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台本置き場

euforia~幸せの国~ アナザーストーリー 温泉編

2016-04-28 03:51:37 | 台本
euforia~幸せの国~ アナザーストーリー 温泉編

【登場人物一覧】

・ハイネ・P・バーン♂ … 剣士。20歳。陽気で楽天家。常に腹が減っている。一応主人公。

・李 浪風(リ・ロウフウ)♂ … 呪術師。17歳。弱気でネガティブ。ツッコミ気質。

・緋兎(ヒト)♀ … 見た目年齢24歳。人に化けて暮らしている妖孤。無駄に色気がある。

・フレーズ・グラス♀ … 神霊族。15歳(神霊族年齢)。大人しいが心に一本、芯がある聡い少女。
             穏やかで優しい性格。

・コウガ・アルディー♂ … 半魔獣。26歳。普段は身の丈ほどの巨大な大剣を自在に操る。
              本気になると、獰猛な獅子の姿で戦う。


・宿の主人 ♂or♀ … 温泉宿『やまびこ亭』の主人。突然起きた異変に頭を悩ませている。

・カベルネ・ロートレック ♂or♀ … 

名家ロートレック家の跡取り。欲しいものはなんでも手に入れないと気がすまないタイプ。
(オカマで演じていただいても、女で演じていただいてもどちらでも構いません)


原作はこちらを参照願います
≪声劇台本≫euforia~幸せの国~≪連載≫


【キャスト一覧】

ハイネ♂:
浪風♂:
緋兎♀:
フレーズ♀:
コウガ♂:
カベルネ♂♀:
ナレ&宿屋の主人&モグラ(ポロン)♂♀:


【本編】


ナレ  「ここは大陸、euforia。四つの国がそれぞれ四方を統治している。
     東を妖(アヤカシ)ノ国、西を人(ヒト)ノ国、
     南を魔(マ)ノ国、そして北を神(カミ)ノ国が治めている。
     今でこそ、穏やかに時が流れているが、かつては人が荒れ、地が荒れ、空が荒れ、
     争いが止まなかった大陸であった。
     そんな妖ノ国でハイネ一行は、とある目的を果たすためにひたすら山道を歩いていた」



ハイネ 「お~い、浪風。本当にこの道で合ってんのか?」

  地図を広げながら浪風が答える

浪風  「えぇ、確かにこの道で合ってるはずなんですけど」

緋兎  「なんかこの景色、前にも見たような気がするのよねぇ」

フレーズ「そろそろ日も暮れかけてきましたし、夜までには到着出来るといいのですが」

コウガ 「道、間違えたんじゃねぇのか?」

浪風  「や、やだなぁコウガさん。ま、間違えてなんかないですよ~」(ちょっと不安になる)

ハイネ 「ほう・・・」

  ゆっくりと浪風に迫るハイネ

浪風  「え? ハ、ハイネさん?」

  あとずさりする浪風

ハイネ 「『この近くに温泉が湧いてる村があるみたいなんですよ。皆で行きましょうよ!』
     って言ったのは、どこの誰だれだったかな~?」

浪風  「ハイネさんだって『マジか!? 温泉温泉!行く行く~!』
     って言ってたじゃないですか!」

ハイネ 「まさかこんな遠いとは思わなかったんだよ。で、いつ到着するのかな~?」

浪風  「そ、それは~・・・あっ、あれ!あの村ですよ!」

緋兎  「あら、ホントに村があるわ」

フレーズ「やっと到着したみたいですね」

浪風  「ささっ、行きましょう! 皆さん」


  村に入るハイネ一行


ハイネ 「とりあえず、宿探そうぜ。早く飯食って温泉に入りてぇよ」

コウガ 「まったくだ」

浪風  「このグラート村の有名な『やまびこ亭』は、温泉はもちろんですが
     山菜を使った創作料理が自慢なんですよ」

ハイネ 「山菜料理か~、早く食いてぇな~」

緋兎  「・・・ねぇ、何か村の様子がおかしくない?」(何か慌ただしい雰囲気に気づいて)

フレーズ「そうですね。何かあったのでしょうか?」

ハイネ 「とりあえず、宿まで行ってみようぜ。話はそれからだ」


  やまびこ亭に入るハイネ一行


宿の主人「いらっしゃい」(元気なく)

