが
基本的に成績は優秀であり、また理由は不明だがドイツ語も堪能である。


大澤 悠(おおさわ ゆう)

小泉さんのクラスメイト。高校1年生。身長160cm、血液型O型、家族構成は両親と兄。
ショートカットでアグレッシブな少女。昔から可愛い女の子が大好きで、
クールビューティな小泉さんと仲良くなることに異常な執着心を見せる。
その入れ込みっぷりは新幹線に乗って名古屋に停車した際、
小泉さんを見かけたというだけで後先を考えず行動した結果、
ほぼ文無しで見知らぬ土地で迷子になるほどで、
通常もストーカー的に彼女と行動を共にしているが大抵はスルーされている。
それでもめげずに小泉さんと交流を持とうとするが、小泉さんの連絡先を知ったのが、
美沙、潤に次いで最後だったことは本人もショックを隠せなかった。
両親が共働きしている影響で料理が得意。
小泉さんに家庭風アレンジラーメンを振る舞った際は彼女を唸らせた。



【キャスト一覧】


小泉さん♀:
大澤 悠♀:



【本編】



悠N 「放課後 都内某所 小泉さんは今日もラーメン屋に来ている
    ―――小泉さん 席につくなり 即・注文(オーダー)
    小泉さん 迷わずこってりを選択(チョイス)
    プラス 唐揚げ定食 やっぱり見かけによらず大喰いみたい
    長い髪を縛って 戦闘態勢バッチリ」

小泉 「いただきます」

悠N 「いただきます おお これは予想以上にこってり濃厚
    どろどろスープで麺もねっとり」

小泉 「ズルッ ズルルッ ズルズルズル」(麺をすすってます)

悠M 「・・・・・・・・・・・・。」

小泉 「はふっ ズル ズルルッ」(同じく麺をすすってます)

悠M 「・・・・・・・・・・・・。」

小泉 「ずずずずず」(レンゲでスープを飲んでます)

悠M 「・・・・・・・・・・・・。」

小泉 「はーーーーーーーー」(至福の笑顔)

悠N 「ラーメンを食べる小泉さんは とっても幸せそう」

小泉 「・・・・・・・・・・・・」

悠M 「・・・・・・・・・・・・。」

小泉 「あの 見ないでもらえますか?」

悠  「しまった つい見とれて脳内実況が抜けてたよ」

小泉 「何言ってるんですか。大体どうしてアナタがここに?」

悠  「え」

小泉 「あなたと一緒に来た覚えは無いのですが?」

悠  「えーーー 今さらーーー?
    えっと 校門で小泉さん見つけて声かけたじゃん?
    無視(スルー)されたじゃん? んで仕方ないから
    まあ軽いカンジで尾行したんだけど
    まさか放課後 電車乗り継いでラーメン食べに行くとは
    思わなかったからさー」

小泉 「ストーカー行為は止めてください。」

悠  「ラーメンおいしいね♪」

小泉 「・・・・・・・・・・・・。」

悠  「それにしても このスープ めっちゃ"ドロッ"ってしてるよね
    何だろ この食感 ホワイトシチューのような・・・
    そうだ カルボナーラスパゲティーだ
    こんなラーメン初めて! 白いスープだから『豚骨ラーメン』かな?
    あれ? でもこの前の『熊本とんこつ』とは全然違う味だけど」

小泉 「・・・・・・・・・・このスープは鶏ガラベースだから当然です
    乳白色のスープ全てが豚骨ベースだと思ってませんか?」

悠  「え 違うの!?・・・・・・・・・正直さあ そんなに詳しくない私からすると
    白くて濁ってるスープは『豚骨』透明なのは『塩』
    茶色で濁ったのが『味噌』で透明は『醤油』
    ―――みたいに4種類くらいしか意識してなかったよ」

小泉 「そんな知識で良く今まで生きてこれましたね。驚きです。」

悠  「いや 特に困ったこと無かったし!」

小泉 「『豚骨』は出汁による分類 その他はタレによる分類です」

悠  「出汁? タレ?」

小泉 「ラーメンのスープの基本要素です
    出汁やタレの配合の違い さらに香味油等の違い
    現状スープ一つとっても 一言で"○○味"と表すのは難しいモノが多いです」


======================

豚骨×醤油×鶏がら
家系豚骨醤油ラーメンなど

豚骨ダシ100%
博多豚骨ラーメンなど

豚骨×魚介
Wスープ系ラーメンなど

豚骨×鶏ガラ+マー油
熊本系ラーメンなど

魚介×醤油+豚の背油
燕三条系ラーメンなど

======================


悠  「一気に複雑に・・・科学の実験みたい」

小泉 「ここの白濁スープは鶏ガラ×野菜ベース
    この食感はそれらをドロドロになるまで煮出したから――
    コラーゲンが豊富・・・」

悠  「コラーゲン!?(イスから立ち上がる)
    お肌がツヤッツヤになるというあの・・・
    これは飲み干さねば!!
    ! って スープが無い!!
    麺に吸い取られてスープ無いよ コレ!」
    元々柔めだった麺がさらにブヨブヨに・・・
    もう完全にカルボナーラ状態!!
    小泉さんのも ごめん私がムダ話ふっかけたから・・・」

