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いまさらながら「経常収支+資本収支=ゼロ」①

2013-05-28 12:40:41 | economics view
国際収支統計は、損益方式ではなく収支方式で記載される。企業会計に置き換えると、損益計算書と異なり、CF計算書に類似した記述方法が取られている。

キャッシュ・フロー計算書と対比すると、

貿易収支が営業CFに、
経常収支が営業CF・投資CF・財務CFの合計に、
外貨準備の増減が現金預金の増減に、

それぞれ置き換えられる。

作成の際は簿記と同様の複式計上方式をとっている点が特徴である。すなわち、取引が記録される際は必ず貸方と借方に同額の計上がなされる。簿記の場合は、借方に資産の増加・負債の減少・費用の発生、貸方に負債の増加・資産の減少・収益の発生を計上するが、国際収支統計の場合も、これに類する計上方法を取っている。

特筆すべきは簿記で一般的な損益会計(発生主義)とは異なり収支会計(現金主義)であるために、「貸方を左に、借方を右に」記載される事である。これまたCF計算書の作成方法と同様といえる。

経常収支:

貿易については、輸出はその国から「実物資産がキャッシュに置き換わる」ことなので貸方に(したがってキャッシュという資産の増加は借方であるが、このケースでは借方は右なので右にキャッシュを)に記帳する。

輸入は「実物資産は増加するがキャッシュは減少する」つまり輸入した資産は借方(右側)に記帳する。(したがってキャッシュは減少するが、それは貸方に記帳するものであり、このケースでは貸方は左なので左にキャッシュを)記帳する。

また、所得収支については、所得の支払は経費に類するものでありるから借方に(したがってキャッシュは借方=右側に)、所得の受入は収入に類するものであることから貸方(左側)に記帳する。

サービス貿易については、簿記会計ではサービスそのものの増減が計上されることはないが、国際収支統計においては、あたかもサービスというモノが国境を越えて移動するかのような記帳がなされる。

すなわち、「サービスの輸出は貸方」(したがってキャッシュインなので借方=左側)に、サービスの輸入は借方に記帳される。また、政府による無償援助や、出稼ぎ労働者による本国への仕送りなど、一方的なカネの動きについては、「移転」という反対勘定を設けて、所得の受取については借方、所得の支払については貸方に記帳する(あたかも「移転」というモノが増減したかのような記帳をする)。

資本収支:直接投資、証券投資、現預金などの資本収支については、金融資産の減少及び金融負債の増加を貸方に、金融資産の増加及び金融負債の減少を借方に記帳する。なお、資本収支がプラスの場合を「流入超」、マイナスの場合を「流出超」と表現する。

外貨準備:外貨準備の減少を貸方に、増加を借方に記帳する。

(計上の具体例)
輸出により代金を受け取った
 (貸)輸出(貿易収支)××× /(借)現預金(投資収支)×××

輸入により代金を支払った
 (貸)現預金(投資収支)××× /(借)輸入(貿易収支)×××

日本の旅行者が海外へ旅行し、ホテルで代金を支払った。
 (貸)現預金(投資収支)××× /(借)旅行(サービス収支)×××

外国債の利息を受け取った。
 (貸)証券投資(所得収支)××× /(借)現預金(投資収支)×××

日本政府が、途上国に対する無償資金援助を行った。
 (貸)現預金(投資収支)××× /(借)無償資金協力(経常移転収支)×××

日本企業が海外に工場を設立し、資金を送金した。
 (貸)現預金(投資収支)××× /(借)直接投資(投資収支)×××

日本政府が、外貨買い介入を行った。
 (貸)現預金(投資収支)××× /(借)外貨準備 ×××

このように、複式簿記の原理に従って貸方と借方に常に同額が計上される。

そして統計上は、貸方はキャッシュのプラス、
借方はキャッシュのマイナスとして表現される。
これが損益会計ともっとも異なるところである。損益会計では借方や貸方が右にあろうが、左にあろうが関係なく、キャッシュの増加は借方に記載されるからだ。


このため、外貨準備増減についても、

外貨準備が増加した場合は「マイナス」
減少した場合は「プラス」
となる。これは印象的に不可解であるが、そういうルールであると理解するしかない。これは上記の収支計算であるとする事に伴うものである。


そして
複式計上により、経常収支+資本収支+外貨準備増減は常にゼロとなる。

資本収支+外貨準備増減を「広義の資本収支」とすれば、この式は

経常収支+(広義の)資本収支=0

と書き表すことができる。

なお、新聞記事などで、「国際収支が悪化(改善)した」という表現がなされるが、国際収支はプラスにもマイナスにもならないという意味では、この表現は正しくない。

また、悪化や改善という表現についても、そうなることが好ましいとか好ましくないとかいう価値観を前提としているという点で問題がある。

「貿易収支(経常収支)が黒字化した」
「貿易赤字(経常収支の赤字)が拡大(縮小)した」などと表現すべきである。

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