
労働問題についてよくありがちなのが、非正規雇用者の立場の不安定さです。
就職氷河期世代にはあるある案件ですよね。
正社員登用前提で契約社員としてまずは採用する。
あるいは、紹介予定派遣でいずれは正社員に。
よくありがちな求人募集です。
正社員希望者で、なんども転職を繰り返している者には、鼻先にぶら下げられた人参です。
正社員になるために、必死に早出サービス残業までして、休日出勤も厭わない。
お昼休みも、形だけは休みなさいと気休めの言葉がけ。実質、休憩時間もこなさないといけないような業務を、何食わぬ顔で机に置いていきます。手伝ってくれるといいながら、実際に頼んでも知らぬふり。こちらに仕事をおそつけて、自分たちは優雅に雑談しまくっている。泣きたくもなります。
私は下手にネームバリューが大きい企業や公的機関のこうしたおいしい話に騙されて、無駄な時間を過ごしたことがあります。
もちろん、大きな組織だけに使える会社の資産や設備も優れていて、いい経験値を積めたといえなくもない。
転職活動では、零細規模の正社員よりも、名の通った企業での非正規職で身に着けたもののほうが有利に働くことがあります。
しかし、契約社員・パートタイム労働者や派遣社員は、正規社員とは明らかに扱いが違います。
キャリアアップシステムを受けられず、賞与もなく、契約期間満了後に退職金も出ない。会社に貢献していると本人は自負しているが、会社からしたら利益にもならない事務作業。誰にさせても同じだと思っています。
私は時給制の非正規職から、月給制の非正規職へ転職したことがあります。
とうしょ、連休などが多い月は月給制のほうが楽でした。
しかし、あきらかに正社員がもらえる手当がなかったり、正社員ならば出るはずの残業代がないのに、一人では片付けられない量の仕事を持ち込まれ、しかも、あちこちから同時に複数の仕事を言いつけられて、からだを壊したことがあります。しかも、前任者の引継ぎがあやふやで、ろくな指導も受けてはいないのに、ダメだしされ続けました。恐ろしいのは、その企業がタイムカードがないために、従業員の労務管理を放棄していることでした。いったい、いまの働き方改革の機運を知らないのかと言いたくもなります。
けっきょく、こちらの足元を見ているんですね。
氷河期世代だから、仕事に飢えているだろう、会社員としての椅子を用意してやっただけで喜ぶだろう。
そんなふうに思われている。正直、3年以内の離職率がどうたら言われますが、サクッと辞められる若い世代の方が素直で羨ましいです。
一見してみんなが仲良くてやめない雰囲気をつくっている。
けれど、互いに離脱しないように監視し合い、評価しあっている。内情はごたごたです。
長くいればいるほど、人間関係に疲弊し、消耗していきます。
サービス残業やパワハラについては、労基署などに相談して仲裁や調停などの対策はとってくれます。
けれども、確実に居場所がなくなります。しまいに転職を余儀なくされますし、残っても干され続けるでしょう。
労働者をまもる法律や行政手続きは何のためにあるのか、と問いかけたくもなろうというもの。
そして、こうした立場の弱い者、後輩や新人を守ろうとして業務量を抱えすぎた中間管理職さえも、疲弊していきます。無駄な会議や稟議書の決裁や複数の部下の教育指導、さらには自分の業務も抱えていて、たかだか非正規社員ごときに目をかけられない。
古い体質の会社は、給料を払ってなおかつ成長をさせてやっているんだぞ、感謝しろ、という考えで、新人や弱者の置かれた脆さを察してはくれません。それこそ、パンがなければケーキを食べればいいじゃない、と言いつのったあのフランス王妃みたいに、ですね。
非正規雇用の5年で無期転換ルールなども、実質機能してはいません。
5年めの更新前にあっさり契約終了にすればいいだけ。今年の4月からはじまった同一労働同一賃金も、そもそもその職自体を奪われれば何らの意味もありません。
非正規雇用には非正規雇用ならではの、気安さや転勤がない、などのメリットがあります。
しかし、あきらかに正社員の穴埋めなのに、非正規雇用で間に合わせるのはおかしい。会社がその業務を軽く見ている証拠です。その仕事の重要性を理解しないばかりに、新人を入れては辞められての繰り返しで、その業務に周知した人間が育たず、やがては組織運営にひずみをきたすでしょう。そうして、屋台骨がおかしくなった企業を私はこれまでに見てきました。
正社員雇用を餌にして、意欲のある応募者を期間限定で安くこき使い、健康を害したら切り捨てる悪徳企業があります。求人で極端に条件が低い会社は、触らぬ神に祟りなしで、関わらないようにしましょう。