小泉 「問題ありません この時をまっていました」

悠  「え・・・」

小泉 「着丼後 まず麺の半分を食し
    御飯とサイドメニューを摘みつつ暫く丼を放置
    麺にスープが完全に浸透したところで 一気に掻き込む
    ずぞぞぞ ズルッズル ずるずるずる(麺をすする)
    ふぅ・・・個人的にこの食し方がベスト
    さらにゆで卵無料サービスの店舗では卵を潰して投入・・・
    その味まさに"カルボナーララーメン"
    週一で食べたくなる中毒性」

悠M 「そんなに!? マジか!?」


《二人ともラーメンを完食する》


悠  「ごちそうさまー 何はともあれコラーゲン効果に期待♪」

小泉M「プラシーボ」

悠N 「これは ラーメン大好き小泉さんのお話」




三杯目 完食

ラーメン大好き小泉さん 二杯目 まーゆ

2017-03-23 20:56:51 | 台本
ラーメン大好き小泉さん 二杯目 まーゆ




【登場人物一覧】


小泉さん(こいずみさん)

ラーメンをこよなく愛する女子高生。名は不詳で姓のみが作中での呼称名。
身長152cm。ウェーブがかった、金髪ではなくかん水の黄色のイメージの髪を持つ美少女。
ラーメンのこと以外に興味がなく、また、つるんで食べるものではないという考えから
友人などもほとんどいない。
物語開始以前に悠たちが通う高校に転校してきた。
ラーメンに関する知識とこだわりは他の追随を赦さず、
突発的にご当地ラーメンが食べたくなると現地まで赴くなど行動力と執着心は高い。
家系や変わり種のラーメンはもちろん、それほど得意ではないが激辛系のラーメンも好み。
痩身の見た目に反してかなりの大食漢だが、本人にその自覚はまったく無い。
また、食べるのは得意だが、作るのはインスタントの袋麺ですら失敗するという料理ベタでもある。
ナンパされることもあるがその全てを素っ気なく断っている。
東北旅行としてラーメンを食べに行ったことにより一度は追試を受ける羽目になったが
基本的に成績は優秀であり、また理由は不明だがドイツ語も堪能である。


大澤 悠(おおさわ ゆう)

小泉さんのクラスメイト。高校1年生。身長160cm、血液型O型、家族構成は両親と兄。
ショートカットでアグレッシブな少女。昔から可愛い女の子が大好きで、
クールビューティな小泉さんと仲良くなることに異常な執着心を見せる。
その入れ込みっぷりは新幹線に乗って名古屋に停車した際、
小泉さんを見かけたというだけで後先を考えず行動した結果、
ほぼ文無しで見知らぬ土地で迷子になるほどで、
通常もストーカー的に彼女と行動を共にしているが大抵はスルーされている。
それでもめげずに小泉さんと交流を持とうとするが、小泉さんの連絡先を知ったのが、
美沙、潤に次いで最後だったことは本人もショックを隠せなかった。
両親が共働きしている影響で料理が得意。
小泉さんに家庭風アレンジラーメンを振る舞った際は彼女を唸らせた。


中村 美沙(なかむら みさ)

小泉さんのクラスメイト。身長153cm、血液型A型、家族構成は両親と弟3人。
小柄でツインテールが特徴。愛らしい見た目で普通にモテるのだが、
もう彼氏がいるだろうと思われて告白されないタイプ。
当初は小泉さんに対して多少の苦手意識や嫉妬心を持っていたが、
本意でないにせよ一緒にラーメンを食べたのを機に仲良くなっていく。
実は激辛マニア。美容に関しては博識。弟のうち1人はケンタという名前で中学生。


高橋 潤(たかはし じゅん)

小泉さんのクラスメイト。身長158cm、血液型A型、母子家庭で一人っ子。
母親は出版社で編集の仕事をしている。外ハネした長髪に眼鏡をかけた少女。
クラス委員長を務めており、みんなからは委員長と呼ばれている。
テストでは学年上位に入る才女。眼鏡が曇るから、という理由で熱々の麺系を食べるのが苦手。



【キャスト一覧】


小泉さん ♀:
大澤 悠 ♀:
中村 美沙♀:
高橋 潤 ♀:


【本編】


《小泉さんが学食の入り口に貼られているポスターを見ている》

小泉「・・・・・・」

《悠と美沙と潤が歩いてくる》

美沙「おなかすいたー」

潤 「昼 何食べる?」

悠 「あ 小泉さん」

小泉「?」(振り返る)

悠 「何 見てんの!?」

小泉「・・・・・・・・・」(沈黙後に走り出す)

悠 「逃げないで!」


《小泉さんが走り去る》


美沙「? 今の小泉さん?」

潤 「ユウ 昔から可愛い子大好きだもんねー」

悠 「もう 一緒にラーメン食べたのにツレないなー」

悠M「一体 何見てたんだろ?」(ポスターに近づく)


