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極私的日々忘備録ーみたものきいたものよんだもの

岩渕功一・多田治・田仲康博 編 「沖縄に立ちすくむ-大学を越えて深化する知」

2004-11-26 23:36:46 | Ryukyu
サブタイトルに「「ちゅらさん」「ナビィの恋」「モンパチ」から読み解く〈沖縄〉の文化の政治学」
とあるように、近年のポピュラーカルチャーから、メディアで消費される沖縄イメージを読み解くシン
ポジウムの記録。ユニークなのは、学部生が中心となった研究であること、また発表後のセッションでの
沖縄の大学生とのやり取りから浮かび上がってきた、「誰が、どんな立場から沖縄を語るのか」「語って
いるあなたはでは何者か?」といった問題。そして、本土=語り手をマジョリティ、沖縄=語られる対象
をマイノリティと半ば暗黙のうちに規定してしまうことへの問い直しだ。特に後者の二項対立の図式は
語る側の当事者意識の欠如や語られる側のそのポジションに対する一種の安住をもたらしてしまう。
沖縄に頻繁に訪れ、また沖縄に関するホームページを開設する者として、この問題は常に意識していただ
けに、ここでの議論はよい手がかりとなった。

沖縄に立ちすくむ

多田治「沖縄イメージの誕生~青い海のカルチュラル・スタディーズ」

2004-11-15 22:20:02 | Ryukyu
一般に沖縄観光のイメージとして想起される「青い海」「南の亜熱帯」「独特の文化」
といったイメージが、1975年の沖縄海洋博前後を機に意図的に選択されつくりあげら
れたものであることが多角的に検証されている。東京オリンピックや大阪万博での開発
手法を継承した海洋博は、一般的に「失敗」したものとみなされ、顧みられることも
ほとんどないが、この著作を読むと、現在の「ナビィの恋」「ちゅらさん」でみられる
ような、フィクションの世界でのある特定の沖縄イメージが、逆に現実の沖縄像を再規定
してしまっている状況のルーツが海洋博にあったということがわかる。

大城美佐子「片思い」

2004-11-02 23:43:53 | Ryukyu
沖縄民謡の巨星、故・嘉手苅林昌のスタイルを最も色濃く継承している唄者の
1994年録音作品を中古で入手。出世作の表題曲をはじめ、代表的なレパートリー
で構成されている。彼女の魅力は何と言ってもその独特の「猫声」ともいうべき
声だろう。このような声質の唄者は他におらず、一聴しただけですぐに彼女の唄
とわかる。ヤンバル(沖縄本島北部)の海沿いの寒村風景を思い浮かばせ、空気
を鄙びたセピア色に染めるような声だ。