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極私的日々忘備録ーみたものきいたものよんだもの

東京ローカルホンク「東京ローカルホンク」

2005-05-29 00:41:47 | Music
1999年の「うずまき」名義でのアルバム「ヒコーキのうた」がとにかく素晴らしくって、それ以来ずっと新作を待っていた。久保田真琴のプロデュースで製作中、というアナウンスが出たのが2001年、それから4年も経ってようやく出た新作。
基本は骨太のフォークロックで、ロックっぽい和声のハーモニーが多用されているのは前作と同じだが、久保田真琴が絡んでいるせいか細かな音作りでダブっぽかったりヴォコーダーをさりげなく使ってみたりとプログレッシブな要素があり、またそれぞれの音の輪郭がはっきりしたミキシングとなっている。そういった面で、曲調が似ているというわけではないが、音楽の構造として、The Band後期の名作「南十字星」に通じるものがあるように思えた。

公式サイト

南條竹則「魔法探偵」

2005-05-25 00:13:19 | Books
詩人の「吾輩」が生活のために始めた猫探しの探偵業。不思議な巡り合わせで幽霊の秘書や引きこもりの居候を抱え、奇妙なお客を相手にするようになり。。。。翻訳家にしてファンタジーノベル大賞受賞作家の長編小説。人間の幽霊だけでなく、土地の記憶を呼び起こすことで、失われた建物や場所の幽霊を幻出させるという趣向がいい。舞台が三ノ輪というのも奇妙奇天烈な登場人物達に妙なリアリティを与えるという意味でいい選択だ。最終章で幻出させるのが大阪万博なのだが、近年のノスタルジアはなぜこうも大阪万博に向かうのか。作者は1958年生で、同じく大阪万博を重要なモチーフとして描いている漫画「20世紀少年」の浦沢直樹とほぼ同世代だ(1960年生)。60年代高度経済成長期の到達点の象徴であったとか、輝く未来が夢として描かれた最後の場であったとか、いろいろと振り返り的な位置づけはなされているが、50年代後半生まれの世代の個人史に落とした影響ってどうなのでしょう。

教科書には載らないニッポンのインターネットの歴史教科書

2005-05-20 22:01:43 | Books
出る前から評判となっていた、主に個人サイトの変遷・盛衰から追った「ばるぼら」氏による
日本のインターネット史。90年代半ばの個人サイト黎明期からアンダーグランドサイトの動き、
テキストサイトや日記サイトの発生と拡大、さまざまな掲示板の興亡、そして近年のBlog隆盛
までを追い、更にインターネット前史してパソコン通信の歴史も概観。
行く川の流れのように現れては消えていく無数の個人サイトはそもそも記録に残ること自体が
ほとんど無いわけで、これだけのボリュームでまとまったかたちで記されたのははじめてでは
ないか。「語り部」としての筆者の凄まじさを感じる。
自分が本格的にインターネットをはじめたのが95年の春先、名著「ネット・トラベラーズ95」
を手がかりに回ったさまざまな個性的サイトの名前がいくつも挙がっており、当時の記憶がよみ
がえる。逆に97,8年頃の動きやアンダーグラウンドな側面はあまり知らなかったのでなるほ
どそういう流れだったのかと思うことしきり。
500ページにものぼる膨大な情報量を抱えているので読みにくい部分も多々あるし、またあくまで
筆者自身のネット体験に基く記憶・記録をベースとしたものなのでジャンルによる濃淡差があるが、
この本を記憶の呼び水としレファレンスとして、更にさまざまな個人により本著で記されている、
あるいは触れられていない各論の歴史がこれから語られていくこととなろう。

それにしてもgoogleで書名を検索してみると87,900件も!反響大きいのね。

V.A. "アメリカン・コーラスの歴史"

2005-05-18 00:18:05 | Music
副題に「バーバーショップからヒップ・ホップまで」とある通り、主に20世紀前半の録音を
中心に、20世紀初頭から現代にいたるポピュラー音楽のうちコーラスをメインにおいた楽曲の
流れを概観するコンピレーション。ちょっと前にアカペラコーラスが流行したけど、それらの
基礎となっているのが50年代黒人音楽であるドゥーワップ。それのルーツを辿ると「バーバー
ショップ」というジャンル?に行き着くという。これは何と、床屋で順番待ちをしていた人たち
が退屈しのぎに始めたものだという。これにはじまりおもだったコーラスのスタイルとその代表
曲がつづられていて勉強になるし、それ以上に理屈抜きでも単純に心地よいBGMとしても聴ける
のがよい。人の声のハーモニーが主体になっているからなのか、古い録音でも全然音の響きに
古さを感じさせないし、音楽の楽しさに満ちている。よいコンピレーションでした。



Kelly Joe Phelps "Tap the Red Cane Whirlwind"

2005-05-13 17:11:00 | Music
全く知らないミュージシャンであるが、試聴でよかったので購入。アコースティックギター一本で
の歌と演奏のライブ盤。タワレコではカントリーのコーナーにあったが、ブルースやフォークの色
が濃いアメリカン・ルーツ・ミュージック指向。もともとはフリージャズなどをやっていた人らし
く、スタジオ録音ではバンド演奏のよう。巧みであるがゆらゆらとリズムの伸縮があるような演奏
が独特。深夜に部屋を暗くして聴きたい感じでもある。

amazon試聴

上條淳士「SEX」第7巻

2005-05-12 21:35:18 | Comics
1988年から92年にかけてヤングサンデー誌に連載されていたが大部分が単行本化されて
いなかった幻の傑作の刊行がついに完結。洗練を極めたスタイリッシュな絵柄、画面構成
で、沖縄ヤクザや福生、横須賀の米軍基地街といった原色感あふれる土地がモノクローム
で描かれるという組み合わせが独特の空気を醸し出している。内容については巻末にイラ
ストを寄稿している江口寿史のコメントが的確なので、転載。
「ある「時間」と「場所」と「関係」を、上條淳士は完璧な形のまま真空パックした。
終わりも、始まりさえもない永遠の夏の王国。その美しいフォルムに僕は嫉妬する。」


Ann Sally "Brand New Orleans"

2005-05-09 22:52:20 | Music
Ann Sallyの5作目は本業(医者)で3年間滞在したニューオリンズでの現地ミュージシャン
との録音。歌声がぐっと表現力を増し、逞しくなった。楽曲も従来の作品のティンパンアレー
(日本のです)風味やボサノバ調から唄ものニューオーリンズジャズ直球に。
ベースとのデュエットの曲が出色。でもやっぱり一番印象に残るのは服部良一の名曲「胸の振
り子」のカバー。1974年に雪村いづみがティンパンアレーと組んでリリースした服部良一作品
のカバー集である不朽の名盤「スーパー・ジェネレーション」での同曲の歌唱に匹敵する出来だ。

あさのあつこ「バッテリー」

2005-05-09 22:43:09 | Books
少年野球を題材にした児童文学、ときいて持った先入観とは全く違った。試合のシーンも
なければ行儀の良い主人公も出てこない。自分の才能に自信と確信を持つが故に早熟で孤高
で傲慢な主人公の人物造形が思春期直前の苛立ちや未来への淡い希望、親との関係の変化と
いったものをうまく描くことを可能にしている。友人や弟、家族の人物像もしっかりと描かれ、
物語に奥行きを与えている。続編がいくつかでているとのことなので、そちらも読みたくなった。