=========================
4月の新メニュー ご当地ラーメンフェア ~第1弾~

熊本ラーメン 特製 馬油入り
=========================


悠M「"うまあぶら"? やっぱり小泉さんラーメン好きなんだなー」

悠 「ねぇ たまにはお昼学食で食べない?」

潤 「混むから嫌だよ」

悠 「何でさーーっ "小泉さんと友達になろう計画"協力してよーー」

潤 「いや それ初めて聞いたし」

悠 「美沙はーー?」

美沙「美沙 小泉さん 苦手」

悠 「えーーー」

美沙「なんかー 転校してきてから誰とも話そうとしないしーー
   何か冷たいカンジっていうかーー・・・・・・・・・」
   まぁ ひとことで言うと 『美沙よりモテる子はみんな邪魔。』」

悠 「ほらほら 嫉妬はイカンよ 皆仲良く!
   美沙も十分可愛いんだからさー」

美沙「小泉さんとどっちが?」

悠 「小泉さん」

美沙「ちょっと!」

潤M「はーーー 今日も平和だなぁ」


《結局、悠だけ学食で食べることになる》


悠 「隣 いいかな?」

小泉「・・・・・・・・・またあなたですか
   勝手にすれば良いと思います。別に私の家ではないので」

悠 「そうさせて頂きます!(席に着く)
   あ 小泉さんも同じだ! 私も! 初・熊本ラーメン」

小泉「ちゅるっ ごく はーーー」(ゆっくりラーメンを味わう)

悠 「前みたく勢い良く食べないんだね」

小泉「・・・・・・あの店だとロット・・・回転を悪くしないよう極力食べる速度を上げているだけです」

悠 「ねぇねぇ このラーメンとんこつ味だけど独特な香りするよね。
   このスープに浮いてる黒っぽいの何だろ・・・?
   ―――あ そっかアレか! "うまあぶら"」

小泉「・・・」(ぴくっとする)

悠 「そうだよ。この"うまあぶら"がイイ味だしてるんだよ
   馬の油が豚骨スープにこんなに合うなんて
   まさに豚と馬の奇跡のコラボレーション
   いやーイイね! "うまあぶら"」

小泉「・・・まーゆ。"うまあぶら"では無く"馬油"(まーゆ)と読みます」

悠 「え」

小泉「ちなみに馬の油で無く ニンニクを焦がして香りを移した香味油のことです」

悠 「えっ 馬関係ないの!?」

小泉「関係があるとしたら"鶏" 熊本系のスープは豚骨と鶏ガラのミックス
   馬油を使うことでルーツである久留米・玉名系よりコクがあるのが特徴
   ただ学食ということもあってかニンニク臭は抑えめですね
   本場のものとなると・・・」

悠M「ああ 好きなモノ(ラーメン)のコトなら結構話してくれるじゃん」

小泉「『九州とんこつ』というと博多・長浜系がメジャーですが
   熊本系はそれらより麺が太いのも特徴で・・・」

悠M「淡々と話してるけど女の子らしくて可愛い声だなぁ」

小泉「学校周辺にも最近オープンした店が・・・」

悠 「うんうん それで?」


《小泉さんが急に立ち上がる》


悠 「ねえ! 私 そのお店のラーメン食べたい! 今度一緒に行かない?」

小泉「嫌です」

悠M「なんか今日 結構しゃべれたんじゃない!?」





二杯目 完食


GREEN ~秋空のスクリーン~ scene.4「君の瞳に恋してる」

2017-02-15 05:01:30 | 台本

GREEN ~秋空のスクリーン~ scene.4「君の瞳に恋してる」


【キャスト一覧】

小野 真治 ♂:
水野 真琴 ♀:
桜井 茜  ♀:
藤原 由紀恵♀:
本山 浩一 ♂:
中田 英明 ♂:


詳細なキャラ説明は一話を参照してください。
GREEN ~秋空のスクリーン~ scene.1「さよならゲーム」


【GREEN ~秋空のスクリーン~ 全4話】

GREEN ~秋空のスクリーン~ scene.2「シーズ・ソー・ラブリー」
GREEN ~秋空のスクリーン~ scene.3「好きと言えなくて」
GREEN ~秋空のスクリーン~ scene.4「君の瞳に恋してる」


