昨日、今年初めてのNHK交響楽団定期演奏会に行って来ました。演奏曲目は、ベートーヴ
ェン/ピアノ協奏曲第1番ハ長調作品15とチャイコフスキー/交響曲「マンフレッド」作品
58の2曲でした。
指揮者は、1976年にレニングラードに生まれたワシーリ・ペトレンコで、サンクトペテ
ルブルク音楽院に入学し、イリヤ・ムーシンに指揮法を師事し、さらにマスタークラスで、マ
リス・ヤンソンス、テミルカノフ、サロネンからも指導を受けた、今年35歳の新進気鋭の指
揮者でN響初登場です。また、ピアノ独奏は小菅優でした。
前半のベートーヴェンのピアノ協奏曲第1番ですが、小菅優の演奏にビックリしたというの
が正直な印象です。1983年東京生まれとのことですから、今年28歳です。とても28歳
の演奏とは思えない内容でした。実際にピアノを演奏をしている様子を見て、そして音を聴い
て感じたことは、この人は普通の才能の持ち主ではないということです。
正直な印象は、音楽を一旦頭の中で論理的に分析した上で、再度構成して弾いている感じで
す。他のピアニストに比べ、顔の表情と頭の動かし方に特徴がありました。さらに音の作り方
は日本人的な感覚ではないと思います。
その背景には、長くヨーロッパに居ることが要因となっていると思います。東京音楽大学付
属音楽教室を経て10歳の頃にドイツへ渡り、その後ヨーロッパに在住しドイツ青少年音楽コ
ンクールなどで優勝を重ね、15歳で初CD録音を行うなど早熟すぎます。
そしてザルツブルク・モーツァルテウム音楽大学卒業し、2006年にはザルツブルク音楽
祭に日本人ピアニストとしては内田光子に次いで2人目のリサイタル・デビューを果たすなど、
異色のキャリアの持ち主です。
あたかも自分が指揮者であるかのように常にオーケストラの演奏者を気にしながら目で合図
をし、音の受け渡しを行うなど、確実に自分が主人公となってオーケストラを引っ張っていま
した。頭の中はどのようになっているのか興味があるところです。
演奏内容はスリリングな面が多く緊張感のある演奏内容でした。今回初めて小菅優の演奏を
聴いたので何とも言えませんが、ドイツロマン派の作品には合うような気がしますが、モーツ
ァルトはいかがなものかと思います。
後半のチャイコフスキー/交響曲「マンフレッド」ですが、初めて聴く曲でした。全体的に
少し長すぎる内容で、ところどころで楽想が変わるような内容で、聴いていて疲れる曲だと思
いました。
木管と金管楽器の演奏は上手かったと思いますます。いつものことですがヴァイオリンのあ
の薄い音の響きはどうにかならないのかと本当に思います。ただし、指揮者のワシーリ・ペト
レンコは、オーケストラのコントロールが上手いと思いました。オペラも30ほどレパートリ
ーがあるとのことが影響してか、オーケストラを歌わせる技術は非常に上手い指揮者であるこ
とは間違いないと思われます。
今回の演奏会のように、今後はこのような若い演奏家がこのクラシック界を盛り上げて行く
のだと思わせるような演奏会でした。新年早々レベルの高い演奏を聴けてよかったと思いなが
ら帰路に着きました。