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極私的日々忘備録ーみたものきいたものよんだもの

こうの史代「夕凪の街 桜の国」

2004-12-26 17:41:30 | Comics
書評やネット上で静かな話題を呼んでいる、ヒロシマの原爆を題材にし、原爆から10年後、42年後、
そして現在を舞台にした3つの短編連作からなる作品。泣きそうになった。そして何度も読み返して
しまった。美しく、悲しく、最後には未来への希望が託される。細かい所までよく構成され、画風も
あたたかい。纏まりきらないが、とにかくみんなに読んでほしい。「反戦」「平和」「政治」といっ
た大文字で語られてしまうことで抜け落ちてしまうものがここにすくい上げ、結晶化されている。

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奥原浩志監督「青い車」

2004-12-23 10:36:12 | Movie
よしもとよしともの原作漫画が大好きだったので期待して観に行ったが、やや肩透かしの観も。
最後の3分の1以外は原作にないストーリーを新たにつくっており、その部分にはあまり違和感
はなかったが、映像が安っぽいVシネマの様な照明、ロケになっている部分が目に付いた。
原作は線が少なく余白を活かした画面構成が作品に通底する空気感を醸し出す大きな要素と
なっていると思うのだが、映画の雑然とした画面が同じような空気を出せているか疑問。
そして、全体的に「学生の自主映画」的な雰囲気も漂う。主役の3人はかなりいい感じだったし、
曽我部恵一の音楽もよかったんだけど。ちなみに監督は「スウィングガールズ」の矢口監督と
同じくPFF(ぴあフィルムフェスティバル)出身。

公式ページ

矢口史靖監督「スウィング・ガールズ」

2004-12-23 10:25:37 | Movie
ようやくみることが出来た。池袋テアトルダイヤで、楽器と一緒に写った写真を見せると
入場料1000円、というのをやっており、池袋まで行ってきた。楽しく気持ちよく観られて、
終わった後は音楽がやりたくなるような映画だった。主演の上野樹里の豊かな表情も素晴ら
しい。
矢口監督の映画はどれも嘘のつき方や省略の仕方が大胆なのが映画らしい表現となっていて
実に魅力的なのだ。今回もイノシシに追われるシーンや、スーパーの店頭で演奏していると
仲間割れした女の子たちが楽器を買いに走り演奏に加わるという時間軸を全く無視した展開
があって痛快。ハリウッド映画などで、何時の間に何でこの二人が恋愛関係になるのか、音
響や映像、ストーリー的な辻褄合せにごまかされているけど、よく考えるとまったく根拠な
し、みたいのがよくある。それらより矢口作品のような確信犯的ご都合主義を敢えてあから
さまにやって見せる方がよっぽど面白い。


公式ページ

森達也、姜尚中「戦争の世紀を超えて その場所で語られるべき戦争の記憶がある」

2004-12-16 23:50:02 | Books
気鋭の政治学者姜尚中と「放送禁止歌」やオウム真理教を描いたドキュメンタリー映画「A」で
知られる森達也が、アウシュビッツや北緯38度を訪れ、その場所で体感した印象を起点とした
対話を収録。何かを非難したり糾弾したりというのではなく、人はなぜ戦争をするのかというこ
とについて徹底して思考を深めていく対談となっている。被害の記憶のみを継承していくことに
よる恐怖や憎悪の増幅、正義への固執による不寛容といったものが戦争をもたらす原因のひとつ
であることなど、的確な指摘が続く。被害者への同情だけでは憎悪の連鎖しか生み出さない。加
害者が戦争や虐殺に臨んだ際の思考を想像することこそがそれらを断ち切るためには必要なので
はないかという指摘が印象に残った。

John Lennon "Anthology"

2004-12-16 22:57:13 | Music
リハーサル、デモ、ライブ、別バージョン、未発表曲など、すべて未発表録音で構成された
4枚組94曲。図書館で日本盤を借りて、ライナーノーツを読みながら聴いてみた。ドキュメ
ンタリー的な要素もあるものの、個々の録音のクオリティは高いし、時系列でまとめられて
いるので、彼の活動の全体像を公式音源からよりもずっと近い距離からみられる感じがよい。
それにしてもいい曲が多いなあ。

