「千の風になって」に思う。

2007-06-29 13:31:07 | Weblog
『千の風になって』という歌が大人気だ。



この詩はもうずいぶん前、まだ誰にも余り知られていなかった頃、
私の友人が『お袋が死んだ頃この詩に出会って、感動した』と、私に教えてくれた。



皆さんよくご存知だと思うので内容は書かないが、
私のような人間の心でも、柔らかな手で包んでくれるような感覚を覚え、
からだの芯がジンワリ暖かくなった。



そのうちこの詩は原詩が『Do not stand at my grave and weep』というもので、
アメリカ人女性メアリー・フライの作品であるという説が有力なものの、
決定的な説とは言えず、作者不詳とする説と論争になっているという事を知った。



ところがこの詩を和訳し、曲をつけ、自らも歌った新井満は
「千の風」で犬小屋、化粧品、ビール、清涼飲料、歯磨き等、
多岐にわたり商標登録の権利者となっているという。



新井自身はこれらによる商標利用料に関しては、
その全額を千の風・基金に寄付しているとしているというが、
詳細については公開されていないため、
新井満自らが疑念を早期に解消するべきと言う声も挙がっている。



その後テノール歌手・秋川雅史がシングルを出し、
NHKの『第57回NHK紅白歌合戦』への出場が決まり、
現在の大人気となったようだ。



新井や秋川がこの詩にどういう利権を持ち、どんな利益を得ているか?
その事には、実は私は余り興味が無い。



ただ、この作品の良さは

愛する人を失った人が

自分自身のパーソナルな空間において

ひとりきりでこの詩に向き合った時にこそ、

最もよくその持つ意を汲む事ができ、心を揺さぶられるのではないだろうか?




つまりこの詩はとても個人的で、
死者と残された者のみに許される結びつきを謳ったものであり、
テノール歌手が声量を誇るように歌ったり、
この詩を商標登録して利潤を得るなどは、


、、どうも、その、、、そぐわないというか、、

、、、、むしろ対極にあるような気がする。




新井氏や秋川氏の歌が好きな方も、一度この詩の『原詩』を読んでみてください。

又違った感慨があるかもしれません。



ひとりの「無名の」アメリカ人が書いたものです。



a thousand winds
Author Unknown

Do not stand at my grave and weep;
I am not there, I do not sleep.

I am a thousand winds that blow.
I am the diamond glints on snow.
I am the sunlight on ripened grain.
I am the gentle autumun's rain.

When you awaken in the morning's hush,
I am the swift uplifting rush
Of quiet birds in circled flight.
I am the soft stars that shine at night.

Do not stand at my grave and cry;
I am not there, I did not die.


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6 コメント

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確かに (呂真似屋偽善兵衛)
2007-06-30 00:57:26
この詩は、数年前 国営放送(NHK)のラジオ番組で、紹介されて、愛する家族を亡くした方々の共感を呼び話題になった。 愛する妻、夫、母、父、又は、子供、あるいは、犬、猫、などなど、、、詳しくは、知らないが、外国の一個人のプライベートな詩であるらしい 原作者は、残された愛する親近者への愛の表現として書いた詩と思われます。私は、英語に堪能していない為に、原文を理解する事は、できませんが、歌にする必要が、有ったとは、思えません すみません とりとめがなくて、、、お邪魔しました。
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母との会話 (P@RAGAZZO)
2007-06-30 10:58:00
呂真似屋さん、私にこの詩を教えてくれたのはあなたです。

あなたから教えていただいた直後、
私は母の墓にお参りしたとき、
突然この詩を思い出し、つい空を見上げ、風を感じました。

そしてその私自身の「個人的な母との会話」の時こそが
最もこの詩が身近に感じられた瞬間でした。

まだ素朴で純粋な頃であったこの詩に出会えて、
本当に良かったとしみじみ思っています。

ありがとうございました。



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かなしいです (Z)
2009-03-30 21:52:06
あの9.11の米国テロでも読まれた詩のようですが、人の死を題材にして結果的に利益を得てしまったのですから作曲者も歌手も相当の覚悟がなければいけないのでしょう。日本人のどれだけの人がこのことに気づいているのか。
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ありがとうございます。 (P@RAGAZZO)
2009-03-31 11:37:28
Zさん、こんにちは。

そうですか、9.11の時にも読まれたのでしたか、、
知りませんでした。ありがとうございます。

もう近頃ではあまり話題にもならなくなりましたが、
人の死を悼むというか、死との対面における心の吐露を
あまりにも華々しくお祭りのように騒ぎ立てるのは
そもそもの詩の精神から離れてしまっているように感じます。

しかし今はもう昔なのでしょうね。
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秋川さんは・・・ (ベッラ・カンタービレ)
2011-02-20 06:10:36
P様、ずっと以前のこのエントリー、今、コメントさせて頂きます。

私はこの歌が流行している時も、全部をききませんでした。聴くに堪えない、と思ったのです。秋川という無神経な歌い方をする歌手、そしてその態度・・・秋川は日本語の「ん」が発音できていないし、発声の基礎基本もできていないからわめくように歌っています。
クラシックでは評価をされていません。
そして「テノール」といっても「バリトン」みたいな声なのです。高音が出にくい。

歌そのものを全部聴くに堪えない、しかもその詩の内容にそぐわない・・・つくられた流行だと思っています。
彼がそれから有名になってカンツオーネなど歌っていましたが、これは素人なみ。

どこをとっても感動などありません。
ジーンとくるような歌い方はできないのに、なぜもてはやされたのか・・・いまだにわかりません。

詩と音楽の一致はみられません。
流行している時、この歌を批判するのは勇気が必要でした。それでも批判しましたが・・・基礎基本を勉強すべき時を失ったようですね。

私も母を失っていますが、この曲と歌い方は背を向けていました。
他にも感動的な歌はありますから。

それに悲しい時はチェロとか・・・低い音で心を癒したい、と思いました。

P様のブログを私がまだオジャマしていない時のを、時々拝見させて頂いていて、コメントしたことをお許し下さい。
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売名 (P@RAGAZZO)
2011-02-20 15:16:24
ベッラさん、こんにちは。

近頃はあまり出てきませんが
この歌を秋川氏が歌ってたころは、
そこらのコーラスグループまで大仰にテレビに出演していて、
この歌の主旨がこの人たちは理解できているのか?
と不思議な感覚に囚われました。

秋川氏は専門家のベッラさんから見ても
本物とは言い難いのですね。

この歌を利用して売名や利権行為をやってた人々は
醜いです。

詩を書いた方が怒っておられるような
気がしますね。
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