浪風  「すいません。今日この宿に泊まりたいんですけど」

宿の主人「あぁ、泊まるだけなら別に構わないんだが。
     悪いけど温泉には入れんよ? それでもいいかい?」

ハイネ 「おい、どういうことだ?」

宿の主人「なぜかわからないんだが、今日の昼くらいから急に温泉が止まってしまってね。
     こっちも大変なんだよ」

浪風  「今までにこんなことは無かったんですか?」

宿の主人「いや、初めてだよ。温泉が止まるなんて。
     だから村中大騒ぎで・・・どうしたらいいのか・・・」


  ため息をつき、困惑する宿の主人


フレーズ「困りましたね。このままでは、せっかくの温泉に入れませんね」

緋兎  「何かいい方法はないかしら」


  コウガがスっと宿の主人の前に出てくる


コウガ 「おい、源泉はどこにある」

宿の主人「え? あぁ、源泉なら村からもう少し北に行った洞窟の奥にあるんだが。
     あそこは今、魔物が出るようになって一般人は近づけないんだよ」

ハイネ 「おい、コウガ。まさか俺たちで調査しに行くっていうじゃねぇだろうな?」

コウガ 「そうするしかないだろう」

ハイネ 「あのなぁ、ここまでどれだけ歩いてきたと思ってんだよ! 3時間だぞ! 3時間!
     もう今日は適当に安い宿に泊まって、明日また考えようぜ?」

宿の主人「ああ~、この村にとって温泉が出ないことは死活問題なんだよ。
     アンタ達、見たところ強そうだし。調査に行ってくれないか? 頼むよ!」

ハイネ 「あのなぁ、俺達はボランティアじゃねぇんだよ。他を当たってくれ」


  そう言って、宿から出ようとするハイネ


浪風  「ちょっと、ハイネさん!」

宿の主人「もし温泉が出るようになったら、特別にタダで泊まってくれていいから!」


  ハイネがピクっと動きを止める


ハイネ 「・・・タダ?」

宿の主人「料理も好きなだけ食べてくれて構わない!」

ハイネ 「好きなだけ・・・」

  バックして一瞬で宿の主人の前に立つハイネ

ハイネ 「それは本当か? おっさん(おばさん)」

宿の主人「あ、ああ」(ハイネのスピードに驚きながら)

浪風  「ハ、ハイネさん?」

ハイネ 「さあ、みんな! この困っているご主人のために温泉の調査へと参ろうではないか!」

緋兎  「はぁ、現金なやつ」(呆れながら)

コウガ 「こいつの頭の中は食べ物のことしかないのか?」

フレーズ「あはははっ」(苦笑い)

ハイネ 「何をグズグズしているんだ! 行くぞ! 
     山菜料理~♪ 食べ放題~♪」(後半はテキトーに歌いながら)

浪風  「ハイネさん! 待ってくださいよ~」



ナレ  「ハイネと浪風に続いて、緋兎とフレーズとコウガも源泉の洞窟へと向かうのであった」



ハイネ 「おりゃあ!」(魔物を攻撃)

コウガ 「はっ!」(魔物を攻撃)

緋兎  「ふぅ~、これじゃあキリがないわね」

フレーズ「随分奥の方まで来ましたが、今のところ魔物以外は変わった様子はありませんね」

ハイネ 「でも、何か原因はあるはずだろ?」

緋兎  「そうだと思うんだけど」


  遠くの方で何か音が聞こえてくる


浪風  「? あれ? 何か変な音が聞こえてきませんか?」

コウガ 「確かに」

フレーズ「何の音でしょうか?」

緋兎  「機械音っぽいけど」

ハイネ 「とにかく音の方へ行ってみるか」


  奥の方へ進むと、今までで一番広い場所に出る


浪風  「うわ~」

緋兎  「奥にこんな広い場所があったなんて」

カベルネ「オーホッホッホッ! もう少しで完成するのね! 今からと~~~っても楽しみだわ!」


  そう甲高い声の上げた者の周辺には大きな機械とパイプが連なっていて、
  近くで何人もの黒服の男達が作業をしている


ハイネ 「おい浪風。なんだアレは?」

浪風  「知りませんよ!?」

カベルネ「あ~ら、あなた達。何か御用?」

フレーズ「あなたはここで一体何をしているんですか?」

カベルネ「うふふっ。よくぞ訊いてくれました! 私の名前はカベルネ・ロートレック!」

ハイネ 「いや、そんなこと訊いてねえし」

カベルネ「私の別荘がこの山の裏側にあるのですけど、
     どうしても温泉に入りたくなってしまいまして。
     そしたら、この近くに温泉があるというではありませんか!
     ですから、この温泉を私の別荘までパイプで運んでしまおうと思いついたのよ!」

緋兎  「ということは、温泉を止めた犯人はあなただったのね」

浪風  「そんなことしたら、グラート村まで温泉が届かなくなってしまうじゃないですか!」

カベルネ「そんなこと知りませんわ~。この温泉は美容効果もあるそうですし、
     私の美貌のために我慢してもらうしかないですわね。オーホッホッホッ!!」

ハイネ 「おい、シャルドネ」

カベルネ「カベルネよ!!」

ハイネ 「なんでもいいから、さっさとその機械を止めろ!」

カベルネ「あら? このカベルネ・ロートレック様の邪魔をするおつもりかしら?」

ハイネ 「だったらどうするんだ?」

カベルネ「仕方ありませんわね。お前たち! このゴミどもを消しておしまい!」


  カベルネがそう言い放つと、作業をしていた十数人の黒服の男達が
  一斉に武器を手にこちらに襲ってくる


緋兎  「ちょ、ちょっと!」

ハイネ 「めんどくせぇ! 一気に蹴散らしてやるぜ!」

コウガ 「腕がなるぜ。はあああっ!」(大剣を振り回す)

緋兎  「仕方ないわね。刃蝶・時雨の舞!(ハチョウ・シグレノマイ)」

フレーズ「氷華(ヒョウカ)の精霊よ。
     白皙(ハクセキ)の礫(ツブテ)となり、解き放て! フロスト・ヘイル!」
     (氷の粒が弾丸のように無数に飛び散る)


