国鉄115系電車は、日本国有鉄道(国鉄)が寒冷地区・急勾配路線での運用を目的に設計し、1963年(昭和38年)から製造を開始した直流近郊形電車です。寒冷地区・急勾配路線での運用を目的にした近郊形車両で1963年(昭和38年)から1983年(昭和58年)まで改良を重ねながら1,921両が製造された。
開発の経緯
国鉄の新性能電車は、1957年(昭和32年)に製造を開始した101系通勤形電車を祖とし、その後は151系特急形電車・153系急行形電車とともに増備が進められた。また、鹿児島本線・常磐線の交流電化により3扉セミクロス交直流両用となる401・421系が1960年から製造が開始された。しかし、東海道線東京口などでは80系電車や客車など2扉車が使用されており、増加する通勤客に対応できないことから、401・421系と同等の車体構造を持つ111系が製造された。
さらに同時期には山間部路線でも電化が始まり中長距離列車が運行されるようになったが、111系が搭載する出力100 kW級のMT46系主電動機では出力不足が如実であり、編成の組成において電動車を多くした高MT比とするか、補助機関車の連結が要求された。しかし電動車を増やす場合、製造・運転・保守ともに高コストとなり不経済であることから、111系をベースに主電動機の出力増強を目的に開発されたのが113系と本系列である。
1963年3月に登場した近郊型電車の115系は、東北本線・高崎線の上野口の通勤客増加への対応と、勾配区間を持つ上越線や日光線での運用、冬期の運用が考慮された設計となった。165系と同様に出力120 kWのMT54系主電動機を搭載し、上り勾配での加速力を調整可能なノッチ戻し機構、下り勾配での定速運転が可能な抑速ブレーキが搭載されるとともに、耐寒耐雪に対応する設備を備えている。
1950年代から首都圏を中心に各地で電化が進み、電車の中長距離運行が実施されるようになった。国鉄でも近郊用に111系を1962年(昭和37年)から製造・投入していたが、111系が搭載する出力100kWのMT46系主電動機では、山間部で使用する場合は性能不足であり、編成中に通常より多くの電動車を連結する(MT比を高くとる)必要がありました。電動車が多いと製造コスト・運転コストが高くなり、不経済であることから、111系をベースにM車一両当たりの出力を増強して、少ない電動車で編成を組むことができる新系列として開発されたのが113系と115系です。
1983年(昭和58年)までの長期にわたり、改良を重ねながら2,000両近くも製造され、本州内の直流電化区間で普通列車に用いられました。また一時期に急行列車にも使用されたことがありました。国鉄分割民営化時には東日本旅客鉄道(JR東日本)・東海旅客鉄道(JR東海)・西日本旅客鉄道(JR西日本)が承継・保有し、一部の車両はしなの鉄道・伊豆急行に譲渡されました。初期形の多くは廃車されましたが、その汎用性の高さから2011年1月時点でも各地の直流電化区間で使用されています。
クハ115形 制御付随車。後位3位側隅にトイレを持つ。115系ではCPをモハ114形に集約したため、0番台・300番台ではクハ111形のようなCPの有無による番台区分はありません。非冷房車の0番台は奇数・偶数双方向での使用が可能。製造開始時からの形式です。
岡山電車区電車センター 115系 通風器が撤去されていますが、客室窓や前面窓の改造は行われていません。
クモハ115形
主制御器・主抵抗器を搭載する制御電動車。急行形電車Mc車と異なり主電動機冷却風取入口は、クモハ103形などと同様に前位寄戸袋窓上部の設置としている。0番台は全車モハ114形800番台とユニットを組む。全車が奇数(東海道本線上で東京)向き。製造開始時からの形式ではなく、1966年に中央本線への投入の際、富士急行乗り入れが3両編成までに制限されることから起こされた形式である。
モハ114形
電動発電機 (MG) や空気圧縮機 (CP) 等の補助機器とパンタグラフを搭載する中間電動車。クモハ115形またはモハ115形とユニットを組む。1965年製の83から、CPがそれまでのC-1000形×2台からC-2000形×1台搭載に変更されている。製造開始時からの形式である。
国鉄115系電車
(共通事項)
基本情報
運用者 日本国有鉄道
東日本旅客鉄道
東海旅客鉄道
西日本旅客鉄道
しなの鉄道
伊豆急行
製造所 汽車製造
日本車輌製造
川崎車輛→川崎重工業
近畿車輛
東急車輛製造
日立製作所
製造年 1963年 - 1983年
製造数 1,921両
主要諸元
軌間 1,067 mm
電気方式 直流1,500 V
最高運転速度 100 km/h
起動加速度 1.6 km/h/s (1M1T)
2.0 km/h/s (2M1T)
減速度(常用) 3.0 km/h/s
減速度(非常) 4.0 km/h/s
全長 20,000 mm
全幅 2,900 mm
全高 4,077 mm
車体 普通鋼
台車 DT21B形・TR62形
主電動機 直流直巻MT54
主電動機出力 120 kW
駆動方式 中空軸平行カルダン駆動方式
歯車比 1:4.82
制御方式 抵抗制御・直並列組合せ・電動カム軸方式
制御装置 CS15形制御器CS15A[8](300番台を除く)
制動装置 発電ブレーキ・抑速ブレーキ併用電磁直通ブレーキ
保安装置 ATS-S・ATS-P(一部)・ATS-Ps(一部)
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