【本編】


  《真琴の家の前》


SE:チャイム音 何度も鳴らす

真治 「おかしいな・・・真琴が居留守を使うとしても雅志君が出てくるはずなんだけど」

SE:ドアのノック音

真治 「まだそんなに遅い時間じゃないから、真琴のお母さんは帰ってきてないよな

SE:ドアのノック音 何度も叩く   

真治 「こんばんは! こんばんは~! こんばんは~!!
    はぁ・・・ダメ、かなぁ・・・」

SE:ドアが開く音

真治 「あっ、真琴」

真琴 「ちょっと、近所迷惑よ」

真治 「真琴、ごめん。ちょっと話を聞いてほしいんだ」

真琴 「こんな時間に押しかけて来て、どういうつもり?」

真治 「頼む! ちょっとだけでいいから」


  《真琴が真治を家に招き入れる》


真治 「ありがとう」

真琴 「静かにね」

真治 「あっ、ごめん」

SE:ドアを閉める音 鍵をかける音

  《階段を上がり、真琴の部屋に向かう》


真治 「あれ?雅志君は?」

真琴 「お母さんと一緒に田舎に行ってる。取材旅行のついでなんだって」

真治 「真琴は行かなかったんだ? 一緒に行けば良かったのに」

真琴 「もう、撮影があるでしょう」

真治 「あ、そうか・・・」


  《真琴の部屋のドアを開ける》


真琴 「はい、どうぞ」

真治 「あ、うん。お邪魔します」


  《部屋に入り、ドアを閉める》


真治 「ねぇ、真琴」

真琴 「・・・」

真治 「真琴、ごめん。本当に悪かったと思ってる」

真琴 「・・・」

真治 「真琴、ちょっと聞いてほしいんだ」

真琴 「呼び捨てにしないで。その辺に座ったら?」

真治 「う、うん」

真琴 「で、何? 用が終わったら、さっさと帰ってね」

真治 「いや、とにかく、謝りたくて」

真琴 「今更何を謝るの? 茜ちゃんにキスしたこと? それを平気な顔で私に話したこと?」

真治 「それもあるけど」

真琴 「それとも、私と別れて茜ちゃんと付き合うことにした? だったら謝る必要なんかないわよ。
    ほんと、それがいいかもね。あの子なら私なんかよりずっと素直だよ。
    先輩、先輩って、きっと何でも許してくれるわよ」

真治 「やめてよ、水野さん。僕は、そんな話をしに来たんじゃない」

真琴 「何よ、おとなしそうな顔して。君のことを陰でコソコソ狙ってるんだわ!
    それで、都合が悪くなるとすぐ泣いて、ズルイ女!!」

真治 「茜ちゃんを悪く言うのは止せったら!」

真琴 「やっぱり、庇うんだ」

真治 「そうじゃないって」

真琴 「ねぇ、君、何しに来たの? 私に謝りに来たんじゃなかったの?」

真治 「もちろん、謝りに来たんだよ」

真琴 「どこが謝ってるのよ! もう帰って!」

真治 「どうして茜ちゃんのことを持ち出すんだ。
    彼女の気持ちがどうであれ、僕の君を想う気持ちに変わりはないのに!」

真琴 「出てって! ねぇ! 出てってよ!!」

真治 「水野さん、落ち着いて! 話を聞いて!」

真琴 「話なんかしたくないの! 理屈ばっかり言って! バカッ! バカバカッ!」

真治 「どうして分かってくれないんだ! 僕は!」

真琴 「私の気持ちは? 分かってるの?」

真治 「だから、分かろうと思って。でも、そのためには話し合わなきゃ」

真琴 「話し合って、何が分かるのよ!?」

真治 「水野さん・・・」

真琴 「・・・・・・」

真治 「水野さん、どうしてそんなに怒ってるの?」

真琴 「・・・」

真治 「僕のこと、嫌いになったの?」

真琴 「君が、私のこと嫌いになったんじゃないの?」

真治 「いや、好きだ」

真琴 「ウソ」

真治 「嘘なもんか。何度も言ったじゃないか。水野さんは、僕の理想の」

真琴 「そんなの、君が勝手に思い込んでるだけじゃない。私、名無しのヒロインなんかじゃないよ?
    普通の女の子だよ? そんな、君が思っているような理想の女の子じゃないよ」

真治 「そんなことは分かってるよ」

真琴 「分かってないよ!」

真治 「違うんだ、水野さん。きっかけは、そうだったかもしれないけど。
    思い出してほしい。いつか保健室で僕が君に告白した時のことを。
    あの時、君は僕に訊いたよね? 僕が水野さんのことを好きになったこと。
    映画に出演してほしいと思ったこと。どっちが先なのかって」