  黒服達はハイネ達の猛攻に耐え切れず、あっけなく決着がつく


カベルネ「ああっ・・・そんな・・・私の精鋭達が・・・」

ハイネ 「あっけなかったな。流石に戦闘のプロには勝てねぇってか」

カベルネ「許さないわ・・・こうなったら、出てらっしゃい! わが下僕よ!」


  カベルネの声に反応し、ドーン、ドーンという足音が聞こえてくる。
  何事かと辺りを見回すハイネ一同


浪風  「ハ、ハイネさん。う、後ろ・・・」

ハイネ 「な、なんだコイツは!?」

緋兎  「モグラね」

フレーズ「モグラですね」

コウガ 「モグラだな」

ハイネ 「んなもん、見ればわかるわ!!」


  そこには3mはあろうかと思うほどの巨大なモグラが立っていた


カベルネ「オーホッホッホッホッ! モグラのポロンちゃんよ!
     さあ、ポロンちゃん。やっておしまい!」

モグラ 「キュオオオオオオオオオオ!!!!」


  モグラは鋭い爪を振り回し、襲ってくる


浪風  「わああああ!!! ハイネさぁぁぁん!!」

ハイネ 「みんな! 散れ!」

  ハイネの声に反応し各々がモグラの周りに散る。
  少しの沈黙後、意を決してコウガが斬りかかる

コウガ 「はあああっ!!」

  しかし、爪で防がれる

コウガ 「ぐっ! ぐううう!」

  必死に押し込むが、もう片方の爪で弾き飛ばされる

コウガ 「ぐはあっ!」

浪風  「コウガさん!」

緋兎  「今度はこっちよ! 刃蝶!蜘蛛(ハチョウ・クモ)の・・・きゃああああ!」  

フレーズ「緋兎さん!」


  緋兎もモグラが反転した際に爪で吹っ飛ばされる。緋兎の傍へフレーズが駆け寄る


フレーズ「深海の精霊よ。この者に癒しの加護を。アクアヒール!」

ハイネ 「こいつ、図体の割にかなり素早いな。ちくしょう、どうすれば・・・」

カベルネ「オーホッホッホッ!! ポロンちゃんは無敵よ!! さぁ、止めを刺しておしまい!!」

モグラ 「キュオオオ!!」


  モグラが緋兎とフレーズの元へ走り出す


フレーズ「!?」

ハイネ 「おいモグラ! てめぇの相手はこっちだ!」

  手元にあった石をモグラに投げつけて注意を引く

モグラ 「キュオ!キュオオオオ!」

  反転して爪を振り回しながらハイネに突進するモグラ

ハイネ 「よっ! とっ! はっ!」

  モグラの攻撃を何とかギリギリで避け続ける

ハイネ(M)「ちっ、このままじゃやられちまう。それにしてもこいつ、こんな薄暗い洞窟の中で
      よくこんな動きを・・・洞窟・・・そうか!」


  攻撃を避けきったのを見計らって浪風が近づく


浪風  「大丈夫でしたか!? ハイネさん!」

ハイネ 「浪風すまん。囮(オトリ)役頼むわ」

浪風  「へ?」


  ドンと背中押されて、モグラ前に突き出される浪風


浪風  「わああああああああああ!!」


  必死に逃げ回る浪風


ハイネ 「よし。今のうちに・・・おい、みんな無事か!?」

コウガ 「ああ、なんとか、な」

緋兎  「フレーズのおかげで、ね」

フレーズ「それより、浪風さんが」

ハイネ 「あいつは大丈夫だ。それより良いことを思いついたんだ。試してみる価値はあると思うぜ」

  場面変わって

カベルネ「きぃぃぃぃ!! ポロンちゃん! さっさとやっておしまい!」

モグラ 「キュオキュオキュオオオオオ!!」

浪風  「ハイネさ~ん! 助けてくださ~い!」

  場面戻って

緋兎  「なるほど。やってみる価値はありそうね」

コウガ 「そうだな」

フレーズ「やりましょう!」

ハイネ 「よし。いくぜ! みんな!」


  ヘトヘトになった浪風がこちらに戻ってくる


浪風  「はぁ、はぁ・・・もうダメだ。くそっ、僕だってやれば出来るんだ!
     彼の者を捕らえよ!風神来召(フウジンライショウ)!!」


  浪風の声だけが洞窟にこだまする


浪風  「やっぱりダメだ~!」


  浪風の呪術が失敗したのを好機にモグラの爪が襲いかかる


浪風  「!?」

フレーズ「グラスシールド!」


  間一髪、フレーズの氷の盾が爪を防ぐ


ハイネ 「こっちだモグラ! 紅(アカ)き焔(ホムラ)を紡(ツム)いで
     わが前に光を示せ! シャイニング!」


  モグラの眼前で大きな閃光。視覚を奪われモグラが目を押さえ悶絶する。


ハイネ 「今だ!」

緋兎  「緋蓮奏糸(ヒレンソウシ)流! 奥義! 大刃蝶(ダイハチョウ)・鳳凰(ホウオウ)の舞!」
     (刃蝶が集まり、鳳凰の形になって敵に向かっていく)

コウガ 「いくぞ! はぁぁぁあああ!! 獅子豪波斬(シシゴウハザン)!!!」
     (獅子の姿に変わり、両爪による一撃)

ハイネ 「止めだ! 紅き焔を纏いて、唸れ聖剣! クリムゾン・バーニング・デフェーール!!!」
     (飛び上がり、頭上から振り下ろす一撃)

