陽出る処の書紀

忘れないこの気持ち、綴りたいあの感動──そんな想いをかたちに。葉を見て森を見ないひとの思想録。

神無月の巫女の雑誌切り抜きについて語る(前)

2023-10-15 | 感想・二次創作──神無月の巫女・京四郎と永遠の空・姫神の巫女
(漫画「神無月の巫女」第十二話 少年エース誌2005年5月号444頁)




ツイッターなどでたまに、自分はこれこれのDVDだの原作漫画だのCDアルバムだのを持っていますよ、という証拠写真を上げる方を見かけます。
ブログとか、自サイトホムペ全盛期にはあまりなかったように思いますので、スマホで簡単に撮影できるからなのでしょう。昔は広告料狙いではなくとも、アマゾンさんの画像リンクが多かったような。私はスマホやガラケーで撮影すると画像の整理がめんどくさいので、たいがいの書影はスキャナで読みこんでいるのですが。

さて、今回のマイ神無月語りはですね。
2023年現在、ひめちか廃人歴19年の管理人が神無月前に禁断症状が出て、秘蔵のコレクションのなかから想い出語りをしてしまう、誰得でもない日記です。このわずかな雑誌連載分を眺めてにやにや、こころの養分にするのが、時間のない休日の楽しみだったりします(寂しいな…)。

拙ブログの初めの方に書きましたが。私のファーストコンタクトは2004年12月初旬ぐらいの、アニメ第十一話あたりからでした。あたりと書いたのは、問題のあの銀月の嵐回(大神君が姫宮邸にかけこんできて、赤オロチ化したロボにめった打ちされるまで(酷)の、あの宮様最恐伝説のあの場面です)をなんとな~くチラ見して、当時、よくわからずあわててチャンネルを変えた覚えがあるからです。見てはいけないものに出くわしてしまったみたいな。でも、そのアニメのなんたるかをしらずに、二週間後ぐらいに深夜起きていたら、また出会ってしまったわけですね。

で、アニメ最終話で一目ぼれしてしまった葉っぱはですね。
あわてて、近所の書店に駆け込んで在庫がない第一巻を取り寄せ、さらには最新話が読みたくて角川の少年エース誌を購入。その第十二話から最終の第十四話までの三箇月分の雑誌切り抜きをずっと、19年間も保管していたわけですね。よくも自分、引越しでも、断捨離でも捨てなかったものです。それはともかく、この当時の雑誌のおかげであのぼんやりとしか観ていなかったアニメ八話に何が起こったのかも、この原作漫画で理解したわけですよ。いやいや、当時はこのテの表現力強い漫画に免疫がなかったものですから、カルチャーショックでしたね。いまだにこじらせちゃってます、ハイハイ(笑)。

この2004年頃は、神無月のアニメと同時期の「舞HiME」でも同じような過激な百合表現があったとか聞きますけども、いくら深夜アニメでも、今の倫理規定ではなかなか思い切ってできない表現だったのではないでしょうか。同性間のアレでも今は違法扱いですので。女の子同士は尊いから許されるじゃないの。BL好きでもジャニーズ事務所のあれが御法度だったのと同じで、現在は厳しいですね、こうした表現はね。だからこそ、この当時にギリギリでそれをやってしまったことにつき希少価値があるといえなくもない。物議は醸すだろうけども。
百合ものの歴史の王道には位置付けられなかったのだとしても。




第十二話と第十三話の扉絵は、主役の姫子と千歌音の前世ふたりで対になっています。
背中を向かい合わせているので、オロチ封印の、そうあの巫女の悲しき「最期の」儀式の直前なのかもしれません。このシーンに何があったのかは、アニメでも原作でも本編では明らかにはされていません。

なにせ若かりし日の私は和風ファンタジー好きでこの対の巫女の扉絵が美しかったので、コピーしてしばらく当時のひとり暮らし住まいに飾っていたことがあります。最終話の扉絵は、めでたく姫子と千歌音は抱擁しあう(…というか姫子が後ろから襲っています?!)ので、なかなか意味深なカットですね。