真琴 「・・・・・・」    

真治 「僕は、水野さんに出演してほしいと思ったのが先だと答えた。
    好きになったのは、その後なんだ。名無しのヒロインはきっかけに過ぎない」

真琴 「私、嫌な子よね」

真治 「そんなことないよ」

真琴 「ウソ」

真治 「一体、何が君をそんなに苦しめているの?
    そして、それは僕のせいなんだろうか」

真琴 「・・・・・・」

真治 「それを分かりたいんだ、真剣に。鈍感なことは謝るよ。
    でも、だからこそ教えてほしい。二度と君を苦しめないためにも」

真琴 「綺麗事言って」

真治 「ねぇ、僕には君が必要なんだよ」

真琴 「女優として必要なだけでしょ? いつだってそう、映画映画で、
    カメラを通して見る私にしか興味ないんでしょ!?」

真治 「違う! 僕は、一人の女性としての君が好きなんだ!」

真琴 「ごめんね、現実の私はこんなんで。
    幻滅させちゃったよね、茜ちゃんには酷いこと言うし。真治にも」

真治 「だから違うんだ! あれは、誰が悪いわけでもないよ・・・」

真琴 「ふ~ん、君は全然悪くないんだ?」

真治 「いや、それは、悪かったけど」

真琴 「それに、真治は私が悪いって言ったじゃない!」

真治 「そんなことは言ってないよ!」

真琴 「言ったじゃない!!」

真治 「・・・真琴、ごめん」

真琴 「・・・・・・」

真治 「ほんとにごめん。確かに、理屈じゃないよね」

真琴 「知らない」

真治 「ねぇ、水野さん。僕を見て」

真琴 「見てるよ」

真治 「僕は君が好きなんだ」

真琴 「そう、ありがとう」

真治 「目をそらさないで」

真琴 「・・・」

真治 「僕は君が好きなんだ」

真琴 「分かったわよ」

真治 「僕は君が好きだ」

真琴 「はいはい」

真治 「僕は君が好きだ」

真琴 「わっ、分かったったら」

真治 「君が好きだ」

真琴 「もう、いいよ・・・」

真治 「君が好きだ」

真琴 「・・・」

真治 「君が好きなんだ」

真琴 「・・・」

真治 「君が好きなんだ」

真琴 「やめて、そんな嘘つかないで! そんなこと言う柄じゃないでしょ!?」

真治 「・・・好きだ」

真琴 「ぐすっ ぐすっ」(泣き始める)

真治 「君が好きだ」

真琴 「ぐすっ ぐすっ・・・」

真治 「愛してる」

真琴 「ぐすっ ぐすっ・・・うわあああん!」

真治 「?」

真琴 「分かんない・・・自分でも何で怒ってるのか、分かんないの・・・
    ごめん、ごめんなさい! 真治! ぐすっ ぐすっ・・・」

真治 「僕にもよく分からないよ、真琴」

真琴 「ぐすっ、ぐすっ、ぐすっ・・・・・・」


  《ベッドの中》


真琴 「うふっ、変なの。さっきまで私たちケンカしてたのに。
    今は真治がそばにいることが、すごく嬉しいの」

真治 「僕もだ」

真琴 「ふふっ。なんだか、おかしいね。でも、幸せ」

真治 「真琴」


  《しばらく経って》


真琴 「ほっぺた、まだ痛む?」

真治 「いや、別に」

真琴 「ごめんね。昼間、おもいっきり殴っちゃって」

真治 「気にしないでいいよ」

真琴 「茜ちゃんの言うとおりかも。私、ちょっと浮かれてたの。
    っていうか、甘えてみたかったのかも」

真治 「甘えて?」

真琴 「真治が」

真治 「僕が?」

真琴 「誰にでも優しいから。何か不安になっちゃって。
    わざとああいう態度とっちゃったのかもしれない」

真治 「だとしたら、本当に僕のせいだね。ごめん」

真琴 「ううん、謝らないで。後から考えてみて、そうだったのかな~ってだけだから」

真治 「僕は、もっともっと、真琴の気持ちを分かりたい」

真琴 「ごめんね。理屈にならないことばっかり言って」

真治 「いや」

真琴 「え?」

真治 「分かりたいんだ。その、理屈じゃないこと」

真琴 「ふふっ。すごく分かってくれる気がするよ、今は」

真治 「そうかな?」

真琴 「うん!」




真琴 「明日、茜ちゃんに謝っておく」

真治 「うん」

真琴 「真治・・・ありがとう」


  《映画部 部室 全員集まっている》


本山M「ふぅ・・・ってなわけで。ああ、俺だよ、天才の本山。
    なんだかんだ言って、やっぱり元鞘(モトサヤ)っていうか
    落ち着くべきところに落ち着いたっていうか
    雨降って地固まるというか」

茜  「本山先輩? 何ブツブツ言ってるんですか?」

本山 「ん~? っと、おお! 茜ちゃ~ん! はっはっはっ!
    天才はなかなか理解されないものなんだよ」

茜  「そう、何ですか?」

由紀恵「うふふふっ。本山君は相変わらずね」

本山 「な、なんスか~それ~」

真治 「本山君! もう何曲かあがってる? そろそろ前半の仮編集に入れるから
    曲があったらあててみたいんだけど」

中田 「ん? どうだろうな。本山は土壇場でまとめあげてくるタイプだからな」

本山 「チッチッチッチッ、部長さん。日々成長するこの天才本山をなめちゃ~いけませんぜ~」

真琴 「ええ~! じゃあ、もう曲出来てるの?」

本山 「な~によ、真琴ちゃ~ん。そんなに驚くことねぇじゃんよ」

真琴 「だって、ねぇ?」

茜  「ねぇ」

本山 「ガッ! 茜ちゃんまでひっで~な~」

由紀恵「うふふっ。じゃあ、聞かせてくれないかしら? その天才さんの華麗なる作品ってやつを」

本山 「え? 今? ここで? みんなで聞くの?」

由紀恵「天才、なんでしょ?」

本山 「そりゃ~そうっスけど・・・何か照れるな~」

中田 「ほう、お前でも照れることがあるのか」

真治 「部長。それはいくらなんでも言いすぎですよ」


  《本山以外 みんな笑う》


本山M「チッ、全く。凡人どもが天才を甘く見やがって。待ってろよ。
    今、溢れんばかりの才能を結実させた珠玉の名曲たちを聞かせてやるからな。
    腰抜かすなよ? さて、ディスク1をセットしてっと。
    さぁ、これを聞けば、みんな黙っちまうぞ~。
    それでは、イッツア ミュージック! スタート!」





scene.4   終




GREEN ~秋空のスクリーン~ scene.3「好きと言えなくて」

2017-02-15 04:54:39 | 台本
GREEN ~秋空のスクリーン~ scene.3「好きと言えなくて」


【キャスト一覧】


小野 真治 ♂:
桜井 茜  ♀:
藤原 由紀恵♀:
本山 浩一 ♂:
中田 英明 ♂:


