AOXOMOXOA

極私的日々忘備録ーみたものきいたものよんだもの

Stevie Wonder "A Time 2 Love"

2005-10-23 19:45:40 | Music
ついに、やっと、とうとう、ようやくリリースされた10年ぶりの新作。昨夏にアナウンスがあって以来ずっと心待ちにしていたのだけど、延期に次ぐ延期で、今回も実際に店頭で見るまでは信じられなかった。
10年間待たされただけあって、80年代以降の作品の中ではもっとも充実した作品となっているのではないか。特にミディアム~スローの曲の出来がよい。ライナーノーツによれば、発表が延期された理由に尊敬するレイ・チャールズやかつての妻でありソングライティングのパートナーであったシリータ・ライトの死があったという。"Positivity"という曲の歌詞で、やはり盟友であった故ミニー・リパートンの発言が大きく引用されており、そういった背景を考えるとちょっと泣けた。

嘉手苅林昌「沖縄の魂の行方」

2005-10-23 18:55:23 | Music
沖縄音楽界の巨星、嘉手苅林昌が没して6年が経つが、ここに来て再発物ではない新作の登場。1996年、久高島での野外ライブにその後の録音数曲を加えた作品が、当時のライブ企画者によりCD化された。1曲目の出だし、晩年の声量が衰え音程の不確かな声にやや不安を覚えるが、すぐに安定してきてその歌声と演奏に引き込まれる。晩年の録音の中ではかなり好調なのではないか。特にナークニーでは彼のスタイルの真髄が現れていて素晴らしい。
また、今回初公開となる「新曲」があるのもうれしい。伝説となっているアルゼンチン放浪時、現地の沖縄移住者コミュニティの歓迎に対して贈られたオリジナル曲だ。
全く彼の音を聴いたことのない人にはまずは全盛期の音源をお勧めしたいところだが、艶のある声、情感的な三線、アドリブで変幻自在に変えて歌われる歌詞といった彼のスタイルはほぼ味わえるし、ライナーノーツの丁寧な解説や訳詞も付いてとっかかりやすくなっているので、興味をもたれた方はまずは充実した公式サイトを覗いてみて欲しい。

公式サイト

Neil Young "Prairie Wind"

2005-10-10 17:23:22 | Music
72年の"Harvest"、92年の "Harvest Moon"につづく3部作完結篇、とのことだが、カントリー寄りのアコースティックな曲よりも、南部っぽいホーンやギターの入る泥くさい、スワンプ的な曲が目立つ。それにしても30年間休むことなく、ほぼコンスタントに新作を発表し続けるこの人の創作意欲には頭が下がる。ときには駄作も混じるし、本作も取り立てて傑作というわけではないが、自らへのハードルを高く設定しすぎて寡作になっていくベテランアーティストも少なくない中、貴重なスタンスだと思う。

サザンオールスターズ「キラーストリート」

2005-10-10 17:22:27 | Music
7年ぶり2枚組アルバム。サザンは好きな曲は多いけど、あまりアルバム単位で聴こうとは思えないバンドなのだが、今作はKamakura以来久々に、アルバムとして聴けそうな感じだ。90年代の作品には打ち込みで緻密に作り上げたものが多く、バンドである意味が希薄となっていたように思えたが、バンド的な音づくりに戻っている部分が多々感じられる。
全30曲はいつもの王道をいくポップスやラテン歌謡などからインストの小品までバラエティに富むが、気になったのは70年代のロックやソウルの曲の影響を全面に出した楽曲。特に1枚目の曲に顕著だが、大ネタが各所で散見される。
1曲目のイントロがCSN&Yの "Ohio"調なのに始まり、Stevie Wonder "Superstition"だったり、The Four Tops "I Can't Help Myself"とかNeil young &Crazy Horse風のギターや大滝詠一経由のPhil Spector風だったりとか。歌詞にも往年のヒット曲のタイトルを織り込んでみたり。
興味深いのはライナーの異様に詳細な自曲解説で、それらのアーティスト名を列挙し、下敷きとしていることを明記していることだ。彼らのファン層の大部分にはそのような解説へのニーズはないと思うのだが、それをあえて記しているところに、桑田圭祐の洋楽への憧憬やコンプレックス、あるいは世間で受け止められているポップスターとしての自己像への抵抗を感じる。

Kanye west "Late Registration"

2005-10-06 23:24:11 | Music
アリシア・キースの"You Don't Know My Name"プロデューサーということで興味を持ち購入。全体的にバラエティにとんだ曲調で飽きさせない。内省的なピアノとラップの響きが美しい2曲目からカーティス・メイフィールドの"Move On Up"の大胆なサンプリング(というよりほとんどカバーバージョンだ)によるアッパーな3曲目の流れがよかった。

山下達郎「SONORITE」

2005-10-02 22:15:04 | Music
7年ぶりの新作。音像が大幅に変化している。音数が少なく、エコーやリバーブもあまりかかっていないためかなり地味な印象。楽曲もスロー~ミディアムテンポで内省的な曲調が多い。前作がかなり開放的な音像で、世間的に求められている山下達郎の音、といった感じなのに対し、今回はそういうものを期待する向きからは否定的に捉えられているようだ。自分も最初に通して聴いた際は完全な新曲も少ないしやや期待はずれに感じた。しかし、何度か聴いているうちにこれはこれで気に入ってきた。86年の「POCKET MUSIC」に近い印象を受けたが、あとからインタビューなどを目にすると、そのときと同じく録音方法を変えたため、かなり試行錯誤のある過渡的な作品となったとのこと。