モグラ 「キュオオオォォォォ・・・」(ドーンと大きな音を立てて倒れる)

カベルネ「そ、そんな・・・嘘よ・・・私のポロンちゃんが・・・」

ハイネ 「はぁ、はぁ、今度こそ終わりだ。シャベルネ」

カベルネ「カベルネよ!!」

ハイネ 「転がってる黒服の連中と機械を持ってさっさと消えな」

カベルネ「これほどの強さ・・・あなた一体何者なの?」

ハイネ 「俺はハイネ。ハイネ・ペイルド・バーンだ」

カベルネ「ハイネ・・・ハイネね。覚えておくわ。
     さあ、あんたたち起きなさい! ひとまず引き上げよ!」


  黒服連中がカベルネに蹴り起こされて、撤退の準備にとりかかる


カベルネ「ハイネ! 覚えておきなさい! 今回は諦めますが次に私の邪魔をした時には、
     けちょんけちょんにしてさしあげますわ~~~~!!!
     オーホッホッホッホッホッ!!!!!」


  カベルネ達は一目散にその場から逃げ去る


ハイネ 「はぁ・・・結局なんだったんだ、アイツらは」

浪風  「ハイネさん!?」


  モグラがゆっくりと起き上がる


ハイネ 「こいつ、まだ懲りねぇのか。仕方ねぇ。今度こそ、止めを」

コウガ 「待て! 何か言いたがってる・・・ふむ、そうだったのか・・・わかった」

フレーズ「コウガさんって、動物の言葉が解るんですか?」

コウガ 「全部じゃないがな」

ハイネ 「だったら、なんで最初っからその能力を使ってくれなかったんだよ!?」

コウガ 「初めて対峙した時は理性を失っていたようだったからな」

浪風  「で、なんて言ってるんですか?」

コウガ 「さっきの連中に変な機械を取り付けられて、操られていたそうだ」

緋兎  「それがさっきの私たちの攻撃で壊れたの?」

コウガ 「そういうことだな」

ハイネ 「じゃあ、コイツ自体は悪くないってことだよな。
     フレーズ、コイツの傷を治してやってくれねぇか?」

フレーズ「はい。深海の精霊よ。この者に癒しの加護を。アクアヒール」

浪風  「それにしてもハイネさん! 酷いじゃないですか! 僕を囮にするなんて!」

ハイネ 「あの時は、ああするしかなかったんだよ~。すまん浪風。このとおりだ」

浪風  「もう・・・」

緋兎  「問題も解決したし、そろそろ村に戻りましょうか」

コウガ 「そうだな」

フレーズ「はい。これで大丈夫ですよ。モグラさんもお元気で」

ハイネ 「じゃあな~。またさっきみたいな連中に操られんじゃねぇぞ~!」

モグラ 「キュオキュオ~~~♪」(大きく手を振りハイネ達を見送る)



ナレ  「そしてハイネ一行はグラート村に戻り、
     村人達の歓迎を受けて、待望の温泉に入るのであった」



ハイネ 「ひゃっほう! 露天風呂とは粋じゃねぇか! 一番風呂いただき~!」(温泉に飛び込む)

浪風  「もうハイネさん! 子供じゃないんですから」

ハイネ 「いいじゃねぇか。今夜は俺たちの貸切なんだからよ」

コウガ 「いい湯だ。体に染み渡るぜ」

浪風  「でしょう? なんてったって、ここは僕が選んだ源泉かけ流しの温泉ですからね。
     常に溢れる湯量と同量の湯が注がれることによって」

ハイネ 「あーはいはい、わかったわかった」

浪風  「ちょっと、ハイネさ~ん」


  垣根の向こうの女湯の方で緋兎とフレーズの声が聞こえてくる


緋兎  「うわぁ、見て見てフレーズ。露天風呂よ!」

フレーズ「広くて、素敵ですね!」

緋兎  「入ろ入ろ」

フレーズ「はい」

緋色  「はぁ~、いいお湯。生き返るわ~」

フレーズ「本当ですね。今日の疲れが一気にとれそうです」

緋兎  「・・・ねぇ? フレーズ~?」

フレーズ「はい? きゃ」(緋兎に抱きつかれる)

緋兎  「ああん、フレーズの肌ってきめ細かくてスベスベね~♪ ずっとこうしていたいわ~♪」

フレーズ「ちょ、ちょっと。や、やめてくだ、さい。緋兎、さん」

緋兎  「おやおや~? フレーズ、いいモノをお持ちで♪」

フレーズ「きゃあ!? ひ、緋兎さん! そ、そこは、ダ、ダメ、です、ああん。
     傷口、開い、ちゃいます、よ?」

緋兎  「大丈夫大丈夫。こうしていれば治るから~♪」

フレーズ「も、もう! 緋兎さんっば~」


  その後も続く二人のイチャつく声に黙り込む男三人


ハイネ 「・・・・・・」

コウガ 「・・・・・・」

浪風  「・・・・・・」

ハイネ 「そろそろいくか」

コウガ 「そうだな」

浪風  「え? ハイネさん? コウガさん?」

ハイネ 「温泉! 露天風呂! 女湯! とくれば、覗き以外あるまい!」

浪風  「ダメですよ! 犯罪じゃないですか!?」

ハイネ 「覗き。それは男の浪漫なのだ! 何人たりとも止めることはできん!
     なぁに、ちょっっっと覗くだけだよ」

浪風  「で、でも・・・」

ハイネ 「浪風お前・・・緋兎やフレーズの裸、見たくないのか?」(後半は耳元で囁くように)