詳細なキャラ説明は一話を参照してください。
GREEN ~秋空のスクリーン~ scene.1「さよならゲーム」


【GREEN ~秋空のスクリーン~ 全4話】

GREEN ~秋空のスクリーン~ scene.2「シーズ・ソー・ラブリー」
GREEN ~秋空のスクリーン~ scene.3「好きと言えなくて」
GREEN ~秋空のスクリーン~ scene.4「君の瞳に恋してる」


【本編】


本山M「自主制作映画の撮影中に勃発した美少女同士の一騎討ち~。
    な~んてな、ウッス! 俺、本山。忘れないでくれよ! 天才の本山。
    なぜか二人の美少女に好かれてる映画バカの真治がね~、
    女優の真琴ちゃんと付き合ってるくせに部員の茜ちゃん相手にまぁ~、
    早く言やぁどっちつかずの態度をとっちゃったわけだよ。
    本人真面目な奴だから全然そんなつもりはないんだろうけどさ、
    女心が分からないっていうか、困ったもんだよな。
    ともあれ、真治のことを諦めきれない茜ちゃんを
    うまいこと慰めてやったまではいいんだけど、
    茜ちゃんにキスしたことまで真琴ちゃんに話しちゃったってんだからもう大変・・・。
    さて、放課後。もちろん俺は部室に向かったね。
    ここまで来たら最後まで見届けなきゃしょうがんねえ!」



《タイトルコール》

由紀恵「GREEN ~秋空のスクリーン~ 第3話『好きと言えなくて』」


《映画部 部室》


本山 「ウィ~~~ッス!」

由紀恵「あら本山君、おはよう」

中田 「お、本山かぁ」

本山 「どうっスか? 連中は来てます?」

中田 「う~ん、いやまだ来ていない」

由紀恵「まぁ、まだ早いから。これから来るんじゃない?」

本山 「はぁ・・・そうっスかねぇ~」

真治 「おはようございます」

本山 「おおう! 真治! 真琴ちゃんはどうしたよ?」

真治 「いや、それが・・・」

由紀恵「まだ仲直り出来ないの?」

真治 「はい、すみません。なんかますます怒らせちゃったみたいで。
    さっきの様子では、今日の撮影には来てもらえないんじゃないかと・・・」

中田 「ん? では、捜してくればいいだろう」

真治 「はいっ、すみませんけどちょっと行ってきます」

由紀恵「頑張ってね」


  《真司が部室を出て行く》


中田 「今日の撮影は中止のようだな」

由紀恵「こればっかりは、仕方ないわよね」

中田 「うん。今のところスケジュールにも余裕があるし中途半端なままにしておくよりも、
    みんながしっかり納得いくまで話し合った方がいいだろう」

由紀恵「へぇ、中田君、意外とそういうことに理解あるんだ」

中田 「意外か? うん・・・まあいい、俺は暗室でスチールでも現像することにしよう。後は頼む」

由紀恵「はいはい」

本山 「へぇ~、あんなところに暗室があったんだ」

由紀恵「暗幕で囲っただけの簡単なやつだけどね」

本山 「部長さんって、写真までやってたんっスねぇ」

由紀恵「確か、最初は普通のカメラから始めたって言ってたわ」

本山 「ふ~ん・・・じゃ、由紀恵さん。俺もお先に失礼するっス」

由紀恵「そう? 私はもう少し待ってみるわね」

本山 「連中が戻って来てあれこれ言ってたら、後で教えてくださいよ?」

由紀恵「なぁに? 野次馬根性? 趣味悪いわねぇ」

本山 「うわっ!? 心外だなぁ、これでも心配してるんっスよ~?」

由紀恵「うふふっ、そうなの?」

本山 「だって、ねぇ。どうせ、あれでしょ? 仲が良いほどなんとやらって」

由紀恵「本当にね。そうだといいんだけど」

本山 「じゃ、失礼しや~~っス!」

由紀恵「また明日ね」


  《本山が部室を出て行く》


本山M「本当は俺も待っていたかったんだけどさ。まぁ、天才は何かと忙しいんだよ。
    ってなわけで、後は由紀恵さんから聞いた話なんだけどな。
    いや、さすがは姉御! 人生相談状態になっちまったみたいだぜ」
 
