もりたもりをblog

Valuation/Accounting/Finance/USCPA
何事にも前向きに取り組みます!

LBOの解説

2009-07-14 05:04:46 | Valuation
LBO(Leveraged Buy-Out)とは、企業買収手段の1つで、 買収対象企業の資産及び将来CFを担保にして買収資金を調達し、買収を行うものです。

LBOの生みの親といわれているのは、PEファンド最大手の一つであるKKRを設立した ジェローム・コールバーグ(Jerome Kohlberg Jr.)氏です。1970年代に開発された企業買収手法が今日においても、 企業買収手法の代表として利用されています。

ちなみに、映画「プリティ・ウーマン」で、リチャード・ギアが、 造船会社を買収する際に利用した買収手法もLBOです。

具体的なスキームは、以下のようになります。
[SPCの設立・買収]
①A社を買収しようとする投資家が、買収用会社(SPC)を設立します。
②株式買取に不足する資金を金融機関から調達します。
③A社の既存株主から、株式を100%買取ります。
④概ね100%購入後、SPCとA社を合併させます。





[合併後]
⑤合併後A社の資産・収益等から金融機関からの融資を返済します。






このような手法を利用する理由としては、以下があります。

· 買収資金を買収対象企業の信用リスクで調達することが可能
· 仮にA社が倒産した場合にも、株式価値がゼロになるだけで、 融資の返済を遡及されることがない(ノンリコース・ローン)。
· 買収対象会社が直接借入を行ってSPCに資金を融通すると、資本充実という会社法の大原則に反する
· SPCと買収対象会社が合併しないと、直接的な返済原始が配当のみとなり、 調達したLBOローンの返済原始としては弱いものになる。 例えば、買収金額が買収対象会社の純資産額を超えている場合、配当を行うと債務超過になる可能性がある
買収手法としてLBOを利用することが適している企業は、以下のような企業です。
· 余剰資産が潤沢にある企業
· CFが安定的に出る企業

新聞等で記載されるMBO(Management Buy-Out)は、LBOの一種で、 経営陣(Management)が行うLBOです。

なお、MBOであっても完全に経営陣のみで買収資金を賄うことが出来ない場合が多いため、 PEファンド等の資金を利用することによって行われることが多いです。

LBOファイナンスを行う際には、多くの場合優先劣後構造を設けます。これは、資金調達先によってリスク・リターンの選好が異なるため、 それぞれの資金調達先に応じたファイナンスを行う必要があるためです。

この優先劣後構造を設けることを、トランチング(Tranching)といい、 各部分をトランシェ(Tranche)といいます。



よく「株はリスクが高い」といいますが、これは返済順位が最も低いという点からも、 正しい認識だと思います。

「シニア(Senior)」とは、通常の貸付と同じようなものだと思ってください。 金銭商品貸借契約に従って、『いつ・いくら支払う』というものが契約上定められていて、 その契約上の取決めを破ると、債務不履行(デフォルト)になります。
「メザニン(Mezzanine)」は「中二階」という意味ですが、 「シニア」と「エクイティ」の間にあることからきています。

このうち、「劣後ローン・劣後債」は調達先から見れば”負債”ですが、 通常はシニアの返済が問題ない水準でなければ、劣後ローン等を返済できないような契約になっています。
「優先株式」は調達先から見れば、”純資産”ですが普通株式とは異なり、 償還を前提とした設計になっている場合が多くみられます。 ただし、優先株式の場合は、法的な債務では無いため、法的債務(負債)にそもそも劣後します。

多く見られるものが、
· シニアとメザニンにおける関係者間合意書(Inter Creditor Agreement)が締結され、 契約によって劣後の扱いを受けることを合意させる
· 償還期限がシニアよりも長く設定されている(期間劣後)
· 残余財産分配権に関する劣後条項(返済に関する劣後)
· 一定の財務比率をクリアしなければ、強制的に弁済が繰り延べられる条項
· 一定水準以上の現預金が存在する場合の、シニアの強制期限前弁済条項
· 優先株式の場合は、法的な債務では無いため、法的債務(負債)にそもそも劣後する
といった条項を契約に入れることによって、シニアよりも返済順位を劣後させることになります。

「エクイティ(Equity)」とは、株式です。 法的な債務ではありませんし、「メザニン」に優先株式が入っている場合は、 ”株主間契約”によって、優先株式を償還するまでは、配当を行わないなどの 取決めを設けます。
返済条件等に関する優先順位(リスク)については、上述の通りですが、 経済条件(リターン)については、リスクが高いほど高くなりますので(ハイリスク・ハイリターン)、 エクイティが最も高いリターンを要求するおことになります。

実際の事例によって異なりますが、例を示せば以下のようになります。
· シニア:~5%
· メザニン:5~15%
· エクイティ:20%~


最新の画像もっと見る