【戦場のピアニスト】

2008-06-28 13:25:45 | シネマ





【戦場のピアニスト】
出演: エイドリアン・ブロディ, トーマス・クレッチマン 監督: ロマン・ポランスキー
カンヌ映画祭パルムドール受賞。アカデミー賞監督賞、脚本賞、主演男優賞受賞



愕然とさせられた。

この作品がユダヤ系ポーランド人のピアニスト、ウワディスワフ・シュピルマンの体験記に基づき、
母親をナチの収容所で殺されたポランスキーが監督である事を差し引いても、
この映画に出てくるドイツ人(ナチ)は最後にシュピルマンを救うひとりを除いては、
全て、悪辣非道の冷血な人間のように描かれている。

もし娯楽として観る映画としてならば私は満点を出す。
2時間半もの長編にかかわらず、退屈を感じたり他の事に気が行ったりする事は一度も無く、
廃墟において彼を救ったドイツ将校の前で弾いたショパンには涙も流した。
事実、私は星五つを出すし、他に選択肢は無い。

しかし、何故ユダヤ人はこうも嫌われたのであろうか?
本作において、ドイツ人は、ユダヤ人をユダヤ人であるという理由だけで殺戮し、
ジェノサイド、、つまりユダヤ人種抹殺を図ろうとする。

何か理由があるのではないか?

現代に於いてもイスラエルはアラブ諸国と絶えず紛争し、
彼らは圧倒的な火力でパレスチナを空爆したりしている。

不謹慎だが、アラブ人たちが、
『もし許されるならばユダヤ人を皆殺しにしたい』と思っていたとしても
少しも不思議ではないのではないだろうか。

この映画の時代、ドイツは第一次世界大戦で敗戦国になり、莫大な債務を請求された。
税金は高騰し、紙幣は紙切れ同然の価値になった。

だが、ユダヤ人たちは第一次大戦時に「兵器の製造販売などで莫大な利益を得た」にもかかわらず、
「自分たちはドイツ人ではない」といって税を負担しようとはしなかった。

そのような時代背景を知らずに本作を観て【ドイツ人=悪】という構図を
のんめりと受け入れてしまう事には、いくらかの抵抗を感じざるを得ない。

ドイツにしても、
ナチの戦争犯罪を『あれはナチの仕業でドイツ人民とは別です』というスタンスを取っているようだが、
ヒットラーはドイツ国民の民主的選挙によって選ばれたのであり、
ドイツ人のほとんどはヒットラーを支持したのである。

壮絶な映画だった。
素晴らしい映画でもあった。

それと同時に、
『ナチス』の一文字がヨーロッパで絶対悪として
それ以上の思考停止の状態である事を思い知らされ、考えさせられた映画でもあった。




★★★★★







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