  
  《茜が部室に入ってくる》


茜  「遅れてすみません」

由紀恵「あら、茜ちゃん。今日の撮影は中止よ」

茜  「え!? そうなんですか!?・・・やっぱり、水野さん」

由紀恵「そうね。ちょっとこじれてるみたい」

茜  「私も水野さんに謝ろうと思って、それで捜したんですけど。
    でも、全然見つからなくって」

由紀恵「今、小野君が捜しに行ってるわ。任せておいてあげましょ」

茜  「でも、だったら私も」

由紀恵「また話をこじらせたいの?」

茜  「そんなこと・・・でも、でも私」

由紀恵「あなたはここで待っていればいいの」

茜  「はい」


  《しばし沈黙が続く》


由紀恵「ねぇ、茜ちゃん?」

茜  「はい?」

由紀恵「小野君のこと、好きだったんでしょ?」

茜  「いいえ」

由紀恵「あら? 違った?」

茜  「今でも好きなんです」

由紀恵「そっか・・・辛いわね」

茜  「でも、もう吹っ切れました」

由紀恵「好きなのに?」

茜  「好きだからです」

由紀恵「ふ~ん、強い子ね」

茜  「全然そんなことありません」

由紀恵「水野さんのこと、どう思ってる? 憎い?」

茜  「いいえ! そんなことないです。でも・・・」

由紀恵「でも?」

茜  「すごく羨ましいです。やっぱり」

由紀恵「水野さんに負けたくない?」

茜  「それは・・・でも、水野さんは素敵な人だから」

由紀恵「じゃあ、小野君を想う気持ちだったら負けてない?」

茜  「もちろんです! それだけは絶対に負けません!
    私、ずっと、ずっと見てたんです。入学してからずっと」

由紀恵「それでも吹っ切れるの? これから一緒にやっていける?」

茜  「わかりません。でも、やっていくって決めたから」

由紀恵「そう・・・」

茜  「・・・」

由紀恵「ねぇ、茜ちゃん? あなたがどう思ってるか分からないけど」

茜  「はい?」

由紀恵「隙があったら、小野君とっちゃってもいいのよ?」

茜  「え?」

由紀恵「なんか思い詰めて決めこんじゃってるみたいだから」

茜  「でも、水野さんは先輩の理想の人で」

由紀恵「理想に近ければ近いほど、幻滅が大きいってこともあるわ」

茜  「あの、それって、もしかして財前(ザイゼン)先輩のことですか?」

由紀恵「・・・小野君の気持ちさえ引き寄せることが出来るなら、あなたは彼を奪っちゃっていいの。
    誰もそれを止めることは出来ないわ」

茜  「由紀恵先輩、私の味方してくれるんですか?」

由紀恵「うふふっ、違うわよ。これは敵味方の問題じゃないわ。
    だって、要は小野君の気持ち次第なんだから」

茜  「でも、もしそんなことになったら、水野さんは」

由紀恵「今、あなた辛くないの?」

茜  「・・・辛いです」

由紀恵「でも、それはしょうがないわよね。誰のせいでもないでしょ?」

茜  「そう、でしょうか?」

由紀恵「そうよ。だからたとえ水野さんが悲しむことになってもそれは仕方のないことなの」

茜  「はい」

由紀恵「茜ちゃん。あなたは全然諦める必要なんかないの。
    好きでい続ければ、いつかチャンスが来るかもしれない。
    いつか、彼が振り向いてくれるかもしれない。
    もちろん、あなたがそれまで彼のことを好きでい続けることが出来ればの話、だけどね」

