どんなに忙しくとも音楽を聴く時間まで無くしてしまうと心が乾燥し、人間としての生き
る気力が弱ってしまうような気がします。時間は工夫すれば必ず作ることが出来ると思いま
すが、それを実行に移すのは意外と難しいと実感している中で、毎回N響の演奏会に出かけ
ています。
さて、今回は11月と12月の定期演奏会の模様をお伝えします。11月はワーグナー/
楽劇「トリスタンとイゾルデ」から「前奏曲と愛の死」第2幕(演奏会形式)で、指揮がイ
ルジー・コウト、出演歌手はトリスタン:アルフォンス・エーベルツ、イゾルデ:リンダ・
ワトソン、国王マルケ:マグヌス・バルトヴィンソン、ブランゲーネ:クラウディア・マー
ンケ、メロート:木村 俊光でした。
感想はただ一言、ワーグナーの楽劇は好きになれないということです。これは私の音楽を
聴く態勢がワーグナーに向いていないからだと思いますが、管楽器のばりばりとした音量と、
どうしても馴染めない旋律や不協和音には閉口します。
またソプラノ歌手の金切り声や、その他の歌手も全てエネルギーを全開しながら取り組ん
でいるのを聴いていると、繊細なモーツァルトに慣れている私の耳には騒音のようにしか思
えないものでした。また楽劇の内容も純粋の愛と死を扱っているとのことですが、あらかじ
めワーグナーファンの方にお詫びしますが、何かわざとらしい感じがし、好きになれません。
それに比べ12月の定期演奏会は、ストラヴィンスキー/バレエ音楽「ミューズの神を率
いるアポロ」とオペラ・オラトリオ「エディプス王」と全てがストラヴィンスキーの作品で
した。指揮は久しぶりの登場となるシャルル・デュトワでした。
デュトワは、個人的に好きな指揮者であるので安心して聴いていられます。今回のストラ
ヴィンスキーですが、その取り扱い方は丁寧で細かいところまで気配りされた良い演奏だっ
たと思います。
後半のオペラ・オラトリオ「エディプス王」では、エディプス王:ポール・グローヴズ、
ヨカスタ:ペトラ・ラング、クレオン/伝令:ロベルト・ギェルラフ、ティレシアス:デー
ヴィッド・ウィルソン・ジョンソン、羊飼い:大槻孝志、語り:平幹二朗、合唱:東京混声
合唱団のメンバーによるものでした。
何故語りが平幹二朗になったのか良く分かりませんが、俳優でなく他の者でも良かったの
ではないかと思います。また唯一歌手の中で頑張っていた羊飼いの大槻孝志ですが、低い音
の声量が少し足りない感じがし、結果的にオーケストラの音に負けてしまっていました。ち
ょっと残念な思いがした次第です。
2ヶ月連続で、声楽が中心となったものでしたが、個人的には12月の定期演奏会のスト
ラヴィンスキーの作品の方が好きになれるものでした。ワーグナーよりもストラヴィンスキ
ーのほうがより近代的な音楽であるので、親しみ度から言えばワーグナーの方になるのでし
ょうが、何故か私は好きになれないのです。
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