原作コミックスを読むと、第五話のソウマくん登場回の扉絵も超絶カッコいい! 原作ではユキヒトさんちょっかいがないし、ツバサ兄もそんなに狂った感じではないので、BL要員にはあまりみえないソウマさんです、よかったねえ。

あと扉絵で特筆すべきは、第八話の姫子の横顔とか、第九話のケレン味ありまくりな仮面の巫女服千歌音ちゃんとか。 あと第四話のカラーの月の社の二人の! 指綾に絡ませで千歌音が押し気味で姫子がややよろめき気味の、のあの色っぽい一枚絵。公式HPで壁紙配布されていたアレがすごく好きなのですが、なぜか、この絵柄グッズにしないの、なぜなんでしょうね。漫画版の姫神の巫女は扉絵をけっこう期待していたのに、水着回だけしかなかったですしね。

扉絵自体はコミックスでも確認できますし、電子漫画版でもそうでしょう。
雑誌連載時は当時のキャッチコピー分があったり、公式商品のセールス情報が端にちりばめられていたりで時代性を感じますよね。第十二話の前世姫子は「無限転生」とおおきなゴシック文字を背負っていて、いかめしさを感じますが。ここで今さら発見したことが。コミックス収録分では、姫子の画像を左に寄せていては後ろの侘しそうな黒髪少女の背中をやや綴じ目に追い込んで目立たなくしています。そのため、単行本ではこの回の姫子は悲壮感が薄まって、若干可愛らしく見えますね。前世千歌音が表紙絵の第十三話分では異動はありません。

この第十三話、連載時は「音羽さん」という誤植があったのも単行本では修正済み。
制作時はアニメの放映とも重なっていたので多忙だったのかもしれません。前回までのあらすじがあるのも、連載雑誌の醍醐味。引用してみると、

「オロチ衆・一の首ツバサと大神ソウマ。血を分けた兄弟でありながら、巫女をめぐり敵同士となってしまった二人の戦いもついに決着の時を迎える! 一方、千歌音とソウマを想う姫子の強い祈りが、月より剣神・天叢雲剣を召喚! 戦いに敗れたツバサは消滅し、オロチ復活の時が迫る!」

よくよく読んだら、ものすごい少年漫画誌ならではのあらすじ詐欺です!
これだと、ツバサ兄とソウマが姫子か千歌音ちゃんのどっちかを争って、痴情のもつれで闘っているみたいに読めます(おいおい)。すなわち百合漫画ってイメージじゃないのよ! 当時の雑誌カラーもあってか限界だったのかもしれませんねえ。いまのカドカワだと、「姫神の巫女」掲載時の電撃マオウがまさにそうでしたけども、少年誌レーベルでも百合百合したのが前面化してラインナップしていますのに。当時の少年エース誌は、人気アニメの「ケロロ軍曹」やらアニメ化された「グレネーダー」やらとかけっこうメジャー作が揃っていましたが、神無月の巫女の扱いが誌面でよかったのかどうかわかりません。原作者の介錯先生は当時の大ヒット作円盤皇女ワるきゅーレを別誌で同時連載されていたぐらいなので売れっ子ではあったのですけども、ゼロ年代での神無月は現在のようには注目されていなかったのでは。

原作者先生自身もコミックス一巻の折り返し作者コメントでは「初のロボット物」と紹介しているぐらいです。
ただし、雑誌版の登場人物紹介を読むと、千歌音ちゃんの項目に「姫子に好意を持つ」とあるので、ちゃんと百合漫画(ただし千歌音ちゃんの片想いっぽい匂わせ)であるというお知らせはある模様。

ソウマくんが倒したオロチロボ、合体しちゃうとか特撮ロボ大好きさん大歓喜の設定です。
しかも千歌音ちゃん、創世王になる宣言しちゃってますしね。ソーセージの親戚ですか、それ? じゃなくて、昭和ヲタクにしかわからない、仮面ライダーBlackのシャード―ムーンさんリスペクトですね。悪に堕ちた親友を救いにいく主人公=太陽の姫子。となると姫子を乗せてくるソウマくんはバトルホッパー?(違)

先鋒を務めて血路を開いたソウマくんの犠牲のおかげで、千歌音のもとへひた走る姫子。
オロチの呪いがあるのに、ムラクモさんを借りて、けっこう簡単に月にまで行っちゃいました。さすが、ソウマくんです。せいぜい地球を救うぐらいしかできない男はひと味違う! 