浪風  「そ、そ、それは、その・・・」(想像して赤面する)

ハイネ 「よし! 隊長に続け! 行くぞコウガ!」

コウガ 「おお」

浪風  「ハイネさん!」

ハイネ 「よっ、いっ、しょっと。もう、少し、で」(垣根を登る)

浪風  「やっぱり覗きなんてダメですよ! ハイネさ~~~ん!!」

ハイネ 「バ、バカ! 揺らすな! 揺らすなって! 浪風!!
     あっ! あっ! あああぁぁぁ!!!」


  垣根が女湯側に倒れて、盛大に水しぶきが立つ


ハイネ 「いてててててて・・・浪風のやつ。おもいっきり揺らしやがって~。何考えて」


  ふと見上げると、タオルを体に巻いた緋兎とフレーズがハイネの前に仁王立ちしている


緋兎  「ハイネ、こんなところで会うなんて。と~~~っても奇遇ねぇ?」(黒い感じで)

フレーズ「ハイネさん。こんなところで一体何をなさっているんですか?」(同じく黒い感じで)

ハイネ 「あっ、いや、これはだな。色々と深~~~い事情があってだな~。
     はっ!? コウガ!? 浪風!? あれ!? あれ!?」

緋兎  「言い訳は後で、た~~~~~~っぷりと聞かせてもらおうかしら~?」
     (ポキポキと指を鳴らしながら)

フレーズ「なぜハイネさんが女湯にいらっしゃるのかを」

ハイネ 「そ、それは、その・・・・・・じ、実は、ろ、露天風呂は混浴だったんだよ!
     あはははっ、あははっ、な、なんちゃって」

緋兎とフレーズ「この変態覗き魔ぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!!!!」


  緋兎とフレーズ2人のサッカーボールキックがハイネに炸裂する


ハイネ 「だっひゃあああああああぁぁぁぁぁぁ」(遥か彼方まで飛ばされ、星になって消える)


  場面変わって食堂


緋兎  「もぐもぐ・・・う~ん! 美味し~い! この『たらの芽の天ぷら』!
     やわらかくって甘くって」

フレーズ「『こごみのごま和え』もごまの風味がこごみとよく合って、とっても美味しいですよ」

緋兎  「この朴葉(ホウバ)で巻いた山菜ご飯のおにぎりも、
     朴葉の香りが立っていて、何個でもいけちゃうわ!」

フレーズ「こちらの山菜のお味噌汁も滋味(ジミ)溢れる味わいで、
     シャキシャキした月山筍(ガッサンダケ)の歯ごたえも心地いいですね」


  山菜料理を絶賛しながら食べる緋兎とフレーズ。
  今まで無言のまま食べてきた浪風がついに口を開く


浪風  「あ、あの~? 緋兎さん?」

緋兎  「モグモグ・・・ゴクッ。なぁに? 浪風?」(一通り食べ終えてからセリフ)

浪風  「ハ、ハイネさんの姿が見えないんですけど?」


  浪風の言葉に緋兎とフレーズの動きが一瞬ピタッと止まる。
  が、すぐに何事もなかったかのように食事を再開する


緋兎  「さぁ~、どこに行ったのかしらね? フレーズ、知ってる?」(笑顔のまま黒い感じで)

フレーズ「いいえ。知りませんわ」(笑顔のまま黒い感じで)

緋兎  「食堂に来ない方が悪いのよ」

フレーズ「あっ、もしかしたら。今頃オオカミの餌になっているかもしれませんね」

緋兎  「もうやだっ! フレーズったら! あははははは」

フレーズ「うふふふっ」

浪風  「・・・・・・」(だいたいの予想がつく浪風)

コウガ(M)「ハイネ。すまん。無事でいろよ」


  場面変わって山奥 オオカミの遠吠えが聞こえる


ハイネ 「へ~~~~~っくしゅん!! うううっ、さみ~~。ここはどこだぁ?
     コウガ~! 浪風~! 誰でもいいから早く助けてくれ~~~!!
     へ~~~~~っくしゅん!!」




【fin】





GREEN ~秋空のスクリーン~ scene.2「シーズ・ソー・ラブリー」

2016-04-28 03:35:07 | 台本

GREEN ~秋空のスクリーン~ scene.2「シーズ・ソー・ラブリー」


【キャスト一覧】

小野 真治 ♂:
水野 真琴 ♀:
桜井 茜  ♀:
本山 浩一 ♂:

藤原 由紀恵♀:

※由紀恵は次回予告のみ出演。由紀恵は、真琴or茜が兼役でも可能。



詳細なキャラ説明は一話を参照してください。
GREEN ~秋空のスクリーン~ scene.1「さよならゲーム」


【GREEN ~秋空のスクリーン~ 全4話】

GREEN ~秋空のスクリーン~ scene.2「シーズ・ソー・ラブリー」
GREEN ~秋空のスクリーン~ scene.3「好きと言えなくて」
GREEN ~秋空のスクリーン~ scene.4「君の瞳に恋してる」




