よしべや自然博物館

2022年11月の月蝕を契機に電視観望を始めました。
通信販売とSNS頼りに頑張ります。
天文初心者の悪戦苦闘の記録。

電視観望の覚書021(SiriL① 逆畳み込み)

2024-03-26 00:59:00 | 覚書・機材
SiriLは、無料の天体画像処理ソフト。昔あったWindows用のIrisという天体画像処理ソフトのリナックス版として開発されたとのこと(資料3)。
仏圈を中心にユーザーが多いらしい。ZWOが、Seestarの有名テスターさんがSiriLを使って画像処理しているYoutubeを必見と案内していたこともあり気になっていた。いくつか見たが英語が多く理解できず。

アルさん(Xネーム)がブログでその手順を公開してくれているので、それに従って、
①Background Extraction(勾配補正)
 カブリや光学系によるムラ(周辺減光など)の補正
②逆畳み込み(Deconvolution)
   ステライメージの画像復元に対応。
③フォトメトリック色補正(PCC)
 ホワイトバランスの補正。恒星の色をNOMAD等の観測データを元に補正。
④ヒストグラム変換
⑤Generalised Hyperbolic Stretch Transformations
  (GHS、一般化双曲線ストレッチ変換)
  所謂ストレッチ。ステライメージのデジタル現像の拡張。
⑥彩度
⑦グリーンノイズ除去
で、画像処理の練習をしている。

今回は、②の逆畳み込みについての覚書。この機能は星像等を補正してくれる。
初期の頃のハッブル宇宙望遠鏡の鏡は歪んでいて、その像をこの技術で補正していたのは有名な話らしい。

SiriLを立ち上げ、画像を読み込む。画面上部の①画像処理をクリックすると、ドロップダウンで、リストが現れるので②逆畳み込みをクリック。
逆畳み込みのサブウィンドーがポップアップする。
①のGenerate PSFで、PSF(点広がり関数、Point Spread Function)が生成される。②に星像と生成されたPSFの畳み込みの結果が表示される(今回は表示される前のスクショ)。チラット見て、③をクリック。『閉じる』をクリックして画面を閉じてお終い;^^)
なお、画面横では、その状況が
のように表示されている。

参考資料
1)『宙が好き』のアルさんのブログ

【備忘録】SiriL1.2.0での画像処理(DSO編) : 宙が好き

最近、あまりDSOを撮る機会が無くて、処理手順も忘れちゃいそうなので、備忘録としてSiriLでの画像処理手順を書いておこうと思いますSiriLのチュートリアルに沿って進めます...

宙が好き

 
2)『20年ぶりの星空』さんのブログ。SiriLについてはその1からその3まであり、(少し古い)バージョンではあるがマニュアルの日本語訳も作製してくれている。

Sirilによる画像処理 その1(フラット補正なし)

20年ぶりの星空

 
3)蒼月城さんの3年前のYoutube。古いバージョンの評価・解説。SiriLとは何か?についても述べられており総合的に、SiriLとは何かを知ることができる。

4)逆畳み込みの最先端ツールは、今話題のBXT AI4。
これについては『たのしい天体観測』丹羽雅彦さんの解説ブログがある。

BXT AI4(BlurXTerminator)の正しい進化

BXTについて自分の見解を持ちたいと思い、この週末にBXTの作者のRussell Cromanさんの書いた記事や、動画、インタビュー動画を手あたり次第に読んだ見たりしました。結論と...

たのしい天体観測

 


以下、『畳み込み』・『逆畳み込み』とは何か?を理解するための個人的な覚書。

数学的内容は伴いませんが、大学理系程度の数学用語は出てくるので、閲覧御注意下さい。
 
『畳み込み』とは、
関数gを平行移動させながら、関数fに重ね足し合わせる(二頂)演算(以下、*とする)。~Wikipedia『畳み込み』より。具体的なイメージは次のアがわかり易い。
(私、上の『足し』が理解できてない。『積和』ではないのかと思うが、下の議論には、影響無いので、そのままに近い形にしておいた。)
 
ア)畳み込みの仕組み | Convolution~3Blue1BrownJapan公式チャンネル
 
以下、次の

 
の関係部分についての要約。
 
連続関数fとgの畳み込み*は、


{displaystyle (f*g)(t)=int f(	au )g(t-	au ),d	au }離散に対しては、

で定義される。これは、様々な数学的対象に拡張される。(t (m)は平行移動を意味するが、gの中のτ(n)が-τ(-n)になっているのは、数学的な扱い易さのための工夫、アでこれについても触れられている。複素平面上では、τと-τは対称点であり、重要な例がある。)
 
A.畳み込み定理
積分由来の概念ゆえ、
f*(g*h)=(f*g)*h・・・結合律
等の性質を持つが、肝は様々なところで、
フーリエ変換Fについて
F(f*g)=F(f)・F(g)となる畳み込み定理が成り立つこと。
(右辺の・は掛け算)
 
B.逆畳み込みの光学への応用
光学において、逆畳み込みは、
『記録されたデータの信号が、フィルタ (畳み込み)によって歪められた場合、元の信号を逆畳み込みを使用して復元すること。』
『光学では、「逆畳み込み (デコンボリューション)」は、光学顕微鏡、電子顕微鏡、望遠鏡で発生する光学的な歪みを反転させ、より鮮明な画像を作成するプロセスのために使用される。』(Wikipediaより、原文は正確に記述されているので、よしべ~の頭でもわかるようにはしょっている;^^)
 
*また、光学における畳み込みは写真・画像にぼかしなどのエフェクトをかけるためにも活用されている(ア参照)。
 
より具体的に天体観測では、
f:点光源の信号の関数(真の星像)~離散値、
PSF(Point Spread Function):(大気・光学糸等の影響による)点広がり関数とし、
h:観測された信号の関数(観測された星像)~離散値とおくとき、次が成り立つ(と仮定する)。

F(f*PSF)=F(h)
 
そして、左辺は畳み込み定理より、F(f)×F(PSF)となる。∴F(f)=F(h)/F(PSF)
逆FFTをほどこせばfを得る。
 
つまり、PSFを求めることができれば、FFT(高速フーリエ変換)と逆FFTを用いて、fを復元することができるということになる。この一連の操作も逆畳み込みと呼んでいる
ただ、FFTと逆FFTの部分は(数学・工学・計算機科学の研究・経験から)比較的容易らしいが、PSFを求めるのは難しいとのこと。PSF自体が非線形の可能性もある。現実は近似値を使用しているらしい。PSFの近似精度を高めるため、試行錯誤、実験、AI学習など様々な方法が取られているとのこと。(動的PSFなど星ごとにPSFを求めることもするらしい。SiriLにも実装されているが使い方わからず;^^)

なお、高速フーリエ変換については、ア及び次のエ、オが詳しい。
 (FFTの基本アイデアは複素平面上の円周等分多項式の解を利用して、連立方程式の解法に帰着させると感じた。)

そして、AMAZONで

購入して、斜め読み。カラオケのエコーから、音楽のイコライザー、データ通信・・・
世の中フーリエ変換で成り立っている?
最後の方で遂に出た!『畳み込み』の記述があったが、例は1つだけ。そこがちょっと残念。まあ、畳み込みだけで本何冊かになるんでしょうな。
以上。

(息抜き)
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