陽出る処の書紀

忘れないこの気持ち、綴りたいあの感動──そんな想いをかたちに。葉を見て森を見ないひとの思想録。

古のオタク、もはや懐かしの作品しか愛せない問題

2022-10-16 | 二次創作論・オタクの位相

お祭りのときによく買っていたリンゴ飴。
最後に買ったのはいつだったのでしょうか? もう覚えてもいません。酸っぱめの青りんごに、赤いキャラメルをかけただけのお菓子。なぜ、ありがたがっていたのでしょうか? それは非日常から離れたスペシャル感があったから。子どもの時代はそういう特別をありがたがったものでした。しかし。思えば、私たちは遠くまできてしまいました。いくつかの人生の山を越えて、川を渡って。思い出すのは、自分が踏みしめてきたものばかりです。いつのまにか、平らにならされた道を進むのがあたりまえになってしまったので、日常を乱されるような物語をどこか避けてしまうのです。

2022年10月に、あの高橋留美子原作の「うる星やつら」が再アニメ化されたと聞いて、びっくりです。
公式ホ-ムペ―ジ(https://uy-allstars.com/)を観ましたら、原作のデザインに近いですよね。でも、ゴールデンタイムじゃなくて、フジテレビのノイタミナ、深夜枠です。「犬夜叉」の続編の「半妖の夜叉姫」も途中まで観てたんだけど、けっきょく最後どうなったんでしょう。双子の娘はあの父上に逢ったのではないかと思うけれども。


ちなみに、この「うる星やつら」。
旧作のテレビアニメをほとんど観た覚えがなくて。私からすれば、少し上の人が対象の作品というイメージです。90年代にヲタクといえば、ラムちゃんプリントのTシャツを着ているといった、イメージがありました。母校の大学図書館に「うる星」の劇場版のビデオがなぜかあって、それが名作扱いされているのも後で知りました。あのとき観ておけばよかったですね。

古い作品がリメイクされて好評を得る、というのは珍しくもなく。
私が子どもの頃にも、「おそ松くん」(平成にもリメイクで大ブームになりましたが)とか、「超人ロック」だとか「鉄腕アトム」だとか、往年の古典漫画のリヴァイバルがあったりしました。で、子どもの頃の私は手塚漫画だとか、赤塚漫画だとかの味わいを知らないので、古い大人が押し付けたかび臭い作品だとしか思わなかったんですね。

そして、いまは自分が子どもの頃人気だった作品がリメイクされる。
アニメ化どころか、2.5次元ミュージカルだったり、実写映画だったり。「るろうに剣心」もそうですね。このあいだ地上波放映でありましたけど、やはり3次元のキャストに違和感があって観るのをあきらめました。やっぱり学芸会ふう歴史劇みたいなモヤモヤ感があります。最近の大河ドラマもそうなのですが。

リメイク版で思い出すのは、国民的人気作となった「美少女戦士セーラームーン」。
今ではフィギュアスケートのアスリートまでがコスプレしてしまうぐらい、世界的メジャーになりましたが。平成リメイクの原作絵に近い新作アニメは、なぜかコレジャナイ感があって、視聴を途中で断念。なぜなのでしょうか。

脳の老化がはじまると、新しい傾向の作品を受け付けなくなります。物語構造やキャラ名を覚えるだけでもひと苦労。いま流行りの転生したらどうとか、若い世代で人気の作品がもう馴染めない。だからこそ、古い作品のリバイバルは大歓迎。なのに観るのが疲れてしまいます。

ちなみにアニメや映画ではなく、漫画で読むのならばまったく無問題です。
子どもの頃よく観ていたアニメの原作漫画を30歳過ぎてからオトナ買いしてハマったこともあります。北条司の「キャッツ・アイ」がそうですね。

アニメよりも漫画がいいのは、自分の好きなペースで楽しめるからです。
最近のアニメの映像クォリティはかなりあがっています。昔のテレビアニメは毎回ひきのばしが多くて、内容も薄かったりしました。いまのアニメのほうが一作ずつのストーリーの濃密度が違うでしょう。けれども、その30分ばかりでも観ているこころの余裕が、忙しい大人にはないんですよね、なぜか。

そして40歳にもなると。
子どもの頃は敬遠していた古典文学とか、読まずじまいだった教養本とかを読まなきゃ、みたいな矜持が湧いてきます。そうなると、童心に帰って親しめるようなものを遠ざけてしまいたくなるんですよね。

だから、懐かしのアニメが蘇ったのだとしても。
あれは、そのときの、子どもの時の、他に何も楽しみがなく、ひたすら毎週のテレビアニメだけが生きがいだった時代には宝物に見えただけだ、と思うようにしています。実際、地方住まいの人間にはUHF局のアニメなんて観れず、漫画といったら、ジャンプ、サンデーやなかよし・りぼんみたいなメジャーな少年少女誌しか知らず、今のように、ネット上でいくらでも情報がすくえる時代ではなかったのです。

限られた時間でどんな作品を愛していくべきなのか。
人生の折り返し地点が迫った年代では、とくに考えていかざるを得ない問題です。とくに私は周囲に好きな作品の話題を共有できる友人もおらず、そもそも現実界でオタクネットワークを築きたいとも願わず、ひとりこっそりの趣味として楽しみたい派なので、ネットで流行っているから話題に乗ろうともしないわけです。

こうした腰の重さのおかげで、いまだに20年近くこだわり愛を注ぐ作品もあるわけですが。
ひとつの作品を何度味わってもおいしいと思うのは、飽き性な自分にはすこぶる珍しい現象だと思っています。

なお、これは、私自身がリバイバル版を受け付けないというだけのお話で。
古い作品がリメイクされて、新世代に語り継がれていくのは文化の継承としてはほほえましい現象といえるでしょう。インターネットのおかげで、通常ならば10年経てば忘れ去られそうな作品でも話題にのぼったりするのは嬉しいことですよね。

(2022/10/16)


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