【本編】


本山M「ウッス! 俺、天才本山。将来のアカデミー賞音楽家だ。
    修行のためにチンケな映画部の撮影に付き合ってるわけだけどさぁ・・・
    ちょっとばかし困ったことになっちまったんだ。
    あ~つっても、俺が困ってるわけじゃないぜ。困ってるのは真治の奴。
    事の起こりは、女優の真琴ちゃんがNGを出したこと、かな。
    この真琴ちゃんってのがなかなか可愛い子なんだけど、
    何をトチ狂ったか真治の奴と付き合っててさ、NG出した後、
    真治とイチャイチャし始めちゃって、これを見ていた茜ちゃん、
    この美少女がまた真治に惚れてるんだが、その茜ちゃんが怒り出しちゃってね。
    そこで真治が茜ちゃんを庇ったもんだから
    今度は真琴ちゃんがへそ曲げちゃったってわけ・・・
    さてと。翌朝、部室に顔を出したのは真治と茜ちゃんの二人っきり。
    へっへ~、おあつらえ向きな状況だね~。ちょっと覗いてみようぜ」


  《タイトルコール》

茜M 「GREEN ~秋空のスクリーン~ 第2話『シーズ・ソー・ラブリー』」


  《早朝。映画部の部室に真治が一人。茜が入ってくる。》


茜  「おはようございます」

真治 「あっ、おはよう、昨日は」

茜  「昨日は、どうもすみませんでした」

真治 「いや、僕らが悪かったんだ。茜ちゃんに苦労をかけてるのを忘れて・・・」

茜  「ダメですね、私。映画部のために頑張るって決めたのに・・・
    先輩のこと、もう吹っ切ったつもりだったのに・・・」

真治 「茜ちゃん、ごめん」

茜  「いいえ、悪いのは私です。水野さんだって好きでNGを出してるわけじゃないのに。
    あんな言い方してしまって」

真治 「いや、だけど」

茜  「先輩、今日も頑張りましょう。
    あっ、広角の高バージョンって、どこに置いてありましたっけ?」

真治 「え? ああ、そこの棚の・・・うん、そう、そこ」

茜  「あっ、ありました。これも拭いておかないと」


  《しばらく間が空く》


茜  「ねぇ、先輩?」

真治 「うん?」

茜  「私、本当に本当に映画部のことが好きなんです」

真治 「うん、わかってる」

茜  「私、先輩のことが好きで、夢中で追いかけて、先輩の役に立ちたいってそればかりで。
    本当は映画のことなんかどうでもいいって、最初は思ってたんです」

真治 「そうなんだ」

茜  「でも、やっぱりそうじゃなかった」

真治 「ん?」

茜  「私、先輩が監督した『portrait』(ポートレート)のお手伝いを投げ出しちゃった時
    完成なんかしなければいいって、そう思ってたんです。
    だって、私がいないのに映画が完成しちゃったら悔しいじゃないですか。
    私が一生懸命お手伝いしていたのに」

真治 「いや、あの映画は茜ちゃんがいなければ完成しなかったよ」

茜  「先輩、私より水野さんを選んだこと後悔すればいいんだって、そう思ってた」

真治 「茜ちゃん」

茜  「でも、先輩が完成したよって私の留守電に入れてくれたのを聞いて、
    すごく嬉しかったんです。
    見たくて見たくてしょうがなくなっちゃったんです。
    あのシーンは、どんな風になったんだろう。
    あのシーンは、どのテイクを採用したんだろうって」

真治 「うん」

茜  「それでこっそり観に行って、なんだか泣けちゃって、体育館で一人で大泣きして
    それで分かったんです。ああ、私もやっぱり映画が好きなんだなぁって」

真治 「そう」

茜  「私、頑張ります! 水野さんにも謝ります」

真治 「ありがとう」

茜  「それで、先輩。水野さんとは、仲直り出来たんですか?」

真治 「いや、それが・・・」

茜  「そうですか・・・すみません、先輩。私のせいで・・・」

真治 「いや、茜ちゃんが謝ることじゃないよ」

茜  「先輩って、良い人ですよね」

真治 「え? 別に、そんなことないと思うけど」

茜  「良い人過ぎて、私・・・それに水野さんって本当に素敵な人ですよね。
    明るくって、こだわりがなくて、演技だって上手だし・・・
    先輩とは本当にお似合いだと思います」

真治 「そう、かな?」

茜  「私って大人し過ぎるから、水野さんみたいな人って、憧れなんです。すごく羨ましいんです」

真治 「いや、茜ちゃんにも良いところはいっぱいあるよ。
    例えば。お裁縫。ほら、前に人形劇用に作ってくれた人形。
    すごく良い出来だって、水野さん羨ましがってたじゃないか」

