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極私的日々忘備録ーみたものきいたものよんだもの

教科書には載らないニッポンのインターネットの歴史教科書

2005-05-20 22:01:43 | Books
出る前から評判となっていた、主に個人サイトの変遷・盛衰から追った「ばるぼら」氏による
日本のインターネット史。90年代半ばの個人サイト黎明期からアンダーグランドサイトの動き、
テキストサイトや日記サイトの発生と拡大、さまざまな掲示板の興亡、そして近年のBlog隆盛
までを追い、更にインターネット前史してパソコン通信の歴史も概観。
行く川の流れのように現れては消えていく無数の個人サイトはそもそも記録に残ること自体が
ほとんど無いわけで、これだけのボリュームでまとまったかたちで記されたのははじめてでは
ないか。「語り部」としての筆者の凄まじさを感じる。
自分が本格的にインターネットをはじめたのが95年の春先、名著「ネット・トラベラーズ95」
を手がかりに回ったさまざまな個性的サイトの名前がいくつも挙がっており、当時の記憶がよみ
がえる。逆に97,8年頃の動きやアンダーグラウンドな側面はあまり知らなかったのでなるほ
どそういう流れだったのかと思うことしきり。
500ページにものぼる膨大な情報量を抱えているので読みにくい部分も多々あるし、またあくまで
筆者自身のネット体験に基く記憶・記録をベースとしたものなのでジャンルによる濃淡差があるが、
この本を記憶の呼び水としレファレンスとして、更にさまざまな個人により本著で記されている、
あるいは触れられていない各論の歴史がこれから語られていくこととなろう。

それにしてもgoogleで書名を検索してみると87,900件も!反響大きいのね。

V.A. "アメリカン・コーラスの歴史"

2005-05-18 00:18:05 | Music
副題に「バーバーショップからヒップ・ホップまで」とある通り、主に20世紀前半の録音を
中心に、20世紀初頭から現代にいたるポピュラー音楽のうちコーラスをメインにおいた楽曲の
流れを概観するコンピレーション。ちょっと前にアカペラコーラスが流行したけど、それらの
基礎となっているのが50年代黒人音楽であるドゥーワップ。それのルーツを辿ると「バーバー
ショップ」というジャンル?に行き着くという。これは何と、床屋で順番待ちをしていた人たち
が退屈しのぎに始めたものだという。これにはじまりおもだったコーラスのスタイルとその代表
曲がつづられていて勉強になるし、それ以上に理屈抜きでも単純に心地よいBGMとしても聴ける
のがよい。人の声のハーモニーが主体になっているからなのか、古い録音でも全然音の響きに
古さを感じさせないし、音楽の楽しさに満ちている。よいコンピレーションでした。



Kelly Joe Phelps "Tap the Red Cane Whirlwind"

2005-05-13 17:11:00 | Music
全く知らないミュージシャンであるが、試聴でよかったので購入。アコースティックギター一本で
の歌と演奏のライブ盤。タワレコではカントリーのコーナーにあったが、ブルースやフォークの色
が濃いアメリカン・ルーツ・ミュージック指向。もともとはフリージャズなどをやっていた人らし
く、スタジオ録音ではバンド演奏のよう。巧みであるがゆらゆらとリズムの伸縮があるような演奏
が独特。深夜に部屋を暗くして聴きたい感じでもある。

amazon試聴

上條淳士「SEX」第7巻

2005-05-12 21:35:18 | Comics
1988年から92年にかけてヤングサンデー誌に連載されていたが大部分が単行本化されて
いなかった幻の傑作の刊行がついに完結。洗練を極めたスタイリッシュな絵柄、画面構成
で、沖縄ヤクザや福生、横須賀の米軍基地街といった原色感あふれる土地がモノクローム
で描かれるという組み合わせが独特の空気を醸し出している。内容については巻末にイラ
ストを寄稿している江口寿史のコメントが的確なので、転載。
「ある「時間」と「場所」と「関係」を、上條淳士は完璧な形のまま真空パックした。
終わりも、始まりさえもない永遠の夏の王国。その美しいフォルムに僕は嫉妬する。」