切通理作「宮崎駿の<世界>」

2004-12-14 23:06:34 | Books
図書館で何となく借りて読んでみたのだが、う~ん。。。2段組を交え330頁と文庫としては
破格の分量であるのだが、それに見合う内容かといえばどうだろうか。かつてあった「作品を
体験し直す」批評の継承を目指すという意図により、半分は個々の作品のあらすじに割かれていて、
確かにああなるほどそんな内容だったなという確認にはなったが、それ以上の印象を得ることは
できなかった。参考資料からの多彩な引用もそれぞれは興味深いが、そこから浮かび上がって
くる筆者の視点の焦点が絞りきれていないような印象を受ける。読書に割いた時間に値するだけ
のものを得られなかったようななんとも消化不良な読後感であった。

望月峰太郎「万祝」第4巻

2004-12-10 00:13:42 | Comics
大きな反響を巻き起こした長編「ドラゴンヘッド」の次作となる「万祝」もようやく4巻を
迎えストーリーは佳境に。女子高生を主人公とした海賊物という荒唐無稽な設定だが、「バ
タアシ金魚」や「お茶の間」の頃の独特のギャグテイストを交えつつ「ドラゴンヘッド」で
確立した卓越した構成力によって読ませる。彼の作品に共通する、無根拠な確信を持って突っ
走る主人公がいい。

菊地成孔・大谷能生「憂鬱と官能を教えた学校」

2004-12-08 23:22:00 | Books
よくジャズミュージシャンのプロフィールで「バークリー音楽院卒業」とあるが、この本は
サブタイトルに「【バークリー・メソッド】によって俯瞰される20世紀商業音楽史」とあるよ
うに、そのバークリー音楽院の確立した記号的な音楽理論を音楽史と結びつけつつ批評的に
解説した12回にわたる講義を文章化したものである。菊地成孔の文章はやや衒学的だったり、
80年代の香りがしてやや敬遠していたが、ここでの語り口は理論的かつ明快で、話題は多彩
に広がりつつ、音楽を理論化して捉えるとはどういうことかという一貫した論点から常に語ら
れており、ひきこまれた。コード進行理論の要となるドミナント・モーションについての章は
キーボードを弾きながら再読して確認したいところ。

k.d.lang "Hymns of the 49th Parallel"

2004-12-04 16:14:34 | Music
カナダの女性Singer=SongWriterの新作は同じくカナダの他のSinger=SongWriter達のカバー集。
10月末に出たばかりの日本盤が図書館にあり借りてみた。ここでもカバーされている、Neil Young
やJoni Mitchell、Bruce Cockburn、Leonard Cohenなど、カナダ出身のSinger=SongWriter達
の楽曲や歌声には、何か共通した、アメリカ出身のミュージシャンとは違った透明な空気感と刹那さ
が感じられ、青く澄み切った空や落葉しきった木々、雪景色などがよく似合う。そういったわけで
毎年秋が深まってくると彼らのCDを引っ張りだしてよく聴いている。このアルバムもその中の1枚と
なりそうな、同じ空気を持っている。

Destiny's Child "Destiny Fulfilled"

2004-12-04 15:57:46 | Music
70年代中頃までのBlack Musicは全般によく聴いてきたのだが、最近のR&Bについては断片的にしか
聴いていない。そんな中で昨年出たBeyonceのソロアルバムと主演映画"The Fighting Temptations"
のサントラが非常に気に入っていた(特に後者)ので、今回のDestiny's Childとしての新作を購入し
てみた。聴き始めて2週間。全体的にメロウな曲が並び、完成度も高く聴きやすいのでリピートして
聴いているのだが、その割にはどうも引っかかりが少ないというか、聴き終わった後の印象が薄いの
だけど、まあこんなもの?



Destiny's Child "Destiny Fulfilled"