茜  「・・・優しいんですね」

真治 「だから、違うよ」

茜  「ねぇ、先輩?」

真治 「何?」

茜  「もし、もしもですよ。水野さんに出会うよりも前に私が先輩に告白してたら、
    先輩、私と付き合ってくれましたか?」

真治 「え・・・それは」

茜  「や、やっぱりいいです! 答えないでください。
    うん・・・なんて言われたら、余計に悲しくなっちゃうから」


  《しばらく間が空く》


茜  「先輩・・・」

真治 「茜ちゃん?」

茜  「先輩、もう一度だけ。本当にもう一度だけですから。私に・・・キス・・・してください」

真治 「茜ちゃん・・・ダメだよ、それはダメだ」

茜  「お願いします。先輩のこと忘れるため、ううん、そうじゃなくて・・・
    きちんと思い出にするために」

真治 「茜ちゃん。落ち着いて」

茜  「いえ。私、落ち着いてます。前、先輩に迫った時は私どうかしてました。
    でも、今はそうじゃないんです。私なりに考えて、本当にそうしてほしいって思ったんです。
    そうした方がいいと思ったんです! 先輩のこと、吹っ切るために」

真治 「ダメだよ、茜ちゃん」

茜  「どうしてですか? 一度だけでいいんです」

真治 「無責任なことはしたくないんだ。僕は茜ちゃんのために生きることは出来ないから。
    そんな器用じゃないから」

茜  「先輩、私のこと、嫌いなんですか?」

真治 「嫌いじゃないさ。いや、好きだよ。大事な人だ」

茜  「映画部員としてですか? それとも、後輩として?」

真治 「そうだね。そして、友達としても」

茜  「でも、このままじゃ私・・・先輩のこと諦められません」

真治 「だからって」

茜  「先輩、私のこと女の子として見られないんですか?
    女の子としての魅力、私には全然ありませんか?」

真治 「いや、そんなことはないよ。茜ちゃんは可愛いと思うよ」

茜  「もう一度言ってください」

真治 「え?」

茜  「可愛いって、もう一度」

真治 「茜ちゃんは可愛いよ。すごく魅力的なんだと思う。
    僕なんかじゃなくて、もっといい人がいくらでも見つかるさ」

茜  「私は、先輩が一番いいのに」

真治 「・・・・・・」

茜  「ごめんなさい、先輩を困らせるつもりはないんです」

真治 「うん、わかってる」

茜  「でも、私、なんだか自信無くしちゃいそうで・・・
    このまま続けていけるのか、不安になってきちゃって」

真治 「それは困るよ。茜ちゃんは映画部に無くてはならない人だ」

茜  「でも、水野さんや由紀恵先輩みたいな、華やかで素敵な人達に囲まれて、
    地味な雑用ばかりしていて・・・
    私ってなんなんだろうなって。時々、そう思っちゃうんです」

真治 「映画は役者や監督だけで作れるものじゃないよ。
    茜ちゃんみたいな頑張り屋さんが支えてくれるからこそ作ることが出来るんだ。
    茜ちゃんのアイデアに助けられたことだって一度や二度じゃない」

茜  「それはいいんです。私、自分の仕事が好きですから・・・でも・・・」

真治 「でも?」

茜  「先輩からちょっとだけ、勇気と自信をもらいたいんです」

真治 「わかった。だけど、僕はどうすればいい?」

茜  「だから・・・キス・・・してください」

真治 「・・・・・・」

茜  「茜は可愛いよって、優しくキスしてください」

真治 「・・・」

茜  「本当に、本当に一度だけでいいんです!
    でも、うんと、うんと優しく。一生忘れないくらい」

真治 「茜ちゃん・・・それは」

茜  「お願いします」

真治 「茜ちゃん」

茜  「お願いします」

真治 「・・・」

茜  「お願いします」

真治 「わかったよ、茜ちゃん。本当にそれでいいんだね?」

茜  「はい」

真治 「茜ちゃん」

茜  「先輩」

真治 「茜ちゃん、君は可愛いよ。それにすごくいい子だ。自信を持って」

茜  「あっ」


  《真治が茜のおでこにキスをする》


真治 「これでいいかな?」

茜  「・・・おでこは嫌です。先輩、ちゃんと唇に」

真治 「茜ちゃん、それはダメだよ。これが僕の精一杯の」

茜  「嫌です! 先輩! 先輩!」

真治 「あっ、こっ、こら!?」


  《茜が無理やり真治の唇にキスをする》


真治 「ねぇ、茜ちゃん」

茜  「はい・・・」

真治 「正直に言うとね。僕だって茜ちゃんが思ってくれるのはすごく嬉しいし。
    茜ちゃんが僕を思うその気持ちもよく分かっているつもりだよ」

茜  「はい・・・」

真治 「茜ちゃんがどうして僕を選んだのかは分からないけど。
    茜ちゃんにとって僕が一番良いと思うように、
    僕にとって水野さんは、ずっと夢見ていた理想の女性なんだよ」

茜  「はい・・・」

真治 「茜ちゃんと水野さんは比べることなんて出来ない。
    だけど、一つだけ分かっていることがあるよ」

茜  「え?」

真治 「それは、今僕が一番幸せを感じるのは・・・水野さんがそばにいること。
    ただそれだけなんだ」

茜  「すみません、先輩」

真治 「うん・・・」

茜  「あっ、先輩、怪我はありませんか?」

真治 「・・・うん、大丈夫」

茜  「えへっ、私って肝心なとこで失敗しちゃうんだよな」

真治 「茜ちゃん・・・ごめん」


SE:チャイムの音


茜  「先輩、これからもよろしくお願いします。私、頑張りますから。
    一生懸命、先輩のお手伝いをさせてもらいますから」

真治 「う、うん。こちらこそよろしく。もう茜ちゃん抜きの映画部なんて考えられないんだ」

茜  「うふふっ」

真治 「ははっ」

茜  「準備、これで終わりましたよね。それじゃあ先輩、また放課後に」

真治 「うん、よろしく」

茜  「失礼します」


本山M「ってなわけなんだが・・・まっ、なんだな、真治にしちゃ~よくやった方なんじゃないか。
    本来なら俺の役のはずだったんだが、まぁ仕方あるまい。
    今回は譲ってやるぜ。で、後は本命の真琴ちゃんの機嫌をどう直すか、お手並み拝見だ。
    奴ら、昼休みにはきっと屋上で会うからな。様子見てみようぜ。
    って俺、すっかりこんな役が板についちまったな。けっ、全く情けないぜ」


