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極私的日々忘備録ーみたものきいたものよんだもの

Macy Gray "The Trouble With Being Myself"

2005-08-22 18:50:25 | Music
2003年リリースの本作、前々から気になっていたのだが図書館にあったので借りてみた。楽曲はどれも力強いR&Bで、かなりハスキーな歌声が印象的。決して懐古調ではないのだけど、最近のR&Bは70年代ニュー・ソウルからの流れが感じられることが多い気がするが、この作品はどこか60年代サザンソウルやスワンプロックの香り(管絃のアレンジ)や、70年代初頭のサイケデリック・ロックの影響を受けたファンクのような雰囲気(ギターやシンセの入れ方)もあるのが面白い。と思ったらBeckが参加しているそうで、なるほど。今まで聞かなかったのが勿体無かった。ボーナストラックでQueenのwe will rock youが入っているのはなぜ?

烏賀陽 弘道「Jポップの心象風景」(文春新書)

2005-08-20 22:35:03 | Books
日本だけでメガセールスを誇る「J-POP」のアーティスト達。彼らが日本人のみに支持されつづける理由を日本人の心象風景との結びつきを分析することで明らかにしようとする一冊。筆者はフリーのジャーナリスト。この手の本は根拠のない思いつきの印象批評や単なるエッセイに終わっている場合が多いが、筆者の学問的な基礎知識がしっかりしているようで、それによって読み物として面白く仕上がっているように思う。アーティストの選択や、議論の仕方にやや恣意的な面や強引さも感じられなくはないが。
桑田圭祐をお盆に、松任谷由実を正月に結びつけた冒頭の2章が面白かった。B'zがパクリパクリと言われつつ支持され売れ続けているのはなぜかという分析も、大滝詠一の論説に慣れ親しんだ人ならさほど新鮮味はないかもしれないが、まっとうな分析。岩波新書からは姉妹編としてJポップ市場を経済的な側面から分析した本も出ている様なのでそちらも読んでみたい。

Sonya Kitchell "Words Came Back To Me"

2005-08-20 22:17:21 | Music
これがデビュー作となる16才。ポスト・ノラ・ジョーンズ的な売り出し方をされているようだが、もう少しロック寄りだし、ノラ・ジョーンズにどこか感じられるカントリーの影響はあまりなさそうだ。大人びた歌声といい、渋い曲といい、とても16才とは思えない程完成されている。1曲目のような音数の少ないピアノやチェロの音を生かしたアレンジで憂いのあるメロディを歌っている曲が特によい。

David Boyles "Bedroom Demos"

2005-08-19 22:22:53 | Music
全く知らないアーティストだったが試聴でかなり気に入り購入。これもSurf Music系のアーティストと同コーナーに置かれていたが、もっと骨太だし、ファンクを基調にしたロックといった曲が多く、本人も影響を受けたと公言しているそうだけど、Red Hot Chilli PeppersやPrince、あるいはStevie Wonderに通じる黒っぽさがある。
90年代以降のR&B的なVocalにザラッとしたひずんだギター、乾いたドラムの音がいい。funkを基調にしたメリハリのあるリズムにどこか独特のグルーヴがあるように感じたが、調べてみるとすべては本人の演奏による多重録音とのことで、やっぱりという感じ。近々メジャーデビュー盤も出るとのことで楽しみだ。

Tristan Prettyman "twenty three"

2005-08-19 22:10:50 | Music
Jack Johnsonに代表される、最近とみに流行っている"Surf Music"シーンから登場した女性シンガーの1st。グルービーなアコースティックギターのリズムを強調したカッティングで進む曲などは確かにJack Johnson一派という感じだが、むしろアメリカの女性シンガーソングライターの系譜に普通にまっすぐ直結する要素が大きいようにも感じられる。個性が際立ってくるのはまだまだこれからという感じもするが、夕暮れの海岸でライブで聴きたくなるような涼しげな感じはよい。

Natalie "Natalie"

2005-08-19 22:08:50 | Music
iTMSで1曲目を試聴して気に入り、CDで購入。これがデビュー作だそう。チカーノだからR&Bとは言わないのかもしれないがまあそんな系統の音。最後の曲は出自のコミュニティを意識したのか1曲目のスペイン語バージョン。これが発声の響きがやわらかくなってよかった。BGMとして気軽にきける佳作。

大岡昇平「幼年」「少年」

2005-08-01 00:15:08 | Books
タイトルの通り大岡昇平の幼年期から少年期にかけての回想録である。特徴的なのは自らの成長を描くにあたって、彼が住んでいた渋谷の街の風景やその変遷の描写に重きをおき、その風景の中におかれた、自分を含めた同級生や家族といった人々の姿を浮かび上がらせようとしている点だ。そういう意味では、一人称であるが三人称的なまなざしがある。描かれている時期はちょうど大正年間にあたり、幼少期は現在の東横線渋谷駅脇の渋谷川沿い、小学校の途中から現在の宇田川町交番そば、そして小学校高学年以降は松濤の鍋島公園そば、と現在の渋谷のど真ん中で過ごしてきただけあって、渋谷の街の変遷がきわめてミクロにいきいきと明晰な文体で描かれており、それだけでも地域資料としてきわめて高い価値があろう。また、同時代の文学として描かれる漱石や芥川作品といった読書体験の記述は、それらの作品がリアルタイムではどう受け止められていたのかがわかり興味深い。関東大震災や大杉栄殺害事件の記述も然り。そして、宇田川や渋谷川、神泉松濤の小川といった、渋谷を流れていた清冽な水や郊外の風景の描写が幾度となく詳細に出てくるのも印象的だ。(そもそもこれ目当てで読んだのだが)
そんな「幼年」「少年」だが、現在残念なことに絶版となっている。この間も田山花袋の名エッセイ「東京の三十年」を読もうとしたら絶版だった。なんだかなあ。。。