Ann Sally "Brand New Orleans"

2005-05-09 22:52:20 | Music
Ann Sallyの5作目は本業(医者)で3年間滞在したニューオリンズでの現地ミュージシャン
との録音。歌声がぐっと表現力を増し、逞しくなった。楽曲も従来の作品のティンパンアレー
(日本のです)風味やボサノバ調から唄ものニューオーリンズジャズ直球に。
ベースとのデュエットの曲が出色。でもやっぱり一番印象に残るのは服部良一の名曲「胸の振
り子」のカバー。1974年に雪村いづみがティンパンアレーと組んでリリースした服部良一作品
のカバー集である不朽の名盤「スーパー・ジェネレーション」での同曲の歌唱に匹敵する出来だ。

あさのあつこ「バッテリー」

2005-05-09 22:43:09 | Books
少年野球を題材にした児童文学、ときいて持った先入観とは全く違った。試合のシーンも
なければ行儀の良い主人公も出てこない。自分の才能に自信と確信を持つが故に早熟で孤高
で傲慢な主人公の人物造形が思春期直前の苛立ちや未来への淡い希望、親との関係の変化と
いったものをうまく描くことを可能にしている。友人や弟、家族の人物像もしっかりと描かれ、
物語に奥行きを与えている。続編がいくつかでているとのことなので、そちらも読みたくなった。

大島保克「島めぐり」~Island Journey~

2005-04-30 21:29:37 | Music
芸能の盛んな土地として知られる石垣島白保出身の唄者の3年ぶり新作は、オリジナル曲で占められていた前作とは打って変わって、八重山民謡のみならず沖縄民謡や宮古民謡も含めた沖縄各地のオーセンティックな民謡をメインとした選曲となっている。一方でアレンジにはKiroroのメンバーのピアノや坂田明のSax、アイリッシュミュージックのアルタンの参加など、単なる民謡集には終わらせず、民謡を生きたものとして歌い継いでいこうという確固たる意思が感じられる。そして自作2曲の再演は、自分の作品をこれらの脈々と歌い継がれてきた民謡の流れの中に投入し、仲間に加えたいという意思の現れだろう。沖縄民謡は、唄を伝統として固定してしまうのではなく、今でも毎年沢山の玉石混淆の新曲が作られ、時の試練を得てその中のいくつかが民謡として歌い継がれていくといった、新陳代謝の仕組みをもっている。そういったことに意識的に取り組んでいる姿勢が、大島を若手の唄者の中でも飛び抜けた存在としているように思う。

そうそう、いくつかの曲で掛け合いを演じている鳩間可奈子の歌声も20代前半とは思えない素晴らしい歌声で、ソロ作品が待ち遠しい。

The Youngbloods 1971年ライブ盤

2005-04-23 00:00:26 | Music
Disc Unionにて見つけ、購入。The Youngbloodsは、1969年の"Get Together"のヒッ
トで知られる、NYで結成されたロックグループ。このCDは後期、拠点を西海岸に移した
後の現地での未発表音源ライブ盤だが、東海岸で結成されたグループに共通するちょっと
知的でJAZZYで、でも暖かな雰囲気の音を出している。エレクトリックピアノの柔らかな
響きが心地よく、シャッフルやワルツのリズムが多いのも独特で聴いていていい気分。
春っぽい1枚。ジャケットが変なのがちょっと残念。。。

The Youngbloods "Beautiful! Live in San Francisco 1971"

モーターサイクルダイアリーズ

2005-04-19 21:59:26 | Movie
革命家チェ・ゲバラの学生時代の南米大陸放浪記を映画化した作品。さほど期待しないで
観に行ったのだが、主人公があのゲバラだとかいうことは関係なく、一人の若者が旅をする
ことで成長していく姿を追う普遍的なロードムービーとなっており、南米の雄大な風景も
相俟って楽しく切ない佳作であった。前半、バイクで旅をしている間は風景や人物の描写に
距離感が取られているのに対し、後半歩きやヒッチハイクとなった後でぐっと風景や人に近
づいていく描写となっているのが、移動のスピードや旅の質の変化をうまく表現していて
映画の目線にスムーズに同期していくことができた。