Carole King "The Living Room Tour"

2005-09-14 22:01:11 | Music
1971年の大名盤"Tapestry"をはじめ60年代~70年代に数々の名曲を残したSinger=SongWriterの最新ライブ盤。往年の歌手による懐メロライブなのかなとやや危惧していたのだけど、これは素晴らしい仕上がりだ。ピアノの弾き語りにギターが絡むシンプルな演奏に、変らない歌声。アルバムタイトルのとおりのリラックスした雰囲気で、前向きな感じに満ち溢れているのが素敵だ。

Macy Gray "The Trouble With Being Myself"

2005-08-22 18:50:25 | Music
2003年リリースの本作、前々から気になっていたのだが図書館にあったので借りてみた。楽曲はどれも力強いR&Bで、かなりハスキーな歌声が印象的。決して懐古調ではないのだけど、最近のR&Bは70年代ニュー・ソウルからの流れが感じられることが多い気がするが、この作品はどこか60年代サザンソウルやスワンプロックの香り(管絃のアレンジ)や、70年代初頭のサイケデリック・ロックの影響を受けたファンクのような雰囲気(ギターやシンセの入れ方)もあるのが面白い。と思ったらBeckが参加しているそうで、なるほど。今まで聞かなかったのが勿体無かった。ボーナストラックでQueenのwe will rock youが入っているのはなぜ?

Sonya Kitchell "Words Came Back To Me"

2005-08-20 22:17:21 | Music
これがデビュー作となる16才。ポスト・ノラ・ジョーンズ的な売り出し方をされているようだが、もう少しロック寄りだし、ノラ・ジョーンズにどこか感じられるカントリーの影響はあまりなさそうだ。大人びた歌声といい、渋い曲といい、とても16才とは思えない程完成されている。1曲目のような音数の少ないピアノやチェロの音を生かしたアレンジで憂いのあるメロディを歌っている曲が特によい。

David Boyles "Bedroom Demos"

2005-08-19 22:22:53 | Music
全く知らないアーティストだったが試聴でかなり気に入り購入。これもSurf Music系のアーティストと同コーナーに置かれていたが、もっと骨太だし、ファンクを基調にしたロックといった曲が多く、本人も影響を受けたと公言しているそうだけど、Red Hot Chilli PeppersやPrince、あるいはStevie Wonderに通じる黒っぽさがある。
90年代以降のR&B的なVocalにザラッとしたひずんだギター、乾いたドラムの音がいい。funkを基調にしたメリハリのあるリズムにどこか独特のグルーヴがあるように感じたが、調べてみるとすべては本人の演奏による多重録音とのことで、やっぱりという感じ。近々メジャーデビュー盤も出るとのことで楽しみだ。

Tristan Prettyman "twenty three"

2005-08-19 22:10:50 | Music
Jack Johnsonに代表される、最近とみに流行っている"Surf Music"シーンから登場した女性シンガーの1st。グルービーなアコースティックギターのリズムを強調したカッティングで進む曲などは確かにJack Johnson一派という感じだが、むしろアメリカの女性シンガーソングライターの系譜に普通にまっすぐ直結する要素が大きいようにも感じられる。個性が際立ってくるのはまだまだこれからという感じもするが、夕暮れの海岸でライブで聴きたくなるような涼しげな感じはよい。

Natalie "Natalie"

2005-08-19 22:08:50 | Music
iTMSで1曲目を試聴して気に入り、CDで購入。これがデビュー作だそう。チカーノだからR&Bとは言わないのかもしれないがまあそんな系統の音。最後の曲は出自のコミュニティを意識したのか1曲目のスペイン語バージョン。これが発声の響きがやわらかくなってよかった。BGMとして気軽にきける佳作。

知名定男「うたまーい」

2005-07-19 23:18:03 | Music
ネーネーズや一時期の琉球フェスティバルのプロデュースでも知られ、今や沖縄民謡界の重鎮的存在となった知名定男の、スタジオ録音としては14年ぶり、ライブ盤を含めても9年ぶりの新作。沖縄本島の民謡を中心に、自作の代表曲「うんじゅが情きど頼まりる」や、父の故・知名定繁作詞、故・照屋林助作曲の名曲「ジントーヨワルツ」も収録。低いキーの落ち着いた声と、技巧的な装飾音を効果的に加える三線のスタイルは唯一無二のオリジナリティを誇るが、本作品でもそんな彼独自のスタイルが堪能できる。洋楽器を積極的に導入してきた彼が今回は一切使っていないのは自信の表れか。そして円熟しているが、かえって今までよりも若々しい歌声が意外だ。「ナビィの恋」以来、彼の師匠である登川誠仁がもてはやされているが、スローテンポな曲での歌声や三線の「情け」については彼の方が明らかに上回っている。本格的な沖縄(本島)民謡を聴いてみたいという方にはまずお勧めしたい一枚。

Van Morrison "Magic Time"

2005-07-18 21:08:29 | Music
イギリスのベテランシンガーの新作。特に新機軸がある訳ではなくいつものとおり、リズム&ブルースをベースにジャズやブルース、そして自身のルーツであるアイリッシュの要素を混ぜたゆったりした曲が続くが、どれも安定した透明感のある作風に力強い歌唱で、安心して聴ける1枚。