  《学校の屋上》

SE:チャイムの音


真治 「やっぱり、ここにいたね」

真琴 「何か用?」

真治 「うん・・・」

真琴 「なにボサッと立ってるの、座れば?」

真治 「あ・・・うん」

真琴 「・・・私って嫌な子でしょ」

真治 「どうして?」

真琴 「だってそうじゃない」

真治 「そんなことないよ」

真琴 「幻滅、した?」

真治 「そんなことないって」

真琴 「茜ちゃんに、悪いことしちゃったな」

真治 「うん・・・彼女ならもう大丈夫だと思うけど、たぶん」

真琴 「今朝、会ったの?」

真治 「うん、実は今朝ね」

本山M「良いところでごめんよ、俺だよ、本山だよ。
    しっかしさ~、これが黙っていられるかってゆうんだな。
    はぁ・・・真治の奴、バカだバカだとは思ってたけど、
    まさかここまでとはなぁ。まさか、まさかとは思ったけどさ~
    コイツ、今朝のことをバカ正直に真琴ちゃんに話しちまったんだ、信じられるかオイ!」

真治 「だから、茜ちゃんのことを考えるとそうするのが一番良いんじゃないかって、
    そう思って・・・」

真琴 「へぇ、そうなんだ」

真治 「うん」

真琴 「わかんないなぁ、私」

真治 「僕もだ。だけど、あの時僕に出来ることはあれぐらいしか」

真琴 「真治のこと、私わかんないよ」

真治 「え?」

真琴 「そんなこと私に話して『そうなの、良かったね』って言うと思った?」

真治 「いや、でも真琴にはちゃんと話しておくべきだと思って」

  
  《真琴の平手打ちが真治の頬を打つ》


真治 「うっ、あっ、真琴」

真琴 「何考えてんのよ、バカ!」

真治 「真琴」

真琴 「茜ちゃんが可哀想? 冗談じゃないわよ、人バカにして! 同情でキスしたの?
    君は、女の子に頼まれれば誰にでもキスするの!?」

真治 「違う、そうじゃないよ」

真琴 「他の女の子にキスしただなんて話、彼氏から平然と聞かされて、
    怒らない方がおかしいと思わない?」

真治 「それは、怒るかもしれないと思ったけど・・・黙ってるわけにはいかないじゃないか」

真琴 「何よ!」

真治 「真琴! ちょっと落ち着いて」

真琴 「落ち着いてるわよ。落ち着いてるからこそ、真治の鈍感さに腹が立ってるんじゃない!」

真治 「鈍感なのは謝るけど。やましい気持ちでしたことじゃないよ」

真琴 「へぇ~、やましい気持ち無しで誰とでもキス出来るんだ? それはそれはご立派ですこと!」

真治 「そんな・・・僕は・・・」

真琴 「僕は、何なのよ! バカ!」

真治 「ねぇ、頼むから」

真琴 「バカ! 嫌い! 大っ嫌い! 最っ低!」


  《真琴が走り去る》


真治 「僕が、間違っていたんだろうか・・・」


本山M「と、いうわけで・・・はぁ、そうだよ真治。おめぇが間違ってんだバーカ!
    はっ・・・さ~て真治の奴、これからどうするつもりなのかねぇ。
    これはもうちっとやそっとじゃ機嫌直らないぜ~。真治には悪いが・・・
    へへっ、面白くなってきたじゃないの」


【次回予告】


由紀恵「本山君・・・」

本山 「あれ~、由紀恵先輩居たんスかぁ」

由紀恵「面白がってる場合じゃないわよ」

本山 「ははっ、やだなぁ、聞いてたんスか?」

由紀恵「だいぶ拗(こじ)れてきたわねぇ。こうなっちゃうとね、本人達だけには任せておけないかも」

本山 「おほん、いよいよ俺の出番っスね」

由紀恵「本山君で大丈夫かしら?」

本山 「なっ、何をおっしゃいますか。こう見えて天才本山。大人の恋愛の一つや二つ」

由紀恵「一つや、二つ?」

本山 「あっ、いや、そりゃまあ先輩には敵いませんよ、ええ。
    先輩は経験豊富でいらっしゃいますからねぇ」

由紀恵「何よそれ。私がオバサンって意味?」

本山 「いえいえ、滅相もない。良い意味ですよ、良い意味」

由紀恵「ま、いいけど。どっちにしても、私が一肌脱がなきゃダメかな」

本山 「というわけで、次回は由紀恵先輩大活躍の『好きと言えなくて』」

由紀恵&本山「お楽しみに」








scene.2     終