茜  「それで、いいんですか?」

由紀恵「ふふっ、もちろんよ」

茜  「私、絶対にこの気持ちは変わりません」

由紀恵「そう? うふふっ、頑張ってね」


  《由紀恵が椅子から立ち上がり、背伸びをしながら》


由紀恵「ふう・・・そろそろ小野君、戻ってくるんじゃないかな?」

茜  「由紀恵先輩」

由紀恵「なぁに?」

茜  「ありがとうございました」

由紀恵「私はなんにもしてないわよ?」

茜  「これで本当に吹っ切れそうです」

由紀恵「そう、良かったわね。もう、あんなこと言っちゃダメよ?」

茜  「はい。本当にありがとうございました。今日は、もう帰ります」

由紀恵「うん。また明日ね」


 《ドアが開き、真治が部室に帰ってくる》


茜  「あっ」

由紀恵「あら、小野君。どうだったの?」

真治 「いや、ダメです。もう帰っちゃったみたいで・・・あ、茜ちゃん。おはよう」

茜  「おはようございます。あ、でも、今日は撮影しないみたいだから、私帰りますね」

真治 「あ、うん」

由紀恵「部長さんがね、慌てることもないだろうって」

真治 「あ、そうですか」

茜  「じゃあ、失礼します。先輩! 私、もっともっと頑張りますから!」

真治 「あ、うん。よろしく頼むよ。じゃあ、明日」


 《茜が走って部室を去っていく》


真治 「なんか茜ちゃん、元気になったみたいですね」

由紀恵「そうね。もう大丈夫だと思うわ」

真治 「心配してたんです、色々あって」

由紀恵「いろいろ?」

真治 「はい、実はその件で真琴・・・水野さんを怒らせてしまって」

由紀恵「ふ~ん、何があったの?」

真治 「実は、今朝・・・」

由紀恵「うんうん・・・」


 《真治が由紀恵に事の顛末を説明する》


真治 「というわけなんです」

由紀恵「はぁ・・・呆れた人ねぇ~」

真治 「あの、やっぱり僕が間違ってたんでしょうか?」

由紀恵「う~ん、茜ちゃんに対する態度は間違ってないと思うわ。
    っていうかね、それは茜ちゃんの勝ち。仕方ないわね」

真治 「勝ち、ですか? ってことは、僕の負け?」

由紀恵「うふふっ、分からなければいいのよ。
    でもあの子、私がお説教するまでもなかったみたい。うふふっ」

真治 「僕は、どうすれば良かったんでしょう?」

由紀恵「じゃあ、教えてあげる。茜ちゃんとのこと、水野さんには内緒にしておけばよかったの。
    それだけのことよ」

真治 「え? だって、それじゃあ」

由紀恵「小野君。なんでも正しければ良いってもんじゃないのよ?
    人間のすることなんて、善悪はっきり分けることなんて出来ないんだから」

真治 「そういうものですか?」

由紀恵「人の数ほど価値観があるの。それは、映画も同じじゃない?」

真治 「確かに、そういう面もあるかもしれません。でも、僕は」

由紀恵「一つだけ確かなことはね、小野君。君は水野さんを悲しませちゃいけないっていうこと」

真治 「分かっています。けど」

由紀恵「女の子の気持ちって理屈じゃないの。もちろん、間違ったことは注意しなきゃいけないわ。
    でもね、理屈を曲げてでも優しくしてあげなきゃいけない時もあるのよ」

真治 「真琴に同じようなこと言われました」

由紀恵「彼女に幸せでいてほしいでしょ? 笑っててほしいでしょ?」

真治 「ええ! それは本当に! だって、彼女は」

由紀恵「だったら、理屈を曲げてでも、何かを捨ててでも、彼女を守るのよ。
    それは、君自身の幸せのためでもあるんだから」

真治 「僕自身の幸せ?」

由紀恵「彼女にずっと傍に居てほしいでしょ?」

真治 「・・・・・・」

由紀恵「分からなくてもいいわ。水野さんと付き合っているうちに、きっと分かる時が来るから」

真治 「藤原先輩って、凄いですね」

由紀恵「なぁに? 急に?」

真治 「演技が上手いって、きっとそういうことなんですね。
    人の考えていることが分かってるっていうか」

由紀恵「代わりに自分のことはあんまり分からなかったりして、ね」

真治 「僕は、まだまだですね」

由紀恵「いいじゃない。最初は誰でもそうよ。
    まぁ、小野君は人よりちょっと鈍いところ、あるかもしれないけど」

真治 「これから、真琴の家に行ってみます」

由紀恵「そうするといいわ。仲直り出来たら、また撮影始めましょ」

真治 「はい、ありがとうございました!」

由紀恵「どういたしまして。じゃあ、また明日ね」

真治 「あ、そういえば、部長は?」

由紀恵「え? 中田君? あ、ああ、そういえばいないわね。
    もう帰ったんじゃないからしら」

真治 「そうですか。じゃあ、お先に失礼します」

由紀恵「お疲れ様。また明日ね」


  《真治が部室を出て行く》


由紀恵「はぁ・・・なんかカウンセラーみたいなことしてるわね、私。
    ちょっと羨ましいかな、あの子達。青春しちゃって」
    って私、なにオバサンみたいなこと言ってんだろう」

中田 「藤原さんもずいぶんと理解出来ないことを言うな。
    一つや二つ歳が違うからといって、さほどのこともないだろうに」

由紀恵「!? 中田君!? 何してたの!?」

中田 「いや、なんだか出るに出られなくなってしまってな。汗だくになってしまった」

由紀恵「うふふっ、おかしな人」

中田 「よくそう言われるのだが、どうしてなんだろうな?」

由紀恵「うふふっ、さぁ? どうしてかしら?」

中田 「うん、訊いているのは俺なんだが・・・
    ともあれ、事を丸く収めてくれたようだな、ありがとう」

由紀恵「どうかしら? 後はあの子達次第だと思うけど・・・
    え? 中田君、何がどうなってるのか分かってるの?」

中田 「うん、よくは分からんが、そのまま映画になりそうな感じだ。一つ撮ってみるか」

由紀恵「ちょ、ちょっとやめてよ。中田君」

中田 「うん、冗談だ」

由紀恵「もう、びっくりさせないでよ。
    中田君の言うことって、冗談なのか本気なのか全然分からないんだもの」

中田 「うん、それもよく言われる」

由紀恵「うふふっ、本当に、おかしな人ね」

中田 「ん?」

由紀恵「うふふっ、うふふふふふっ」



  《次回予告》



本山 「さ~て、次回はいよいよ最終回っスね。由紀恵さん」

由紀恵「そうね。あの二人、うまくいくといいんだけど」

本山 「あのヘタレの真治が真琴ちゃんとうまく仲直り出来ますかね~?」

中田 「アイツはああ見えて、やるときはやる男だ」

由紀恵「中田君!?」

本山 「ちょっと、部長さん! 俺と由紀恵さんのコーナーにいきなり入ってこないでくださいよ~」

中田 「いつも二人で楽しそうにしていたからな。邪魔しに来た」

本山 「邪魔って・・・」

由紀恵「ふふふっ、中田君おかしすぎ」

本山 「あ~、俺と由紀恵さんのコーナーが~」

中田 「次回『君の瞳に恋してる』」

由紀恵と本山「お、お楽しみに!」





scene.3    終