で、迎え撃つはずの悪の宮様ですが、ここでの千歌音ちゃんの秘めたるモノローグが怒涛のように…! 原作漫画版では、アニメ六話のような初顔合わせや千歌音の恋情の蓄積がやや薄めだったので、コミックス一巻ラストの千歌音の行動も意味不明に読者には思えたでしょう。




アニメでは前世絡みとはいえ、お嬢さまで才色兼備な千歌音が、なぜ平凡以下の庶民派でしかも内気な姫子を好きになるのか、少女漫画らしい主人公役得とはいえ、この格差婚が解せない面がありますよね。女性はとくにパートナーのつり合いにものすごくシビア。友人ひとりにしたってそうだもの。ひめちかみたいなアンバランス、現実にはいなさそうな組み合わせにも思えます。

しかし、原作漫画の設定に照らしてみれば。
村の伝承と祖父の企みのために、千歌音は剣の巫女としていずれは身を捧げるという運命を知っていて、偶像化されていたがゆえに自分らしさを封じ込めていた鬱屈した気分を、素直な姫子が癒してくれていたのかもしれませんね。姫子が、ほかの野心的な求婚者だとか、乙羽さんみたいな絶対服従の臣下だったり、イズミたちみたいな親衛隊の狂気じみた崇拝者だったりしたならば、あるいは自分の身の不幸をやたらと語って憐れみを引く人間ならば、千歌音はやはり姫子には溺れなかったわけでしょう。あとは子どもっぽくて甘ったれな姫子を可愛がることで、母性愛といいましょうか、姉じみた自尊心を満たしてくれる存在だったのかもしれませんね。孤児だったソウマが「来栖川が笑うことを教えてくれた」と語ったように。姫子自身は天然で打算じみて友だち付き合いをしないタイプなのに、エース級のマコちゃんみたいな親友がいたりするのも、姫子の魅力を語っているといえるのかもしれません。オロチの面子はひめちかみたいに輪廻しないと原作者先生はおっしゃっていたのですが、ギロチにせよ、ソウマにせよ、姫子に懸想する面々も、乙羽さんの千歌音ちゃん敬愛も、過去世になにがしかの因縁があったので、あるいは未来軸にありうるので、ふたりの巫女に並々ならぬ感情を結ばざるを得ないさだめなのでは、と自分は考えています。それも、巫女ふたりの絆には及ばないにせよ、ね。だから、千歌音ちゃんは「世界はいつだって二人の邪魔をする」とうんざりしている。

はたして、そうした千歌音と姫子の想いの後先は、最終話にはどう変化するのか。それを解きほぐすのは後編の記事にて。




神無月の巫女の雑誌切り抜きについて語る(後)
2005年の掲載雑誌版の原作漫画神無月の巫女を分析しながら、想い出語りをする企画。展開がやや拙速気味ではあるものの、最終二話分では、アニメにはなかった裏設定や千歌音ちゃんの真意にいち早く気づいた姫子の逞しさと優しさ、涙をひた隠しては孤独の闇に堕ちようとする千歌音の哀しさが見てとれます。単行本二巻収録の後日譚も必見!

★神無月の巫女&京四郎と永遠の空&姫神の巫女ほかレビュー記事一覧★
「神無月の巫女」と「京四郎と永遠の空」「姫神の巫女」ほか関連作に関するレビュー記事の入口です。媒体ごとにジャンル分けしています。妄言多し。


*漫画「絶対少女聖域アムネシアン」&ウェブノベル「姫神の巫女」、そのほか関連作レヴュー一覧*
漫画「絶対少女聖域アムネシアン」および、ウェブノベル&漫画「姫神の巫女」、そのほかの漫画などに関する記事です。


神無月の巫女公式関係者リンク集
原作漫画家、アニメ関係者、関連作品に関する公式サイトおよびツイッター等のリンク集です。



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