近頃お気に入りの一句
釣銭のでない自販機法師蝉 昌成
「釣銭の出ない自販機」、道端に置いてある自販機。釣銭が出ない。釣銭切れか? 放置自販機? 最近、放置づいています。
自販機はおいてあるが、人の存在を感じられない風景ということでしょうか。
こんな景色でしょうか。すでに閉鎖されていますが、道路右は北里大学東病院。
今年の蝉はすでにいなくなりましたが、夏場は油蝉とつくつく法師の大合唱、何千とまでは言えないが、何百匹以上ではある、という感じです。
道の奥上は丹沢山地、道路の突き当り右に当方利用の相模原市麻溝台市民農園があります。
したがって、日常通る道なのです。
暖色の庭園灯や柿熟るる 星野恒彦
小田急町田駅に近づくと、電車がゆっくりとなり、線路際の「梅の花」という懐石料理店の庭が見えます。
木は、柿の木ではなく紅葉ですが。
王様のやうな林檎の届きけり 坊城俊樹
俳句は挨拶と言われています。林檎の「王林」が送られてきたことへの挨拶句でしょう。
作者は、高浜虚子のひ孫にして、平安貴族の末裔。
あちらむきに鴫も立ちたり秋のくれ 蕪村
ん、「あちらむき」とは?
と思いましたが、「秋のくれ」なので、「夕日」を見ている自分と同じように、鴫も西を向いていると読めばいいかなと。
山小屋の皿洗う音夜の秋 佐々木丸瓜
山小屋も大中小あると思いますが、この句の小屋は、大中でしょうね。
小屋の消灯時間はおおむね午後八時とおもわれます。
消灯、小屋の喧騒も静まり、小屋番が食器を洗う音だけの静かな秋の夜。
作者が小屋番として、皿を洗っているのか? 客として布団に入っているのか?
消灯時間による、人工的な静けさではありますが。
大方は空でありけり冬桜 井上恵美子
当方の周遊コース、相模原公園にも冬桜はあります。幹も枝も細く花も白くまばら、近づくと、たしかに空とセットで見るようなものです。
参考の一句
校章の刺繍の厚し四月来る 小川軽舟
緞帳の両端纏む文化祭 今日水
体育館の緞帳、校内にあっては豪華なものの一つです。一つだけかも、ですが。
近詠
馬返し駒止茶屋となりにけり 今日水
無季です。
その昔、毎週のように駒止茶屋に行っていた時期がありました。そのころの小屋主、先代の時次郎さんの話。
小屋を作るとき、名前をどう付けたか。
その昔のむかし、小屋あたりは「馬返し」と呼ばれていたそうです。
しかし「馬返し小屋」では、いまいち、ということで、知人と相談し「駒止茶屋」と命名、と聞いたことがあります。
山頂ではないので、「茶屋」にしたとも聞いたような気がします。