公式サイト

「永遠のモータウン」

2005-04-05 22:55:36 | Movie
ブラックミュージックを代表するレーベル「MOTOWN」。なかでも60年代の数多くのヒット曲は
黒人音楽のみならずロックの発展にも多大なる影響を及ぼしたが、それらの録音の殆どで演奏をして
いたバンド「ファンク・ブラザーズ」にスポットをあてたドキュメンタリー。随所に織り込まれる、
若手シンガーとのライブが素晴らしかった。
amazon.co.jp

北田暁大「嗤う日本の「ナショナリズム」」

2005-03-31 23:33:21 | Books
自己目的化した「総括」が帰結するところとなった72年のあさま山荘事件と、現在日本に蔓延しつつある
「ロマン主義的シニシズム」としてのナショナリズム。この2つを結ぶ社会思想史的変遷を糸井重里、田中
康夫、ナンシー関、2ちゃんねるなどの分析を通して浮かび上がらせようとする試み。
著者は自分の学生時代の知人(友人の友人)であり同世代。なのでここでの題材の取り上げ方や指摘は共感
できる。ただ何というか、文章全体の論理構成をもう少し立体的にし、著者の立ち位置が浮かび上がって
くるような構成には出来ないものか。注の最後の方の1箇所で触れられている著者の決意表明があるが、
これは注ではなく本文全体を通した中で立ち現れてくるべきものだろう。

キャメロン・クロウ監督「あの頃、ペニー・レインと」

2005-03-29 22:30:50 | Movie
70年代前半、15才にしてロックの批評家として認められあるロックバンドのツアーに同行して
取材することとなった少年の物語を描く。監督の若かりし頃の実体験をもとにしているという。
ほろ苦い恋やバンドのメンバーとの友情、出会いと別れ等、この手の映画には必要な要素が過不足
なくちりばめられており、ロックの黄金期の曲も数多く流れるので音楽好きなら間違いなく楽しめ
る佳作だろう。

Rosie Brown "Clocks And Clouds"

2005-03-23 21:32:38 | Music
試聴で気に入り購入。Nora Jonesが好きな人なら気に入るであろう、少しJAZZYで
アコースティックな音。Vocalもそんな感じ。ただ、こちらの音作りの核になっている
のはリズミカルなアコースティックギター。そういった点ではJoni Mitchellも連想させる。

和泉商店街「沖縄タウン」

2005-03-21 22:01:39 | tokyo
京王線代田橋駅から徒歩5分、典型的な古くからの商店街である「和泉商店街」が沖縄を
テーマに生まれ変わったという。自転車で行ける距離なので覗きにいってみた。
小さな商店街の中の小さな市場「大都市場」は確かに那覇などの市場に雰囲気が似ており、
そこに出店している5軒の沖縄専門店の他、元々あった豆腐屋で島豆腐をつくっていたり、
八百屋で生の海ぶどうを売っていたり、酒屋で泡盛を扱ったりと、さりげなく商店街全体で
沖縄カラーを打ち出そうとしている。おそらく今までは寂れた商店街だったのだろうけど、
オープン2日目とあってかなり賑わっていた。すれちがった地元のおばさん同士が「今まで
ゴーヤーなんて食べようと思わなかったけど、試食を食べたら美味しかったから今夜のおか
ずはゴーヤー料理にするの」と言った会話をかわしていたのが印象的だった。このような
感じでうまく日常の空間として定着するかどうかが今後の成功の鍵だろう。


沖縄タウン公式HP

Jack Johnson "In Between Dreams"

2005-03-12 22:22:52 | Music
サーファーミュージシャンJack Johnsonの3作目。2作目On And Onは初期のRy Cooderのような、
ゆったりしたgrooveにのったギターや飾らないボーカルによるアコースティックな響きが心地よく、
かなり愛聴していたので期待大であった。一聴して完成度は高く卒ないプロダクションであるが、あま
り耳に残る曲がなく、やや地味か。