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Valuation/Accounting/Finance/USCPA
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アンレバードβ再訪

2009-03-27 14:27:43 | Valuation
アンレバードβとは、企業のリスクの中から財務リスクを除いて事業リスクのみを抽出したβのことです。

企業買収などで、非上場企業の企業価値や株主価値を求める場合、株主資本コストを求める際のβの計算を工夫しなければなりません。なぜなら、上場企業のβは、過去の株価の動きから求めることができますが、非上場企業の場合は株価が存在しないためです。

そこで、同じ業界で事業の状況が似ている企業は、事業リスクもほぼ同一だという仮定で、非上場企業のβを求めていく必要があります。

しかし、市場でわかるβは、あくまで株主から見たときのβです。株主から見たβには、その企業の財務リスクまで含まれています。財務リスクとは「株主は負債が多いほど、企業が倒産したときに自らの手元に戻ってくる金額が少なくなる可能性が高い」というものです。株主は財務リスクも含めてその企業に投資しているのです。

そこで、非上場企業のβを求めるには、類似企業の市場におけるβ(株主から見える財務リスクをも含んだβ)から事業のリスクだけを抽出したアンレバードβを求めます。そた上で、βを求める対象企業の財務リスクを加味するのです。



そのとき、その上場企業のβLとβuの関係は次のようになります。


βu=βL÷{1+(1-t)D/E}
βL=βu*{1+(1-t)D/E}
(D:有利子負債のボカ、E:株主価値の時価、t:実効税率)
D/Eは一般的にD/E比率(デット・エクイティ・レシオ)と呼ばれます。

(アンレバードβを求めることをβをアンレバー化するといいます)

○ 非上場企業におけるβ算出

ここでは、非上場企業のβ算出を例にします。参考とする上場企業のβを求めます。これをβL(レバードβ:財務リスクまで含んだβです)とします。次に、その上場企業の事業リスク(つまりその企業が無借金だったと仮定して財務リスクを取り除いた場合のβ)を表すβをβu(アンレバードβ)とします。

例えば、上場企業Z社の(レバード)βが1.4で、有利子負債が50億円、株主価値が300億円、実効税率が40%だった場合、Z社のアンレバードβは次のようになります。

βu=1.4/(1+0.4×50/300)=1.31

これが、Z社のビジネス(無借金だったと仮定した場合の資本)のリスクになります。

○ 非上場企業のβ(レバードβ)算出

類似上場企業の無借金状態での事業リスクを求めたら、次に非上場企業の資本構成で、類似上場企業の事業を行った場合のリスクを求めます。つまり、類似上場企業で算出したβuから非上場企業の資本構成をもとにβLを算出します。

しかし、非上場企業の場合B/S上の「ボカ上の資本構成」はわかっても、「時価上の資本構成(特に株主資本の時価)」については、株価がないのでわかりません。そもそも、その株価を求めるためにβLの算出をしているわけです。その場合は、「上場している業界全体の時価での資本構成」から、非上場企業の時価の資本構成を推定していきます。

例えば、非上場企業F社が、上場企業Z社と同じような事業を運営している場合、βuは先ほど求めた1.31をそのまま使います。資本構成については、Z社やF社の業界の上場企業から推定します。Z社やF社の業界における上場企業の資本構成の平均が、有利子負債:株主資本の時価=1:2の場合、F社のレバードβは次のようになります。

βL=1.31×(1+0.4×1/2)=1.57

これが株主から見た非上場企業F社のβ(リスク)になります。

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